クリエイトSDホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリエイトSDホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するクリエイトSDホールディングスは、神奈川県を中心に関東・東海地方でドラッグストアや調剤薬局、スーパーマーケット、介護施設を展開しています。直近の業績は新規出店や価格戦略が奏功し、売上高・各段階の利益ともに増収増益を継続しており、堅調な成長基盤を築いています。


※本記事は、株式会社クリエイトSDホールディングスの有価証券報告書(第29期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クリエイトSDホールディングスってどんな会社?


ドラッグストアや調剤薬局の運営を主力事業とし、地域密着型の店舗展開と医療・介護サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1983年に有限会社みどりドラッグストアとして設立され、1998年に有限会社ヤマモト(現クリエイトSDホールディングス)が設立されました。2008年に純粋持株会社へ移行し、2009年に東京証券取引所へ上場しました。近年はスーパーマーケット企業を子会社化し、事業領域を拡大しています。

現在、連結従業員数は5,478名、単体では10名です。筆頭株主は山本洋平氏で、第2位は代表取締役会長で創業者の山本久雄氏、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
山本洋平 28.69%
山本久雄 21.63%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は廣瀨泰三氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
廣瀨泰三 代表取締役社長 2007年住商ドラッグストアーズ社長を経て、2011年クリエイトエス・ディー入社。2012年より現職。
山本久雄 代表取締役会長 1983年みどりドラッグストア設立、社長就任。1998年ヤマモト(現同社)設立、社長就任。2008年より現職。
瀧屋幸彦 取締役 1989年みどりドラッグストア入社。2021年クリエイトエス・ディー執行役員、2023年社長就任。2024年より現職。
三枝孝彰 取締役(常勤監査等委員) 2009年クリエイトエス・ディー入社。同社業務監査室長やサロンデイ社長を歴任。2025年より現職。


社外取締役は、安保洋子(弁護士)、上田真(元マルエツ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドラッグストア事業」「スーパーマーケット事業」「有料老人ホーム・デイサービス事業(介護事業)」を展開しています。

ドラッグストア事業


医薬品、化粧品、食料品、日用雑貨品などの小売販売および調剤薬局の運営を行っています。郊外や住宅立地の小商圏フォーマットを中心に店舗を展開し、一般消費者を主な顧客として地域に密着したサービスを提供しています。

店舗での商品販売による代金および調剤薬局での調剤報酬等を収益源としています。ドラッグストアおよび調剤薬局の運営はクリエイトエス・ディーが行い、プライベートブランドの製造企画をエスタ、店舗清掃をクリエイトビギンが担当しています。

スーパーマーケット事業


食料品や日用雑貨品などの販売を行うスーパーマーケットを運営しています。一般消費者を対象に、小商圏における利便性の高い買い物環境を提供し、生鮮食品も含めた豊富な品揃えを展開しています。

スーパーマーケットでの食料品および日用雑貨等の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は、百合ヶ丘産業および八百半フードセンターが行っています。

有料老人ホーム・デイサービス事業


高齢者を対象とした介護付有料老人ホームおよびリハビリを専門とする半日型のデイサービスセンターを運営しています。安心・安全な生活環境や機能訓練を提供し、地域住民の福祉と健康をサポートしています。

施設入居者やサービス利用者からの利用料、および介護保険法に基づく介護給付費を主な収益源としています。有料老人ホーム事業はウェルライフが、デイサービス事業はサロンデイがそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、継続的な店舗展開やM&A、EDLP(エブリデイ・ロープライス)施策の推進により、売上高および各段階の利益において堅調な右肩上がりの成長を続けています。利益率も安定して推移しており、底堅い収益基盤を構築しています。

項目 25期 26期 27期 28期 29期
売上高 3,507億円 3,810億円 4,223億円 4,571億円 4,971億円
経常利益 187億円 194億円 209億円 234億円 252億円
利益率(%) 5.3% 5.1% 4.9% 5.1% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 68億円 72億円 80億円 89億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。継続的な価格戦略を推進しながらも、増収効果によって安定した売上総利益率と営業利益率を維持し、適切なコスト管理を行っていることが伺えます。

項目 28期 29期
売上高 4,571億円 4,971億円
売上総利益 1,192億円 1,270億円
売上総利益率(%) 26.1% 25.5%
営業利益 226億円 240億円
営業利益率(%) 4.9% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が424億円(構成比41.2%)、地代家賃が192億円(同18.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


ドラッグストア事業の割合が非常に高く、同事業の売上拡大が全体の増収を牽引しています。スーパーマーケット事業はM&Aの影響で大幅に伸長しました。

区分 売上(28期) 売上(29期)
ドラッグストア事業 - 4,887億円
スーパーマーケット事業 - 59億円
介護事業 - 24億円
連結(合計) 4,571億円 4,971億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と言えます。

項目 28期 29期
営業CF 236億円 254億円
投資CF -207億円 -204億円
財務CF -34億円 -57億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちはいつもお客様≒患者様の近くにいて、『ふれ合い』を大切にします」という経営理念を掲げています。地域医療への貢献と、生活インフラとしての役割を果たすため、地域での総合ヘルスケアサポートに根ざした事業活動を推進しています。

(2) 企業文化


経営基本方針として「極めて感じの良い応対(挨拶)」と「整理・整頓」を重視しています。「相談できる、かかりつけ薬局」を目指す上で接遇を最も重要視し、独自の教育制度を推進しています。また、「小売業は整理・整頓業」であると考え、買いやすい売場づくりと作業環境の徹底を図っています。

(3) 経営計画・目標


2030年5月期を最終年度とする中期経営計画「Next STAGE 2030」を策定し、企業価値の持続的な向上を目指して事業展開を行っています。目標とする主要な経営指標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高6,800億円
* 経常利益率5.0%以上
* ROE12.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


関東・東海地方の既存エリアでのドミナント深耕を継続しつつ、北関東や甲信越エリアへの出店拡大を図ります。また、生鮮を含めた食品の品揃え強化やM&Aを活用した規模拡大、調剤事業における地域医療との連携と新たな業態開発に取り組むとともに、ローコストオペレーションの徹底を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長と企業価値向上のため、多様な視点や価値観を尊重し、経験や技能が異なる人材の採用を継続的に行っています。「ずっと働きたい会社」を目指し、職場環境の整備や能力開発のための研修に取り組むとともに、女性や国籍、中途採用者の区別なく中核人材への登用を積極的に進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
29期 50.4歳 22.6年 11,085,553円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.2%
男性育児休業取得率 96.4%
男女賃金差異(全労働者) 67.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 105.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新任店長・薬局長への女性登用比率(33.5%)、役職者に占める女性比率(20.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出店政策と競合環境


ドラッグストア業界では同業他社だけでなく他業種との出店競合が激化しています。投資回収期間や採算性を重視して出店地域を拡大していますが、出店交渉の遅延などにより計画通りに店舗網を拡大できない場合、業績見通しに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 薬剤師・医薬品登録販売者の確保


医薬品の販売分類に基づき、店舗への薬剤師や医薬品登録販売者の配置が義務付けられています。業界全体で専門人材の採用や育成が重要課題となっており、今後の店舗数拡大に際して必要な人材を十分に確保できない場合、出店計画に支障をきたす可能性があります。

(3) 医薬品販売の規制と異業種参入


医薬品の販売時間規制の撤廃やインターネット販売の解禁など、累次の法改正により販売・供給体制に変化が生じています。販売の自由化や規制緩和がさらに進展し、異業種との競争が激化した場合には、同社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。

(4) 調剤業務における医療過誤


調剤併設型店舗の拡大により処方箋応需枚数が増加しています。調剤業務監査システムの導入や薬剤師賠償責任保険への加入で万全の管理体制を敷いていますが、万が一調剤ミスによる服用過誤等のトラブルが発生した場合、社会的信用を損なう恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。