小津産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小津産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、不織布製品の加工・販売を主力事業としています。直近の業績では、売上高は前期比で微増となりましたが、利益面では経常利益および当期純利益ともに減益となり、増収減益のトレンドで推移しています。


※本記事は、小津産業株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小津産業ってどんな会社?


エレクトロニクスやメディカル分野向け等の不織布製品を主力とし、伝統と革新を融合させた事業を展開する専門商社です。

(1) 会社概要


同社は1653年に創業した紙問屋を起源とし、1939年に小津商事(現・小津産業)として設立されました。1996年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2001年には東京証券取引所市場第二部に上場しています。2013年には株式会社ディプロの全株式を取得するなど事業基盤を強化し、現在は不織布製品の製造・加工・販売を中心にグループ展開を行っています。

2025年5月31日時点で、連結従業員数は285名、単体従業員数は97名です。筆頭株主は創業家に関連する株式会社小津商店で、第2位は従業員持株会である小津取引先持株会、第3位は主要な取引先である日本製紙クレシアとなっています。

氏名 持株比率
小津商店 28.12%
小津取引先持株会 3.41%
日本製紙クレシア 1.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長 社長執行役員は柴﨑 治氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
柴﨑 治 代表取締役社長社長執行役員 1997年三洋薬品工業入社。2007年同社入社。クリーンサプライ営業部長、執行役員営業副本部長等を経て、2024年8月より現職。
今枝 英治 取締役会長 1979年同社入社。機能素材営業部長、営業本部担当取締役、代表取締役副社長等を経て、2015年代表取締役社長に就任。2024年8月より現職。
村尾 茂 取締役常務執行役員生産本部長 1990年同社入社。営業統轄部長、株式会社ディプロ代表取締役社長等を歴任。2024年8月より現職。
三﨑 剛志 取締役常務執行役員管理本部長 1988年富士銀行(現みずほ銀行)入行。支店長を経て2019年同社入社。経営企画室長、管理本部長等を歴任し、2024年8月より現職。
立野 智之 取締役上席執行役員営業本部長 1995年月虎金属入社。2006年同社入社。クリーンサプライ営業部長、エンビロテックジャパン代表取締役社長等を経て、2024年8月より現職。


社外取締役は、穴田 信次(元水戸証券常勤監査役)、山下 俊史(元日本生活協同組合連合会会長)、阿部 光伸(元ツルハホールディングス取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不織布事業」および「その他の事業」を展開しています。

不織布事業


エレクトロニクス用、コスメティック用、メディカル用、産業資材用、除染用の不織布製品の販売および加工を行っています。また、農業用資材・機材の製造・販売や、中国向けの不織布製品の販売も展開しています。

主な収益は、顧客への製品販売による対価です。運営は主に同社が行い、連結子会社のオヅテクノや旭小津が加工を、株式会社ディプロが製造・販売を、日本プラントシーダーが農業関連製品の製造・販売を、小津(上海)貿易有限公司が中国での販売を担っています。

その他の事業


同社が保有する不動産の賃貸事業や、除菌関連事業、家庭紙・日用雑貨の販売等を行っています。除菌関連では食品殺菌や防疫対策用途の過酢酸製剤を取り扱っています。

主な収益は、不動産賃貸料や製品販売による対価です。運営は同社が不動産賃貸を、連結子会社のエンビロテックジャパンが除菌関連事業を行っています。また、持分法適用会社のアズフィットが家庭紙・日用雑貨の販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年5月期から2025年5月期までの5期間を見ると、売上高は100億円前後で安定して推移しています。利益面では、2021年5月期に赤字を計上しましたが、翌期以降は黒字を維持しています。ただし、直近の2025年5月期は前期比で利益率が低下しており、売上高は横ばいながらも利益が減少する傾向が見られます。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 339.2億円 105.5億円 103.7億円 101.3億円 102.2億円
経常利益 9.5億円 7.1億円 5.9億円 7.0億円 5.6億円
利益率(%) 2.8% 6.7% 5.7% 7.0% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.7億円 6.2億円 3.9億円 3.7億円 3.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を比較すると、売上高は微増しましたが、売上原価率の変動は小さく、売上総利益は増加しました。一方で、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益および営業利益率は低下しています。コスト増が利益を圧迫する構造となっています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 101.3億円 102.2億円
売上総利益 32.0億円 33.1億円
売上総利益率(%) 31.6% 32.4%
営業利益 5.3億円 4.3億円
営業利益率(%) 5.2% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9.2億円(構成比32%)、荷造運搬費が3.5億円(同12%)を占めています。売上原価においては、商品期首棚卸高や当期商品仕入高などが主な構成要素となります。

(3) セグメント収益


不織布事業は、クリーン分野やコンシューマー分野の販売が増加しましたが、ウェルネスケア分野の伸び悩みやエコプロダクツ分野の減少等により、セグメント利益は減少しました。その他の事業は、除菌関連事業の販路拡大や不動産賃貸事業のテナント入居により、増収増益となりました。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
不織布 99.2億円 99.6億円 4.9億円 3.6億円 3.6%
その他 2.0億円 2.6億円 0.4億円 0.7億円 25.6%
調整額 -0.4億円 -0.4億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 101.3億円 102.2億円 5.3億円 4.3億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.4%で市場平均を上回っています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 5.3億円 8.5億円
投資CF -4.0億円 3.2億円
財務CF -2.1億円 -2.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「より清潔・より快適」を提供する会社を目指しています。社会のニーズに応え、顧客の利便性、快適性、生産性の向上に寄与する製品・サービスを生み出し提供することで、社会の発展に貢献することを目標としています。

(2) 企業文化


同社グループは、「伝統とは継続的な開拓の歴史との認識」のもと、顧客の満足や喜びを第一に考えた新しい付加価値を提案し、豊かな暮らしと文化に貢献するという理念を持っています。「伝統力」「革新力」「付加価値力」の3つの柱を基軸に、必要とされる企業を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョン「OZU Innovation2034」を策定しており、自ら製品を企画・開発・生産する機能を備えた商社への発展を目指しています。2034年に向けた数値目標として、連結売上高150億円(現状の1.5倍規模)を掲げています。

* 連結売上高:150億円
* 事業拡大戦略1による拡大目標:30億円
* 事業拡大戦略2による拡大目標:20億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の深耕と新規事業の探索を軸とした成長戦略を推進しています。既存商品・顧客を軸とした展開では、製造現場や医療・美容分野等の注力分野で新用途・新機能を開発します。新規事業探索では、農漁業、予防医療、在宅医療、防災、先端技術、環境対策などの領域に着目し、提携や買収も活用して事業化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材の視点や独創性が発揮される職場環境の形成を目指しています。従業員の成長を促すため、階層別研修やビジネススキル研修、自己啓発支援制度「学びの場」などを導入しています。また、役割・責任に応じた等級制度や評価制度を導入し、働きやすい職場とやりがいのある業務の両立を図る人事制度改革を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 42.9歳 14.9年 6,772,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 5.9%
男性労働者の育児休業取得率 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 76.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 71.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) -%


※労働者の男女の賃金の差異(非正規)について:同社には女性のパート・有期労働者が存在しないため、記載しておりません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育研修費総額(2,735千円)、一人あたり教育研修費(25千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 株式会社小津商店との関係


筆頭株主である株式会社小津商店は同社の議決権の28.1%を保有しており、同社の経営方針等に変更が生じた場合、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループは不織布や除菌製剤等を扱い、小津商店は不動産や和紙事業に特化するという棲み分けを行っていますが、資本関係による影響リスクが存在します。

(2) 販売先業界の需要動向


主力製品である不織布事業は、エレクトロニクス、半導体、医療、コスメティック業界向けが中心です。これらの業界の需要動向や市況の変化は同社の業績に大きな影響を与えます。また、農業関連事業は夏場に販売が集中するため、業績に季節変動が生じる傾向があります。

(3) 素材調達リスク


国内外の多くの取引先から不織布製品の素材を仕入れています。何らかの理由で素材の仕入が滞った場合、製品やサービスの提供ができなくなり、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。サプライチェーンの寸断や調達難が事業継続のリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。