※本記事は、株式会社ブッキングリゾートの有価証券報告書(第13期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ブッキングリゾートってどんな会社?
同社は、グランピングやリゾート施設に特化した予約サイトの運営と宿泊施設の集客支援を展開しています。
■(1) 会社概要
2013年に設立され、2019年にグランピング等に特化した予約サイト「リゾートグランピングドットコム」を開設して集客支援事業を開始しました。2023年には直営宿泊事業を開始し、ペット特化の「いぬやど」も開設しています。2025年2月に東証グロース市場へ上場し、同年には施設再生・リセール事業も開始しました。
同社の従業員数は単体で48名です。筆頭株主は事業会社であり同社と資本関係を持つエス・エヌ・ホールディングスで、第2位は信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位は日本大同投資です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エス・エヌ・ホールディングス | 35.31% |
| 日本カストディ銀行 | 4.17% |
| 日本大同投資 | 3.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役は坂根正生氏が務めており、取締役5名のうち2名が社外取締役で、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂根 正生 | 代表取締役 | 2008年クローバー入社。サカネソーイング等を経て、2013年5月に同社を設立し、代表取締役に就任して現職。 |
| 今井 裕二 | 取締役 | 2010年ありがとうサービス入社。今井織物、にしがきを経て、2020年10月に同社に入社し、2021年4月より現職。 |
| 橋本 紘史朗 | 取締役 | 2007年クラウンエクステリア入社。炭平旅館、にしがきを経て、2020年10月に同社に入社し、2021年4月より現職。 |
社外取締役は、井出 久美(公認会計士事務所所長)、清水 奈津(公認会計士・税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「集客支援」「直営宿泊」および「施設再生リセール」事業を展開しています。
■(1) 集客支援事業
宿泊施設の売上最大化を目的に、グランピングやリゾート施設特化の「リゾートグランピングドットコム」やペット同伴旅行特化の「いぬやど」などの予約プラットフォームを運営しています。また、顧客施設に対し、開業支援からブランドコンセプト設計、施設個別の予約サイト構築、広告運用など一貫したコンサルティングサービスを提供しています。
収益源は、同社が運営するプラットフォームや施設個別の予約サイトを通じて宿泊予約が成立した場合に顧客施設から受け取る成功報酬型の集客手数料です。初期費用負担を大幅に軽減する料金体系を採用しており、これらプラットフォームの運営やコンサルティング業務は同社が行っています。
■(2) 直営宿泊事業
複数の宿泊施設を自社で企画・運営しており、ペット愛好家やアウトドア志向の旅行者をターゲットにしています。具体的には、愛犬同伴向けの「ドッグヴィラ千葉南房総」や、複合型アウトドアリゾートの「秩父別邸 木叢-komura-」などを展開し、多様な宿泊形態を提供しています。
収益源は、自社で運営する宿泊施設を利用する一般の旅行者から受け取る宿泊料金やサービス料金です。この事業は同社が主体となって運営しており、施設運営のノウハウや旅行者のニーズなどの知見を継続的に蓄積し、集客支援事業のコンサルティング精度向上にも活用されています。
■(3) 施設再生リセール事業
遊休資産や不動産の取得・新規開業、小規模な旅館・ホテルの事業再生を対象としています。潜在的な魅力を持つ施設を同社独自の視点で発掘し、これまで培ったデジタルマーケティングや運営効率化のノウハウを投入し、リブランドを行うことで施設価値の最大化を図ります。
収益源は、価値を向上させた後の施設を外部投資家やオペレーターへ売却することによるキャピタルゲイン(フロー型収益)と、売却後も継続して集客・運営支援を提供することで得る手数料(ストック型収益)です。本事業も同社が主体となって推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高・各利益ともに一貫して右肩上がりで成長を続けています。宿泊市場におけるグランピングの定着やペットツーリズム市場の拡大を追い風に、予約サイトのユーザー数および掲載客室数が順調に増加したことが牽引しました。利益面も着実に拡大していますが、事業拡大に伴う広告宣伝費や人員増強等の先行投資により、利益率は緩やかな低下傾向にあります。
| 項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3.6億円 | 7.4億円 | 10.6億円 | 14.6億円 | 17.2億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 | 2.6億円 | 3.9億円 | 5.0億円 | 5.1億円 |
| 利益率(%) | 48.1% | 34.3% | 36.8% | 34.1% | 30.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.4億円 | 1.8億円 | 2.7億円 | 3.3億円 | 3.7億円 |
■(2) 損益計算書
収益構造を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しています。新規施設の獲得や直営宿泊施設の貢献により粗利水準は向上していますが、積極的なプロモーションなどの先行投資を継続しているため、営業利益は横ばい圏内で推移しています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14.6億円 | 17.2億円 |
| 売上総利益 | 10.1億円 | 12.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.5% | 70.2% |
| 営業利益 | 5.2億円 | 5.1億円 |
| 営業利益率(%) | 35.4% | 29.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が4.1億円(構成比59%)、役員報酬が0.7億円(同10%)を占めています。売上原価については、経費が2.8億円(構成比55%)、労務費が1.8億円(同36%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社の事業は、集客支援事業と直営宿泊事業で構成されています。主力の集客支援事業では、新規顧客施設の順調な増加が売上を牽引しました。直営宿泊事業においても、新たに事業譲受によって取得した宿泊施設が寄与し、両事業ともに前年を上回る増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| 集客支援事業 | 11.3億円 | 12.9億円 |
| 直営宿泊事業 | 3.3億円 | 4.3億円 |
| 合計 | 14.6億円 | 17.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。本業でしっかりと資金を創出し、その資金で投資や借入金の返済を進める安定した状態にあります。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%と、いずれも市場平均を大きく上回っています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.6億円 | 3.3億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | -4.0億円 |
| 財務CF | 7.0億円 | -5.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「宿泊業界をUP DATEする」という企業理念を掲げています。宿泊業界の既存の常識をアップデートし、新たな常識を創り出すことを目指しています。多様化する旅行者のニーズに柔軟に対応し、従来の枠組みにとらわれない新たな宿泊スタイルを提案することで、施設そのものの魅力を最大限に引き出し、新たな価値を提供する「宿泊施設の総合支援会社」として持続的な成長を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、「宿泊・滞在自体を楽しむこと」をコンセプトとして重視しています。単に寝泊りするだけの施設ではなく、宿泊や滞在そのものが旅行の目的となるような魅力ある施設づくりを支援しています。また、地域ごとの特色ある食材を使用する地産地消の推進や、体験型コンテンツの提供を通じて、持続可能な社会の実現と継続的な発展に貢献するサステナビリティ経営を実践し、新たな価値を創造しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、具体的な数値による中長期の経営目標やKPIを設定し、持続的な成長を目指しています。特に、成功報酬型のビジネスモデルであることから、流通総額の拡大が売上成長に直結するため、各種指標を重視して事業を推進しています。
・売上高成長率、経常利益率、ROE、自己資本比率
・サイトユーザー数、掲載客室数
・予約獲得件数、平均客室単価(ADR)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、主力である集客支援事業における顧客施設の拡大に加え、リゾートホテルや高級旅館など多様な宿泊形態への横展開を進めています。また、インバウンド需要を着実に取り込むため、訪日旅行者向けプラットフォームの開発や直営ホテルの開業にも注力しています。さらに、ペットツーリズム基盤を活かした広告ビジネス「いぬやどAD」の展開や、施設のバリューアップを伴う施設再生リセール事業を新たな収益の柱に据え、収益の多角化と資産流動化モデルの確立を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、最大の原動力は人的資本であると認識し、高度なデジタルマーケティングスキルと宿泊現場のオペレーションに精通したハイブリッド型人材の育成に注力しています。実践的なOJTや社内研修プログラムを拡充し、現場で培ったノウハウを組織全体の知見として共有する仕組みを構築しています。また、対面コミュニケーションを重視して結束力を高めるとともに、透明性のある評価制度により意欲ある人材が活躍できる労働環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 33.1歳 | 1.7年 | 3,950,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 40.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率および男女賃金差異に関する有報への記載はありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社による競争激化
同社が事業を展開するOTA市場や集客支援、グランピング市場には多数の競合が存在し、今後も新規参入による競争激化が見込まれています。同社は複合的なサービス提供や成功報酬型の料金体系により差別化を図っていますが、他社が同様のサービスを展開した場合、競争優位性が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 提供サービスの法規制・許認可
同社は旅行者の直接予約を促すビジネスモデルですが、個人情報保護法や景品表示法などの適用を受けます。また、直営宿泊事業では飲食店営業許可や旅館業営業許可を取得しており、今後は旅行業法の適用も受ける見込みです。関連法令の改正や違反による行政処分が行われた場合、事業運営や業績に支障をきたすリスクがあります。
■(3) 顧客情報等の漏洩およびシステム障害
事業の性質上、多数の個人情報や顧客情報をインターネット環境を通じて取り扱っています。同社は情報管理規程の整備やセキュリティ対策を講じていますが、サイバー攻撃や人為的過誤による情報漏洩、または自然災害等によるシステムトラブルが発生した場合、サービスの停止や損害賠償請求が生じ、信頼性や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 業績の季節変動
同社はグランピング施設やリゾート施設など季節性の高い宿泊施設を主に取り扱っているため、夏季に売上・利益が伸長し、冬季にかけては伸び悩む傾向があります。同社は年間を通じた利用促進施策を実施していますが、特定の四半期の業績のみで通期の動向を判断することは困難であり、天候等の要因により業績が変動するリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。