※本記事は、株式会社ブッキングリゾート の有価証券報告書(第12期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブッキングリゾートってどんな会社?
グランピングやリゾート施設に特化した予約プラットフォームの運営や集客支援、直営施設の運営を行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は2013年5月に設立され、2019年6月にグランピングやリゾート施設に特化した予約プラットフォーム「リゾートグランピングドットコム」を開設し、集客支援事業を開始しました。2023年2月には直営宿泊事業を開始し、ペットツーリズム特化型サイト「いぬやど」も開設しています。2025年2月に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しました。
2025年4月30日現在の従業員数は36名(単体)です。筆頭株主は親会社のエス・エヌ・ホールディングス有限会社(会員制ジム運営)で、第2位はグランシーズ、第3位はSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エス・エヌ・ホールディングス有限会社 | 54.95% |
| グランシーズ | 3.47% |
| SBI証券 | 2.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役は坂根正生氏が務めています。社外取締役比率は約22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂根 正生 | 代表取締役 | 2008年クローバー入社などを経て、2013年5月同社設立、代表取締役就任。2013年5月より現職。 |
| 今井 裕二 | 取締役 | 2010年ありがとうサービス入社、にしがき入社等を経て、2020年同社入社。2021年4月より現職。 |
| 橋本 紘史朗 | 取締役 | 2007年クラウンエクステリア入社、炭平旅館入社等を経て、2020年同社入社。2021年4月より現職。 |
社外取締役は、井出久美(井出久美公認会計士事務所所長)、清水奈津(清水奈津公認会計士・税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「集客事業」を展開しています。報告セグメントは単一ですが、サービス内容に応じて「集客支援事業」と「直営宿泊事業」に区分して管理しています。
■(1) 集客支援事業
グランピングやリゾート施設、ペット同伴旅行などに特化した予約プラットフォーム「リゾートグランピングドットコム」「いぬやど」を運営しています。また、顧客施設に対して開業支援から運営・集客支援まで一貫したコンサルティングサービスを提供し、施設個別の予約サイト構築や広告運用なども行っています。顧客は主に小規模な宿泊施設運営者です。
収益源は、主に宿泊施設から受領する成功報酬型の集客手数料です。宿泊予約が成立した場合にのみ手数料が発生する仕組みとなっており、施設側の初期費用負担を軽減しています。運営は主にブッキングリゾートが行っています。
■(2) 直営宿泊事業
施設運営に関するノウハウの蓄積や新サービスの検証を目的として、自社で宿泊施設の企画・運営を行っています。千葉県南房総市の「ドッグヴィラ千葉南房総」や、埼玉県秩父市の「RIVERSIDE CAMP FIELD CHICHIBU」などを展開し、ペット愛好家やアウトドア志向の旅行者にサービスを提供しています。
収益源は、利用者から受け取る宿泊料やサービス利用料です。運営は主にブッキングリゾートが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年4月期から2025年4月期までの業績を見ると、売上高は0.8億円から15億円へと急速に拡大しています。経常利益も0.4億円から5.0億円へと順調に増加しており、高い利益率を維持しながら成長を続けています。特に直近の2期においても増収増益基調を維持しています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 0.8億円 | 3.6億円 | 7.4億円 | 10.6億円 | 14.6億円 |
| 経常利益 | 0.4億円 | 1.7億円 | 2.6億円 | 3.9億円 | 5.0億円 |
| 利益率(%) | 52.8% | 48.1% | 34.3% | 36.8% | 34.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 1.4億円 | 1.8億円 | 2.7億円 | 3.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は前期比で約37.5%増加し、15億円規模に達しています。売上総利益率は約70%と高い水準を維持していますが、直営施設の運営開始等に伴い売上原価が増加したことで、前期間と比較するとやや低下しました。営業利益は増収効果により5.2億円へと拡大しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.6億円 | 14.6億円 |
| 売上総利益 | 7.6億円 | 10.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 72.1% | 69.5% |
| 営業利益 | 3.8億円 | 5.2億円 |
| 営業利益率(%) | 36.2% | 35.4% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が3.0億円(構成比60%)、役員報酬が0.7億円(同14%)を占めています。売上原価においては、経費が2.7億円(構成比60%)、労務費が1.4億円(同32%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス区分別の売上高を見ると、集客支援事業が主力であり11.3億円を計上しています。一方、直営宿泊事業は新規施設の開業効果により3.3億円へと大幅に伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) |
|---|---|---|
| 集客支援事業 | 9.4億円 | 11.3億円 |
| 直営宿泊事業 | 1.2億円 | 3.3億円 |
| 連結(合計) | 10.6億円 | 14.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ブッキングリゾートは、積極的な事業拡大と資金調達により、財務基盤を強化しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益の計上や減価償却費の計上等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、直営施設の新規開業に伴う有形固定資産の取得による支出により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式の発行や長期借入れによる収入、長期借入金の返済による支出等により増加に転じました。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.0億円 | 4.6億円 |
| 投資CF | -4.6億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | 7.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「宿泊業界をUP DATEする」という理念を掲げ、宿泊業界の既存の常識を刷新し、新たな常識を創り出すことを目指しています。単に寝泊まりするだけの施設ではなく、「宿泊・滞在自体を楽しむこと」をコンセプトとし、宿泊そのものが旅行の目的となるような魅力ある施設づくりを支援しています。
■(2) 企業文化
同社は、時代の変化や多様化する旅行者ニーズに柔軟に対応し、従来の枠組みにとらわれない新たな宿泊スタイルを提案することを重視しています。単なる集客支援にとどまらず、企画・開発から運営までワンストップで支援する「宿泊施設の総合支援会社」として、業界に対して新たな価値と常識を提案する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、財務面および事業運営上の重要な経営指標として、以下の項目を重視して経営を行っています。具体的な数値目標は開示されていませんが、これら指標の向上を通じて持続的な成長を目指しています。
* 売上高成長率
* 経常利益率
* 自己資本利益率(ROE)
* 自己資本比率
* サイトユーザー数
* 掲載客室数
* 予約獲得件数
* 平均客室単価(ADR)
■(4) 成長戦略と重点施策
中期的な経営戦略として、集客支援事業における新規施設の開拓や、リゾートホテル・高級旅館など他の施設形態への横展開を推進します。また、インバウンド需要の回復を見据え、訪日旅行者をターゲットとしたホテル型宿泊施設の開業や、海外向け予約プラットフォームの開発にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、高度な専門性を有する人材の確保・育成を人的資本領域における最重要課題と位置づけています。人事評価制度を通じて期待する成果やスキルを明確化し、目標設定や評価面談、外部研修、OJTなどを通じて従業員の成長を支援しています。また、多様性を尊重する職場文化の醸成や柔軟な勤務制度の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 32.1歳 | 1.5年 | 3,830,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 80.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は公微義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異の記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した従業員に占める女性従業員の割合(61.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グランピング市場の動向
同社の事業はグランピング市場の成長に支えられていますが、同市場は比較的新しく、ブームの一巡や景気停滞による消費者心理の冷え込み、新たな規制の導入などの要因により、市場成長が想定を下回る可能性があります。また、他業態からの新規参入による競争激化が、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 契約形態によるリスク
集客支援サービスは成功報酬型の料金体系を採用しており、顧客施設において売上が計上された場合にのみ報酬が発生します。そのため、旅行需要の変動やプロモーション効果の不発などにより顧客施設の予約獲得が進まない場合、同社の売上高および利益の成長が鈍化する可能性があります。
■(3) 業績の季節変動
取扱う施設がグランピングやリゾート施設中心であるため、夏季(7月〜9月)に売上・利益が伸長し、秋季から冬季にかけては伸び悩む傾向があります。季節変動に対応する施策を行っていますが、特定の四半期の業績のみで通期の業績を判断することは困難であり、天候不順などが繁忙期の業績に影響を与える可能性があります。



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