菊池製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

菊池製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主要事業は試作・金型製品、量産製品、ロボット・装置等の製造・開発支援です。業績面では、売上高は前期比で増収となり、利益面では最終黒字に転換しましたが、営業段階では損失が続いています。


※本記事は、株式会社菊池製作所 の有価証券報告書(第50期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 菊池製作所ってどんな会社?


一括一貫体制による試作・金型製造を核に、ロボット分野等のスタートアップ支援も展開する総合加工メーカーです。

(1) 会社概要


1976年に設立され、試作製品および量産製品の製造等を開始しました。2011年に大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場し、2013年には東京証券取引所との統合に伴い同取引所へ上場しました。近年はロボット関連事業を強化しており、2019年に東京ショールームをオープン、2020年にはイームズロボティクス等を連結子会社化しています。

同グループの従業員数は連結358名、単体243名です。筆頭株主は株式会社KIMで、第2位は取締役の菊池昭夫氏、第3位は個人の齋藤恵美子氏です。KIMについては詳細な属性は記載されていませんが、上位株主は個人およびその関係会社等で構成されていると考えられます。

氏名 持株比率
KIM 27.20%
菊池 昭夫 9.30%
齋藤 恵美子 9.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菊池功氏が務めています。社外取締役比率は約14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
菊池 功 代表取締役社長 1959年秋元光機入社。1970年菊池製作所創業。1976年同社設立とともに代表取締役社長に就任し、現在に至る。WALK-MATE LABやTCC Media Labの代表取締役も兼務。
菊池 昭夫 取締役ものづくりメカトロ研究所担当 1990年同社入社。取締役開発担当、営業担当、生産技術部長、品質保証担当等を歴任。2025年6月より現職。
乙川 直隆 取締役経営企画・総務・経理・人事担当 2007年同社入社。執行役員経営企画部長を経て、2012年7月より取締役経営企画部長、総務・経理人事担当。イノフィス代表取締役も兼務。


社外取締役は、横倉隆(元トプコン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金属製品加工事業」の単一セグメントですが、製品・サービスの内容により「試作・金型製品」「量産製品」「ロボット・装置等」「その他」に区分して事業を展開しています。

(1) 試作・金型製品


主に精密機器、電気機器、自動車部品メーカー等を顧客とし、新製品開発における試作製品や金型の設計・製造を行っています。独自の一括一貫体制により、設計から加工、成形まで各工程を通じて多種多様な試作製品を提供し、顧客の製品開発を支援しています。

収益は、顧客からの試作製品や金型の受注制作に対する対価として得ています。運営は、同社および海外連結子会社のKOREA KIKUCHI CO.,LTD.が行っています。

(2) 量産製品


精密機器、電気機器、自動車部品メーカー等を顧客とし、試作・金型製品で培ったノウハウを活用して量産製品の製造を行っています。精密プレス加工等の技術を駆使し、時計部品や半導体製造装置部品などの機構部品を製造しています。

収益は、顧客への量産部品の販売代金から得ています。運営は、同社および海外連結子会社のKIKUCHI(HONG KONG)LIMITED、東莞菊池金属製品有限公司が行っています。

(3) ロボット・装置等


大学やグループ会社との共同開発により、装着型アシストスーツ、ドローン、歩行支援ロボット等のサービス・サポート系ロボットの開発・製品化を推進しています。また、スタートアップ企業への開発・試作・量産・販売支援等を包括的に受託する体制を構築しています。

収益は、ロボット製品の販売や、スタートアップ企業からの受託開発・製造等に対する対価として得ています。運営は、同社およびSOCIAL ROBOTICS、イームズロボティクス、WALK-MATE LAB等のグループ会社が行っています。

(4) その他


上記に含まれない事業として、東日本大震災に起因する福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う放射線量測定サービス等を行っています。

収益は、放射線量測定等のサービス提供に対する対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近では55億円規模に達しています。利益面では、過去数期間にわたり経常損失および当期純損失が続いていましたが、当期においては経常損失幅が縮小し、当期利益は黒字に転換しました。全体として売上規模の拡大と損益改善の傾向が見られます。

項目 2021年4月期 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期
売上高 45億円 50億円 51億円 52億円 55億円
経常利益 -9億円 -9億円 -9億円 -10億円 -5億円
利益率(%) -20.3% -16.9% -18.2% -18.8% -8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -8億円 -3億円 -8億円 -8億円 0.4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は若干低下しています。営業損失は継続していますが、損失幅は縮小しました。販管費の抑制が進んでおり、収益性の改善に向けた動きが見られます。

項目 2024年4月期 2025年4月期
売上高 52億円 55億円
売上総利益 10億円 10億円
売上総利益率(%) 19.6% 18.4%
営業利益 -6億円 -5億円
営業利益率(%) -12.5% -9.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.2億円(構成比27.3%)、給料及び手当が3.3億円(同21.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


各事業区分において売上高は前期比で増加しています。特にロボット・装置等分野の伸びが顕著です。主力である試作・金型製品および量産製品も堅調に推移しており、全社的な増収に寄与しました。

区分 売上(2024年4月期) 売上(2025年4月期)
試作・金型製品 27億円 28億円
量産製品 14億円 14億円
ロボット・装置等 11億円 12億円
その他・ガンマカメラ等 0.3億円 0.4億円
連結(合計) 52億円 55億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスである一方、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっており、資産売却や資金調達によって本業の赤字を補填している「救済型」の状態にあります。

項目 2024年4月期 2025年4月期
営業CF -5億円 -7億円
投資CF 2億円 8億円
財務CF 2億円 6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


総合加工メーカーのトップランナーとして、またサービス・サポート系ロボット分野におけるスタートアップ企業の包括的事業化支援企業として、高い技術力と夢とチャレンジ精神を持って社会に貢献することを経営方針としています。顧客には信頼と満足を、社員には生きがいと幸福の実現を提供し、環境との調和を図ることを目指しています。

(2) 企業文化


「夢とチャレンジ精神」を持ち続けることを重視しています。創業以来培ってきた「匠の技」の伝承を継続的に実施し、新しい加工技術の導入にも果敢に挑戦する姿勢を持っています。また、地域社会や地球環境に対し良き会社であり続けることを行動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としての経営計画は記載されていませんが、ロボット分野における「包括的な事業化支援企業」としての地位確立や、グループとしての収益機会の拡大、企業価値向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「一括一貫体制」による総合ものづくり力を強化し、リモート化・DX化への取り組みや技術水準の向上により競争力を高める方針です。特に成長が見込まれるサービス・サポート系ロボット分野において、スタートアップ企業との連携プラットフォームを構築し、開発から販売・保守までを包括的に支援する体制を強化します。また、5G対応や環境エネルギー分野への参入、大手メーカーとの連携によるOEM案件の発掘にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀な人材の確保と育成を急務としています。従業員のキャリアアップに重点を置いたプログラムの策定や、研修、資格取得支援、OJTを推進し、エンゲージメント向上に取り組んでいます。また、サービス・サポート系ロボット分野等の魅力ある事業展開を通じて人材を確保し、次世代を担うマルチな幹部候補生の育成を目指しています。専門性の高い分野では経験豊富な人材の活用も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年4月期 45.7歳 18.4年 4,247,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。なお、男性の育児休業取得率は100%となっています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化


主要顧客である自動車、時計部品、事務機器メーカー等の新製品開発計画や市場需要動向の影響を受ける可能性があります。役員会等での情報共有や稼働調整、新規分野開拓等で対応していますが、世界的な部品供給懸念や景気動向により、経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 試作レスの進展


コンピュータ上の仮想環境でのシミュレーション技術の進展により、物理的な試作品の製作需要が減少する「試作レス」のリスクがあります。予測を超えた技術革新が進んだ場合、同社の精密金型技術を基盤とした競争力が低下し、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 内部管理体制


事業拡大に伴う内部統制システムの整備が追いつかない場合、ステークホルダーからの信頼を失うリスクがあります。コーポレート・ガバナンスの充実に努めていますが、体制整備の遅れが経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 新規事業の開発


マッスルスーツやドローン等のロボット関連事業の開発・製造には、人材不足や開発の遅れ、実証・認証対応の長期化といったリスクが潜んでいます。これらが顕在化した場合、経営成績および財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。