※本記事は、株式会社IKホールディングス の有価証券報告書(第44期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. IKホールディングスってどんな会社?
生協等への卸売を行うセールスマーケティングと、韓国コスメや雑貨を販売するダイレクトマーケティングを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1982年にアイケイ商事有限会社として設立され、生協との取引を開始しました。2001年に店頭登録(後のJASDAQ)を果たし、その後東証二部、一部を経て現在はスタンダード市場に上場しています。2022年に持株会社体制へ移行し、現商号に変更しました。2024年にはITソリューション事業を営む子会社を譲渡し、事業ポートフォリオの再編を行っています。
同グループの従業員数は連結180名、単体29名です。筆頭株主は株式会社AMで、第2位は取締役会長の飯田裕氏、第3位はアイケイ取引先持株会となっています。上位株主には創業家関連と見られる株主や取引先持株会が名を連ねており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| AM | 15.57% |
| 飯田裕 | 2.29% |
| アイケイ取引先持株会 | 2.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は長野庄吾氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長野庄吾 | 代表取締役社長 | 1995年入社。営業部部門長、執行役員、専務取締役営業統括、プライムダイレクト社長などを歴任。2015年より社長兼COO、2025年6月より現職。 |
| 飯田裕 | 取締役会長 | 1982年アイケイ商事(現IKホールディングス)設立、取締役就任。1990年社長、2015年会長兼CEOなどを経て、2025年6月より現職。 |
| 高橋伸宜 | 常務取締役管理統括 | 1983年ツルカメ商事(現エステールホールディングス)入社。2000年同社入社。管理部部門長、取締役管理統括などを経て、2012年8月より現職。 |
社外取締役は、山本あつ美(公認会計士・山本あつ美公認会計士事務所所長)、和田圭介(弁護士・オリンピア法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ダイレクトマーケティング事業」、「セールスマーケティング事業」および「その他」事業を展開しています。
■ダイレクトマーケティング事業
TVショッピング、インターネットショッピング、リアル店舗を通じ、化粧品、雑貨、食品などを一般消費者に直接販売しています。特に韓国コスメブランド「hince」などの販売に注力しており、自社ECサイトやショッピングモールでの展開、直営店舗運営を行っています。
収益は、一般消費者からの商品代金により構成されています。運営は、主に株式会社プライムダイレクトがTV通販等を、株式会社フードコスメが韓国コスメの小売事業等を担当しています。
■セールスマーケティング事業
生活協同組合(生協)、通信販売会社、小売店舗(ドラッグストア、バラエティストア等)、海外企業に対する商品の卸売を行っています。生協ルートが主力ですが、近年は店舗ルートでの韓国コスメ卸売も拡大しています。
収益は、取引先企業への商品卸売代金から構成されています。運営は、主に株式会社アイケイが担当しており、企画・開発した商品を各販売チャネルへ供給しています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、グループ外への経営指導料収入などが含まれています。
収益は、非連結子会社等からの経営指導料等から構成されています。運営は、IKホールディングス(同社)等が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年5月期の208億円をピークに減少傾向にありましたが、2024年5月期から回復基調にあり、当期は152億円となっています。利益面では、2022年5月期から2期連続で経常赤字となりましたが、2024年5月期に黒字転換し、当期も増益を維持しています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 208億円 | 163億円 | 142億円 | 140億円 | 152億円 |
| 経常利益 | 7億円 | -3.2億円 | -2.1億円 | 3億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | -2.0% | -1.4% | 2.4% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | -1.5億円 | -5億円 | 0.5億円 | 0.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は140億円から152億円へと増加し、売上総利益も58億円から62億円へ増加しました。売上原価率の上昇が見られますが、増収効果により売上総利益額は伸長しています。営業利益は3億円から4億円へと増加し、営業利益率は2.4%から2.8%へ改善しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 140億円 | 152億円 |
| 売上総利益 | 58億円 | 62億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.6% | 40.9% |
| 営業利益 | 3億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が17億円(構成比30%)、運賃及び荷造費が11億円(同19%)、給与手当が7億円(同12%)を占めています。売上原価については、商品評価損などの影響を含みます。
■(3) セグメント収益
ダイレクトマーケティング事業は、TVショッピングでの商品絞り込みやEC販路の強化により増収となりましたが、利益面では減益となりました。セールスマーケティング事業は、店舗ルートでの韓国コスメ販売の好調や生協ルートの営業強化により、売上・利益ともに増加しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ダイレクトマーケティング事業 | 36億円 | 40億円 | 1億円 | 0.4億円 | 1.1% |
| セールスマーケティング事業 | 100億円 | 112億円 | 8億円 | 10億円 | 9.2% |
| その他 | 0.0億円 | 0.0億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 140億円 | 152億円 | 3億円 | 4億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に回す「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.4億円 | 1.1億円 |
| 投資CF | -3.4億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -9.9億円 | -1.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「ファンつくり」を共通の経営理念に掲げています。事業の永続発展のために最も大切なものが「ファンつくり」であると考え、商品やサービスを通じて顧客をファン化させることを目指しています。
■(2) 企業文化
「お客様立場主義」を追求する企業文化を持っています。これは、顧客をファン化させるための重要なファクターとして位置づけられており、商品・サービス・顧客対応など、あらゆる面でのお客様立場主義の実践を目指しています。グループ経営においては、経営資源の適切な結合や配分によりシナジーを生み出し、全体最適を図る方針です。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、ローリング方式による中期経営計画「IK WAY to 2028」を策定し、新たな飛躍のステージに向けた挑戦を行っています。経営指標としては、株主資本を効率的に活用し企業価値向上を図るため、ROE(自己資本利益率)を重要指標とし、以下の目標を掲げています。
* ROE:20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画において、①韓国コスメを主としたK-Beautyのリーディングカンパニー化、②EC事業の売上拡大、③海外事業の再構築を成長エンジンと定めています。韓国コスメでは取り扱いブランドの拡充と販売強化を行い、国内売上No.1を目指します。セールスマーケティング事業では生協等の収益基盤確立、海外事業ではアライアンスによる新商流構築を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材育成を最重要視し、新卒・中途を問わず「育ての親、里親」制度によるサポートを行っています。また、将来の経営者を育成するため、「ベビーボードメンバー」や「ジュニアボードメンバー」を指名し、1年間にわたる研修を実施するなど、計画的な人材育成プログラムを設けています。多様な人材が活躍できるよう、フレックスタイム制などの環境整備も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 36.9歳 | 8.3年 | 5,400,481円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の比率(75%超)、管理職に占める女性社員の比率(34%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 広告宣伝費の増加による影響
ダイレクトマーケティング事業およびセールスマーケティング事業では、TVインフォマーシャルや商品カタログを通じた販売促進を行っています。売上拡大には一定の広告宣伝費が必要であり、放映料の上昇や紙の取引価格高騰などのコスト増が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 韓国ブランドの化粧品販売に関するリスク
韓国ブランドの化粧品販売は、韓国企業のブランドホルダーとの販売代理店契約等に基づき行われています。契約が更新されなかった場合や、解約等により事業継続が困難となった場合、同社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 生協に対する売上依存度
セールスマーケティング事業において、生活協同組合ルートへの売上比率が高くなっています。グループ全体に対する売上比率は40%台まで低下していますが、依然として高いシェアを占めており、生協の事業方針や組合員数の動向によっては、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外事業活動に関するリスク
香港に販売子会社を有しており、海外事業を展開しています。現地の法的規制や商慣習等の変更、予期せぬ事態が発生した場合、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。



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