※本記事は、小津産業の有価証券報告書(第115期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小津産業ってどんな会社?
同社は不織布製品の加工および販売を主力とし、エレクトロニクスや医療など多様な分野へ展開しています。
■(1) 会社概要
1653年に小津清左衛門長弘により創業され、1939年に小津商事として設立(1944年に小津産業へ商号変更)されました。1996年の店頭登録を経て、2001年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2014年には東京証券取引所市場第一部へ指定され、市場区分見直しにより現在はスタンダード市場に移行しています。
従業員数は連結245名、単体86名です。大株主については、筆頭株主が小津商店で、第2位は小津取引先持株会、第3位は日本製紙クレシアです。小津商店は不動産事業や和紙販売事業に特化した会社として棲み分けが行われており、同社の議決権の28.89%を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小津商店 | 28.89% |
| 小津取引先持株会 | 3.38% |
| 日本製紙クレシア | 1.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は柴﨑治氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柴﨑治 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1997年三洋薬品工業入社。2007年同社に入社後、メディカルサプライ営業部長、クリーンサプライ営業部長などを歴任しました。2024年6月に執行役員に就任し、2024年8月より現職。 |
| 村尾茂 | 取締役常務執行役員生産本部長 | 1990年同社に入社。2017年営業統轄部長に就任後、ディプロ代表取締役社長などを歴任しました。2021年に同社取締役に就任し、上席執行役員を経て2024年8月より現職。 |
| 三﨑剛志 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1988年富士銀行(現みずほ銀行)に入行。2019年に同社に入社し、管理本部長や内部監査室長を歴任しました。2022年に取締役に就任し、2024年8月より現職。 |
| 立野智之 | 取締役上席執行役員営業本部長 | 1995年月虎金属に入社後、2006年同社に入社。クリーンサプライ営業部長などを経て、2022年理事生産・開発本部長に就任しました。2024年6月に執行役員営業本部長となり、同年8月より現職。 |
社外取締役は、山下俊史(元日本生活協同組合連合会会長・指名委員長)、阿部光伸(元くすりの福太郎社長・報酬委員長)、青木常子(元ネオジャパン取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不織布事業」および「その他の事業」を展開しています。
■不織布事業
同事業では、エレクトロニクス用、コスメティック用、メディカル用、産業資材用、除染用の不織布製品の販売などを行っています。また、農業用の資材や機材の製造および販売、中国市場向けの製品販売など、国内外の多様な顧客に向けて不織布関連製品を提供しています。
製品の販売代金や加工委託料が主な収益源です。事業の運営は同社が行うほか、オヅテクノ、ディプロ、旭小津が不織布製品の加工や製造を担っています。また、日本プラントシーダーが農業用資材を、小津貿易有限公司が中国向け販売を担当するなど、グループ各社が連携して事業を展開しています。
■その他の事業
報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業や除菌関連事業を展開しています。不動産賃貸においてはテナントへの物件提供を行い、除菌関連では食品殺菌用途や畜産分野の防疫対策用途に向けた過酢酸製剤の販売、輸入などを行っています。
保有する不動産のテナントからの賃貸料収入や、過酢酸製剤などの製品販売代金が主な収益源です。不動産賃貸事業は同社が運営を行っており、除菌関連事業は連結子会社であるエンビロテックジャパンが販売促進や新規顧客の開拓などを担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が100億円台で安定的に推移しています。経常利益は一時的な増減があるものの、当期はAI関連やコスメティック製品の需要増により増収増益となり、利益率も7.5%まで改善しました。収益力の底上げが進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 106億円 | 104億円 | 101億円 | 102億円 | 107億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 6億円 | 7億円 | 6億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 5.7% | 7.0% | 5.5% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 4億円 | 4億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は堅調に推移し、売上総利益および営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、高付加価値な製品の拡販や環境対応製品の販売促進など、収益性の向上に向けた取り組みが成果として表れています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 102億円 | 107億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.4% | 33.1% |
| 営業利益 | 4億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比33%)、荷造運搬費が4億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の不織布事業は、クリーン分野におけるAI・データセンター関連需要の取り込みや、ウェルネスケア分野のコスメティック製品の好調により売上が増加しました。その他の事業では、除菌関連が拡販に注力し増加したものの、不動産賃貸でのテナント退去があり売上は概ね横ばいとなっています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 不織布事業 | 100億円 | 105億円 |
| その他の事業 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 102億円 | 107億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動による資金獲得と投資活動(有価証券の売却等)による収入により、借入金の返済や株主還元を進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 10億円 |
| 投資CF | 3億円 | 4億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「わたしたちは、伝統とは継続的な開拓の歴史との認識のもと、お客さまの満足や喜びを第一に考えた新しい付加価値を提案し、豊かな暮らしと文化に貢献してまいります。」という企業理念を掲げています。社会のニーズに応え、顧客の利便性や快適性を向上させる製品・サービスを提供することで、健全な社会の発展への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「より清潔・より快適」を提供する会社を目指すという目標のもと、コンプライアンスの遵守を前提とし、「伝統力」「革新力」「付加価値力」の3つの柱を重視する文化があります。また、環境保全を重視した「地球環境と人にやさしい企業」を目指し、エコロジー製品への取り組みや資源低減など、全従業員参加型の活動を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は『長期ビジョン:OZU Innovation2034』を策定し、“自ら製品を企画・開発・生産する機能を備えた商社”への発展を目指しています。長期的な目標と、その達成に向けた土台づくりとしての『第一次中期経営計画2027』における数値目標は以下の通りです。
・2034年長期ビジョン目標:連結売上高 150億円
・2027年5月期目標:連結売上高 108億円
・2027年5月期目標:営業利益 5.5億円
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の強化を図る「コア・コンピタンス戦略」と新規事業を創造する「SEEDs戦略」を相互に連動させる事業拡大戦略を推進しています。クリーンルーム関連領域で圧倒的なポジションを確立するとともに、外部技術との融合による新用途・新機能の開発を目指します。重点事業領域の選定や人的資源の適正配置を通じ、事業構造の戦略的転換を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は経営戦略を実現する重要施策として人材育成を位置づけ、多様な人材の視点や独創性が発揮される環境整備を進めています。2025年より役割等級制度などを導入した新人事制度を運用し、透明性の高い評価制度や定年延長、時差出勤・在宅勤務制度などを通じて、「働きやすい職場」と「やりがいのある業務」の両立を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 42.3歳 | 14.5年 | 6,969,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | - |
※同社には女性のパート・有期労働者が存在しないため、男女賃金差異(パート・有期)の記載はありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用における女性労働者の割合(55.6%)、年次有給休暇取得率(78.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要動向や市況による影響
主力製品であるエレクトロニクス、医療、コスメティック業界向けの不織布製品は、関連業界の需要動向や市況の変動によって大きな影響を受けます。また、アグリ分野では夏場に販売が集中する季節変動リスクがあり、これらの変化が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大規模災害による影響
同社グループが保有する物流センターや関係会社の加工工場、海外の協力工場などが地震等の大規模災害で損害を受けた場合、生産能力や物流機能の低下が生じる可能性があります。また、アグリ分野では天候不順や自然災害の発生が売上や利益の減少を招くリスクがあります。
■(3) カントリーリスク
同社は中国や台湾、東南アジア等を中心に海外での生産・販売活動を展開しており、海外取引の比重が高まっています。対象国での予期せぬ政治、経済、社会情勢の変化や、輸出入取引に伴う為替相場の変動が発生した場合、同社の財政状態や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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