オオバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オオバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オオバは東証プライム市場に上場する総合建設コンサルタントです。地理空間情報、環境、まちづくり、設計、事業ソリューションの各業務を展開し、官公庁と民間の双方に強みを持ちます。直近の業績では、売上高は減少したものの、まちづくり業務などを核とした高付加価値提案により営業利益は15期連続増益を達成しました。


※本記事は、株式会社オオバの有価証券報告書(第92期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オオバってどんな会社?


地理空間情報やまちづくり業務を中心に、総合建設コンサルタントとして社会インフラ整備に貢献する企業です。

(1) 会社概要


オオバは1922年に創業し、1947年に法人設立された歴史ある企業です。1971年に現在の社名に変更し、1972年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2011年に日本都市整備、2023年にオオバ調査測量を完全子会社化するなど体制を強化し、長年にわたり社会資本整備や民間企業施設整備に貢献しています。

同社グループの従業員数は連結で535名、単体で474名です。筆頭株主は事業会社の三井不動産で、第2位は資産管理業務を行う三井住友信託銀行、第3位は同業のパシフィックコンサルタンツとなっています。同社は総合建設コンサルタントとして幅広い顧客と取引関係を構築しています。

氏名 持株比率
三井不動産 4.59%
三井住友信託銀行 4.18%
パシフィックコンサルタンツ 3.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は辻本茂氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
辻本 茂 代表取締役社長執行役員 1979年海外石油開発入社。三井信託銀行を経て2003年同社顧問。2006年取締役執行役員、2010年常務取締役を経て、2020年より現職。
大塲 俊憲 取締役専務執行役員社長補佐内部統制・コンプライアンス担当 1996年同社入社。三井不動産への出向等を経て、2020年取締役執行役員企画本部長。2022年取締役専務執行役員を経て、2025年より現職。
皆木 信介 取締役常務執行役員営業本部長営業統括 1989年同社入社。各支店の要職を歴任し、2021年上席執行役員東京支店長。2024年取締役執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、加藤智康(三井不動産専務執行役員)、永井幹人(元新日鉄興和不動産社長)、嶋中雄二(景気循環学会会長)、鈴木正規(元環境事務次官)、宇野晶子(東急不動産ホールディングス社外取締役)、麦島健志(元国土交通省国土政策局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設コンサルタント業務」および「事業ソリューション業務」を展開しています。

地理空間情報業務・環境業務


地理空間情報業務では、最新IT機器を駆使した測量や補償調査を行い、GISによる高度なインフラ管理システム等を提供します。環境業務では、環境調査やアセスメント、土壌汚染対策、地球環境に配慮した都市環境マスタープランなど、未来の環境づくりに貢献するサービスを展開しています。

収益源は、国や地方公共団体等の官公庁および民間企業からの調査・測量・システム提供に対する業務委託料です。事業の運営は、主にオオバおよび子会社のオオバ調査測量が連携して行い、都市づくりや環境保全の基盤となるソリューションを提供しています。

まちづくり業務・設計業務


まちづくり業務では、都市基本計画や区画整理等を通じ、福祉や防災など多様な視点からまちづくりを企画提案・コンサルティングします。設計業務では、道路や上下水道等の施設設計のほか、ハザードマップ作成や橋梁の耐震補強など大規模災害に向けた防災対策・アセットマネジメントを手掛けています。

主な収益源は、官公庁や民間ディベロッパー、土地所有者からの計画策定や設計に対するコンサルティングおよび設計業務委託料です。運営はオオバに加え、子会社の日本都市整備、近畿都市整備、東北都市整備が担当し、全国各地の多様なまちづくりニーズに対応しています。

事業ソリューション業務


従来の建設コンサルタントの領域を超え、土地区画整理や開発行為の業務代行事業へ参画しています。また、地権者向けに税理士法人と連携した相続税務・不動産活用コンサルティングや、老朽化マンションの建て替えコンサルティングなど、社会問題の解決に向けた独自のサービスを提供しています。

収益源は、業務代行による事業収益や、コンサルティングフィー、保留地の処分等による不動産関連収益です。運営は主にオオバが主体となって推進し、自ら業務代行者としてリスクテイクすることで、調査設計業務に加えた新たな収益機会の拡大と高付加価値なサービスの提供を実現しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は150億円から180億円台で堅調に推移しています。経常利益は毎期着実に増加しており、16億円台から21億円台へと拡大しました。利益率も10%台から12%台へと向上しており、高付加価値提案や業務代行事業などの収益機会拡大が寄与し、安定的な成長を遂げています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 159.3億円 156.5億円 164.9億円 181.0億円 170.1億円
経常利益 16.5億円 17.9億円 19.3億円 20.0億円 21.4億円
利益率(%) 10.4% 11.4% 11.7% 11.0% 12.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 10.7億円 8.5億円 12.8億円 12.8億円 14.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前年を下回ったものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も31.7%から34.2%へと大きく改善しました。これにより営業利益も増益となり、利益率も11.6%と堅調な収益性を維持しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 181.0億円 170.1億円
売上総利益 57.4億円 58.2億円
売上総利益率(%) 31.7% 34.2%
営業利益 19.4億円 19.7億円
営業利益率(%) 10.7% 11.6%


販売費及び一般管理費(39億円)のうち、給料及び手当が18億円(構成比46%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF -5.1億円 20.7億円
投資CF -1.2億円 -0.9億円
財務CF -8.0億円 -8.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.9%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「優れた技術と豊富な経験を活かし、高品質のサービスを提供することにより社会の発展に貢献するとともに、顧客・株主・社員の期待に応えること」を経営方針としています。「安全と安心で持続可能なまちづくり」を核とし、高品質なソリューションを提供することで、中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


100年企業としての歴史と伝統を重んじ、社是である「誠」「積極進取」「和」の精神を大切にする文化が根付いています。技術力の担い手である社員を尊重し、人的資本への積極的な投資を行うことで、社員と会社が目指す姿を共有し、ともに成長していく姿勢を重んじています。

(3) 経営計画・目標


2024年5月期から2028年5月期までの中期経営計画において、収益力・技術力の向上と株主還元の強化を推進しています。最終年度である2028年5月期に向けて、以下の定量目標を掲げています。

* 連結売上高:200億円
* 連結営業利益:24億円
* 連結営業利益率:12%
* ROE:12%
* ROIC:12%

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として「技術力の強化」「収益機会の拡大」「事業領域の拡大」の3本柱を推進しています。持続的成長の要となる有資格者の増強や多能工化(ポリバレントな技術者の育成)を図るほか、土地区画整理事業での知見を活かした業務代行への参画、スマートシティや防災・減災対応など社会課題解決に向けた新市場開拓に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、インタンジブル・アセット(無形資産)である「技術力」の強化を最重要課題と位置づけ、社員を大切にした人的資本投資を推進しています。新卒・中途採用の強化や賃上げの継続、技術手当の引き上げ、退職給付水準の改善などを実施し、資格取得支援や多能工化による人材育成、リモート勤務やフレックスタイム制を活用した働きやすい環境づくりにも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 39.5歳 12.5年 7,803,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 66.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 56.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規従業員) 69.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規従業員) 61.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の管理職登用(7名)、中途採用者の管理職登用(83名)、技術資格保有者数(510名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 民間取引先の信用リスク


同社の受注額の4〜5割程度は民間企業との取引が占めています。今後の経済状況の変化に伴い、民間取引先企業の経営悪化や破綻等が発生した場合、貸倒れや債権回収の遅延が生じ、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 官公庁の公共事業予算への依存


主要顧客である国や地方公共団体の公共事業費予算に依存する構造となっています。今後、国の財政事情などにより公共事業関連予算の縮小や発注方針の変更などがあった場合、受注環境が悪化し、同社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 専門技術者の人材確保の難しさ


同社グループの高い競争力は、優秀な技術者や高度な熟練技能者によって支えられています。企業間の人材獲得競争が激化する中、これらの有能な人材の確保や雇用の維持が想定通りに進まない場合、業務遂行能力が低下し、事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 土地区画整理事業の業務代行リスク


収益機会の拡大策として土地区画整理事業の業務代行を推進し、自ら不動産リスクを見据えた適切なリスクテイクを行っています。しかし、今後の不動産市場の動向が著しく悪化した場合、保有資産の価値下落や保留地の処分遅延などが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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