カネコ種苗 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カネコ種苗 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カネコ種苗は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、野菜や牧草等の種苗の生産・販売をはじめ、花き、農薬・被覆肥料、農業資材や温室の設計・施工までを包括的に展開する農業関連の総合企業です。直近の業績では、農材事業の伸長を中心に全社的に堅調な推移を見せ、売上高および各利益ともに増収増益を達成しています。


※本記事は、カネコ種苗株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. カネコ種苗ってどんな会社?


種苗から農薬、農業資材、温室の設計・施工まで、農業と園芸を総合的に支援する農業関連企業です。

(1) 会社概要


1947年に群馬県前橋市で設立され、種苗の生産・販売を開始しました。1981年の店頭登録を経て、1982年にはフィリピンに現地法人を設立し海外展開を本格化しました。その後、バイオテクノロジー研究所の設立や複数企業の合併・事業譲受を通じて業容を拡大し、農業関連の総合企業としての地位を確立しています。

現在の従業員数は連結で677名、単体で616名体制となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はあかぎ興業、第3位は群馬銀行と続いており、信託銀行や地元群馬の関連企業・金融機関などが上位に名を連ねる資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.55%
あかぎ興業 5.36%
群馬銀行 4.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長企画推進室担当は金子昌彦氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
金子昌彦 代表取締役社長企画推進室担当 1978年群馬県庁入庁。1987年同社入社。1993年取締役、2004年専務取締役等を経て、2012年より代表取締役社長、2023年より現職。
長谷浩克 専務取締役管理部門・リスク管理担当 1985年群馬銀行入行。1993年同社入社。1997年取締役、2012年専務取締役等を経て、2025年より現職。
伊藤一貴 専務取締役農材事業・施設材事業担当 1985年同社入社。2003年取締役施設部長、2012年常務取締役等を経て、2024年より現職。
宮下毅 常務取締役種苗事業・花き事業担当 1990年同社入社。2011年取締役、2017年常務取締役総務部長等を経て、2024年より現職。
榛澤英昭 取締役くにさだ育種農場長、波志江研究所担当 1985年同社入社。2012年くにさだ育種農場長。2013年取締役くにさだ育種農場長等を経て、2021年より現職。
島川智之 取締役外国部長 1994年同社入社。2021年外国部長、2024年執行役員、2025年上席執行役員等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、丸山和貴(元群馬弁護士会会長)、山口恵美子(社会保険労務士・行政書士)、竹下裕理(フリーアナウンサー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「種苗事業」「花き事業」「農材事業」「施設材事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) 種苗事業


野菜種子や牧草種子、サツマイモなどのウイルスフリー苗および種イモの委託生産・仕入・販売、ならびに造園・法面工事の請負施工を行っています。自社開発品種を中心に、国内だけでなく海外の営利栽培農家などへも広く提供しています。

生産者や卸業者等からの種苗販売代金、および工事の発注者からの請負代金が主な収益源です。運営は主にカネコ種苗が行っており、委託生産や海外販売の一部を連結子会社のフィリピーナス・カネコ・シーズ・コーポレーション等が担っています。

(2) 花き事業


家庭園芸愛好家向けに花苗や家庭菜園向け野菜種苗、園芸資材を提供するとともに、営利栽培農家向けにユーストマやカーネーション等の自社開発した花き品種を供給しています。ホームセンターや園芸専門店などを通じた販売が中心です。

ホームセンターや園芸卸会社等への家庭園芸用品等の卸売代金、および国内外の花き生産者からの種苗販売代金が主な収益源となります。本セグメントの事業運営は、すべてカネコ種苗が単独で手がけています。

(3) 農材事業


農産物の安定生産に欠かせない農薬を全国ネットで販売するほか、他社と共同開発した効果が長期に持続する被覆肥料「ベストマッチ」などの肥料販売を行っています。生産現場の効率化や省力化を支える資材を提供しています。

農業生産者や農業関連法人などへ農薬や被覆肥料を販売し、その対価として得られる販売代金が当セグメントの収益源です。本事業の開発および販売運営は、カネコ種苗が主体となって行っています。

(4) 施設材事業


農業の効率化に必要な農業資材の仕入販売に加え、同社独自の栽培技術を生かした養液栽培プラントや植物工場、温室などの設計・施工を行っています。それに伴う栽培技術指導や関連消耗資材の販売も展開しています。

農業資材の販売代金や、生産者等からのプラント・温室の設計・施工に伴う請負代金、導入後の肥料や培地などの消耗資材販売代金が収益源となります。本セグメントの事業運営は、カネコ種苗が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時的な足踏みが見られた時期があったものの、概ね拡大基調で推移しています。農材事業の需要増加や各事業での販売強化が寄与し、直近2期間は連続で増収増益を達成するなど、安定的かつ着実な成長軌道を描いています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 607億円 622億円 616億円 645億円 677億円
経常利益 19億円 19億円 16億円 17億円 18億円
利益率(%) 3.1% 3.1% 2.5% 2.6% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 14億円 12億円 12億円 13億円

(2) 損益計算書


売上規模の拡大に伴い売上総利益が増加し、各段階の利益水準も着実に押し上げられています。商品構成の見直しや業務効率化による採算性の改善効果もあり、本業の儲けを示す営業利益は増加傾向にあります。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 645億円 677億円
売上総利益 95億円 99億円
売上総利益率(%) 14.8% 14.6%
営業利益 15億円 17億円
営業利益率(%) 2.3% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び手当が21億円(構成比26%)、研究開発費が10億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である農材事業は、水稲剤の需要拡大などにより大きく売上を伸ばして全体を牽引しています。施設材事業も資材納品が順調に推移し増収に貢献しました。花き事業は需要減等によりわずかに減収となりましたが、全社的には安定した事業ポートフォリオが機能しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
種苗事業 95億円 96億円
花き事業 84億円 83億円
農材事業 320億円 346億円
施設材事業 147億円 153億円
連結(合計) 645億円 677億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 2億円 19億円
投資CF -12億円 -20億円
財務CF -6億円 0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は信条として「大同に生きる経営」を掲げています。具体的には、社会に必要とされ貢献できる価値ある会社に育てること、働く者にとって人生を託するに値する生きがいのある職場をつくること、そして自らの成果によって会社の存在意義と価値を高めることを使命として、社会的責任を全うする経営を実践しています。

(2) 企業文化


「ハイテクと国際化」を経営の基本方針とする価値観を重視しています。農業および園芸の発展に努める「農業関連の総合企業」ならびに「グリーン事業のトータルプランナー」として、新商品・新技術の研究開発と、種子の生産や販売の両面において積極的な全国展開および海外展開に取り組む組織風土を有しています。

(3) 経営計画・目標


同社は現在、中期経営計画を推進しています。「ハイテクと国際化」の経営方針のもと、研究開発をさらに加速させるとともに、グローバル展開の強化に向けた新たな販売体制の構築を進めています。国内外においてイノベーションにより新しい価値を創造し、農業が抱える課題の解決に積極的に取り組むことを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略の重要な柱として海外展開を位置づけ、新たな海外販売拠点の整備や各地域における顧客基盤の強化、市場開拓を進めて海外売上の拡大を図っています。また国内では、生産現場のコスト上昇や労働力不足に対応するため、省力化や収益性向上に資する品種開発やスマート農業技術の活用を通じた提案を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資本と位置付け、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境整備を推進しています。「会社への貢献度および従業員自らの成長を見える化し、新しい働き方とやりがいを提供する」ことをコンセプトに人事制度改革を実施し、多様性を尊重した長く活躍できる職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 42.1歳 13.6年 6,415,978円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.0%
男性育児休業取得率 76.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 87.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 育種開発リスク


種子などの開発には10年以上を要するものもあり、期間の短縮は容易ではありません。長期間の開発努力を行っても必ずしも期待する成果が得られるとは限らず、優秀な人材や遺伝資源の確保に努めているものの、十分な開発成果が得られない場合は、同社グループの事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国内農業に関する影響


日本の農業は、人口減少や少子高齢化に伴う食料消費の低迷、農業従事者の高齢化といった構造的問題を抱え、厳しい環境にあります。同社グループは新商品・新技術の研究開発や的確な営業活動により業容拡大に努めていますが、事業の多くが国内農業に関連しているため、当該市場の動向から影響を受けるリスクがあります。

(3) 海外取引に関するリスク


各種種子の委託生産先には多くの海外業者が含まれ、野菜種子を中心に輸出も行っています。これらの海外取引においては、為替相場の変動に伴う仕入コスト上昇や販売金額の目減り、政治経済の不安定化、紛争や政変、物流コストの高騰、法制度の予期せぬ改廃等のリスクが顕在化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。