ERIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ERIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ERIホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建築物の確認検査や住宅性能評価、インフラストック・環境関連事業を主力とする第三者機関です。直近の業績では、法改正に伴う省エネ関連業務の増加やM&Aによる事業領域の拡大が大きく寄与し、大幅な増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、ERIホールディングス株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ERIホールディングスってどんな会社?


同社は、建築物の確認検査や住宅性能評価などを行う専門的第三者機関を統括する持株会社です。

(1) 会社概要


同社グループは、1999年に設立された日本ERIを中核とし、2013年に単独株式移転により持株会社体制へ移行するとともに上場を果たしました。その後、住宅性能評価センターや東京建築検査機構などを傘下に収め、直近ではERI検査センターや太栄コンサルタンツを子会社化し、事業領域を積極的に拡大しています。

現在の従業員数は連結で1,768名、単体で28名です。筆頭株主は同社の従業員持株会であり、第2位および第3位は投資事業有限責任組合が占めています。

氏名 持株比率
ERIホールディングス従業員持株会 8.22%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 7.81%
UH Partners 3投資事業有限責任組合 7.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は馬野俊彦氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
馬野俊彦 代表取締役社長 2002年日本ERI入社。同社代表取締役専務等を経て2015年同社社長就任。2021年8月より現職。
増田明世 取締役会長 2003年日本ERI入社。同社社長等を経て2015年同社代表取締役社長。関連会社役員を経て2021年8月より現職。
竹之内哲次 代表取締役副社長経営企画グループ長 2011年日本ERI入社。ERIソリューション役員等を経て、2021年8月より現職。
庄子猛宏 取締役 2004年日本ERI入社。住宅性能評価センター社長等を経て2021年8月より現職。


社外取締役は、山宮慎一郎氏(TMI総合法律事務所パートナー)、横山ゆりか氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「確認検査及び住宅性能評価関連事業」「インフラストック及び環境関連事業」および「その他」事業を展開しています。

確認検査及び住宅性能評価関連事業


建築基準法に基づく建築物の確認検査(建築確認、中間検査、完了検査など)や、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく新築および既存住宅の性能評価等を提供しています。住宅取得者や不動産事業者などが主な顧客となります。

確認検査や性能評価の申請者から、審査・検査・評価に対する手数料を受け取る収益モデルです。運営は主に日本ERI、住宅性能評価センター、サッコウケン、東京建築検査機構などのグループ各社が行っています。

インフラストック及び環境関連事業


施工中や既存建築物の建築基準法への適合状況の調査、不動産取引などにおけるデューデリジェンス、インスペクションのほか、建設コンサルタント、測量、BIM/CIMモデリングなどを展開しています。官公庁や不動産関連企業が主な顧客です。

調査、点検、診断、設計、測量などの各種役務提供に対する業務受託料が収益源となっています。運営は福田水文センター、ERIソリューション、ERI検査センター、太栄コンサルタンツなどのグループ各社が行っています。

その他


建築士の定期講習や建築基準適合判定資格者検定の受験講座、建築技術者向けセミナーの開催、建築CAD・積算システムの受託開発、ドローンやロボットの開発および販売などを提供しています。

講習の受講料、システムの開発受託料、製品の販売代金などが収益源です。運営は主にイーピーエーシステム、ERIアカデミー、ERIRoboticsが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、M&Aや省エネ基準適合義務化などの法改正を追い風に、売上高が順調に拡大しています。特に直近の事業年度では利益面でも大幅な成長を遂げ、経常利益が大きく増加するなど、好調な推移を示しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 161億円 174億円 180億円 198億円 247億円
経常利益 20億円 23億円 20億円 21億円 50億円
利益率(%) 12.3% 13.4% 11.2% 10.5% 20.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 8億円 10億円 13億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。利益率も大幅に改善しており、事業規模の拡大と収益性の向上が同時に進行していることがわかります。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 198億円 247億円
売上総利益 64億円 93億円
売上総利益率(%) 32.4% 37.5%
営業利益 20億円 49億円
営業利益率(%) 10.3% 20.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比27%)、役員報酬が5億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


中核である確認検査および住宅性能評価関連事業は、法改正による省エネ適合判定業務などの増加や手数料の改定により売上を大きく伸ばしています。インフラストックおよび環境関連事業もM&Aの効果により増収となっています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
確認検査及び住宅性能評価関連事業 150億円 188億円
インフラストック及び環境関連事業 45億円 56億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 198億円 247億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は42.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社会的使命の認識の下で、良質なすまい・建物を実現し、安全で美しい街づくりに貢献することを基本方針とし、「七つの理念」を掲げています。消費者や事業者への公正な情報提供、法令遵守による第三者性と中立性の保持、最高水準の技術の提供などを重視し、技術の基準となる存在を目指しています。

(2) 企業文化


「七つの理念」に基づく「公益重視の技術者集団」としての姿勢が企業文化の根底にあります。可能な限りの情報公開による透明性の高い組織運営や、全分野のニーズを引き受けて全ての業務を自己執行する責任ある体制の構築に努め、社会から信頼され影響力のある企業であることを価値観として共有しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2026年5月期から2028年5月期)を策定し、最終年度である2028年5月期において以下の計数目標を掲げています。

* 売上高:300億円
* 営業利益:55億円
* 営業利益率:18.3%
* ROE:20~30%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の事業環境の変化に備え、持続的な事業成長と安定的な収益の実現を目指して複数の戦略分野に注力しています。既存の中核事業においては、法改正への対応やDX推進による競争力の強化を図ります。同時に、M&Aや事業統合を通じて土木インフラから環境分野へと事業領域を拡大し、さらなる成長基盤の構築を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値向上のため、第三者検査機関としての高い専門技術力と中立性を支える人的資本への積極的な投資を最重要課題としています。「エデュケーション(人材教育と技術向上)」「ダイバーシティ(多様性の確保と活躍推進)」「ウェルビーイング(働きやすさと健康増進)」の3大方針に注力し、社内環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 52.9歳 10.1年 7,810,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.7%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 76.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一級建築士保有者数(886名)、平均残業時間(13.8時間)、有給休暇取得率(68.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制の抵触・変更リスク


建築基準法や住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく指定・登録機関として、厳格な法的規制を受けています。これに抵触して業務停止や指定取り消しなどの行政処分を受けた場合、あるいは今後の関連法令の改廃や新たな規制が設けられた場合には、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材確保の困難化リスク


確認検査や住宅性能評価の業務遂行には、法律で定められた資格を持つ専門技術者の確保が必須です。事業の全国展開に伴い、必要な確認検査員や評価員などの有資格者を十分に確保・育成できない場合、業務の遂行に支障を来し、事業継続や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 建築物の竣工時期による業績変動


同社グループの売上は、完了検査や建設住宅性能評価など建築物の竣工時に計上される割合が高いため、3月や9月などの決算期末に偏重する傾向があります。資材不足や自然災害などによる工事の中断で竣工案件が翌期にずれ込んだ場合、四半期や通期の業績が変動する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。