※本記事は、株式会社魚力 の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年8月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 魚力ってどんな会社?
魚力は、百貨店や駅ビル内の鮮魚専門店・寿司店の運営を主力とする「魚」の総合企業です。
■(1) 会社概要
同社は1930年に魚力商店として創業し、1985年に現在の商号へ変更して鮮魚小売営業を譲り受けました。2003年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2015年には同市場第一部へ指定替えとなりました。その後、2018年に米国事業統括会社および卸売事業会社を設立するなど海外展開を進め、2025年には株式会社最上鮮魚の株式を追加取得して連結子会社化するなど、事業規模を拡大しています。
現在の連結従業員数は717名(単体551名)です。筆頭株主は株式会社山桂で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はメガバンクとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山桂 | 36.73% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.75% |
| 三菱UFJ銀行 | 2.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役会長は山田雅之氏、代表取締役社長は黑川隆英氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田 雅之 | 代表取締役会長 | 1985年同社入社。商品部長、営業統括本部長などを経て2017年より社長。2024年6月より現職。Uoriki America Inc.取締役社長等を兼任。 |
| 黑川 隆英 | 代表取締役社長 | 1985年同社入社。営業部長、魚力商事社長、営業統括本部長、店舗開発室長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 山田 虎生 | 常務取締役執行役員経営企画室長 | 旧日本長期信用銀行出身。三洋電機クレジット事業金融部長、電源開発財務室次長などを経て2016年同社入社。2023年6月より現職。 |
| 山口 昌利 | 取締役執行役員営業統括本部長営業管理部長 | 西友フーズ、西友を経て2004年同社入社。営業部長、寿司部長などを歴任。2025年6月より現職。 |
| 北川 幸一 | 取締役執行役員商品統括本部長 | 1988年同社入社。商品部長、魚力商事社長、営業統括本部長などを歴任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、岩﨑哲也(シティア公認会計士共同事務所代表パートナー)、新藤えりな(六番町総合法律事務所パートナー)、長谷部元靖(元スターゼンインターナショナル代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」「飲食事業」「卸売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 小売事業
首都圏の駅ビル、百貨店、スーパーを中心にテナントとして出店し、一般消費者に対して鮮魚・寿司の販売を行っています。鮮魚は豊洲市場や産地直送の生魚を中心に豊富な品揃えを展開し、寿司はテイクアウト販売を行っています。また、海外ではタイ国内の大型ショッピングモールなどにも出店しています。
一般消費者から商品の対価として代金を受け取るモデルです。運営は主に同社が行っていますが、九州地区では株式会社最上鮮魚が、タイではCP-Uoriki Co.,Ltd.が事業を展開しています。
■(2) 飲食事業
テイクアウト寿司で蓄積した商品ノウハウをもとに、寿司飲食店、海鮮居酒屋、および魚介類をメインとした飲食店を展開しています。インバウンド需要の取り込みや、「魚力鮨」「魚力寿司」といったブランドの浸透を図っています。
来店客から飲食サービスの対価として代金を受け取るモデルです。運営は同社が行っています。
■(3) 卸売事業
食品スーパー、地方荷受業者、飲食店、その他国内外の商社等へ水産物を販売しています。国内での事業拡大に加え、米国やアジアなど海外市場への販売も行っています。
取引先企業から商品の販売代金を受け取るモデルです。運営は主に連結子会社の魚力商事株式会社が行っています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、主に同社においてテナント事業等を行っています。
テナント賃貸料などを受け取るモデルです。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間において堅調に推移しており、360億円台で安定しています。利益面では、経常利益が14億円から21億円のレンジで変動しつつも、直近では20億円を超える水準を維持しています。当期利益も増加傾向にあり、利益率は4%台から5%台後半へと改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 321億円 | 341億円 | 337億円 | 363億円 | 366億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 21億円 | 14億円 | 20億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 5.2% | 6.0% | 4.2% | 5.6% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 10億円 | 7億円 | 14億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は微増し、売上総利益も増加していますが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益はやや減少しました。一方で、投資有価証券売却益などの計上により、当期純利益は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 363億円 | 366億円 |
| 売上総利益 | 146億円 | 149億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.3% | 40.6% |
| 営業利益 | 16億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が52億円(構成比38.6%)、賃借料が29億円(同22.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
小売事業は既存店売上の伸長により増収増益となりました。飲食事業はインバウンド需要などで増収し、黒字転換を果たしました。一方、卸売事業は海外向け販売の減少などで減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売事業 | 307億円 | 315億円 | 17億円 | 18億円 | 5.6% |
| 飲食事業 | 14億円 | 15億円 | -0.1億円 | 0.0億円 | 0.1% |
| 卸売事業 | 41億円 | 35億円 | 1億円 | 0.3億円 | 0.9% |
| その他 | 0.6億円 | 0.7億円 | 0.3億円 | 0.4億円 | 60.5% |
| 連結(合計) | 363億円 | 366億円 | 16億円 | 15億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがプラスで、財務CFがマイナスの「改善型」です。本業で稼いだ資金に加え、投資有価証券の売却等による資金流入があり、これらを借入返済や配当支払いに充てている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | 22億円 |
| 投資CF | -3億円 | 6億円 |
| 財務CF | -7億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「魚によって、世界の人々を健康で幸せにする」を使命(ミッション)とし、「魚食文化を守り、日本の水産業の発展に貢献する」を将来像(ビジョン)として掲げています。この企業理念の下、国内基幹事業をベースに海外進出を進め、SDGsや社会貢献にも配慮した経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は創業以来の精神である「良い魚を鮮度良く、より安い価格で提供する」を継続して持ち続けています。この精神に基づき、顧客の支持を絶対的なものとするとともに、日本の伝統文化である魚食の普及に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、成長性が直接的に分かりやすく表現される指標として、売上高および営業利益を経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、国内外で活躍する「魚」総合企業を目指し、鮮魚・寿司の小売事業の強化を図っています。バイイングパワー強化や物流体制見直しによる原価低減、最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築を進めています。また、卸売事業の拡大や海外展開、養殖業者との提携による安定的調達にも取り組んでいます。
* 最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築
* 寿司ブランドの浸透、確立
* 海外市場での新たな販売先の開拓
* 養殖業者との資本・業務提携による安定的調達
* 物流の効率化とグループ情報システムのレベルアップ
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、対面型サービスを行う上で従業員の確保が最重要であるとし、女性正社員の比率向上や離職率低下、女性管理職の増員を目標としています。また、将来を担う経営幹部や店舗管理職の育成、パート・アルバイトの確保と早期戦力化に向け、採用活動や社員教育を強力に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 13.9年 | 6,401,271円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.5% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 88.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全に関するリスク
同社グループは生鮮食品を扱っているため、食中毒などの事故が発生した場合、営業への支障や損害賠償により業績に影響を及ぼす可能性があります。また、食の安全に関わる事件や報道により、消費者の魚食への購買敬遠ムードが高まった場合も、売上減少につながる可能性があります。
■(2) 魚介類の需給構造変化と価格変動
世界的な魚食需要の増加や天然資源の枯渇化により、魚介類の価格変動リスクがあります。需給バランスの変化や海外紛争等によるサプライチェーンの混乱が生じた場合、仕入価格の高騰や供給不足が発生し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 消費者ニーズの変化と競合
消費者の魚食減少や調理済み食品へのシフト、ワンストップショッピング志向の高まりなど、購買動向の変化に対応できない場合、業績に影響が出る可能性があります。また、近隣に大規模な競合商業施設がオープンした場合、売上高が減少する恐れがあります。
■(4) 人材の確保・育成
新規出店や店舗運営には優秀な人材が不可欠ですが、雇用情勢の改善やパート・アルバイトの時給上昇により採用環境は厳しくなっています。人材の確保や育成が不十分な場合、店舗運営や成長戦略に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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