※本記事は、日本プロセス株式会社 の有価証券報告書(第58期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本プロセスってどんな会社?
制御システムや自動車システムなど、社会インフラを支えるソフトウェア開発を主力とする独立系企業です。
■(1) 会社概要
同社は1967年に日本プロセスコンサルタントとして設立され、1971年に現商号へ変更しました。1992年に株式を店頭登録し、2010年にはJASDAQ市場へ上場、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2019年には国際プロセス、2021年にはアルゴリズム研究所を吸収合併するなど、グループ再編を通じて体制強化を図っています。
現在の従業員数は連結729名、単体653名です。筆頭株主は創業者一族で取締役会長の大部仁氏、第2位も同じく創業者一族の大部力氏となっており、第3位には同社の社員持株会が入っています。安定した株主構成のもと、長期的な視点での経営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大部 仁 | 17.99% |
| 大部 力 | 17.72% |
| 日本プロセス社員持株会 | 7.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は東智氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 東 智 | 代表取締役社長 | 1991年同社入社。制御システム事業部長や海外子会社総経理などを経て、事業統括や海外事業推進を歴任。2024年6月より現職。 |
| 大部 仁 | 取締役会長 | 1992年郵政省入省。米国弁護士資格取得後、2000年に同社取締役就任。社長を経て2013年より会長。2025年8月より現職。 |
| 三品 真 | 取締役事業統括兼技術統括兼情報システム統括兼事業本部長兼情報システム部長 | 1985年同社入社。ITソリューション部長、管理部長等を歴任し、技術・品質・管理部門を統括。2024年6月より現職。 |
| 坂巻 詳浩 | 取締役財務統括兼経理部長 | フルキャスト等を経て2011年同社入社。経理部長を務めた後、財務統括として財務戦略を牽引。2016年8月より現職。 |
| 名古屋 敦 | 取締役管理統括兼品質統括兼プロジェクト管理支援部長 | 1990年同社入社。交通システムや自動車システム事業部長を歴任後、管理・品質統括を担当。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤之啓(元デンソー専務役員)、豊田眞代(元東芝ビジネスエキスパート取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「制御システム」「自動車システム」「特定情報システム」「組込システム」「産業・ICTソリューション」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 制御システム
火力・原子力などのエネルギープラント向け制御・監視・シミュレータシステムや、新幹線・在来線などの鉄道運行管理システム、道路交通管制システム等の開発を行っています。社会インフラの根幹を支える重要システムの開発を担い、高い信頼性が求められる分野です。
収益は、主に電力会社や鉄道会社、重電メーカー等の顧客から、システム開発の対価として受領します。運営は主に日本プロセスが担当していますが、一部の開発業務は大連艾普迪科技有限公司(中国子会社)も担っています。
■(2) 自動車システム
自動車の「走る・曲がる・止まる」を制御する車載制御システムや、カーナビゲーション等の車載情報システム、さらに自動運転につながる先進運転支援システム(ADAS)の開発を行っています。自動車の進化に伴い、高度な技術力が求められる成長分野です。
収益は、自動車メーカーや部品メーカー(ティア1)等の顧客から、ソフトウェア開発の対価として受領します。運営は主に日本プロセスが行っており、高度な専門知識を持つエンジニアが開発に従事しています。
■(3) 特定情報システム
衛星画像処理システム、地理情報システム、映像監視システム等の開発に加え、これらを応用した防災関連システム、危機管理関連システム、宇宙・航空関連システムの開発を行っています。画像処理技術や高度な信頼性が要求されるニッチな分野での開発が中心です。
収益は、官公庁や大手電機メーカー等の顧客から、システム開発およびエンジニアリングサービスの対価として受領します。運営は日本プロセスが行っています。
■(4) 組込システム
ストレージデバイス(記憶装置)、IoT建設機械、医療機器などに組み込まれる制御システムの開発を行っています。ハードウェアと密接に関わるソフトウェア開発であり、製品の性能や機能を左右する重要な役割を果たしています。
収益は、建設機械メーカーや医療機器メーカー、電子機器メーカー等の顧客から、開発業務の対価として受領します。運営は日本プロセスが行っています。
■(5) 産業・ICTソリューション
駅務機器(自動改札・券売機)やICカード関連システム、IoTクラウドシステム等の開発、およびプライベート/パブリッククラウドのシステム構築などを行っています。また、鉄道子会社向けのエンジニアリングサービスも提供しています。
収益は、鉄道関連企業やシステムインテグレーター等の顧客から、システム構築や開発サービスの対価として受領します。運営は日本プロセスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、76億円規模から105億円規模へと拡大しています。利益面でも、経常利益は安定して高い水準を維持しており、利益率も10%超をキープしています。特に58期は売上高・利益ともに過去最高水準を更新し、当期純利益も大幅な増益となりました。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 76億円 | 79億円 | 89億円 | 95億円 | 105億円 |
| 経常利益 | 8.0億円 | 8.1億円 | 9.7億円 | 10億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 10.5% | 10.2% | 10.8% | 10.6% | 12.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.4億円 | 5.3億円 | 6.8億円 | 7.3億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は約10億円増加し、100億円の大台を突破しました。増収効果に加え、採算性の向上等により売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益も2割近い増益となり、本業の収益力が強化されていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 95億円 | 105億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.6% | 21.8% |
| 営業利益 | 10億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | 10.9% |
コスト構成を見ると、売上原価が売上高の78.2%を占めています。販売費及び一般管理費においては、給料及び手当が2.1億円(構成比18.6%)、賞与引当金繰入額が1.2億円(同10.7%)、業務委託費が1.0億円(同9.1%)となっており、人件費関連の支出が主な要素となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに概ね堅調です。特に特定情報システムは大型案件の開始により売上が大きく伸長し、利益も倍増近くまで拡大しました。制御システムや自動車システム、産業・ICTソリューションも増収増益を確保しています。一方、組込システムは売上こそ増加したものの、セグメント利益は減少しており、利益率の低下が見られます。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 制御システム | 16億円 | 17億円 | 3.8億円 | 4.0億円 | 23.6% |
| 自動車システム | 23億円 | 24億円 | 5.9億円 | 6.0億円 | 25.0% |
| 特定情報システム | 13億円 | 18億円 | 2.7億円 | 5.0億円 | 27.6% |
| 組込システム | 14億円 | 15億円 | 3.0億円 | 2.7億円 | 18.1% |
| 産業・ICTソリューション | 29億円 | 31億円 | 5.3億円 | 6.0億円 | 19.3% |
| 連結(合計) | 95億円 | 105億円 | 10億円 | 11億円 | 10.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10.5億円 | 5.0億円 |
| 投資CF | -2.9億円 | 10.3億円 |
| 財務CF | -3.5億円 | -4.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.6%で市場平均(同非製造業48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、情報通信技術を応用した新しい価値創造によって顧客と共に社会へ貢献することを企業理念としています。この理念のもと、ソフトウェアを通じて顧客の製品やシステムの価値を高めることを経営目標とし、品質・納期・価格・セキュリティを重視した信頼できるトータルサービスの提供を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「きめ細かなサービスとは何か」を徹底的に追求する文化を持っています。蓄積したソフトウェアエンジニアリング技術(アウトプット力、プロジェクト管理力、品質管理力、プロセス改善力、開発技術力、人材育成力、顧客接点力)を進化させ、顧客の多様なニーズに応える高い水準のサービス提供を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「ソフトウェアで社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」をビジョンとする中期経営計画(2024年6月~2027年5月)を推進しています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 連結売上高:120億円以上
* 連結営業利益:12億円以上
* ROE:8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「社会インフラのデジタルトランスフォーメーション(DX)」を注力分野とし、老朽化したインフラシステムの刷新や高度化に貢献する方針です。具体的には、保守性・拡張性が高くセキュリティを備えたプラットフォームへの変革を支援し、IoT、クラウド、AI等の最新技術を活用したシステム開発に注力します。
* トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス(T-SES)のレベル向上による事業規模拡大
* 採用強化とパートナー企業拡大による技術者リソースの確保
* 人材育成による新規設計能力、見積能力、マネージメント能力の向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は競争力の源泉である人材育成を最優先事項とし、社外専門家の協力も得て取り組んでいます。また、リソース不足に対応するため、海外を含めた採用活動による優秀な人材確保や、技術力のあるパートナー企業の開拓を進めています。さらに、多様な働き方への対応や労働環境の改善により、持続的な成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 38.2歳 | 13.0年 | 7,737,595円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 83.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 80.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 80.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 47.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要取引先の占有率及び状況変化リスク
同社グループの売上高の約4割は上位2社が占めています。特定の顧客との強固な関係は強みですが、顧客の事業方針や開発計画の変更、経済情勢の影響を受けた場合、同社の業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、既存顧客での新規分野獲得や新規顧客開拓によりリスク分散を図っています。
■(2) 不採算プロジェクトのリスク
システム開発の一括請負契約では、見積もり以上のコスト発生や顧客の要件変更などにより採算が悪化するリスクがあります。同社では受注審査委員会による事前チェックやプロジェクトレビュー委員会による監視、ISO9001に基づく品質管理の徹底により、不採算案件の発生防止に努めています。
■(3) 人材確保のリスク
主力事業であるシステム開発には優秀な技術者が不可欠であり、計画通りの採用が困難な場合や離職の増加、パートナー企業との連携不足が生じた場合、業績に影響する可能性があります。計画的な採用と育成、職場環境への投資、パートナー開拓やオフショア活用の推進で対応しています。



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