ERIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ERIホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建築確認検査や住宅性能評価を行う専門的第三者機関です。直近の業績は、売上高198億円(前期比9.7%増)、経常利益21億円(同2.8%増)と増収増益を達成しました。主力の確認検査事業に加え、M&Aによるソリューション事業の拡大が寄与しています。


※本記事は、ERIホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第12期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ERIホールディングスってどんな会社?


建築確認検査や住宅性能評価を行う国内最大級の第三者機関であり、M&Aを通じて事業領域を拡大しています。

(1) 会社概要


1999年に日本イーアールアイ(現日本ERI)として設立され、2000年に民間初の指定確認検査機関として業務を開始しました。2013年に単独株式移転により持株会社を設立し、東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後、ERIソリューションや住宅性能評価センターなどを子会社化し、事業を拡大しています。

連結従業員数は1,662名、単体従業員数は28名です。筆頭株主は同社の従業員持株会であり、第2位は投資・通信事業を行う事業会社、第3位は法人です。また、大手住宅メーカー数社も主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
ERIホールディングス従業員持株会 8.19%
光通信 7.80%
UH Partners 2 7.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は馬野 俊彦氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
馬野 俊彦 代表取締役社長 2002年日本ERI入社。同社取締役、常務取締役、代表取締役専務を経て、2021年8月より現職。
竹之内 哲次 代表取締役副社長経営企画グループ長 2011年日本ERI入社。ERIソリューション常務取締役、同社常務取締役等を経て、2021年8月より現職。
増田 明世 取締役会長 2003年日本ERI入社。日本住宅ワランティ(現ERIソリューション)社長、同社社長を経て、2021年8月より現職。
庄子 猛宏 取締役 2004年日本ERI入社。住宅性能評価センター社長等を経て、2021年8月より現職。


社外取締役は、山宮 慎一郎(TMI総合法律事務所パートナー)、横山 ゆりか(東京大学大学院総合文化研究科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「確認検査及び関連事業」「住宅性能評価及び関連事業」「ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

確認検査及び関連事業


建築基準法に基づく指定確認検査機関として、建築物の建築確認、中間検査、完了検査を行っています。また、関連事業として超高層建築物の構造評定や型式適合認定、耐震診断・改修計画の判定なども手掛けています。

収益は、建築主などの申請者から受け取る確認申請手数料や検査手数料からなります。運営は主に日本ERI、住宅性能評価センター、サッコウケン、東京建築検査機構が行っています。

住宅性能評価及び関連事業


住宅品確法に基づく登録住宅性能評価機関として、設計住宅性能評価および建設住宅性能評価を行っています。長期優良住宅の認定に係る確認や、住宅型式性能認定、低炭素建築物の技術的審査なども実施しています。

収益は、建築主などの申請者から受け取る評価料や審査料からなります。運営は主に日本ERI、住宅性能評価センター、サッコウケン、東京建築検査機構が行っています。

ソリューション事業


既存建築物に関する調査やインスペクション、エンジニアリングレポート作成、建設コンサルタント業務などを提供しています。2025年4月開始の建築基準法適合状況調査や、省エネ関連の改修に伴う調査なども含まれます。

収益は、不動産取引業者や建物所有者、官公庁などから受け取る業務受託料からなります。運営は主にERIソリューション、福田水文センター、森林環境リアライズなどのグループ各社が行っています。

その他


住宅瑕疵担保責任保険の検査、フラット35適合証明、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)評価、建築技術者向けセミナー、建築CADシステムの受託開発などを行っています。

収益は、検査料、評価料、受講料、システム開発料などからなります。運営は日本ERI、住宅性能評価センター、ERIアカデミー、イーピーエーシステムなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は過去5期間を通じて増加傾向にあり、特に直近ではM&Aの効果もあり規模が拡大しています。利益面では、2021年5月期は低水準でしたが、翌期以降は回復し、高い利益率を維持しています。直近の2025年5月期も増収増益を達成しており、安定した収益基盤を築いています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 144億円 161億円 174億円 180億円 198億円
経常利益 5億円 20億円 23億円 20億円 21億円
利益率(%) 3.3% 12.3% 13.4% 11.2% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 12億円 15億円 12億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、利益率はわずかに低下しています。営業利益は増加しており、営業利益率は10%台を維持しています。全体として、事業規模の拡大と利益確保のバランスが取れた業績推移となっています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 180億円 198億円
売上総利益 63億円 64億円
売上総利益率(%) 35.2% 32.4%
営業利益 20億円 20億円
営業利益率(%) 11.0% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が14億円(構成比33%)、役員報酬が5.5億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の確認検査および住宅性能評価事業は減収減益となりましたが、M&Aにより拡大したソリューション事業が大幅な増収増益となり、全体を牽引しました。その他事業も増収となりましたが、利益面では減少しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
確認検査及び関連事業 88億円 88億円 10億円 10億円 11.1%
住宅性能評価及び関連事業 36億円 35億円 4億円 4億円 11.6%
ソリューション事業 27億円 45億円 3億円 5億円 10.7%
その他 29億円 30億円 3億円 3億円 8.4%
調整額 △1億円 △1億円 △1億円 △1億円 -
連結(合計) 180億円 198億円 20億円 20億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金で借入金を返済しつつ、投資も行っている「健全型」です。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 15億円 8億円
投資CF △4億円 △9億円
財務CF △7億円 △9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.2%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、建築分野における確認検査機関を中核として、公正さ・中立性を重視した社会的使命を果たすことを基本方針としています。「七つの理念」を掲げ、消費者・事業者に公正な情報を提供し、最高水準の技術で良質な住まい・建物を実現し、安全で美しい街づくりに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


法令・規程を遵守し、第三者性・中立性を保つことを重視しています。また、最高水準の技術を提供して技術の基準となり、全分野のニーズを引き受け迅速なサービスに努める姿勢を持っています。信頼され、社会的にも影響力のある会社となること、可能な限りの情報を公開し透明な会社となることを行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


2026年5月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しています。最終年度である2028年5月期の計数目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高:280億円
* 経常利益:40億円
* 経常利益率:14.3%
* ROE:20~30%

(4) 成長戦略と重点施策


2030年に向けて、既存中核事業の強化、事業領域の拡大、サステナビリティの重視を戦略分野として掲げています。法改正への対応やDX推進による競争力強化、M&Aを活用した土木インフラ・環境関連分野への展開を進めます。また、人的資本への投資やロボティクスの活用により、持続的な成長と安定的な収益の実現を目指します。

* 2030年目標:売上高300億円、時価総額300億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


専門的技術力を備えた人材を社会からの信頼の源泉と位置づけ、人的資本への投資を重視しています。女性技術者や外国人技術者の活躍推進、多様な人材が活躍できる環境整備、従業員の健康増進に配慮した健康経営に注力しています。また、専門知識を高め先端技術を活用できる人材の育成や、ロボティクスの開発・活用にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 50.8歳 9.3年 6,914,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.2%
男女賃金差異(正規雇用) 70.5%
男女賃金差異(非正規) 57.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(67.2%)、1ヶ月当たりの労働者の平均残業時間(11.0時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


同社グループの主力事業である確認検査および住宅性能評価は、国土交通大臣の指定・登録を受けて行われます。法令違反等により指定・登録の取消しや業務停止処分を受けた場合、事業活動に支障をきたし、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業界動向について


確認検査機関数は近年横ばいですが、地域密着型機関との競争があります。また、住宅性能評価の普及率は上昇傾向にあるものの、大手住宅供給会社間の競争が激化しています。これらの競争環境の変化が、同社グループの市場地位や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保について


業務遂行には建築基準適合判定資格者などの有資格者が必須です。全国展開を行う同社グループにおいて、拠点ごとに十分な有資格者を確保できない場合、業務遂行に支障をきたす可能性があります。

(4) 建築物の竣工時期による業績変動


同社グループの売上の約3割は竣工時の現場検査収入であり、建築物の竣工が多い3月、9月、12月に売上が集中する傾向があります。工事の遅延等により竣工が翌期にずれ込んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。