学びエイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

学びエイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する同社は、学習塾や教育事業者向けに映像授業サービス「学びエイド」等を提供する教育デジタル事業を展開しています。直近決算では、大型案件の失注や既存案件の縮小、新規受注の遅れなどが響き、大幅な減収および営業損失を計上する厳しい結果となりました。


※本記事は、株式会社学びエイド の有価証券報告書(第11期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 学びエイドってどんな会社?


学習塾向けの映像授業配信や管理機能の提供、教育事業者向けのDX支援を行うEdTech企業です。

(1) 会社概要


同社は2015年に設立され、翌2016年に一般会員向け映像学習サービス「学びエイド」および学習塾向け「学びエイドマスター」を開始しました。2019年には大手塾向けにカスタマイズ提供する「学びエイドマスターforSchool」を開始し、2021年には直営学習塾を開校しました。2024年5月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。

同社(単体)の従業員数は33名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長の廣政愁一氏で、第2位、第3位には投資事業有限責任組合(ベンチャーキャピタル)が名を連ねています。なお、2025年5月にいなよしキャピタルパートナーズおよびNOVAホールディングスとの資本業務提携を発表しています。

氏名 持株比率
廣政 愁一 35.73%
K&Pパートナーズ2号投資事業有限責任組合 18.16%
K&Pパートナーズ3号投資事業有限責任組合 6.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は廣政愁一氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
廣政 愁一 代表取締役社長 東進ハイスクール、河合塾の予備校講師を経て、有限会社RGBサリヴァン代表取締役、株式会社AAA代表取締役に就任。2015年5月に同社を設立し、現職。
杉浦 久恵 取締役管理部長兼総務課長 株式会社資生堂、株式会社エテュセ等を経て、2018年5月に同社入社。マーケティング部、管理部長を歴任し、2021年4月より現職。
鈴木 健一 取締役 トレンドマイクロ株式会社、バリューコマース株式会社等を経て、2019年1月同社入社。技術部長、技術管掌取締役を経て、2025年5月より製品開発管掌取締役として現職。
平林 明日樹 取締役営業部長兼営業1課長 株式会社IDOM等を経て、2019年1月株式会社TOE代表取締役に就任。2022年4月同社入社。営業管掌取締役等を経て、2025年5月より現職。
松本 英二 取締役新規事業開発室長 美容室勤務等を経て、2010年7月有限会社RGBサリヴァン入社。2015年5月同社入社。コンテンツ部長兼教務課長を経て、2025年5月より現職。


社外取締役は、立岡登與次(日本アジア投資元社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育デジタル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 学びエイドマスターおよび学びエイドマスターforSchool


小規模から中規模の学習塾向けに、映像授業と塾運営効率化のための管理機能を提供する「学びエイドマスター」を展開しています。また、中規模から大手学習塾向けには、顧客仕様にカスタマイズした「学びエイドマスターforSchool」を提供しています。鉄人講師による約5分のマイクロ講義が特徴です。

収益は、学習塾等の顧客から受領する月額利用料(基本費用および生徒アカウント費用)や初期導入費用、カスタマイズにかかる開発費等から構成されています。運営は同社が行っています。

(2) 学びエイドforEnterprise


教育関連事業者(教科書会社や参考書出版会社など)向けに、紙媒体の教材を映像授業化し、それを配信するシステムを開発・提供するサービスです。同社が蓄積した映像制作ノウハウとシステム構築力を活かし、教育現場のデジタル化ニーズに対応しています。

収益は、顧客である教育関連事業者から受領するコンテンツ・システム開発費、システム利用料、動画利用料、およびレベニューシェア等から構成されています。運営は同社が行っています。

(3) 学びエイド(BtoCサービス)


一般の個人ユーザー(生徒や学び直しを希望する大人)向けに、直接映像学習サービスを提供しています。無料会員は1日3コマまで視聴可能で、有料のプレミアム会員は全科目見放題に加え、倍速再生やテキスト購入などが可能です。

収益は、有料会員であるプレミアム会員から受領する月額等の利用料です。運営は同社が行っています。

(4) 学習塾(直営校)


「サテライトスタディサロン ザ・ドア」などの直営学習塾を運営しています。「学びエイドマスター」を活用し、映像授業と独自の学習プログラムを組み合わせた指導を行っています。

収益は、生徒から受領する授業料等です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年4月期までは売上高・利益ともに拡大傾向にありましたが、直近の2025年4月期において売上高が半減し、大幅な赤字に転落しています。

項目 2021年4月期 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期
売上高 2.9億円 2.9億円 5.0億円 6.3億円 2.9億円
経常利益 0.1億円 -0.5億円 1.1億円 1.4億円 -3.1億円
利益率(%) 2.1% -16.5% 22.1% 22.6% -107.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.0億円 -0.6億円 0.9億円 1.2億円 -3.2億円

(2) 損益計算書


売上高が前期比で半分以下に落ち込んだ一方で、原価の減少幅は小さく、売上総利益が大きく減少しました。さらに、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業損益は大幅な赤字となりました。

項目 2024年4月期 2025年4月期
売上高 6.3億円 2.9億円
売上総利益 4.3億円 0.9億円
売上総利益率(%) 67.6% 32.4%
営業利益 1.5億円 -3.0億円
営業利益率(%) 23.3% -102.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が0.8億円(構成比20%)、役員報酬が0.7億円(同18%)を占めています。売上原価においては、労務費が1.2億円(構成比61%)、経費が0.8億円(同39%)となっています。

(3) セグメント収益


全サービス区分において減収となりました。特に主力の「学びエイドforEnterprise」が大型案件の見送り等により大幅に減少したほか、「学びエイドマスターforSchool」も既存顧客の案件規模縮小により半減しています。「学びエイドマスター」も顧客数の減少等により減収となりました。

区分 売上(2024年4月期) 売上(2025年4月期)
学びエイドマスター 1.0億円 0.8億円
学びエイドマスターforSchool 1.5億円 0.8億円
学びエイドforEnterprise 3.8億円 1.2億円
その他 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 6.3億円 2.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

学びエイドの当事業年度の資金は、前事業年度末から減少しました。

営業活動では、主に税引前当期純損失や売上債権の増加等により、資金を使用しました。投資活動では、固定資産の取得や敷金・保証金の差入により、資金を使用しました。財務活動では、株式の発行による収入や長期借入金の返済等により、資金を獲得しました。

項目 2024年4月期 2025年4月期
営業CF 0.6億円 -2.2億円
投資CF -0.1億円 -0.2億円
財務CF -0.4億円 1.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Be a Player.~教育の『意欲』の機会均等をあまねく達成し、前向きなひとをたくさん作る企業~」を企業理念に掲げています。また、「『教えたい』と『教わりたい』をていねいに紡ぐ。」を経営理念とし、教育の意欲の循環を達成することを目指しています。

(2) 企業文化


全役職員に対し、「熱心に教える姿勢(teach it)」「素直に教わる姿勢(learn it)」「知見を磨く姿勢(study it)」「さらに、もっとおもしろいことはできないかを考える前向きな姿勢(and play it all)」を行動指針として掲げています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画では、「学びエイドサービスを通じてより高品質な教育デジタルサービスを多くの教わりたい人に提供し、安定的な収益を通じて持続的な企業価値向上を目指す」ことを目標としています。重要な経営指標として売上高成長率と営業利益率を設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


業績回復と競争優位性の再構築に向け、信頼回復とガバナンス強化、主力サービスの「教育DXプラットフォーム」への進化、サブスクリプション型への収益モデル変革、アライアンスによるスケール戦略、現場力の底上げを基本戦略として掲げています。特にNOVAホールディングスとの資本業務提携を通じた販路拡大や新サービス開発を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業の発展と社会貢献のため、自主的な社内勉強会の開催や専門的な教育、資格取得支援を通じて、従業員の資質向上と能力開発を推進しています。また、従業員のライフデザインに合わせ、時短勤務やリモートワーク等を推進し、キャリア形成に即した配置や雇用管理に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年4月期 40.7歳 3.5年 4,943,000円


※平均年間給与は各種インセンティブ及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) EdTech市場の動向


同社の事業はEdTech市場に属しており、GIGAスクール構想などにより市場拡大を見込んでいますが、教育環境やユーザー環境が予想と著しく異なる変化をした場合や、市場規模が急激に縮小した場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 売上計上の期ずれと季節性


「学びエイドforEnterprise」等のサービスは顧客の年度末・年度初めに売上が偏る傾向があり、検収時期の変動や仕様変更等により売上計上が翌期にずれるリスクがあります。また、第4四半期に売上が偏重する傾向があり、業績変動の季節性があります。

(3) コンテンツ開発と鉄人講師との関係


提供する動画コンテンツの多くは鉄人講師から使用許諾を得ており、継続的なコンテンツ開発には講師との良好な関係維持が不可欠です。多数の講師との契約終了や、新たなコンテンツ開発が困難になった場合、科目の網羅性や競争力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 業績未達と継続企業の前提


2025年4月期において大幅な営業損失を計上し、営業キャッシュ・フローがマイナスとなったことから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、第三者割当増資の実施やNOVAホールディングスとの資本業務提携による販路拡大等の対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。