※本記事は、IGポート の有価証券報告書(第36期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
IGポート転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. IGポートってどんな会社?
持株会社としてグループを統括し、傘下にプロダクション・アイジーやウィットスタジオ等の有力アニメ制作会社や出版社を擁する企業グループです。
■(1) 会社概要
1987年にタツノコプロから独立する形で前身となるアイジータツノコが設立され、2005年にJASDAQへ上場しました。2007年の持株会社化に伴い現社名へ変更し、2012年にはウィットスタジオを設立して制作体制を強化しました。近年では2019年にジーベックを吸収合併し、グループ再編を進めています。
同社グループは、連結従業員数517名、単体従業員数2名(持株会社のみ)の体制で運営されています。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の石川光久氏で、第2位は広告代理店の電通グループ、第3位は放送事業者の日本テレビ放送網となっており、業界大手との資本関係を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石川 光久 | 20.20% |
| 電通グループ | 10.30% |
| 日本テレビ放送網 | 10.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは石川光久氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石川 光久 | 取締役社長(代表取締役) | 1987年アイジータツノコ(現プロダクション・アイジー)設立。2007年同社設立に伴い事業継承。2019年より代表取締役社長CEOとしてグループを統率。 |
| 保坂 嘉弘 | 取締役 | 1984年エニックス入社。2001年マッグガーデン設立し社長就任。2007年同社取締役を経て、2019年より代表取締役社長COOとして経営を牽引。 |
| 栗本 典博 | 取締役 | 1987年山吉証券入社。2005年プロダクション・アイジー入社。2019年同社管理担当執行役員を経て、2023年より取締役として管理部門を統括。 |
社外取締役は、板東浩二(元NTTぷらら代表取締役社長)、國枝信吾(元ピクシブ代表取締役社長・現ウルトラスーパーピクチャーズ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「映像制作事業」、「出版事業」、「版権事業」、「商品販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■映像制作事業
テレビ、劇場、配信、ビデオ、ゲーム用のアニメーションおよび実写映像の企画・制作を行っています。国内外からの受注に加え、自社原作のアニメ化も手掛け、企画から撮影・編集までの一貫した制作ラインを有しています。
収益は、製作委員会や配信会社、広告代理店等から受け取る制作受託金が主な源泉です。運営は主にプロダクション・アイジー、ウィットスタジオ、シグナル・エムディ等のグループ制作会社が行っています。
■出版事業
月刊コミック誌やコミックス(単行本)、イラスト集等の関連書籍、電子書籍の出版・販売を行っています。「魔法使いの嫁」などの人気作品を創出し、メディアミックスの原作供給源としての役割も担っています。
収益は、読者や取次店に対する書籍・雑誌の販売代金、電子書籍取次店からの配信売上が主となります。運営は主にマッグガーデンが行っています。
■版権事業
アニメーション作品の製作委員会等への出資を通じ、作品の二次利用に関する権利運用を行っています。国内外への配信権や商品化権の許諾窓口業務を担い、作品価値の最大化を図ります。
収益は、出資比率に応じた製作委員会からの分配金や、ライセンス許諾によるロイヤリティ収入です。運営はプロダクション・アイジーやウィットスタジオなどの出資会社が行っています。
■商品販売事業
人気作品のキャラクター商品を企画・監修・製作し、店舗や流通を通じて販売しています。直営店や共同運営店舗での展開も行い、ファンとの接点を強化しています。
収益は、一般消費者への商品販売代金や販売店への卸売代金です。運営はプロダクション・アイジーやウィットスタジオなどが行っています。
■その他事業
上記セグメントに含まれない事業として、雑誌へのイラスト出稿や講師派遣などを行っています。
収益は、出版社等からの原稿料や教育機関等からの講師料です。運営はグループ各社が個別に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は99億円から146億円へと拡大傾向にあります。特に直近では146億円と大きく伸長しました。経常利益は変動があるものの、直近2期は14億円前後で推移しており、利益率は10%弱を維持しています。親会社株主に帰属する当期純利益も黒字基調で安定しています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 119億円 | 112億円 | 118億円 | 146億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 6億円 | 10億円 | 14億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 4.8% | 9.0% | 11.7% | 9.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.7億円 | 0.8億円 | 0.6億円 | 3億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の118億円から当期は146億円へ増加しました。売上総利益も27億円から31億円へ増加していますが、売上総利益率は22.6%から20.9%へとやや低下しています。営業利益は12億円から14億円へ増加し、増収効果が利益増に寄与しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 118億円 | 146億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.6% | 20.9% |
| 営業利益 | 12億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 9.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が4億円(構成比23%)、給与手当が3億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
映像制作事業と版権事業が大きく伸長し、全社の増収を牽引しました。映像制作事業は赤字ですが、版権事業が高い利益率で全社の利益を支える構造となっています。出版事業は減収減益となりましたが黒字を維持しています。商品販売事業は売上が急拡大し、黒字転換しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 映像制作事業 | 62億円 | 73億円 | -9億円 | -11億円 | -15.1% |
| 出版事業 | 23億円 | 22億円 | 5億円 | 3億円 | 15.7% |
| 版権事業 | 30億円 | 40億円 | 18億円 | 19億円 | 48.9% |
| 商品販売事業 | 0.3億円 | 9億円 | -0.3億円 | 4億円 | 43.4% |
| その他 | 3億円 | 2億円 | 0.1億円 | -0.0億円 | -0.4% |
| 調整額 | - | - | -1億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 118億円 | 146億円 | 12億円 | 14億円 | 9.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなる末期型を示しています。これは本業の収益化タイミングのズレ等による資金流出、投資支出、および借入返済や配当支払いが重なった結果です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | -19億円 |
| 投資CF | -13億円 | -7億円 |
| 財務CF | -1億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「感動する作品や楽しめる作品を創り続ける」ことを理念としています。多くの視聴者や読者等に感動を与え、また、クライアントに満足してもらえる作品を創ることを経営方針として掲げ、コンテンツ制作を通じて価値創造を目指しています。
■(2) 企業文化
経営戦略において、原作を創出するコミック出版とアニメーションを中心とした映像化を行うコンテンツ制作の企業集団として位置づけています。中長期的なキャッシュ・フローを生み出すために投資拡大の好循環を実現するプロセスに傾注しており、クリエイティブとビジネスの両立を重視する姿勢が見られます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、連結数値目標として、ROE(自己資本利益率)8%以上を指標としています。中長期的な経営戦略を基に投資を進め、事業の拡大を図る方針です。各事業部門での制作・進行管理やヒット作品への出資、商品展開のタイムリーな実施等により、利益の最大化を目指しています。
* ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
自社コミック原作の創出、映像化作品のマルチメディア化、中核コンテンツのシリーズ化推進、NFT商品やオリジナルキャラクター商品の海外直接販売の4つのプロセスに注力し、投資拡大の好循環を目指しています。また、クリエイターの発掘・育成や協力会社の獲得、映像制作予算の適正管理、新技術の習得にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「感動する作品や楽しめる作品を創り続ける」ため、多様な人材の能力発揮を重視しています。性別・国籍等を問わない採用、個人の専門性向上を目指した育成、グループ間配置転換による適正配置を推進しています。また、アニメーターの社員化や柔軟な働き方の導入など、環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 46.2歳 | 9.9年 | 10,822,340円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 22.0% |
| 男性の育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女の賃金の差異(全労働者) | 77.4% |
| 男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.4% |
| 男女の賃金の差異(非正規雇用) | 79.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 映像制作事業の特性
制作の正式受注前にプリプロダクション工程が発生する場合があり、企画書や絵コンテ等の作成費用が先行します。万が一正式受注に至らなかった場合、先行発生した費用が回収できず、損失が生じる可能性があります。
■(2) 作品のヒット依存と品質
アニメやコミック作品において高品質な制作に努めていますが、顧客の嗜好に合致しない場合や制作遅延が発生した場合、業績に影響が及びます。また、版権事業においても、出資作品が評価を得られない場合、期待した収益分配が得られないリスクがあります。
■(3) 制作コストの高騰と人材獲得
映像制作費用において、CG制作費や優秀なクリエイターへの外注費が高騰しており、制作期間の長期化に伴う固定費増加も課題となっています。中国や韓国等の企業との競争激化により、受注価格の低下や外注費のさらなる高騰が生じる可能性があります。
■(4) 出版市場の変動
出版物は再販売価格維持制度の対象ですが、将来的に制度が廃止された場合、市況が悪化する可能性があります。また、電子書籍や動画配信サービスの普及などメディア環境の変化に対応し、パートナー企業と連携して収益機会を確保する必要があります。



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