ドーン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドーン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドーンは東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、地理情報に関連づけた各種クラウドサービス(SaaS)の開発・提供を主力とする情報サービス事業を展開しています。直近の業績トレンドは好調に推移しており、売上高は前期比増の約17.3億円、当期純利益も増益の約4.7億円を計上し、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ドーンの有価証券報告書(第35期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月21日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ドーンってどんな会社?


地理情報に関連づけた各種クラウドサービス(SaaS)を主力とする情報サービス事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1991年に設立され、1994年に地理情報システム構築用ソフトウエアを発売しました。2002年に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン(現在の東京証券取引所スタンダード市場)へ上場を果たしています。その後、2005年に地図情報配信ASPサービスを開始し、2015年には主力となる「NET119緊急通報システム」の提供を始めました。

同社の従業員数は単体で66名です。筆頭株主は代表取締役社長の宮崎正伸氏で、第2位は取締役の岩田潤氏が代表取締役を務めるディキャピタル、第3位は個人株主の近藤浩代氏となっています。

氏名 持株比率
宮崎正伸 7.75%
ディキャピタル 7.39%
近藤浩代 6.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は宮崎正伸氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮崎正伸 代表取締役社長 オービックを経て1998年同社入社。取締役営業部長、代表取締役副社長を経て、2009年10月より現職。
岩田潤 取締役兼管理部長 青山監査法人等を経て公認会計士登録。同社社外監査役、社外取締役、取締役兼経営企画室長を経て、2022年6月より現職。
品川真尚 取締役兼営業統括部長 日本電信電話等を経て2000年同社入社。東京営業所所長、執行役員東京営業部部長を経て、2016年8月より現職。


社外取締役は、三木相煥(元東洋炭素取締役)、吉田郁子(エクスリンク法律事務所パートナー)、辰巳八栄子(辰巳公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) クラウドサービス(SaaS)の提供

同社は、主に警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全等の官公庁向けの各種情報を地理情報に関連づけて配信するクラウドサービスを提供しています。代表的なサービスとして、言語や聴覚に障害がある方向けの「NET119緊急通報システム」や、緊急通報時の現場映像を伝達する「Live119」などがあります。

収益は、サービス開始前に環境を構築する初期構築費と、サービス提供期間中に継続的に受領する月額利用料から構成されます。主な顧客は官公庁であり、直接受注して一般競争入札を経る形態が一般的です。サービスの運営は同社が行っています。

(2) SI(初期・保守)およびライセンス販売

同社は、自社製の地理情報システム構築用ソフトウエアを用いた受託開発や保守を行っています。電力事業者の設備管理用システムのほか、オンプレミス環境を必要とする警察業務に関するシステム開発などを手がけており、システム構築に必要なライセンス販売も行っています。

収益は、サービス開始前の初期開発費とサービス提供期間中の運用保守費のほか、ライセンス販売に伴うロイヤリティから構成されます。顧客は官公庁や電力事業者などで、SI初期開発案件ではデジタル地図やハードウエアの仕入販売も伴う場合があります。これらも同社が主体となって運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は毎期安定して成長を続けており、12.2億円から17.3億円へと拡大しています。経常利益も4.0億円から6.7億円へと増加傾向にあり、利益率は常に30%を超える高い水準を維持しています。ストック型売上であるクラウド利用料の増加が収益基盤を牽引し、増収増益のトレンドが続いています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 12.2億円 13.7億円 15.0億円 16.5億円 17.3億円
経常利益 4.0億円 4.5億円 5.5億円 5.8億円 6.7億円
利益率(%) 33.1% 33.0% 36.5% 35.5% 38.7%
当期利益 2.8億円 3.2億円 3.9億円 4.2億円 4.7億円

(2) 損益計算書


同社の損益構造を見ると、売上原価の低減による高い粗利率が特徴です。前期から当期にかけて売上高が約0.9億円増加する中で、外注開発費や地図関連費用などの製造経費を抑制したことにより、売上総利益率は65.3%から69.2%へと大きく向上しています。結果として営業利益率も改善しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 16.5億円 17.3億円
売上総利益 10.8億円 12.0億円
売上総利益率(%) 65.3% 69.2%
営業利益 5.7億円 6.6億円
営業利益率(%) 34.9% 37.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が2.7億円(構成比50.2%)、支払手数料が0.5億円(同8.6%)を占めています。売上原価については、労務費が2.9億円(構成比56.3%)、外注開発費や地図関連費用等の経費が2.3億円(同43.7%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業活動で得た潤沢な資金を自己株式の取得や配当金の支払い等の財務活動に充てており、安定した資金繰りが見て取れます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 3.0億円 6.5億円
投資CF -3.4億円 -1.1億円
財務CF -1.6億円 -2.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も89.4%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、「社会課題に挑戦し新しい価値を創造する」を使命に定めています。この使命を果たす原動力となる大切な価値観として、「“なぜ誰も思いつかなかったのか”をカタチに」を掲げ、ユーザーや社会の新しい課題と真剣に向き合う社員の情熱を表現しています。また、目指す姿(ビジョン)として「エッセンシャル カンパニー」を宣言し、社会に必要不可欠な存在となる決意を込めています。

(2) 企業文化

同社は、経営方針として「最先端の技術と信頼性のある製品・サービスの提供」「技術力・販売力を有する企業との提携による新事業開拓」「経営資本を有効に活用した効率の高い経営の追求」「公正かつ透明性の高い企業経営」を掲げています。また、社員が性別を問わず働き甲斐や仕事の創造性を実感し、会社とともに成長し合うことができる企業文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、拡大ステージの3年間と位置付ける「第2次中期経営計画(2026年5月期から2028年5月期)」を策定し、新規ソリューションの創造やグループ間シナジーの発揮を目指しています。最終年度である2028年5月期には以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:18.8億円
* 営業利益:6.7億円
* 経常利益:6.8億円
* ROE(自己資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策

目標達成に向けた最重点施策として、「Gov-tech市場の深耕」を推進しています。主力の「NET119」に加え、「Live119」などの映像技術を応用したサービス展開に注力しています。さらに、「AIを活用したクラウドサービスの展開」や「M&A・事業提携」によるシナジー創出を図り、防災やライフライン分野の社会課題を解決するテクノロジーの提供を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、中期経営計画の重要施策の一つに「人財基盤の強化」を掲げています。社員が安心して働き、技術や知識の習得に継続的に取り組めるよう、企業型DC制度の導入や資格取得支援規程などの社内制度を充実させています。これにより、IT人材の獲得競争が激化する中で高度専門職の人員を確保し、品質や生産性、従業員満足度の向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 37.8歳 8.5年 7,107,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

同社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性の割合(31.8%)、従業員の一月あたりの平均残業時間(18.3時間)、年次有給休暇取得率(65.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の不具合の発生による影響

同社は品質管理基準に従い不具合発生の防止に最大限の注意を払っています。しかしながら、提供する製品やシステムに予期せぬ不具合が発生し、顧客が損害を被った場合、損害賠償請求を受けたり、同社に対する信頼が低下したりすることで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 受託開発業務に係る仕様拡大の影響

同社の受託開発においては、受注までに顧客と入念な仕様の打ち合わせを行っています。しかし、事後的に発注元との認識の違い等が発生した場合、協議の結果として納入後に同社の責任と費用負担で再開発や補修を行う必要が生じ、収益性を圧迫する可能性があります。

(3) 競合他社による影響

同社のクラウドサービスは、防災・防犯関連にターゲットを絞り、先行者メリットを活かして優位性を高めています。また、特許の取得にも積極的ですが、新規参入の障壁は必ずしも高いとは言えません。今後、類似したサービスが開発され、価格競争が激化した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。