※本記事は、ミタチ産業株式会社の有価証券報告書(第50期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミタチ産業ってどんな会社?
半導体や電子部品の販売および電子機器の受託製造を手掛けるエレクトロニクス商社です。
■(1) 会社概要
同社は1976年に設立されたエレクトロニクス商社です。1987年に大手電機メーカーと特約代理店契約を締結して成長を加速させ、1996年にはフィリピンの製造会社を取得し受託加工事業に本格参入しました。2004年に東証・名証の第二部へ上場し、翌年には第一部銘柄へ指定、近年はインド等に拠点を拡充しています。
現在の従業員数はグループ全体で624名、単体で148名となっています。筆頭株主は資産管理会社であり同社代表が代表取締役を務めるJUで、第2位は三菱UFJ銀行、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、金融機関も上位に名を連ねる安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| JU | 24.40% |
| 三菱UFJ銀行 | 2.51% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は橘和博氏が務めており、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橘和博 | 代表取締役社長社長執行役員 | 東芝デバイス入社後、1999年同社入社。台湾美達旗股份有限公司董事長、JU代表取締役社長を経て、2014年より代表取締役社長に就任。2025年8月より現職。 |
| 沖久和 | 取締役上席執行役員民生・産業機器営業統括担当海外営業統括担当営業推進部担当 | ローム入社、海外拠点の副総経理などを経て2014年同社入社。中国・東南アジアの現地法人トップを歴任し、2025年8月より現職。 |
| 田村学 | 取締役執行役員新規事業・ソリューション統括担当 | 東芝入社後、東芝デバイス等で営業部門の要職を歴任。2021年同社に執行役員として入社し、取締役営業本部本部長などを経て2025年8月より現職。 |
| 野村慎一 | 取締役執行役員車載営業統括担当 | 1994年同社入社。三河支店長、執行役員を経て2019年取締役に就任。海外・ソリューション部門や営業本部副本部長などを歴任し、2025年8月より現職。 |
| 大島卓也 | 取締役(常勤監査等委員) | 大和産業入社後、1987年同社入社。執行役員、常務取締役などを歴任し、2017年常勤監査役に就任。2020年8月より現職。 |
社外取締役は、中浜明光(中浜明光公認会計士事務所所長)、松岡正明(公認会計士松岡正明事務所所長)、澁谷歩(安藤・澁谷法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業部門」「海外事業部門」を展開しています。
■(1) 国内事業部門
国内における半導体や電子部品などの仕入販売、ならびに組付加工販売を行っています。主に自動車産業や産業機器、アミューズメント関連企業が顧客となります。
仕入先から製品を調達し、顧客のニーズに合わせた提案販売を行うことで得られる販売益が主な収益源です。事業の運営は主にミタチ産業とMEテックが担っています。
■(2) 海外事業部門
海外における電子機器および電子部品の組付加工(EMS)や、半導体・電子部品などの仕入販売を展開しています。現地に進出する日系自動車部品メーカーなどが主要顧客です。
部材の調達から製品の受託加工、販売までをワンストップで提供することで収益を得ています。フィリピンのM.A.TECHNOLOGY,INC.をはじめとする各国の現地子会社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、自動車部品メーカー向けの需要拡大などにより、売上高は右肩上がりで成長し、直近では1,200億円を突破しました。利益面でも増益傾向が続いており、高い利益水準を維持しています。外部環境の変化に柔軟に対応し、安定的な成長軌道を描いていることがうかがえます。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 425億円 | 433億円 | 389億円 | 982億円 | 1,203億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 25億円 | 17億円 | 24億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 5.7% | 4.4% | 2.4% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 12億円 | 9億円 | 11億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益も着実に増加しています。利益率としては安定した水準を維持しつつ、事業規模の拡大によって営業利益の絶対額を大きく伸ばしていることが特徴です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 982億円 | 1,203億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 5.4% | 5.0% |
| 営業利益 | 21億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が11億円(構成比33%)、運賃及び荷造費が7億円(同21%)を占めています。売上原価の大部分は商品の仕入によるものです。
■(3) セグメント収益
国内事業部門は自動車分野の半導体販売やアミューズメント分野の好調により、売上高が大きく伸長しました。海外事業部門も自動車分野をはじめとする販売が堅調に推移し、増収に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 国内事業部門 | 823億円 | 1,024億円 |
| 海外事業部門 | 159億円 | 179億円 |
| 連結(合計) | 982億円 | 1,203億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -92億円 | 25億円 |
| 投資CF | -2億円 | -1億円 |
| 財務CF | 108億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来の経営理念として「顧客第一主義」「人間尊重」「一流へのチャレンジ」「創造的革新」「企業の社会的貢献」を掲げています。社名である「ミタチ」の由来は、お客様、仕入先様、同社が「三つで成り立つ」という三位一体の精神を表しており、「産業」は特定の事業に限定せずあらゆる分野に対応・挑戦していくことを意味しています。この理念のもと、常に新しい視点で物事を見つめ創造し続けることで、持続的な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「三つ(お客様・仕入先様・当社)で立つ」という精神を企業文化の根幹としています。従業員を会社の宝であり財産とする「人間尊重」の考え方を大切にし、お互いを尊重しながら自律的に学び、やりがいを持って挑戦できる環境づくりを推進しています。また、「顧客第一主義」のもと、お客様に必要とされる機能の変化や技術革新を活かした付加価値商品・サービスの創出に組織全体で取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2025年5月期から2027年5月期までの3か年の中期経営計画「中期経営計画2026」を策定し、変化する時代を勝ち抜く企業となることを目指しています。グループのさらなる発展に向け、事業領域の拡大や新たな価値提供による収益基盤の創出を推進しており、最終年度における以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:1,000億円
* 営業利益:30億円
* ROE(自己資本利益率):10%以上の維持・向上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は成長戦略として「基盤ビジネスの強化・拡大」「新たな収益基盤の創出」「健全な経営基盤の維持・強化」を掲げています。基盤ビジネスではモビリティ分野や自動化・省人化領域での取り組みを強化し、EMS周辺領域の対応による統合型ものづくりプロバイダーへの進化を目指しています。また、“MONOもKOTOも”のスローガンのもと、エレクトロニクスとデジタル技術をコアとした新たな価値提供によるビジネスモデルの構築を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を企業価値向上の源泉となる重要な経営資本と位置づけています。中期経営計画において「グループ視点での人的資本への投資、まなびたがる組織への仕組みづくり」を重点施策に掲げ、従業員一人ひとりの成長と能力発揮を促進しています。教育研修の充実や専門スキルの向上、DX人材の育成を図るとともに、従業員がやりがいを持って活躍できる働きやすい職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 42.8歳 | 12.4年 | 6,085,631円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女の賃金差異(全労働者) | 66.7% |
| 男女の賃金差異(正規雇用労働者) | 63.2% |
| 男女の賃金差異(パート・有期労働者) | 122.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定販売先への依存
同社グループの主要な販売先には大手自動車部品メーカーが存在し、特定の取引先への依存度が高くなっています。自動車関連市場の動向や販売先の購買方針の変化が、同社の財政状態や業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定仕入先への依存
主要な仕入先として大手電機メーカーグループがあり、特約店基本契約を締結して長年にわたり緊密な関係を維持しています。しかし、仕入先の事業戦略や代理店政策の変更等により、顧客ニーズとの乖離や商流に変化が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 市場の競争激化と競合
同社が取り扱う半導体、電子部品、EMSなどの市場は競争が激しく、国内外の多くの商社や製造業者と競合しています。技術革新や顧客ニーズの変化に適応できず、競争力が維持できなくなった場合、売上や利益の低下を引き起こすリスクがあります。



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