菊池製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

菊池製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する菊池製作所は、試作・金型製品や量産製品の製造、およびサポート系ロボットの開発・製造を主力事業としています。直近の業績トレンドとしては、主要顧客の需要回復や新規分野の開拓が進んだことで売上高が増加し、最終黒字に転換するなど回復基調で推移しています。


※本記事は、株式会社菊池製作所の有価証券報告書(第51期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 菊池製作所ってどんな会社?


同社は、試作から量産までの一括一貫体制を強みとする金属製品加工メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1970年4月に創業し、1976年3月に設立されました。1990年以降、韓国や香港などに子会社を設立して海外展開を進め、2011年10月に上場を果たしました。近年はロボット分野にも注力しており、2013年にイノフィスを設立したほか、2020年にはイームズロボティクスを連結子会社化しています。

現在の従業員数は連結で339名、単体で236名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主はKIMで、第2位は取締役の菊池昭夫氏、第3位は齋藤恵美子氏となっており、創業家や関係者が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
KIM 27.20%
菊池昭夫 9.30%
齋藤恵美子 9.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菊池功氏が務めています。取締役4名のうち、社外取締役は1名です。

氏名 役職 主な経歴
菊池功 代表取締役社長 1970年4月に創業し、1976年の設立に伴い代表取締役社長に就任。韓国や香港の海外子会社代表や、イノフィス取締役などを歴任し、2015年よりWALK-MATE LAB代表取締役。
菊池昭夫 取締役 1990年6月に入社し、開発担当取締役などに就任。生産技術部長や品質保証担当を経て、2017年11月より取締役に就任。2025年6月からはものづくりメカトロ事業本部担当。
乙川直隆 取締役 2007年3月に入社。2013年7月に取締役経営企画部長に就任し、総務・経理人事担当を兼務。2023年3月にイノフィス代表取締役に就任し、2024年7月より取締役管理本部担当。


社外取締役は、横倉隆(元トプコン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金属製品加工事業」の単一セグメントで事業を展開しています。本記事では主要な製品分野ごとに解説します。

試作・金型製品


主に精密機器、電気機器、自動車部品などの完成品メーカーを顧客とし、新製品開発における試作製品や、製造に使用される金型の設計・製造を提供しています。
顧客から開発・試作の依頼を受け、設計から金型製作、成形、加工までを一括一貫体制で行い、製品の対価を得るモデルです。運営は同社および韓国子会社のKOREA KIKUCHI CO.,LTD.が行っています。

量産製品


試作・金型製品で培ったノウハウと精密プレス加工をはじめとした様々な技術を活用し、時計部品や半導体製造装置部品などの機構部品の量産製造を行っています。
顧客である精密機器や電気機器などのメーカーから量産品の製造を受託し、製品の販売代金を受け取る収益モデルです。運営は同社、香港子会社のKIKUCHI(HONG KONG)LIMITED、および東莞菊池金属製品有限公司が担っています。

ロボット・装置等


大学やグループ関係会社と共同で、装着型アシストスーツ、産業用ドローン、歩行支援ロボットなどのサービス・サポート系ロボットの開発・製品化を推進しています。
自社グループで開発したロボットの販売や、スタートアップ企業からの開発・試作・量産等の受託によって収益を得るモデルです。運営は同社やSOCIAL ROBOTICS等の子会社が行っています。

その他・ガンマカメラ関連等


東日本大震災に伴う東京電力福島第一・第二原子力発電所の事故を起因とする、放射線量測定サービスなどを提供しています。
顧客に対して放射線量の測定や関連サービスの提供を行い、その対価としてサービス料を受け取ります。運営は同社が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は50億円台から直近では61億円へと増加傾向にあります。利益面では経常赤字が続いていましたが、直近では赤字幅が大幅に縮小し、投資有価証券売却益などの特別利益も寄与して最終黒字を継続しています。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 50億円 51億円 52億円 55億円 61億円
経常利益 -9億円 -9億円 -10億円 -5億円 -1億円
利益率(%) -16.9% -18.2% -18.8% -8.3% -1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 -8億円 -4億円 7億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益率も18.4%から20.0%へと改善しています。営業赤字は継続しているものの、原価率の改善や販売費及び一般管理費の減少により、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 55億円 61億円
売上総利益 10億円 12億円
売上総利益率(%) 18.4% 20.0%
営業利益 -5億円 -2億円
営業利益率(%) -9.5% -4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比27%)、研究開発費が2億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は金属製品加工事業の単一セグメントですが、製品ごとの売上高を見ると、既存先を中心に試作・金型製品や量産製品の受注が堅調に推移し、全体の増収を牽引しました。一方、ロボット・装置等は伸び悩む結果となりました。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期)
試作・金型製品 28億円 32億円
量産製品 14億円 16億円
ロボット・装置等 12億円 13億円
その他・ガンマカメラ等 0.4億円 0.2億円
連結(合計) 55億円 61億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF -7億円 5億円
投資CF 8億円 -0.6億円
財務CF 6億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、試作部品加工から各種金型製作、量産加工までの総合加工メーカーのトップランナーとして、またサポート系ロボット分野におけるスタートアップの包括的事業化支援企業として、顧客には信頼と満足を、社員には生きがいと幸福を提供し、社会に貢献することを経営方針として掲げています。

(2) 企業文化


高い技術力と夢とチャレンジ精神を持ち、環境との調和を図りながら地域社会や地球環境に対し良き会社であり続けるという価値観を重視しています。長年培ってきた「匠の技」の伝承と最新設備の導入を融合させ、新たな技術革新に挑み続ける風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値による中長期の経営目標は有価証券報告書に記載されていませんが、安定収益層拡大のため量産製品分野の受注拡大や、IT投資によるDX化の推進、生産部門の稼働率向上などを目指して経営の最適化を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「一括一貫体制」による総合ものづくり力をさらに強化するとともに、半導体、EV、ヘルスケア分野等の新規市場開拓に注力しています。また、ロボット分野ではスタートアップに対する開発・量産などの製造支援に加え、資金調達・販売を含む「包括的な事業化支援企業」としての地位確立を成長戦略に掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長を支える「次世代の人材基盤の構築」を基本方針とし、個人のキャリアプランに寄り添った育成計画の策定や外部教育機関の活用により、自律的なスキルアップと専門性の向上を支援しています。また、健康経営の推進やダイバーシティ&インクルージョンの確立にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 46.5歳 19.3年 4,732,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社および連結子会社は公表の対象外であるため、女性管理職比率および男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と試作レスの進展


顧客である完成品メーカーの開発予算や市場動向の影響を受けやすいほか、コンピューターの仮想環境で試作機の評価を行う「試作レス」の技術革新が進んだ場合、同社の技術競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規事業の遅延と人材確保の課題


成長分野としてサポート・サービスロボットの開発・製造に注力していますが、開発の遅れや各種認証対応の長期化がリスクとなります。また、少子高齢化に伴い、生産技術を継承するための人材確保や育成が追いつかない場合、事業成長に支障をきたす恐れがあります。

(3) 製造拠点の集中と為替変動


工場が東京都八王子市と福島県下に集中しているため、想定を超える自然災害が発生した場合、生産能力が著しく低下するリスクがあります。また、韓国や中国の海外子会社で製造した製品を仕入れているため、為替変動が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。