大黒天物産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大黒天物産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大黒天物産は東証プライム市場に上場し、食品を中心としたスーパーマーケット等の小売事業を展開する企業です。直近の業績では、店舗網の拡大や価格競争力の強化により売上高が増加し増収を達成した一方で、出店コストや人件費の増加などの影響により経常利益は減益となっています。


大黒天物産転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、大黒天物産株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大黒天物産ってどんな会社?


食品を中心とした「ラ・ムー」や「ディオ」等のスーパーマーケットを展開し、低価格販売を強みとしています。

(1) 会社概要


1986年に加工食品の卸売を目的として設立され、1993年に大黒天物産へ改組されました。1997年に「ディオ」1号店を出店し、2003年には複合型商業施設「ラ・ムー」1号店を出店するとともにジャスダックに株式を上場しました。その後も継続的に出店エリアを拡大し、2012年に東証一部(現プライム市場)へ指定されています。

現在の従業員数は連結で2,038名、単体で1,617名です。大株主については、筆頭株主が法人である七福神で、第2位は創業家とみられる大賀公子氏、第3位も同族とみられる代表取締役社長の大賀昌彦氏となっています。

氏名 持株比率
七福神 42.42%
大賀公子 5.97%
大賀昌彦 5.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大賀昌彦氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
大賀昌彦 代表取締役社長 2007年にいいなダイニング入社。2010年に同社へ入社し、社長室長などを歴任。2020年に取締役副社長に就任し、商品本部長等を経て2024年8月より現職。
大村昌史 専務取締役経営戦略室長 2011年に同社入社後、総務部長などを歴任。2016年に取締役となり、経営企画室長等を経て2019年8月に専務取締役に就任。2024年8月より現職。
大賀友貴 取締役経営企画室長 2011年8月に同社入社。2018年に経営企画室課長、2021年に経営企画室室長を務め、2023年8月より現職。
難波洋一 取締役経理部長兼人事部長兼管理部門担当 2007年9月に同社入社。2014年に経理部長となり、2020年に取締役経理部長に就任。2022年に管理部門担当を兼務し、2025年7月より現職。
井上博司 取締役システム統括室長兼情報システム室長 2007年4月に同社入社し、2009年に情報システム室長に就任。2021年に取締役情報システム室長となり、2025年8月より現職。
福島真二 取締役社長室長兼物流戦略室長 2002年4月に同社入社。店舗運営部店長や商品部バイヤーを経て、2021年に物流戦略室課長。2024年に社長室長となり2026年3月より現職。


社外取締役は、野田尚紀(野田公認会計士事務所所長)、福田正彦(元中国銀行常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 小売事業


同社グループは、食品を中心としたスーパーマーケット事業を主力としています。「ディオ」や「ラ・ムー」などの店舗フォーマットを展開し、高品質・低価格な商品の提供を通じて、地域消費者の生活に貢献しています。また、食品の製造や乳牛の飼育、野菜の生産など自社製造・生産にも積極的に取り組んでいます。

主な収益源は、一般消費者に対する食品や日用品などの販売代金です。事業の運営は、同社を中心に、バリュー100、西源、小田商店、マミーズなどが店舗運営を行い、恵比寿天が店舗開発コンサルタントを担うなど、複数のグループ企業が連携して展開しています。

(2) その他の事業


小売事業に含まれない事業として、加工食品などの卸売事業や、寿司・割烹の提供、麺類の製造・販売、魚の養殖・販売、店舗什器や備品の輸入販売などを手がけています。

収益源は、法人顧客や一般消費者に対する商品・サービスの提供に対する対価です。事業の運営は、同社のほか、夜寿司、岡山インスタント麺、オリーブ水産、みずたぶる農園などがそれぞれの専門領域において担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は新規出店や既存店の活性化により、5期間を通じて右肩上がりで順調に拡大しています。一方、経常利益はエネルギー価格や原材料費、物流費等のコスト上昇の影響を受け増減を繰り返しており、直近では減益となっています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 2,242億円 2,422億円 2,701億円 2,929億円 3,192億円
経常利益 89億円 48億円 95億円 101億円 55億円
利益率(%) 4.0% 2.0% 3.5% 3.4% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 56億円 31億円 63億円 68億円 36億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益は前期から増加していますが、新規出店に伴う初期費用や人件費などの増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益は減益となりました。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 2,929億円 3,192億円
売上総利益 687億円 742億円
売上総利益率(%) 23.5% 23.3%
営業利益 98億円 53億円
営業利益率(%) 3.3% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が238億円(構成比35%)、賃借料が77億円(同11%)、減価償却費が66億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


小売事業は、継続的な新規出店による事業規模拡大の加速などにより、前期を上回る売上高を達成しました。その他の事業についても堅調に推移し、増収に寄与しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
小売事業 - 3,180億円
その他の事業 - 12億円
連結(合計) 2,929億円 3,192億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 114億円 110億円
投資CF -168億円 -267億円
財務CF 18億円 175億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「豊かさの追求」を会社の存在意義として掲げています。同社が存在することによって地域のお客様が豊かになり、会社、従業員、株主、取引先も豊かになることを目指しています。その実現のために「自分を変え、会社を変え、社会を変える」という経営理念のもと、会社も社員一人ひとりも日々変革し続けることを重視しています。

(2) 企業文化


経営方針のもとで常に会社が変革し続けることにより、「ESLP(エブリデイ・セーム・ロープライス)」を実現する文化が根付いています。「どこよりも安く買物していただける店」をコンセプトとして店舗展開し、消費者の食品に関する支出を引き下げることで、地域消費者の皆様に貢献することを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中長期の経営戦略として会社の規模拡大と資本効率の向上を目指し、以下の目標値を設定しています。

・2035年売上高:1兆円
・2035年店舗数:700店舗
・連結ROE(自己資本利益率):安定的に10%以上
・連結ROA(総資産経常利益率):15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


出店構想、PC構想、物流構想、組織構想、人財構想の「5つの構想」を掲げ、事業規模の拡大と収益体質の強化に取り組んでいます。自社物流の構築によるコスト削減や生鮮食品の鮮度向上を進めるとともに、商品供給店舗を拡大し高速多店舗化出店を加速させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「5つの力」を高める源泉は「人」であるとの考えのもと、「人を生かし称え合う社風づくり」を推進しています。教育専門部署「大黒天大学」を設置して階層別研修を実施するほか、職場の地域を限定したエリア社員制度や新しい分野に挑戦できる社内公募制度など、多様な人材が継続的に成長し長く活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 35.5歳 7.9年 4,962,485円

※平均年間給与は賞与及び時間外手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 48.1%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 100.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店政策と店舗展開


設備投資額を抑えた出店戦略を基本とし、ショッピングセンター型の「ラ・ムー」などを展開しています。商業施設内での他テナントの状況や、出店場所が確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、24時間営業を実施するためのコスト増や地元調整の難航もリスク要因となります。

(2) 自然災害に関するリスク


広域への出店拡大に伴い、大規模な地震や台風、水害等の自然災害により店舗や物流施設が被災する可能性が増加しています。物理的損害や人材、商品の確保に支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす恐れがあるため、防災マニュアルの整備や訓練などの事業継続計画(BCP)対策を平時から講じています。

(3) 食品衛生と品質管理


スーパーマーケットなどの小売業として、食品衛生法の規制を受けています。衛生管理や鮮度・温度管理を徹底し食中毒の発生防止に努めていますが、万が一、処理された食材等に起因する食中毒等が発生した場合には、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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