※本記事は、株式会社エムビーエスの有価証券報告書(第28期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エムビーエスってどんな会社?
独自開発の施工技術「ホームメイキャップ工法」を用い、建物の維持・保全・リフォームを行う建設会社です。
■(1) 会社概要
1993年に創業者が個人で足場業を開始し、1997年に有限会社アクアビギを設立しました。2001年にエムビーエスへ組織変更し、2005年に福岡証券取引所Q-Boardへ上場を果たしました。その後、事業を拡大し、2015年には東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場しています。独自工法を軸に全国へ支店展開を進めています。
同社の従業員数は単体で94名です。筆頭株主は創業社長である山本貴士氏で、第2位は山口県下関市に所在する法人、第3位は個人株主となっています。経営陣や従業員持株会が上位に名を連ねており、安定的な株主構成といえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本 貴士 | 29.41% |
| 極東ホールディングス | 14.30% |
| 鳴本 聡一郎 | 5.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本貴士氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 貴士 | 代表取締役社長 | 1993年1月に足場業を個人創業。1997年に有限会社アクアビギ(現エムビーエス)を設立し社長に就任。2001年より現職。 |
| 松岡 弘晃 | 取締役ホームメイキャップ事業本部長 | 1995年に創業事業に参加。東京支店長、ホームメイキャップ事業本部副本部長などを経て、2019年6月より現職。 |
| 高木 弘敬 | 取締役ホームメイキャップ事業本部スケルトン担当 | フォーバルを経て2002年に入社。営業部長、本店長、ホームメイキャップ事業本部長などを歴任し、2022年6月より現職。 |
| 栗山 征樹 | 取締役経営企画室長兼管理部長 | 芙蓉総合リースなどを経て2007年に入社。管理部長、取締役を経て、2019年6月より現職。 |
| 影山 祥玄 | 取締役(監査等委員) | 2003年に入社。一度退社し他社勤務を経て2007年に再入社。周南支店長などを務め、2019年8月より現職。 |
社外取締役は、伊藤尚毅(アント・キャピタル・パートナーズ入社)、前田隆(トライアンド代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホームメイキャップ事業」「建築工事業」および「その他」事業を展開しています。
■ホームメイキャップ事業
独自開発した「ホームメイキャップ工法」を用いて、一般住宅、ビル、橋梁等の外壁・内装の補修・改修工事を行います。特殊機能性塗料と4つの施工技術(クリア、カラー、スケルトン防災、応用/特殊)により、建物の美観回復と耐久性向上を提供しています。また、コンクリート剥落防止などの防災施工も手掛けています。
収益は、元請業者(工務店等)や施主からの工事請負代金、およびFC加盟店への材料販売等から得ています。受注形態には、同社が直接契約する直営方式と、認定施工店が契約する提携方式があります。運営は主にエムビーエスが行っています。
■建築工事業
一般的な工法を用いた既設住宅の改修や新築住宅の施工を行っています。独自工法以外の建設需要に対応する事業領域です。
収益は、施主や元請業者からの工事請負代金によって構成されています。運営はエムビーエスが行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、不動産の売買・賃貸・仲介などを行っています。また、FC加盟店に対するコーティング材等の販売もこの区分に含まれる場合があります。
収益は、不動産の販売代金や仲介手数料、賃貸収入などが主な源泉です。運営はエムビーエスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、第28期には47億円に達しました。利益面でも、経常利益率が10%を超える高水準を維持しており、第28期は14.3%と収益性がさらに向上しています。当期純利益も増益基調で推移しており、安定した成長と高い収益性を実現していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億円 | 40億円 | 40億円 | 44億円 | 47億円 |
| 経常利益 | 2.8億円 | 4.8億円 | 4.7億円 | 5.3億円 | 6.7億円 |
| 利益率(%) | 8.3% | 11.8% | 11.7% | 12.1% | 14.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.9億円 | 3.3億円 | 3.2億円 | 4.0億円 | 4.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は30%台前半で推移しており、安定しています。営業利益率も向上しており、販管費のコントロールと売上拡大が利益率改善に寄与している様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 47億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.7% | 31.6% |
| 営業利益 | 5.0億円 | 6.3億円 |
| 営業利益率(%) | 11.4% | 13.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.8億円(構成比44%)、支払手数料が0.8億円(同10%)を占めています。売上原価においては、外注加工費が26.4億円(売上原価の82%)を占めており、施工における外注比率が高い構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力のホームメイキャップ事業が売上・利益ともに大きく伸長し、全社の増収増益を牽引しました。一方、建築工事業は新築・改修工事の減少により減収減益となりました。その他事業も不動産販売の減少により減収となり、損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホームメイキャップ事業 | 40億円 | 46億円 | 7.1億円 | 9.1億円 | 19.9% |
| 建築工事業 | 3.3億円 | 1.3億円 | 0.5億円 | 0.0億円 | 0.3% |
| その他 | 0.4億円 | 0.0億円 | 0.0億円 | -0.0億円 | -49.3% |
| 調整額 | - | - | -2.7億円 | -2.8億円 | - |
| 連結(合計) | 44億円 | 47億円 | 5.0億円 | 6.3億円 | 13.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で稼いだ現金を、投資や借入返済、株主還元に充てている健全な状態といえます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.5億円 | 5.7億円 |
| 投資CF | -2.8億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | -1.6億円 | -2.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「ドラマ化される会社にする」という経営理念を掲げています。これは、あらゆる建造物に対し、これまでにない高品質なリフォーム工法を提供することで、業界常識にとらわれず、高機能かつ高耐久性を有する建造物の構築を図ることを事業方針としています。顧客と社会が求める「安心・安全・安価」の追求を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「新たな常識づくり」への興味と情熱を持ち、誠意ある姿勢で仕事に取り組むことを行動規範としています。顧客満足を第一とし、高品質な施工を適正価格で提供するために絶えず研鑽し続けること、そして事業に携わる全ての関係者が協調して運営にあたることを重視する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、既存エリアの深耕や支店開設による全国展開で受注拡大を図りつつ、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 売上高経常利益率:10%以上
* 自己資本比率:50%以上
* ROE(自己資本利益率):8%以上
* PBR(株価純資産倍率):1.0倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「新たな常識づくりを目指す」ベンチャーとして、経営体質の強化に取り組んでいます。営業面では全国主要都市への支店設置やパートナー開拓、スケルトン防災コーティングの市場浸透を推進します。技術面では施工管理と品質向上、コストダウンを図り、マネジメント力向上による人材育成も強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
広域展開のため、各拠点で管理・提案営業が行える将来の幹部・中堅候補の採用・育成を重要課題としています。新卒・中途を問わず積極採用し、独自研修プログラムやOJT、資格取得支援を通じて、施工技術から商品知識、接客マナーまで習得させます。また、60歳以上の社員への長期雇用機会提供など、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 35.4歳 | 9.1年 | 5,285,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は従業員規模が100名以下のため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(6.4%)、新卒採用計画数充足率(40%)、障がい者雇用率(2.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保と育成
事業拡大やブランド維持には優秀な人材が不可欠ですが、必要な人員を確保できない場合や、人材育成が計画通り進まない場合、今後の事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、建設技術者の不足により、受注機会を逸するリスクもあります。
■(2) 建設・不動産市場の動向
経済情勢の悪化や不測の事態により、建設・不動産市場が急激に縮小したり、競争環境が激化したりした場合には、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法的規制への対応
建設業法等の法的規制を受けて事業を行っており、法令違反があった場合や、法改正・規制強化があった場合には、業績に影響が出る可能性があります。また、訴訟等により予測と異なる結果となった場合も影響を受けるリスクがあります。
■(4) 創業者への依存
代表取締役社長である山本貴士氏は創業者かつ筆頭株主であり、経営において中心的な役割を果たしています。経営体制の整備や人材育成を進めていますが、同氏への依存度は高く、同氏が経営から退いた場合、事業展開に多大な影響を及ぼす可能性があります。



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