毎日コムネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

毎日コムネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

毎日コムネットは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、学生向け賃貸住宅開発などの不動産ソリューション事業や、合宿旅行・新卒採用支援などの学生生活ソリューション事業を展開しています。直近の業績は不動産マネジメント部門の好調などにより前年同期比で増収増益を達成し、過去最高の売上と利益を更新しています。


※本記事は、株式会社毎日コムネットの有価証券報告書(第48期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 毎日コムネットってどんな会社?


学生向け賃貸住宅の不動産事業と、合宿旅行企画や新卒採用支援の学生生活事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1979年に合宿・研修旅行の企画手配を中心とした旅行業として設立されました。1994年に学生マンション事業を開始して事業領域を拡大し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2014年には自然エネルギーによる発電事業を開始するなど、学生等のニーズを的確に捉えながら成長を続けています。

現在の従業員数は連結で268名、単体で155名です。筆頭株主は資本業務提携関係にある事業会社のKJホールディングスで、第2位は創業者の伊藤守氏、第3位は専務取締役の原利典氏となっています。

氏名 持株比率
KJホールディングス 25.17%
伊藤守 13.32%
原利典 13.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は小野田博幸氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
小野田博幸 代表取締役社長 光製作所、日本教育研究会等を経て同社に入社。管理本部長等などを歴任し、2022年10月より現職。
伊藤守 取締役会長 1979年の設立時に代表取締役社長に就任。毎日コムネットレジデンシャル社長等を歴任し、2022年10月より現職。
原利典 専務取締役 設立時に代表取締役専務に就任。毎日コムネットレジデンシャル設立時代表取締役専務等を歴任し、2022年10月より現職。
山下敬司 専務取締役 リクルート等を経て同社に入社。毎日コムネットレジデンシャル代表取締役社長等を歴任し、2022年10月より現職。
西孝行 常務取締役 アイ・エー・エス・エスを経て同社に入社。不動産ソリューション事業部長等を歴任し、2026年6月より現職。
坂東嘉人 取締役 富士銀行(現みずほ銀行)に入行。みずほ信託銀行常務執行役員、河合塾常務執行役員等を歴任し、2021年8月より現職。


社外取締役は、中島護(元りそな銀行支店長)、宮田悦雄(元東急ホテルズ営業開発部長)、亀﨑未樹子(亀﨑公認会計士・税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産ソリューション事業」および「学生生活ソリューション事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

不動産ソリューション事業


学生等への住まいの提供を軸に、不動産オーナーへの有効活用提案や学生向け賃貸住宅の開発、入居者募集および管理、一般仲介を行っています。また、物件や自社オフィスの使用電力相当量を自然エネルギーで発電して賄う太陽光発電事業も展開し、学生の生活環境向上と環境保護を同時に推進しています。

収益は、サブリース契約によるオーナーへの支払家賃と入居者から収受する家賃等との差額や、販売用不動産の売却益、管理受託報酬、売電収入などが主な源泉です。運営は同社のほか、毎日コムネットレジデンシャル、毎日コムネットグリーン電力、TUA学生寮PFIが各専門分野を担当しています。

学生生活ソリューション事業


主に首都圏の大学生を対象としたクラブ・サークル活動の合宿・研修旅行の企画手配や、スポーツ大会などのイベント企画・運営を行っています。また、学生生活の「出口」となる就職分野において、企業の人事部向けに採用プロモーションや各種イベントの企画、採用業務支援システムの提供なども手掛けています。

収益は、旅行の宿泊施設や交通機関からの送客手数料や取扱手数料、採用ツールの販売代金やシステム利用料などが主な源泉です。運営は主に同社が旅行・イベント関連を担い、子会社のワークス・ジャパンが新卒採用支援に関するコンサルティングや各種サービスの提供を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定して成長を続けており、直近では271億円に達し過去最高を更新しています。経常利益も右肩上がりで順調に推移しており、利益率も約9%〜10%台と高水準を維持しています。当期純利益も着実に増加傾向にあります。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 189億円 212億円 208億円 223億円 271億円
経常利益 17億円 21億円 22億円 24億円 28億円
利益率(%) 9.0% 9.8% 10.7% 10.7% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 10億円 11億円 12億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も堅調に伸びています。売上総利益率は約27%から30%の範囲で推移し、営業利益率も10%を超えており、安定した収益構造がうかがえます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 223億円 271億円
売上総利益 68億円 73億円
売上総利益率(%) 30.5% 26.9%
営業利益 25億円 29億円
営業利益率(%) 11.3% 10.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比36%)、賞与引当金繰入額が3億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産ソリューション事業は、自社保有物件の満室稼働や大型の販売用不動産の売却により大幅な増収増益を達成しました。学生生活ソリューション事業も旅行分野の回復や企業の旺盛な採用活動に支えられ、売上・利益ともに増加しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
不動産ソリューション事業 178億円 224億円 31億円 35億円 15.8%
学生生活ソリューション事業 44億円 47億円 3億円 4億円 8.5%
連結(合計) 223億円 271億円 25億円 29億円 10.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで生み出した資金を借入金の返済などの財務活動に充てており、手元資金で事業投資もカバーできている健全型のキャッシュ・フロー状態といえます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 24億円 63億円
投資CF -10億円 -3億円
財務CF 0.7億円 -51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「ワンストップ・ソリューション」という企業コンセプトのもと、不動産・旅行・人材の3つの事業領域から日本の未来を担う若者と、大学および企業などの社会の若者を応援する人たちとをつなぎ、新たな価値を創造し、将来にわたり地域経済や社会に貢献することを経営ビジョンとして掲げています。

(2) 企業文化


社会と共存し持続的に成長するため、ESG経営と人的資本の最大化に注力しています。ダイバーシティ&インクルージョンの推進や自然環境の保護に加え、社員一人ひとりの自主性を促す組織風土の醸成や、自律的にキャリアを形成できる機会の提供を重視する文化を根付かせています。

(3) 経営計画・目標


創業50周年を迎える2029年5月期に向けた「中期経営計画(2024~2029)」を策定し、社会と共存し、「つぶれない・つぶさない経営」で100年持続可能な企業を目指しています。最終年度に向けた定量的な目標数値を掲げ、既存事業の強化・拡大と新規事業の創出を推進しています。

* 売上高300億円
* 営業利益31億円

(4) 成長戦略と重点施策


不動産ソリューション事業を成長の中軸とし、引き続き経営資源の集中投資を行います。同時に、学生生活ソリューション事業では学生人材育成と企業人事への営業体制を強化します。これらを両輪で展開し、学生生活に不可欠なサービスを包括的に提供できる事業体を構築し、地域経済や社会に貢献していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


自律的に学習・成長する力を身に付ける機会の提供や、新たな事業領域に向けたリスキリング習得機会の提供を通じて人材育成を支援しています。また、多様な人材の登用と活躍を可能とする職場づくりや、評価基準の明確化を進め、働きがいのある環境整備と社員エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 36.7歳 11.1年 6,727,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 68.6%


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性労働者の育児休業取得率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(83.8%)、役職者における女性比率(25.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化の影響


18歳人口の減少傾向が続く中、当面は首都圏の大学生数は安定推移すると見込んでいますが、想定以上に学生等の人口が急激に減少した場合は、主力である学生向け賃貸住宅や各種サービスの需要が縮小し、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 首都圏への事業集中


同社グループの事業は首都圏、特に東京圏に集中して展開されています。そのため、東京直下型大地震のような大規模な自然災害等が発生した場合、保有物件の損壊や事業活動の長期停止を招き、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 外注先等に起因するトラブル


旅行業務における貸切バス事故や、管理物件における大規模火災、食事付物件での食中毒など、外注先等に起因するトラブルが発生した場合、対外的な評価の低下や風評被害が生じ、同社グループの信用や業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。