アストロスケールホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アストロスケールホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アストロスケールホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、デブリ除去や寿命延長などの軌道上サービスをグローバルに展開しています。直近の業績では、宇宙防衛関連の受注増やミッションの進捗により売上収益が59億円(前期比142%増)と大幅な増収を達成し、当期損失も赤字縮小の傾向にあります。


※本記事は、アストロスケールホールディングスの有価証券報告書(第8期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. アストロスケールホールディングスってどんな会社?


軌道上の人工衛星やデブリに対するサービスを提供し、宇宙環境の持続的利用を目指す企業です。

(1) 会社概要


2013年にシンガポールで設立され、2015年に日本で子会社を設立して研究開発拠点を構えました。2018年に現在の組織体制へ移行し、2021年には世界初となるデブリ除去技術実証衛星の打上げに成功しています。2024年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

従業員数は連結で593名、単体で31名です。筆頭株主は創業者の岡田光信氏で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行等となっています。

氏名 持株比率
岡田光信 18.28%
日本カストディ銀行(信託口) 3.48%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 3.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.3%です。代表取締役社長 グループCEOは岡田光信氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
岡田光信 代表取締役社長 グループCEO 財務省、マッキンゼーを経てIT企業役員を歴任。2013年に同社前身を設立しCEOに就任。
Christopher Blackerby 取締役 副社長執行役員グループCOO NASAに長年勤務しアジア代表などを歴任後、2017年に同社へ参画しCOOに就任。
松山宜弘 取締役 副社長執行役員グループCFO ゴールドマン・サックス証券等の外資系金融機関を経て2021年に同社CFOに就任。


社外取締役は、Gayle Sheppard(元Nutanix, Inc. Director)、野口祐子(弁護士)、Jan Wörner(元欧州宇宙機関長官)、Ronald Pasek(元Netapp Executive Vice President)です。

2. 事業内容


同社グループは、「軌道上サービス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

人工衛星運用者やロケット事業者、防衛機関などを対象に、デブリの除去や故障機の観測・点検、寿命延長や燃料補給などの軌道上サービスを提供しています。技術実証を重ねながら、宇宙機の安全な航行と宇宙空間の持続的な利用を支援しています。

収益源は、政府機関や民間事業者との契約に基づくマイルストーン収入やサービス利用料です。事業の運営は、日本のアストロスケールホールディングスおよび、英国、米国、フランス、イスラエル等の各国子会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上収益は右肩上がりで成長し、直近では59億円を突破しました。一方、先行投資がかさむ研究開発型の事業モデルのため、税引前損失が継続していますが、増収効果により利益率は改善傾向にあります。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上収益 9億円 18億円 29億円 25億円 59億円
税引前利益 -56億円 -93億円 -92億円 -216億円 -67億円
利益率(%) -611.1% -519.5% -323.2% -877.1% -112.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -55億円 -93億円 -92億円 -216億円 -71億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で大きく伸長していますが、研究開発負担による営業赤字が続いています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上収益 25億円 59億円
売上総利益 0億円 0億円
売上総利益率(%) 0.1% 0.1%
営業利益 -188億円 -100億円
営業利益率(%) -763.3% -167.9%

(3) セグメント収益


軌道上サービス事業の単一セグメントであり、防衛関連や民間向けの大型案件が牽引し、大幅な増収となっています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期) 利益(2025年4月期) 利益(2026年4月期) 利益率
軌道上サービス事業 25億円 59億円 -188億円 -100億円 -167.9%
連結(合計) 25億円 59億円 -188億円 -100億円 -167.9%


同社のキャッシュ・フローは「勝負型」です。本業は赤字ですが、将来成長のため借入や株式発行による資金調達を行い、積極的な投資を継続しています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF -123億円 -125億円
投資CF -10億円 -69億円
財務CF 208億円 72億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「将来の世代の利益のための安全で持続可能な宇宙開発」をビジョンに掲げています。軌道上サービスを通じて宇宙機の安全な航行を確保し、宇宙空間の持続的な利用を実現することをミッションとし、基盤インフラサービスとしての確立を目指しています。

(2) 企業文化


同社はサステナビリティをビジョンの中核に据え、多様性を尊重してグローバルに活躍できる組織の実現を重視しています。社員一人ひとりが主体的に挑戦し、自律的に行動できるような、高いパフォーマンスを支える組織文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


最短で2028年4月期までに顧客との契約に基づく宇宙空間でのミッションを完了し、サービスの提供事例と価値を証明することを目標としています。2030年には軌道上サービスを日常的なものとして認識させることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存の技術基盤やプラットフォームを再利用し、防衛領域や民間事業者向けの寿命延長サービスを中心に、継続受注が可能な事業モデルへの移行を推進しています。また、各国拠点でのグローバルな事業機会獲得や、法規制・標準化づくりへの働きかけを強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


世界トップレベルの専門人材を獲得・育成し、多様性を尊重してグローバルに活躍できる組織の実現を目指しています。また、高いパフォーマンスと挑戦を支える組織文化を醸成し、持続的な成長を支える組織能力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 44.6歳 3.2年 13,223,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異 -


※同社および連結子会社は開示義務の対象外となるため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(28%)、エンジニア比率(74%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術開発・実証の不確実性
軌道上サービスは高度なRPO技術等に依存しており、未実証の技術も多いため、想定以上の開発期間や失敗が生じる可能性があります。これらが発生した場合、サービスの提供が遅延・断念され、業績に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 人工衛星の開発・製造・運用
人工衛星は精密機器であり、一部の部品の故障がミッション全体に影響するリスクがあります。また、サプライチェーンの遅延や予期せぬ事故による衛星の喪失が生じた場合、サービスの提供が滞り、財務や評判に重大な悪影響をもたらす可能性があります。

(3) 打ち上げスケジュールと成否
自社で打ち上げ技術を持たないため、委託先ロケット事業者の都合や天候による打ち上げ遅延、さらには打ち上げ自体の失敗による衛星の喪失リスクがあります。これにより、再計画による時間と費用の増大を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。