※本記事は、IGポートの有価証券報告書(第37期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. IGポートってどんな会社?
アニメーションを中心とした映像制作やコミック出版、版権事業をグローバルに展開するコンテンツ企業です。
■(1) 会社概要
1987年に有限会社アイジータツノコとして設立され、アニメーションやゲームの企画・制作を開始しました。1998年の株式会社化等を経て、2005年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2007年にはマッグガーデンの完全子会社化に伴い、現社名へ変更し持株会社体制へ移行しています。2012年にウィットスタジオを設立するなど事業を拡大しています。
同社グループは連結従業員数544名、単体では2名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は創業者である石川光久氏で、第2位および第3位には電通グループと日本テレビ放送網が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石川光久 | 18.90% |
| 電通グループ | 9.90% |
| 日本テレビ放送網 | 9.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長(CEO)は石川光久氏が務めています。取締役5名中2名の社外取締役を選任しています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石川光久 | 取締役社長(代表取締役) | 1987年アイジータツノコ設立し代表取締役就任。1994年同社代表取締役社長。プロダクション・アイジー代表取締役会長を経て2019年より現職。 |
| 保坂嘉弘 | 取締役 | 1984年エニックス(現スクウェア・エニックス)入社。2001年マッグガーデン設立し代表取締役社長。2015年同社代表取締役会長を経て2019年より現職。 |
| 栗本典博 | 取締役 | 1987年山吉証券入社。2005年プロダクション・アイジー入社。2016年同社管理部長兼管理担当執行役員。2019年同社入社し2023年より現職。 |
社外取締役は、板東浩二(元NTTぷらら社長)、國枝信吾(元ムービック社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「映像制作事業」「出版事業」「版権事業」「商品販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 映像制作事業
劇場・テレビ・配信・ビデオ・ゲーム用のアニメーションや実写映像等の企画から編集までを一貫して制作し、クライアントに納品しています。国内外からの受注や自社原作の映像制作を担い、クリエイターの能力向上とノウハウ蓄積に努めています。
製作委員会や動画配信会社、広告会社などからの制作請負による収益を主な収入源としています。制作請負の対価として、進捗度に応じた収益や納品時の収益を得るモデルです。事業の運営は主にプロダクション・アイジーおよびウィットスタジオが行っています。
■(2) 出版事業
各世代に向けたコミック誌、単行本、イラスト集などの関連書籍の出版、および電子書籍の企画・開発・販売を行っています。ウェブマガジンに掲載された作品の単行本化など、多様なメディアでの展開を推進しています。
顧客への書籍引き渡し時や、電子書籍の配信許諾時において、消費者や配信プラットフォーム等から販売対価やライセンス収入を得るモデルです。事業の運営は主にマッグガーデンが行っています。
■(3) 版権事業
アニメーション作品の製作委員会等への出資を通じて著作権を取得し、コンテンツの二次利用権を販売しています。また、自社制作作品や企画・原作を手掛けた作品における制作者印税などの収益も獲得しています。
国内外の事業者に対する自動公衆送信権や商品化権等の販売による窓口手数料のほか、製作委員会への出資割合に応じた収益分配金、およびライセンス許諾による収入を得ています。事業の運営は主にプロダクション・アイジーおよびマッグガーデン等が行っています。
■(4) 商品販売事業
人気作品のキャラクターを用いた商品の企画・監修・許諾・製作を行っています。作品の世界観を活かした魅力的な商品を開発し、ファンのニーズに応える多彩なアイテムを展開しています。
事業者との共同運営店舗での販売や、国内および海外の販売店等に対する卸売りを通じて収益を得るモデルです。商品の卸売りは買い取りが中心となっています。運営は主にプロダクション・アイジー等が行っています。
■(5) その他
報告セグメントに含まれない事業として、雑誌へのイラスト出稿や講演などの業務を手掛けています。
クライアントからの原稿出稿料や講師料などを通じて収益を得るモデルです。事業の運営は同社グループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は110億円台から140億円台へと順調に拡大傾向にあります。経常利益についても堅調な伸びを示していましたが、直近の第37期は制作費用の高騰や前期の大型版権収入の反動等により減益となっています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 112億円 | 118億円 | 146億円 | 141億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 10億円 | 14億円 | 14億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 9.0% | 11.7% | 9.7% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.8億円 | 0.6億円 | 3億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少したものの、141億円と高水準を維持しています。一方、売上総利益率は20.9%から18.3%へと低下し、営業利益も前期の14億円から8億円へと減少しており、利益水準の改善が今後の課題となっています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 146億円 | 141億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.9% | 18.3% |
| 営業利益 | 14億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 9.8% | 5.4% |
販売費及び一般管理費(約18億円)のうち、広告宣伝費が4億円(構成比24%)、給与手当が4億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、映像制作事業は受注増や納品進展により増収となり、商品販売事業や出版事業も堅調に推移しました。一方で、版権事業は前期にあった大型タイトルの反動減により大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 映像制作事業 | 73億円 | 81億円 |
| 出版事業 | 22億円 | 23億円 |
| 版権事業 | 40億円 | 22億円 |
| 商品販売事業 | 9億円 | 11億円 |
| その他 | 2億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 146億円 | 141億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金(プラス)を元手に積極的な投資(マイナス)を行いながら、借入等による資金調達(プラス)も併せて行い、事業拡大を図っている「積極型」の状況です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -19億円 | 11億円 |
| 投資CF | -7億円 | -11億円 |
| 財務CF | -5億円 | 15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「感動する作品や楽しめる作品を創り続ける」ことを理念として掲げています。この理念のもと、「多くの視聴者や読者等に感動を与え、また、クライアントに満足していただける作品を創る」ことを経営方針とし、日本の文化であるアニメや漫画を世界へ創り出すことでコンテンツ市場への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、多様な人材が最大限に能力を発揮できる環境づくりを重視し、個人の専門性向上を目的とした人材育成やエンゲージメント向上に努めています。また、次世代を担うクリエイターの発掘・育成や、従業員の健康を経営資源と捉える「健康経営」を推進する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、中長期的な経営戦略に基づき投資を進め、事業拡大を図るための数値を設定しています。
* 連結ROE(自己資本利益率):8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
原作を創出するコミック出版と映像化を行うコンテンツ制作の企業集団として、中長期的なキャッシュ・フロー創出に向けた投資の好循環を目指しています。具体的には、自社コミック原作の創出、映像作品のマルチメディア化、中核コンテンツのシリーズ化推進、およびNFT化商品やキャラクター商品の海外直販などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営戦略の要件を満たす人材の採用と、個人の専門性向上を重視した育成を推進しています。性別や国籍、中途などの区別なく個人を尊重した採用を行い、柔軟な働き方や適切な人材配置によってエンゲージメント向上を図っています。また、基準を満たしたクリエイターの社員化にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 47.2歳 | 10.8年 | 12,803,185円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 78.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 92.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(91.8%)、就業報告等の月報を通じた従業員の意見調査の回答率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) コンテンツの評価と制作遅延
アニメーションやコミック作品において、顧客の嗜好に合致しない場合や制作スケジュールに遅れが生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、正式受注前の準備工程で費用が発生し、受注が不調に終われば損失となるリスクも存在します。
(2) アニメーション業界の人材獲得競争
新規参入企業の増加や業界全体の制作量拡大により、優秀なクリエイターの獲得競争が激化しています。人材の確保・育成が計画通りに進まない場合や、他社への人材流出が起きた場合、競争力が低下し業績に影響する可能性があります。
(3) 出版事業における再販制度の動向
出版物は再販売価格維持制度により定価販売が行われていますが、将来的に制度の弾力的運用が求められ、制度自体が廃止された場合には、出版市場の市況悪化を通じて同社の出版事業に影響が及ぶリスクがあります。
(4) 制作原価の高騰と競合の台頭
世界的なインフレによる外注費や人件費などの高騰は、固定費増加を通じて制作事業の収益を圧迫する要因となります。また、海外の低コスト制作会社や好待遇を提示する新興企業の台頭により、受注価格の低下やクリエイターの流出が懸念されます。



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