クリエイトSDホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリエイトSDホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場し、ドラッグストアや調剤薬局、介護事業等を展開しています。2025年5月期の連結業績は、売上高が4571億円(前期比8.2%増)、経常利益が234億円(同12.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が157億円(同14.6%増)と増収増益で推移しています。


※本記事は、株式会社クリエイトSDホールディングス の有価証券報告書(第28期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クリエイトSDホールディングスってどんな会社?


同社グループは、ドラッグストアおよび調剤薬局の運営を主力とし、スーパーマーケットや有料老人ホーム等の介護事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


1983年に有限会社みどりドラッグストアとして設立され、1998年に現在の母体となる有限会社ヤマモトが設立されました。2008年に持株会社体制へ移行して現商号となり、2009年に東証一部へ上場しました。2020年にはスーパーマーケットを運営する百合ヶ丘産業株式会社を完全子会社化し、事業領域を拡大しています。

2025年5月31日時点で、連結従業員数は5,060名、単体では11名です。筆頭株主は同社役員(親族含む)の山本洋平氏で、第2位は代表取締役会長の山本久雄氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
山本洋平 28.69%
山本久雄 21.63%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名(監査等委員)の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は廣瀨泰三氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
廣瀨泰三 代表取締役社長 住商ドラッグストアーズ代表取締役社長を経て、2011年クリエイトエス・ディー入社。2012年同社およびクリエイトSDホールディングス代表取締役社長に就任し、2025年5月現在に至る。
山本久雄 代表取締役会長 1983年みどりドラッグストア(現クリエイトエス・ディー)設立。2002年同社代表取締役会長、2008年クリエイトSDホールディングス代表取締役会長に就任し、2025年5月現在に至る。
瀧屋幸彦 取締役 1989年みどりドラッグストア入社。店舗運営本部長等を経て、2023年クリエイトエス・ディー代表取締役社長に就任。2024年よりクリエイトSDホールディングス取締役を兼任。
馬庭修一 取締役(監査等委員) ユニデンホールディングスを経て2000年クリエイトエス・ディー入社。常勤監査役等を歴任し、2015年よりクリエイトSDホールディングス取締役(常勤監査等委員)を務める。


社外取締役は、原幸雄(元マルエツ取締役販売本部長)、安保洋子(弁護士・薬剤師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドラッグストア事業」、「スーパーマーケット事業」、「有料老人ホーム・デイサービス事業」を展開しています。

(1) ドラッグストア事業


医薬品、化粧品、食料品、日用雑貨品等の販売および調剤を行う、同社グループの主力事業です。地域のヘルスケアと生活を支えるライフラインとしての役割を担っています。

収益は、一般消費者からの商品販売代金および調剤報酬等によって構成されています。運営は主に株式会社クリエイトエス・ディーが担当し、プライベートブランド商品の企画等は株式会社エスタ、店舗清掃等は株式会社クリエイトビギンが行っています。

(2) スーパーマーケット事業


地域に密着した店舗展開を行い、食料品や日用雑貨品等の販売を行っています。生鮮食品を含む幅広い品揃えを提供しています。

収益は、一般消費者からの商品販売代金です。運営は百合ヶ丘産業株式会社が担当しています。

(3) 有料老人ホーム・デイサービス事業


高齢者向けの介護サービスとして、有料老人ホームおよびデイサービス施設の運営を行っています。

収益は、利用者からの施設利用料や介護保険報酬等です。有料老人ホーム事業はウェルライフ株式会社が、デイサービス事業は株式会社サロンデイがそれぞれ運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加を続けており、着実な成長が見られます。経常利益についても、2022年5月期に一時的な減少が見られたものの、その後は増加基調にあり、2025年5月期には過去最高水準となっています。当期純利益も同様に増加傾向を維持しており、全体として増収増益の安定した業績推移を示しています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 3,385億円 3,507億円 3,810億円 4,223億円 4,571億円
経常利益 191億円 187億円 194億円 209億円 234億円
利益率(%) 5.6% 5.3% 5.1% 4.9% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 68億円 67億円 68億円 72億円 80億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は約26%程度で安定的に推移しており、営業利益率も約5%の水準を維持しています。コストコントロールと売上拡大のバランスが取れた経営が行われていることが読み取れます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 4,223億円 4,571億円
売上総利益 1,102億円 1,192億円
売上総利益率(%) 26.1% 26.1%
営業利益 202億円 226億円
営業利益率(%) 4.8% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が388億円(構成比40.2%)、地代家賃が183億円(同19.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


※有価証券報告書の記載に基づき、ドラッグストア事業の割合が高いためセグメント情報の開示が省略されています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、主に営業活動で得た資金を新規出店に係る設備投資に充当しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは増加し、事業の収益性が向上しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、出店に伴う設備投資の増加により、資金の使用額が増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、資金の使用額が増加しました。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 210億円 236億円
投資CF -202億円 -207億円
財務CF -1億円 -34億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちはいつもお客様≒患者様の近くにいて、『ふれ合い』を大切にします」という経営理念を掲げています。地域に密着し、相談できるかかりつけ薬局としての役割を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


「極めて感じの良い応対(挨拶)」と「整理・整頓」を経営の基本方針として重視しています。小売業を「整理・整頓業」と定義し、店舗のクリーンさや買いやすさ、商品管理の徹底、調剤過誤リスクの低減につなげています。また、「謙虚」を社是としています。

(3) 経営計画・目標


2030年5月期に向けた長期的な数値目標として、以下の指標を掲げています。
* 売上高:6,800億円
* 経常利益率:5.0%以上
* ROE:12.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


関東・東海地方の既存エリアでのドミナント深耕に加え、北関東や甲信越エリアへの出店拡大を進め、毎期40~50店舗の出店を計画しています。調剤事業では、ドラッグストアへの併設やM&Aによる規模拡大、かかりつけ機能の強化を推進します。また、EDLP(エブリデイ・ロープライス)施策やセミセルフレジ導入などによるローコストオペレーションの徹底も図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のため、ジェンダーや国籍等を問わず多様な人材を採用し、長く活躍できる「ずっと働きたい会社」を目指しています。人的資本への投資を重視し、職場環境の整備や能力開発のための研修、ジョブローテーション等に取り組んでいます。特に女性の中核人材への登用に積極的です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 51.3歳 21.9年 10,443,682円


※同社の従業員は、すべて連結子会社からの出向者です。平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.4%
男性育児休業取得率 89.4%
男女賃金差異(全労働者) 66.9%
男女賃金差異(正規) 77.6%
男女賃金差異(非正規) 107.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新任店長・薬局長への女性登用比率(37.5%)、役職者に占める女性比率(20.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店政策と競合


ドミナント形成による出店拡大を進めていますが、同業他社や異業種との競合激化により環境は厳しさを増しています。また、出店交渉の遅延などにより計画通りの出店ができない場合、業績見通しに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 専門人材の確保


店舗数拡大には薬剤師および医薬品登録販売者の確保が不可欠です。業界全体で採用・育成が課題となる中、これら有資格者の確保状況が出店計画や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制と制度変更


薬機法等の改正や許認可の取消しがあった場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。また、薬価基準や調剤報酬の改定は売上や利益に直接影響を与えるため、改定内容によっては業績変動の要因となります。

(4) 調剤業務のリスク


全店で調剤業務監査システムを導入するなど管理体制を強化していますが、調剤ミス等が発生し、訴訟や行政処分を受けた場合、社会的信用の低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。