※本記事は、ミタチ産業株式会社 の有価証券報告書(第49期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミタチ産業ってどんな会社?
エレクトロニクス商社として、半導体・電子部品の販売や基板実装等の受託加工(EMS)を展開しています。
■(1) 会社概要
1976年に名古屋市で設立され、1987年に東芝と特約代理店契約を締結しました。1996年にはフィリピンで生産拠点M.A.TECHNOLOGY,INC.を取得し、EMS事業を拡大。2004年に名証二部・東証二部に上場し、2005年に両市場の一部へ指定替えを行いました。近年はインドに新拠点を設立するなど海外展開を加速させています。
2025年5月31日現在、連結従業員数は502名、単体では143名です。筆頭株主は株式会社JUで、第2位は株式会社三菱UFJ銀行、第3位はINTERACTIVE BROKERS LLCです。株式会社JUは、代表取締役社長である橘和博氏が代表を務める資産管理会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社JU | 24.40% |
| 株式会社三菱UFJ銀行 | 2.51% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 2.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は橘 和博氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橘 和博 | 代表取締役社長 | 1993年東芝デバイス入社を経て1999年同社入社。2009年台湾子会社董事長などを歴任し、2014年8月より現職。 |
| 奥村 浩文 | 専務取締役 | 1984年中部NEC商品販売入社。1985年同社入社。取締役、常務取締役、香港子会社董事長などを経て2023年8月より現職。 |
| 田村 学 | 取締役 | 1989年東芝入社。東芝デバイス&ストレージ国内営業統括部長などを経て2021年同社入社。2023年8月より現職。 |
| 野村 慎一 | 取締役 | 1994年同社入社。執行役員、三河支店長などを経て、営業本部副本部長などを歴任。2019年8月より現職。 |
| 大島 卓也 | 取締役(常勤監査等委員) | 1984年大和産業入社。1987年同社入社。執行役員、取締役、常務取締役、常勤監査役を経て2020年8月より現職。 |
社外取締役は、中浜 明光(中浜明光公認会計士事務所所長)、松岡 正明(公認会計士松岡正明事務所所長)、澁谷 歩(安藤・澁谷法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業部門」「海外事業部門」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 国内事業部門
日本国内において、カーエレクトロニクス、民生機器、産業機器、アミューズメント機器等の分野を対象に、半導体や電子部品などの仕入販売および組付加工販売を行っています。また、一部で産業機器の販売も手掛けています。
主な収益源は、半導体や電子部品等の販売による商品代金です。株式会社デンソーや株式会社アイシンなどの顧客に対し、東芝デバイス&ストレージ株式会社などの仕入先から調達した製品を販売しています。運営は主にミタチ産業やMEテック株式会社が行っています。
■(2) 海外事業部門
海外拠点において、電子機器および電子部品の組付加工販売(EMS)、ならびに半導体、電子部品などの仕入販売を行っています。中国、東南アジアなどに展開し、顧客の海外生産をサポートしています。
収益源は、電子部品の販売収益およびユニット製品等の受託加工(EMS)による対価です。運営は、M.A.TECHNOLOGY,INC.(フィリピン)、美達奇(香港)有限公司、MITACHI (THAILAND) CO.,LTD.などの海外現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2025年5月期は売上高が前期比約2.5倍の982億円へと急拡大しました。これは主要取引先における商流移管の影響が大きく寄与しています。利益面でも増益基調を維持しており、経常利益は24億円、当期純利益は17億円となりました。利益率は売上規模の拡大に伴い低下していますが、絶対額では成長しています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 339億円 | 425億円 | 433億円 | 389億円 | 982億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 21億円 | 25億円 | 17億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 5.0% | 5.7% | 4.4% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 9億円 | 12億円 | 9億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も前期の43億円から53億円へと増加しました。一方で売上総利益率は低下しています。営業利益は21億円となり、前期比で増益を確保しました。商流の変化により売上規模が拡大し、収益構造が変化していることが見て取れます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 389億円 | 982億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.1% | 5.4% |
| 営業利益 | 16億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が10億円(構成比32%)、運賃及び荷造費が6億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業部門は、自動車分野での半導体販売における商流移管の影響で売上が急増し、利益も伸長しました。海外事業部門も民生分野のEMSが堅調に推移し、増収増益となりました。両セグメントともに好調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内事業部門 | 245億円 | 823億円 | 17億円 | 22億円 | 2.6% |
| 海外事業部門 | 144億円 | 159億円 | 4億円 | 6億円 | 3.8% |
| 連結(合計) | 389億円 | 982億円 | 16億円 | 21億円 | 2.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | -92億円 |
| 投資CF | -3億円 | -2億円 |
| 財務CF | -16億円 | 108億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「顧客第一主義」「人間尊重」「一流へのチャレンジ」「創造的革新」「企業の社会的貢献」を経営理念として掲げています。社名の由来である「三つ(顧客・仕入先・同社)で成り立つ」精神を基盤とし、特定の事業に限定せずあらゆる分野に挑戦し続けることで、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
創業精神である「三つで立つ」という三位一体の精神を根幹としています。常に新しい視点で物事を見つめ創造し続ける姿勢や、従業員が互いに尊重し自立的に学ぶ姿勢を重視しています。「MONOもKOTOも」のスローガンのもと、商材とサービスの拡充を追求し、変化する時代を勝ち抜く企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2025年5月期から2027年5月期までの3ヶ年の中期経営計画「中期経営計画2026」を策定しています。最終年度である2027年5月期において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,000億円
* 営業利益:30億円
* ROE:10%以上の維持・向上
■(4) 成長戦略と重点施策
「基盤ビジネスの強化・拡大」「新たな収益基盤の創出」「健全な経営基盤の維持・強化」を重点施策としています。モビリティや産業機器分野での取り組み強化、EMSと周辺領域の統合によるものづくりプロバイダーへの進化、デジタル技術を活用した新たな価値提供などを推進しています。
* 売上高1,000億円(2027年5月期目標)
* 営業利益30億円(2027年5月期目標)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人間尊重」と「一流へのチャレンジ」の理念のもと、従業員が互いに尊重し、自立的に学び、やりがいを持って活躍できる環境の構築を目指しています。健康経営の推進、定期的なローテーション、資格取得支援、タレントマネジメント環境の構築などを通じて、持続的な発展を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 42.7歳 | 12.7年 | 5,806,081円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は常時雇用する労働者が300人以下により公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の販売先・仕入先への依存
売上高において株式会社デンソーグループへの依存度が高く、同社の業績や購買方針の変化が影響を及ぼす可能性があります。また、仕入面では東芝グループとの取引関係が深く、同グループの事業戦略や政策変更が、同社の財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 在庫保有リスク
半導体や電子部品の供給維持のために在庫を保有していますが、顧客の生産縮小や需要予測の乖離、仕入先の生産終了等により在庫が増加・滞留するリスクがあります。滞留在庫として評価損を計上した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 為替相場・金利変動の影響
海外での販売・生産を行っているため、為替変動が業績に影響します。また、事業資金を主に金融機関からの借入で調達しており、金利が大幅に上昇した場合、支払利息の増加により利益が圧迫される可能性があります。
■(4) 経済状況や通商環境の変化
半導体・電子部品市場は、世界的な経済状況や通商環境、市場動向の影響を受けやすい特性があります。資源価格の変動や景気変動による需要の急減、通商構造の変化などが、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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