※本記事は、大黒天物産株式会社の有価証券報告書(第39期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大黒天物産ってどんな会社?
同社は「ラ・ムー」「ディオ」などの大型ディスカウントストアを運営する食品スーパーマーケット企業です。徹底した低価格戦略(ESLP)と24時間営業、PB商品開発を特徴としています。
■(1) 会社概要
1986年に有限会社倉敷きのしんとして設立され、1993年に大黒天物産へ改組しました。1997年に「ディオ」1号店、2003年に「ラ・ムー」1号店を出店し、同年には株式上場を果たしました。その後、東証二部を経て2012年に東証一部へ指定され、西源や小田商店、マミーズ等のM&Aにより事業エリアを拡大しています。
連結従業員数は1,915名、単体では1,509名です。筆頭株主は資産管理会社の七福神で、第2位は創業者の大賀昭司氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。同社は岡山県を本拠地とし、西日本を中心に店舗網を広げています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 七福神 | 41.08% |
| 大賀 昭司 | 8.13% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名、計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大賀昌彦氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大賀 昌彦 | 代表取締役社長 | 2010年入社。社長室長、ブルーオーシャン戦略室長、商品本部長、営業本部長などを歴任し、2024年8月より現職。 |
| 大村 昌史 | 専務取締役経営戦略室長 | 2011年入社。総務部長、商品管理部長、店舗開発部長などを経て、2024年8月より現職。 |
| 大賀 友貴 | 取締役経営企画室長 | 2011年入社。経営企画室課長を経て、2023年8月より現職。 |
| 難波 洋一 | 取締役経理部長兼人事部長兼管理部門担当 | 2007年入社。経理部次長、経理部長を経て、2025年7月より現職。 |
| 井上 博司 | 取締役情報システム室長 | 2007年入社。情報システム室次長、室長を経て、2025年8月より現職。 |
社外取締役は、野田尚紀(野田公認会計士事務所所長)、福田正彦(元中国銀行常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 小売事業
食品を中心としたスーパーマーケット事業を行っており、「ラ・ムー」「ディオ」などのディスカウントストアを運営しています。独自開発のPB商品「D-PRIDE」など、高品質・低価格な商品の提供に注力しています。
収益は一般消費者からの商品販売代金によって構成されています。運営は主に大黒天物産のほか、連結子会社の西源、小田商店、マミーズなどが各地域で店舗を展開しています。
■(2) その他の事業
店舗開発に係るコンサルタント事業、不動産賃貸業、卸売事業、食品の製造販売などを手掛けています。また、酪農や魚の養殖といった第一次産業にも取り組み、製造小売業(SPA)としての機能を強化しています。
収益はテナント料や卸売代金、製品販売代金などから得ています。運営は大黒天物産のほか、夜寿司(飲食)、恵比寿天(不動産)、大黒天ファーム笠岡(酪農)などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高・利益ともに拡大基調にあります。特に売上高は毎期増加を続け、2900億円規模に達しています。経常利益も一時的な変動はあるものの、直近では100億円を超える水準まで成長しており、増収増益のトレンドを維持しています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,216億円 | 2,242億円 | 2,422億円 | 2,701億円 | 2,929億円 |
| 経常利益 | 88億円 | 89億円 | 48億円 | 95億円 | 101億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 4.0% | 2.0% | 3.5% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 51億円 | 52億円 | 33億円 | 61億円 | 64億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約23%台で安定しています。営業利益および営業利益率も改善傾向にあり、事業規模の拡大に伴い利益創出力が維持・向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,701億円 | 2,929億円 |
| 売上総利益 | 623億円 | 687億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.1% | 23.5% |
| 営業利益 | 94億円 | 98億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が205億円(構成比35%)、その他が132億円(同22%)を占めています。売上原価に関しては、その内訳は記載されていませんが、売上高に対する売上原価率は約77%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の小売事業は、新規出店や既存店の活性化により売上が伸長しました。その他の事業は減収となりましたが、全体としては小売事業の成長が業績を牽引しています。なお、同社は単一セグメントに近い事業構造ですが、販売実績として以下の数値が開示されています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| 小売事業 | - | 2,918億円 |
| その他の事業 | - | 11億円 |
| 連結(合計) | - | 2,929億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動で生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産の取得・売却による資金の動きを表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する状況を示しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 214億円 | 114億円 |
| 投資CF | -130億円 | -168億円 |
| 財務CF | -50億円 | 18億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「豊かさの追求」を存在意義として掲げています。出店地域の顧客、従業員、株主、取引先など多くの人々を豊かにすることを目指し、「自分を変え、会社を変え、社会を変える」という経営理念のもと、会社自身が年々変化し続けることを重視しています。
■(2) 企業文化
経営理念の実現には、社員一人ひとりの日々向上していく「自己革新」が欠かせないと考えています。常に変革し続けることで「ESLP(エブリデイ・セーム・ロープライス)」を実現し、顧客の食品に関する支出を引き下げることで地域社会に貢献する文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、資本効率の向上とステークホルダーへの利益還元を両立させるため、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 連結ROE(自己資本利益率):安定的に10%以上
* 連結ROA(総資産経常利益率):15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「5つの構想(出店、PC、物流、組織、人財)」を掲げ、高速多店舗化による規模拡大を加速させています。競合激化に耐えうる基盤として「ローコスト経営」を確立し、自社物流の構築や産地からの最短定温物流による鮮度向上、製造小売業(SPA)化を推進することで、高品質・低価格な商品の提供を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
顧客や社会に貢献できる人財の育成を目指し、「大黒天大学」を設置して階層別研修を実施しています。また、ジョブローテーションによるスペシャリスト育成や、地域限定のエリア社員制度、社内公募制度、リフレッシュ制度などを導入し、多様な人材がやりがいを持って長く働ける環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 38.8歳 | 8.1年 | 4,860,013円 |
※平均年間給与は賞与及び時間外手当を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 38.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 104.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界の消費動向と競争
小売業界の業績は、景気や消費動向、他社との競争状況に大きく左右されます。同社は店舗網の拡大や商品開発、販売力の強化で活性化を図っていますが、消費者の節約志向の高まりや競合激化などの業界要因により、財政状態や経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 24時間営業に関するリスク
同社は多くの店舗で24時間営業を実施していますが、地元住民との調整等により継続が困難になる可能性があります。また、夜間の騒音・防犯対策等のコストが発生する一方で、計画通りの売上が確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。効率的な人員配置等でリスク低減を図っています。
■(3) 食品衛生管理
食品小売業として衛生管理や鮮度・温度管理を徹底し、食中毒等の防止に取り組んでいますが、万が一食中毒等が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償等により、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 家畜及び養殖魚の疾病等
連結子会社で酪農や魚の養殖事業を行っており、防疫体制には万全を期しています。しかし、BSEのような疾病の発生や赤潮などの環境悪化により、生産物の大量廃棄や販売停止を余儀なくされた場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。



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