#記事タイトル:「オオバ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、株式会社オオバ の有価証券報告書(第91期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オオバってどんな会社?
総合建設コンサルタントとして、調査・測量から計画・設計、区画整理まで、まちづくりをトータルで支援するソリューション企業です。
■(1) 会社概要
1922年に創業者が和地工務所の経営を継承して測量事業を開始し、1947年に法人設立しました。1972年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2015年に同市場第一部へ指定替えとなりました。その後、2023年にオオバ調査測量を完全子会社化するなどグループ体制を強化しています。
同グループの従業員数は連結531名、単体467名です。筆頭株主は同社の取引先である三井不動産で、第2位は信託業務を行う三井住友信託銀行、第3位は同業のパシフィックコンサルタンツです。また、創業家出身者も大株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井不動産 | 4.57% |
| 三井住友信託銀行 | 4.16% |
| パシフィックコンサルタンツ | 3.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長執行役員は辻本茂氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 辻本 茂 | 代表取締役社長執行役員 | 1979年海外石油開発入社、三井信託銀行(現三井住友信託銀行)を経て2003年同社入社。財務部長、常務取締役等を歴任し、2013年代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 大塲 俊憲 | 取締役専務執行役員社長補佐内部統制・コンプライアンス担当 | 1996年同社入社。三井不動産出向を経て企画本部計画部長、執行役員等を歴任。2022年取締役専務執行役員に就任。2025年より現職。 |
| 英 直彦 | 取締役専務執行役員技術統括 | 1984年建設省(現国土交通省)入省。復興庁宮城復興局長などを経て2021年同社入社。2022年取締役専務執行役員に就任。2025年より現職。 |
| 皆木 信介 | 取締役常務執行役員営業本部長営業統括 | 1989年同社入社。営業本部副本部長、東京支店長、オオバ調査測量社長などを歴任。2024年取締役執行役員に就任。2025年より現職。 |
社外取締役は、加藤智康(三井不動産専務執行役員)、永井幹人(元みずほコーポレート銀行副頭取)、嶋中雄二(景気循環学会会長)、鈴木正規(元環境事務次官)、宇野晶子(元資生堂常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設コンサルタント事業」および「事業ソリューション事業」等を展開しています。
**地理空間情報業務**
都市・環境づくりの基礎となる地理や地形に関する詳細なデータを提供します。官公庁や民間事業者を顧客とし、最新IT機器を駆使した測量や補償調査業務、GIS(地理情報システム)による管理システム提供、防災シミュレーションなどを行っています。
運営は主にオオバ、オオバ調査測量などのグループ各社が行っています。
**環境業務**
環境保全・環境創造に向けた調査・計画を行います。環境調査や環境アセスメント、土壌汚染対策、廃棄物処理に配慮した施設計画、水やエネルギーの循環計画などを提供し、地球環境に配慮した都市環境づくりに貢献しています。
運営は主にオオバが担当しています。
**まちづくり業務**
都市基盤整備事業を通じて魅力あるまちづくりを提案します。都市基本計画や区画整理等に関わる企画提案・コンサルティングを行い、土地活用の相談や土地利用転換のサポートも実施しています。官公庁や土地所有者が主な顧客です。
運営は主にオオバおよび日本都市整備などの子会社が行っています。
**設計業務**
道路・橋梁・上下水道等の施設設計や、防災対策、アセットマネジメントを行います。ハザードマップ作成や耐震補強設計など、安全安心のための技術サービスを提供しています。
運営は主にオオバおよび東北都市整備などの子会社が行っています。
**事業ソリューション業務**
従来の建設コンサルタントの領域を超えたサービスを提供します。土地区画整理・開発行為の業務代行、地権者向け相続税務・不動産活用コンサルティング、老朽化マンション建替えコンサルなどを展開し、手数料収入などを得ています。
運営は主にオオバおよび近畿都市整備などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では180億円を超えています。利益面でも、経常利益率は10%を超える高水準を維持しており、12期連続の営業増益を達成するなど、収益力の向上が続いています。当期純利益も安定して推移しています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 159億円 | 159億円 | 156億円 | 165億円 | 181億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 17億円 | 18億円 | 19億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 8.7% | 10.4% | 11.4% | 11.7% | 11.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8.3億円 | 11億円 | 8.5億円 | 13億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は低下しましたが、営業利益は増加しており、増収効果が寄与しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、営業利益率は10%台を維持しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 165億円 | 181億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 57億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.5% | 31.7% |
| 営業利益 | 18億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 11.2% | 10.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比45%)を占めています。売上原価では、業務委託費が56億円(構成比49%)、人件費が36億円(同31%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは単一セグメントですが、業務区分別の売上高を開示しています。まちづくり業務や設計業務が伸長し、全体の増収を牽引しました。事業ソリューション業務も大きく増加しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| 地理空間情報業務 | 38億円 | 35億円 |
| 環境業務 | 8.1億円 | 9.0億円 |
| まちづくり業務 | 67億円 | 76億円 |
| 設計業務 | 43億円 | 41億円 |
| 事業ソリューション業務 | 7.5億円 | 19億円 |
| その他 | 1.0億円 | 0.9億円 |
| 連結(合計) | 165億円 | 181億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなりました。営業CFのマイナスは主に売上債権の増加や未成業務受入金の減少によるものです。投資CFは有形固定資産の取得等による支出、財務CFは自己株式の取得や配当金の支払による支出です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3.5億円 | -5.1億円 |
| 投資CF | -1.6億円 | -1.2億円 |
| 財務CF | -5.8億円 | -8.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「優れた技術と豊富な経験を活かし、高品質のサービスを提供することにより社会の発展に貢献するとともに、顧客・株主・社員の期待に応えること」を経営方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、社是として「誠」「積極進取」「和」の三つの精神を掲げています。これらに基づき、100年企業として信頼を築き、土木技術の研鑽を重ねながら、新たな100年に向けて挑戦する風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2024年5月期を初年度とする中期経営計画(~2028年5月期)を推進しています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
- 連結売上高:200億円
- 連結営業利益:24億円
- 連結営業利益率:12%
- ROE:12%
■(4) 成長戦略と重点施策
「まちづくり」を核としたコア業務の伸長と、社会課題解決に向けた新規業務の開拓を目指しています。技術力の向上を成長の要諦とし、有資格者の増大や多能工化を進めます。また、事業ソリューション業務の拡大、DX推進、M&Aや業務提携、株主還元の強化などを重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
技術力の向上が持続的成長の要諦であるとし、人的資本への投資を積極的に行っています。新卒・中途採用による人材確保に加え、資格取得促進や新技術習得により技術力を強化しています。また、多様な働き方を支える環境整備や、女性・シニア層を含む多様な人材の活躍推進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 39.8歳 | 13.2年 | 7,607,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 66.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 成果品の瑕疵責任と賠償
成果品のミスやエラー等による瑕疵責任が発生しないようチェック体制を強化していますが、建設コンサルタント業における瑕疵担保責任の範囲は損害賠償の限度がない契約約款に基づいているため、万が一の場合は業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 官公庁受注への依存
主要顧客である国及び地方公共団体の公共事業費予算が縮小された場合、同社グループの受注環境が悪化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 民間取引先の信用リスク
受注額の3~4割程度は民間企業との取引であり、経済状況の変化に伴い取引先企業が破綻した場合などには、貸倒れ等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材確保
事業成長には優秀な技術者や経営管理面の人材が不可欠ですが、企業間での獲得競争が激化しています。有能な人材の確保や雇用の維持が困難になった場合、競争力の維持や成長に影響を及ぼす可能性があります。



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