日本プロセス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本プロセス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本プロセスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、制御・組込分野等に特化したシステム開発を主力としています。直近の業績は、売上高が104.7億円から121.2億円へ、営業利益が11.4億円から15.1億円へと拡大し、5期連続で上場来最高を更新する増収増益のトレンドを形成しています。


※本記事は、日本プロセスの有価証券報告書(第59期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本プロセスってどんな会社?


システム開発事業を展開し、インフラ・自動車分野等で独自のソフトウェアエンジニアリングサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1967年に設立され、プロセス工業向けのシステム開発及びコンサルティング業務を開始しました。その後、1992年に店頭上場(現在はスタンダード市場に移行)を果たし、事業領域を交通・運輸や自動車システムへと拡大させています。2008年には中国大連市に子会社を設立し、直近の2025年にはSCSKと資本業務提携を締結するなど、事業拡大と開発体制の強化を継続的に進めています。

同社グループは、現在連結で780名、単体で715名の従業員を抱える体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主がSCSKで、第2位が取締役会長の大部仁氏、第3位が日本プロセス社員持株会となっています。

氏名 持株比率
SCSK 20.68%
大部仁 7.65%
日本プロセス社員持株会 7.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長の東智氏が経営のトップを務め、全役員のうち社外取締役が3名を占めています。

氏名 役職 主な経歴
東智 代表取締役社長 1991年同社入社。国際プロセス代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。
大部仁 取締役会長 1992年郵政省(現総務省)入省。2003年同社代表取締役社長を経て、2025年8月より現職。
三品真 取締役事業統括兼技術統括兼事業本部長 1985年同社入社。管理部長や品質統括兼技術統括などを歴任し、2026年6月より現職。
坂巻詳浩 取締役財務統括兼経理部長兼経営企画室長 フルキャストやキヤノン電子テクノロジー役員を経て、2011年同社入社。2026年6月より現職。


社外取締役は、川村純(SCSK執行役員モビリティ事業グループグループ長)、加藤之啓(元デンソーテン代表取締役社長)、豊田眞代(元東芝ビジネスエキスパート取締役グローバル研修部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「制御システム」、「自動車システム」、「特定情報システム」、「組込システム」、「産業・ICTソリューション」の5つの報告セグメントでシステム開発を展開しています。

制御システム


エネルギープラントや交通・運輸関連の制御、監視システムの開発を行っています。具体的には、電力系統の監視制御システムや、鉄道の運行管理・駅務システム、新幹線の運行管理システムなどを提供しています。

収益源は、システム開発や保守における一括請負や業務委託に伴う開発・役務提供の対価となります。事業の運営は主に日本プロセスが実施しており、一部の開発業務は大連艾普迪科技有限公司(中国の子会社)と連携して行っています。

自動車システム


自動車そのものを制御する車載制御システムや、カーナビゲーション等の車載情報システム、自動運転につながる先進運転支援システム(ADAS)等の開発を行っています。

収益源は、完成車メーカー(OEM)や部品サプライヤからのソフトウェア開発・設計・検証等の受託開発による対価となります。これらの事業は日本プロセスが主体となって展開しており、SCSKとの資本業務提携を通じてモビリティ領域での競争力をさらに強化しています。

特定情報システム


人工衛星の画像処理システムや地理情報システム、映像監視システムなどの開発と、これらを応用した防災関連システム、危機管理関連システムの開発・提供を行っています。

収益源は、官公庁や社会インフラ企業からのシステム開発や運用保守に伴う業務委託等の対価となります。事業の運営は日本プロセスが担っており、航空宇宙関連や危機管理関連の大規模案件を安定的に受注・提供しています。

組込システム


ストレージデバイス、IoT建設機械、医療機器等に組み込まれる制御システムの開発を行っています。半導体市場の回復を背景としたシステム体制の拡大なども進めています。

収益源は、製造業等の顧客からの組込ソフトウェアの受託開発・設計・検証による対価となります。事業の運営は日本プロセスが担当しており、ハードウェアに密接に関わるシステムを顧客ニーズに合わせて開発しています。

産業・ICTソリューション


ビジネスシステムや公共システム、プライベート・パブリッククラウドの構築サービス等の開発を提供しています。ガバメント向けクラウドシステムや駅務機器システムなども開発しています。

収益源は、企業や公共機関からのシステム構築、インフラ構築、ソフトウェア開発業務に伴う対価となります。事業の運営は日本プロセスが主体となって行い、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進をサポートしています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一貫して増収基調を維持しており、売上高は79.5億円から121.2億円へと大きく拡大しています。経常利益も毎年増加し、利益率も10%台から12%台へと安定的な向上を見せ、強固な収益基盤を確立しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 79.5億円 89.2億円 94.7億円 104.7億円 121.2億円
経常利益 8.1億円 9.7億円 10.1億円 12.8億円 15.3億円
利益率(%) 10.2% 10.8% 10.6% 12.2% 12.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.0億円 6.8億円 7.3億円 14.7億円 11.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益では、売上高が約15.7%増と好調に推移し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率も10.9%から12.5%へと上昇しており、生産性の向上や大規模案件の獲得が収益性改善に貢献しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 104.7億円 121.2億円
売上総利益 22.8億円 27.1億円
売上総利益率(%) 21.8% 22.4%
営業利益 11.4億円 15.1億円
営業利益率(%) 10.9% 12.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が2.1億円(構成比約18%)、賞与引当金繰入額が1.2億円(同10%)、業務委託費が0.9億円(同7%)を占めており、人材関連のコストが主な割合を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収増益を達成しています。特に組込システムが前年同期比で大幅な増収(約24.6%増)および増益(約38.9%増)となっており、産業・ICTソリューションも売上規模・利益ともに大きく伸長し、全社の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
制御システム 17.1億円 19.5億円 4.0億円 4.9億円 25.1%
自動車システム 24.1億円 26.3億円 6.0億円 6.5億円 24.7%
特定情報システム 17.9億円 20.1億円 5.0億円 5.2億円 26.0%
組込システム 14.8億円 18.4億円 2.7億円 3.7億円 20.2%
産業・ICTソリューション 30.9億円 36.9億円 6.0億円 7.6億円 20.7%
連結(合計) 104.7億円 121.2億円 23.6億円 28.0億円 23.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラスで、有価証券の償還等により投資CFもプラスとなっている一方、配当等の支払いにより財務CFがマイナスとなっており、営業利益と手元資金を活用しながら還元等を進める改善型の状態です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 5.0億円 1.9億円
投資CF 10.3億円 4.3億円
財務CF -4.4億円 -6.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も79.7%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「情報通信技術を応用した新しい価値創造で顧客とともに社会に貢献します。」を企業理念として掲げています。ソフトウェアのライフサイクル全体にわたって信頼できるトータルサービスを提供し、ソフトウェアによって顧客の製品やシステムの価値を高めることを目指しています。

(2) 企業文化


顧客の満足度向上のために「品質・納期・価格・セキュリティ」の4項目に重点を置く価値観を重視しています。また、独自の「ソフトウェアエンジニアリング技術」を進化させ、「きめ細かなサービスとは何か」を徹底的に追求する姿勢を根底の文化として持ち合わせています。

(3) 経営計画・目標


「ソフトウェアで社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」を中期経営ビジョンとして掲げています。人材育成により生産性を高め、新規設計案件や大規模案件の受注を増やすことで成長を目指しています。

・連結売上高120億円以上
・連結営業利益12億円以上
・ROE8.0%以上
(※上記は2027年5月期の目標値として掲げられていましたが、同社は前倒しで達成しています。)

(4) 成長戦略と重点施策


「社会インフラのデジタルトランスフォーメーション(DX)」を最重要領域として位置づけています。老朽化したインフラを、保守性、拡張性が高くサイバーセキュリティが備わった「セキュア」で「スマート」な先進的なシステムへと転換するため、IoTやクラウド、AIなどの最新技術を活用した新たなシステム開発に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ソフトウェアエンジニアリングサービスの提供において従業員の継続的な成長が不可欠であると考え、人材育成を最優先事項としています。プロジェクト管理支援室等を通じた計画的な教育やオンライン学習プラットフォームの導入を行うとともに、奨学金返済の支援制度や業績連動賞与など、成長意欲を高める施策を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 37.6歳 12.8年 8,850,345円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 88.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.5%
男女賃金差異(正規) 83.0%
男女賃金差異(非正規) 25.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100.0%)、Scope1+2排出量(115t-CO2)、Scope3カテゴリ7・通勤排出量(35t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要取引先の占有率及び状況変化リスク

同社の主要取引先上位2社で売上高の39.9%を占めています。特定の業種や顧客との強い関係は強みである反面、経済情勢の変化等で顧客の事業方針が変更された場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 不採算プロジェクトのリスク

システム開発の「一括請負」では、見積価格以上に開発コストがかかる場合や不測の要件変更が発生した場合、採算を割るリスクがあります。同社は受注審査委員会の設置やプロジェクト管理の徹底を通じてリスクの軽減に努めています。

(3) 投資活動におけるリスク

同社が保有する有価証券や投資有価証券について、市場価格や取引先企業(発行体)の財務状況の変動による評価損が発生した場合、同社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティに関するリスク

顧客の機密情報を取り扱うため、サイバー攻撃等の不測の事態で情報漏洩が生じた場合、損害賠償や信用低下を招くリスクがあります。同社はプライバシーマークの取得やセキュリティ向上サービスの導入を通じて対策を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。