魚力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

魚力 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

魚力は東京証券取引所プライム市場に上場しており、首都圏を中心とした鮮魚や寿司の小売事業を中核に、飲食事業や卸売事業を展開しています。業績面では最上鮮魚の連結子会社化などが寄与し、直近の通期業績は大幅な増収を達成し、コスト削減の徹底により営業利益も前期を上回る増収増益の傾向にあります。


※本記事は、魚力の有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 魚力ってどんな会社?


首都圏の駅ビルや百貨店で鮮魚・寿司の小売を行う鮮魚専門店グループです。

(1) 会社概要


同社は1930年に魚力商店として創業し、1953年に会社設立を果たしました。1966年に最初のテナント出店を行い、1990年からは寿司の小売販売事業も開始しています。1997年に卸売事業、2000年には飲食事業へと領域を広げ、2003年に東証二部へ上場しました。直近では2025年に最上鮮魚を連結子会社化し、事業基盤の拡大を推進しています。

同社グループの従業員数は連結で708名、単体で540名です。筆頭株主は山桂で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は三菱UFJ銀行です。

氏名 持株比率
山桂 36.71%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.26%
三菱UFJ銀行 2.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は黑川隆英氏が務めており、社外取締役の比率は27.2%です。

氏名 役職 主な経歴
黑川隆英 代表取締役社長 1985年同社入社。営業部長、専務取締役、魚力商事や最上鮮魚の代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。
山田雅之 代表取締役会長 1985年同社入社。商品統括本部長、営業統括本部長、代表取締役社長などを歴任。日本フィッシャリーサポート代表取締役社長なども務め、2024年6月より現職。
山田虎生 常務取締役執行役員経営企画室長 1990年日本長期信用銀行入行。グラックス・アンド・アソシエイツ取締役などを経て2016年同社入社。2018年6月取締役に就任し、2023年6月より現職。
山口昌利 取締役執行役員営業統括本部長営業管理部長 1990年西友フーズ入社。2004年同社入社。執行役員寿司部長などを経て2019年6月取締役就任。その後営業管理部長等を経て2025年6月より現職。
北川幸一 取締役執行役員商品統括本部長 1988年同社入社。商品部長や魚力商事代表取締役社長などを歴任。同社執行役員営業統括本部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、岩﨑哲也(シティア公認会計士共同事務所開設)、新藤えりな(六番町総合法律事務所パートナー)、長谷部元靖(アール&エス人材開発代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売事業」「飲食事業」「卸売事業」および「その他」事業を展開しています。

小売事業


一般消費者に対して、産地直送の新鮮な生魚やテイクアウト用のセット寿司などの販売を行っています。首都圏の駅ビルや百貨店、スーパーを中心に、鮮度と値ごろ感をアピールしたテナント出店を展開しているのが特徴です。

収益源は、一般消費者からの商品販売代金です。運営は主に同社および子会社の最上鮮魚が行っており、タイ国内のショッピングモールなどでは関連会社のCP-Uorikiが事業を展開しています。

飲食事業


テイクアウト寿司で蓄積した商品ノウハウをもとに、寿司飲食店、海鮮居酒屋、魚介類メインの飲食店などを運営し、顧客に食事を提供しています。

収益源は、来店客からの飲食代金です。運営は主に同社および子会社の最上鮮魚が担っており、品質での差別化や新たな顧客層の取り込みを図る新業態の展開も行っています。

卸売事業


食品スーパー、地方荷受業者、飲食店、その他国内外の商社などに対して、海産物などの商品を販売しています。国内取引の拡大に加えて、米国やアジアを中心とした海外市場への輸出も手がけています。

収益源は、取引先企業からの商品販売代金です。運営は主に子会社の魚力商事が担っており、国内外の有力企業とのパートナーシップを通じて販路を開拓しています。

その他


主にテナントとして出店している施設に関連するテナント事業などを行っています。

収益源は、関連する事業活動からの各種収入です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりで推移しており、直近では子会社の新規連結化も寄与して436億円へと大幅に拡大しています。経常利益も20億円台を維持しながら堅調に推移しており、安定した収益基盤を構築していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 341億円 337億円 363億円 366億円 436億円
経常利益 21億円 14億円 20億円 21億円 23億円
利益率(%) 6.0% 4.2% 5.6% 5.6% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 7億円 14億円 14億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。コスト削減の徹底により営業利益も増加していますが、売上高の伸び率に比べて利益の伸びが緩やかであるため、営業利益率は微減しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 366億円 436億円
売上総利益 149億円 178億円
売上総利益率(%) 40.6% 40.9%
営業利益 15億円 16億円
営業利益率(%) 4.1% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が65億円(構成比40%)、賃借料が35億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の小売事業が子会社化の寄与により大幅な増収増益を牽引しています。飲食事業はコスト削減とオペレーション改善により利益水準が大幅に改善し、卸売事業も堅調な売上を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
小売事業 315億円 382億円 18億円 20億円 5.1%
飲食事業 15億円 17億円 0.0億円 0.1億円 0.7%
卸売事業 35億円 36億円 0.3億円 0.3億円 0.8%
その他 0.7億円 0.7億円 0.4億円 0.5億円 67.6%
連結(合計) 366億円 436億円 15億円 16億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 8億円
投資CF 6億円 1億円
財務CF -8億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


使命(ミッション)「魚によって、世界の人々を健康で幸せにする」および将来像(ビジョン)「魚食文化を守り、日本の水産業の発展に貢献する」から成る企業理念を掲げています。国内の基幹事業をベースとしながら海外進出を進め、SDGsや社会貢献にも心を配りながら経営努力を重ねています。

(2) 企業文化


「良い魚を鮮度良く、より安い価格で提供する」という創業以来の精神を継続して持ち続けています。これにより、顧客の支持を絶対的なものとするとともに、日本の伝統文化である魚食の普及に真摯に取り組むことで、経営基盤をより確固たるものにする文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


成長性が直接的に分かりやすく表現されることから、売上高、営業利益などを経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として重視しています。事業基盤の強化を通じて、持続的な収益向上と成長を目指す方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


国内外で活躍する「魚」総合企業を目指し、基幹事業である鮮魚および寿司の小売事業の強化を進めています。バイイングパワーの強化や物流体制の見直しによる原価低減、効率的に経営資源を活用する「筋肉体質の店舗網」の構築に取り組んでいます。また、卸売事業では国内外の有力企業との連携により販路の開拓に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


長期的な視点で優秀な店舗人材を確保・定着させることで、顧客満足度の向上につなげています。現場力のある従業員の育成や、海外事業の展開に伴うグローバル人材の獲得を進める一方、従業員一人ひとりの多様性を尊重し、労働力の確保と組織体制の成熟度を高めることを重視しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 14.2年 6,293,850円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.4%
男女賃金差異(正規雇用) 82.8%
男女賃金差異(パート・有期) 87.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(41.7%)、月平均所定外労働時間(36時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品衛生と風評被害のリスク


生鮮食品や寿司を主に取り扱う同社グループにとって、食の安全確保は最重要事項です。衛生管理や適正な表示に最大限の努力を払っていますが、重大な事故が発生した場合や、放射能汚染等に起因する風評被害によって魚の購買敬遠ムードが高まった場合、売上の減少や損害賠償により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 魚介類の需給と市況変動のリスク


世界的な需要の増加や天然魚資源の枯渇により、魚介類の供給縮小や魚価の高騰が進行しています。同社は養殖事業者との提携や仕入手法の多様化で安定供給に努めていますが、大幅な需給関係の変化や仕入価格の変動、さらには地政学的リスクによるサプライチェーンの混乱が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 消費者ニーズの変化と競合激化のリスク


消費者の魚介類購入額の減少や簡便性ニーズの増加など、購買動向は変化しています。これに対応すべく商品開発や店舗運営の強化を進めていますが、変化への対応が不十分な場合や、異業態を含む競合店が近隣にオープンした場合、店舗売上が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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