ドーン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドーン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドーンは東京証券取引所スタンダード市場に上場する、地理情報システム(GIS)関連のクラウドサービスを提供する企業です。警察・消防などの官公庁向けSaaSを主力事業としています。直近の業績は、ストック型収入の増加により売上高・経常利益ともに過去最高を更新し、増収増益基調にあります。


※本記事は、株式会社ドーン の有価証券報告書(第34期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ドーンってどんな会社?


ドーンは、地理情報システム(GIS)技術を中核に、警察や消防などの官公庁向けクラウドサービスを展開するIT企業です。

(1) 会社概要


1991年に設立され、1997年に株式会社ドーンへ組織変更しました。2002年にナスダック・ジャパン(現スタンダード市場)へ上場を果たしています。2010年には主力となる緊急通報システムサービスの提供を開始し、2015年の「NET119」、2020年の「Live119」など、社会インフラに関わるクラウドソリューションを次々と展開しています。

従業員数は単体で65名です。筆頭株主は代表取締役社長の宮崎正伸氏で、第2位は同社取締役が代表を務める法人、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
宮崎正伸 7.44%
ディキャピタル 7.24%
近藤浩代 7.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名(監査等委員含む)の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は宮崎正伸氏が務めています。監査等委員である取締役3名は全員が社外取締役であり、取締役全体の50.0%を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
宮崎正伸 代表取締役社長 オービックを経て1998年に入社。営業部長、取締役、副社長を歴任し、2009年より現職。
岩田潤 取締役兼管理部長 公認会計士。PwC等を経て岩田公認会計士事務所所長。2007年に社外監査役として関与し、2022年より現職。
品川真尚 取締役兼営業統括部長 NTT、NTT東日本を経て2000年に入社。東京営業所長、執行役員等を経て2016年より現職。


社外取締役は、三木相煥(絆コーポレーション代表取締役)、吉田郁子(エクスリンク法律事務所パートナー)、辰巳八栄子(辰巳公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」の単一セグメントで事業を展開しており、提供形態や内容により以下の領域に分類されます。

クラウドサービス(SaaS)


主に警察・消防・自治体防災などの官公庁に対し、地理情報に関連づけた情報を配信するクラウドサービスを提供しています。聴覚障害者向けの「NET119緊急通報システム」や、映像通報システム「Live119」などが主力です。

収益は、サービス開始前の初期構築費と、サービス提供期間中に継続的に受領する月額利用料から構成されます。運営は主にドーンが行っています。

システムインテグレーション(SI)


地理情報に関連する各種システムの受託開発・保守を行っています。電力事業者の設備管理用システムや、クラウド環境に適さない警察業務に関するオンプレミス環境でのシステム開発などが含まれます。

顧客である官公庁や電力事業者等から、開発請負の対価(初期開発費)および継続的な運用保守費を受領します。運営は主にドーンが行っています。

ライセンス販売


自社製の地理情報システム構築用ソフトウェア(「GeoBase」等)を、システム開発会社やインフラ関連事業者に対して販売しています。

他社がドーンの製品を組み込んでアプリケーションを開発・提供することに対し、ライセンス料(ロイヤリティ)を受け取ります。運営は主にドーンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加傾向にあり、堅調に推移しています。経常利益も右肩上がりで成長しており、直近の2025年5月期には過去最高益を達成しました。利益率は30%台半ばという高い水準を維持しており、収益性の高さが際立っています。当期純利益も順調に拡大しています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 11.2億円 12.2億円 13.7億円 15.0億円 16.5億円
経常利益 3.4億円 4.0億円 4.5億円 5.5億円 5.8億円
利益率(%) 30.7% 33.1% 33.0% 36.5% 35.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.4億円 2.8億円 3.2億円 3.9億円 4.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は60%台後半を維持しており、付加価値の高いビジネスモデルであることがうかがえます。営業利益率は約35%と非常に高く、効率的な経営が行われていることが分かります。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 15.0億円 16.5億円
売上総利益 10.2億円 10.8億円
売上総利益率(%) 67.8% 65.3%
営業利益 5.3億円 5.7億円
営業利益率(%) 35.5% 34.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が2.5億円(構成比50%)、支払手数料が0.4億円(同8%)を占めています。売上原価においては、労務費が2.8億円(構成比53%)、経費が2.5億円(同47%)を占めています。

(3) セグメント収益


ストック型収入であるクラウド利用料が順調に積み上がり、全売上の約半数を占める主力収益源となっています。SI(初期・保守)も大型案件の計上により大幅に増加しました。一方でクラウド初期構築やライセンス販売は微減となりましたが、全体としては増収を達成しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期)
クラウド利用料 7.6億円 8.2億円
クラウド初期構築 3.3億円 3.1億円
SI(初期・保守) 3.0億円 4.1億円
その他(ライセンス販売等) 1.0億円 1.0億円
連結(合計) 15.0億円 16.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金で投資を賄いつつ、借入返済や株主還元も実施している健全型です。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 4.1億円 3.0億円
投資CF -1.3億円 -3.4億円
財務CF -1.5億円 -1.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会課題に挑戦し新しい価値を創造する」を使命として掲げています。また、将来のビジョンとして「エッセンシャル カンパニー」を宣言し、未来の人々が安心して暮らせる社会の実現に向けて、新世代のクラウドアプリケーションを提供することで、社会に必要不可欠な存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


使命を果たす原動力となる価値観として「“なぜ誰も思いつかなかったのか”をカタチに」を掲げています。これは、ユーザーや社会の新しい課題と真剣に向き合う社員の情熱を表現したものです。また、法令を遵守し、公正かつ透明性の高い経営に努めることを経営方針の一つとしています。

(3) 経営計画・目標


第2次中期経営計画(2026年5月期~2028年5月期)を拡大ステージと位置づけ、新規ソリューションの創造やグループシナジーの発揮を目指しています。最終年度となる2028年5月期の数値目標は以下の通りです。

* 売上高:18.8億円
* 営業利益:6.7億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、「Gov-tech市場の深耕」「AIを活用したクラウドサービスの展開」「M&A・事業提携によるシナジー創出」を重点施策としています。主力サービスの全国普及に加え、映像通報技術を応用した新サービスや防災アプリの開拓に注力します。また、資本業務提携したtiwaki社のエッジAI技術と自社クラウドを融合させた新サービスの開発も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


IT人材の獲得競争が激化する中、リファーラル採用の強化や採用コンテンツの充実を図り、多様な人材の確保を進める方針です。また、企業型DC制度の導入による安心して働ける職場環境の構築や、社内制度(教育・処遇等)の充実を通じて、社員が働きがいを感じられる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 38.5歳 8.9年 6,727,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※女性管理職比率、男女賃金差異については、データが記載されていません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性の割合(30.8%)、従業員の一月あたりの平均残業時間(17.0時間)、年次有給休暇取得率(65.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 官公庁市場への依存


同社の主要顧客は地方自治体等の官公庁であり、公共市場への依存度が高い状況です。そのため、地方自治体の財政状態の悪化や予算の減額、政府の重点施策の変更などが発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定サービスへの依存


売上高の過半を占めるクラウド利用料において、主力の「NET119緊急通報システム」の割合が大きい状態にあります。他社システムへの切り替えや、他の方式が採用されることになった場合、契約数が減少し業績に影響を与える可能性があります。

(3) 製品不具合・システム障害


通信ネットワークを通じたサービス提供を行っているため、災害や事故によるネットワーク切断、サーバー停止、ソフトウェアの不具合などが発生するリスクがあります。これにより損害賠償請求を受けたり、社会的信頼が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。