エムビーエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エムビーエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エムビーエスは東証グロースおよび福証Q-Boardに上場し、独自のホームメイキャップ工法を用いた建造物の外壁・内装リフォームや補修・改修工事を主力とする企業です。直近の業績は、パートナーとの関係強化による受注拡大や工事の順調な進捗を背景に、売上高と利益ともに堅調に推移し増収増益を達成しています。


※本記事は、エムビーエスの有価証券報告書(第29期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エムビーエスってどんな会社?


独自の施工技術で建造物の維持・保全を手掛けるリフォーム・改修の専門企業です。

(1) 会社概要


1993年1月に現代表の山本貴士氏が足場業を個人創業し、1997年6月に有限会社アクアビギ(現エムビーエス)を設立しました。1998年には外壁リフォーム業を開始し、2001年に組織変更しています。2005年に福証Q-Board、2015年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たし、全国への支店展開や異業種との資本業務提携を通じて事業を拡大しています。

同社の従業員数は単体で103名です。筆頭株主は創業者の山本貴士氏で、第2位は極東ホールディングス、第3位は鳴本聡一郎氏となっています。

氏名 持株比率
山本貴士 30.27%
極東ホールディングス 15.87%
鳴本聡一郎 5.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本貴士氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
山本貴士 代表取締役社長 1993年1月足場業創業。1997年6月アクアビギ(現エムビーエス)設立し代表取締役社長就任。2001年7月より現職。
松岡弘晃 取締役ホームメイキャップ事業本部長 1995年8月現事業前身に参加。2001年7月取締役就任。ホームメイキャップ事業本部本部長等を経て2019年6月より現職。
高木弘敬 取締役ホームメイキャップ事業本部スケルトン担当 1999年フォーバル入社、2002年同社入社。2008年取締役就任。事業本部長などを経て2022年6月より現職。
栗山征樹 取締役経営企画室長兼管理部長 1985年芙蓉総合リース入社等の後、2007年同社入社。2011年取締役就任。経営企画室長などを経て2019年6月より現職。
影山祥玄 取締役(監査等委員) 2003年同社入社。一度退社後2007年に再入社。周南支店長などを経て2019年8月より現職。


社外取締役は、伊藤尚毅(元アント・キャピタル・パートナーズ入社)、前田隆(元トライアンド設立 代表取締役就任)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホームメイキャップ事業」、「建築工事業」および「その他」事業を展開しています。

ホームメイキャップ事業


独自に開発した耐久性に優れた「ホームメイキャップ工法」を用い、一般住宅や集合住宅、商業ビル、道路、橋梁などの外壁・内装リフォームや補修・改修工事を提供しています。事前の劣化状況調査から提案、施工、アフターサービスまでを一貫して行い、施工後10年間の品質保証を実現している点が特徴です。

収益源は、施主や元請けのパートナー企業(工務店やハウスメーカーなど)との直営方式による工事請負契約に基づく完成工事高、およびFC加盟店等を介した提携方式による加盟店関連売上高です。同事業の運営はエムビーエスが自社で担っています。

建築工事業


一般的な工法を用いた新築住宅の施工や既設住宅の改修工事を提供しています。顧客のニーズに合わせた一般的な建設サービスを展開し、地域の建築需要に柔軟に応えています。

収益は、顧客との工事請負契約に基づく完成工事高として計上されます。本事業もエムビーエスが自社で運営を行っています。

その他


FC加盟店に対するコーティング材等の資材販売や、不動産の売買・賃貸および仲介業務を展開しています。

収益源は、加盟店向けの材料販売による売上や、保有する不動産の取引や賃貸による収益です。本事業の運営もエムビーエスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円台から50億円台へと右肩上がりで成長を続けています。これに伴い経常利益も順調に拡大しており、特に直近の2期間では利益率が大きく向上して18.8%に達しました。売上の成長と高い収益性を両立させていることがうかがえます。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 40.3億円 40.0億円 43.6億円 47.1億円 50.3億円
経常利益 4.8億円 4.7億円 5.3億円 6.7億円 9.5億円
利益率(%) 11.8% 11.7% 12.1% 14.3% 18.8%
当期純利益 3.3億円 3.2億円 4.0億円 4.7億円 5.7億円

(2) 損益計算書


売上高は47.1億円から50.3億円へと増加し、売上総利益も14.9億円から16.2億円へと拡大しました。営業利益率は13.3%から14.4%へと改善しており、原価管理の徹底や業務効率化の取り組みが利益の創出に寄与していることが確認できます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 47.1億円 50.3億円
売上総利益 14.9億円 16.2億円
売上総利益率(%) 31.6% 32.3%
営業利益 6.3億円 7.2億円
営業利益率(%) 13.3% 14.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.2億円(構成比47%)、支払手数料が0.7億円(同8%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が32.5億円(売上原価合計の95%)と大部分を構成しています。

(3) セグメント収益


主力であるホームメイキャップ事業は、工事が順調に進捗したことで増収増益を達成しました。建築工事業も新築および改修工事の増加により大きく売上を伸ばし、利益も前年から増加しています。その他事業は不動産販売の増加により大幅な増収となり、黒字転換を果たしました。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率(2026年5月期)
ホームメイキャップ事業 45.8億円 48.0億円 9.1億円 9.8億円 20.5%
建築工事業 1.3億円 1.9億円 0.0億円 0.0億円 1.4%
その他 0.0億円 0.4億円 -0.0億円 0.0億円 5.1%
連結(合計) 47.1億円 50.3億円 9.1億円 9.9億円 19.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスの「改善型」に該当します。営業利益や保有資産の解約・売却による収入を活用し、借入金の返済や自己株式の取得などを進めている改善局面と言えます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 5.7億円 7.2億円
投資CF -0.4億円 2.3億円
財務CF -2.3億円 -3.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ドラマ化される会社にする」という経営理念を掲げています。あらゆる建造物に対し、これまでにない高品質なリフォーム工法を提供し、これまでの業界常識にとらわれない高機能な外装仕様に変えることを事業方針としています。これにより、高耐久性を有する建造物の構築と、顧客と社会が求める「安心・安全・安価」の追求を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「新たな常識づくり」に対して興味と情熱を持ち、誠意ある姿勢で仕事に取り組むことを行動規範としています。顧客満足を第一に考え、高品質な施工を適正価格で提供するために絶えず追及と研鑚を続ける姿勢を大切にしています。また、事業に携わるすべての関係者が協調して運営にあたることを重んじる文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、既存の事業エリアでのパートナーとの関係強化や支店開設による全国展開で受注拡大を図る一方で、採算性と事業の継続性を重視した目標を掲げています。

・売上高経常利益率 10%以上
・自己資本比率 50%以上
・ROE(自己資本利益率) 8%以上
・PBR(株価純資産倍率) 1.0倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、営業構造の強化や技術力の向上、マネジメント力の強化に取り組んでいます。新規パートナーの開拓やスケルトン防災コーティングの市場浸透を進めるとともに、大規模修繕工事マーケットへの参入を図っています。また、人材育成による施工管理と品質の向上、原価低減と経費削減を通じた収益力の強化を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材確保・人材育成」を最重要課題と位置づけ、従業員の個の最大化を図ることで企業価値の向上を目指しています。性別や国籍、障がいの有無を問わず意欲ある人材を積極的に採用し、現場管理力早期育成プログラム等の多様な研修で人材を育成しています。また、多様性を認め合い、60歳以上の社員への長期雇用機会の提供など、働きやすい環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 34.5歳 8.8年 5,585,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 43.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.6%

※同社は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(6.8%)、障がい者雇用率(1.9%)、外国従業員比率(3.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 優秀な人材の確保と育成

事業展開に対応するための人材確保と育成が不可欠です。「ホームメイキャップ」ブランドは人的資本による要素が強く、営業戦略の立案・実行を行える人材や、特定の資格・経験を持つ建設技術者が不足した場合、受注機会の逸失や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定人物への依存

代表取締役社長であり創業者・筆頭株主である山本貴士氏への依存度が高い状況です。経営体制の整備や人材育成を進めていますが、同氏が何らかの理由で経営から退いた場合、今後の事業展開や業績に多大な影響を与える可能性があります。

(3) 工事施工の品質保証と契約不適合

同社のホームメイキャップ事業における施工は10年保証を提供しています。しかし、設計や施工した物件に予期せぬ不具合が生じた場合の手直し費用や、重大な契約不適合責任に伴う損害賠償が発生し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 特定取引先への依存

同社が事業で採用する特殊機能性塗料は、シーカ・ジャパンからの仕入割合が約59%(2026年5月期)と高くなっています。相互補完的な関係を維持していますが、取引条件の合意に至らない場合や契約が解除された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。