※本記事は、株式会社三機サービスの有価証券報告書(第49期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三機サービスってどんな会社?
設備メンテナンスや建設関連製品の提供を通じて安心・快適な空間インフラを支える企業です。
■(1) 会社概要
1977年に大型空調機器の保守管理等を目的として設立され、2000年に24時間365日対応のコールセンターを開設してトータルメンテナンス事業の全国展開を開始しました。2015年にジャスダック市場へ株式上場し、2022年には兵庫機工を完全子会社化して建設関連製品にも事業領域を拡大しています。
同社グループは、連結で631名、単体で560名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業家の資産管理会社とみられる中島産業で、第2位には今後経営統合を予定している同業のシンメンテホールディングスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中島産業 | 15.11% |
| シンメンテホールディングス | 9.76% |
| UHPartners2投資事業有限責任組合 | 6.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は北越達男氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北越達男 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。大阪センター所長、コールセンター長等を経て2020年代表取締役社長に就任。現在は社員を育成する部長等を兼務し、現職。 |
| 中島義兼 | 代表取締役会長 | 1977年同社設立とともに代表取締役社長に就任。上海法人の董事長等を経て、2021年より代表取締役会長に就任。現職。 |
| 越智玲緒奈 | 取締役副社長 | 1993年同社入社。コールセンター長や上海法人総経理等を歴任し、2024年より取締役副社長兼事業本部長に就任。現職。 |
| 川﨑理 | 専務取締役 | 1999年興銀リース入社。2019年同社入社後、人事戦略部長等を経て2024年より専務取締役経営管理本部長等に就任。現職。 |
社外取締役は、正木範昭(元日建設計シビル代表取締役社長)、藤田ひろみ(ジェイ・ソル代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メンテナンス事業」および「建設関連製品サービス事業」を展開しています。
■(1) メンテナンス事業
空調機器をはじめ、厨房機器、電気設備、給排水衛生設備などあらゆる設備のメンテナンスを、全国多店舗展開する小売業や飲食業、医療機関等に提供しています。緊急修理への24時間対応に加え、定期点検による保全メンテナンス、省エネ提案、設備更新工事などを一気通貫で行っています。
主要な収益源は、顧客からの定期メンテナンス契約料やスポットの修理・改修工事代金、省エネコンサルティング料などです。運営は主に三機サービスが行っており、一部地域では長沼冷暖房やSanki Next Repairなどの子会社もサービスを提供しています。
■(2) 建設関連製品サービス事業
各種建物を対象とした金属製ドア、シャッター、スチールサッシなどの製造、販売、および取付工事を提供しています。高機能な省エネ建具の製造も手がけており、建設業者などを通じて一般の建築物などに広く納入されています。
主な収益源は、建具や建設関連製品の製造・販売代金や取付工事代金です。当事業の運営は、2022年に完全子会社化された兵庫機工が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は右肩上がりで推移しており、売上高は116億円から243億円へと2倍以上に成長しています。経常利益も2億円から12億円へと大きく拡大し、利益率も約5%水準まで改善するなど、継続的な事業規模の拡大と収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 147億円 | 194億円 | 206億円 | 243億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 6億円 | 8億円 | 10億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 1.9% | 3.9% | 3.9% | 4.9% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 5億円 | 5億円 | 7億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益・営業利益ともに順調に拡大していますが、原材料費や労務費等の増加により売上総利益率は22.7%から20.9%へとやや低下しました。一方、増収効果により営業利益率は約5%の水準を維持しています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 206億円 | 243億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 51億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.7% | 20.9% |
| 営業利益 | 10億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比42%)、支払手数料が3億円(同8%)を占めています。売上原価では、外注費が106億円(構成比67%)、材料費が32億円(同20%)を占めており、協力業者を活用した施工体制がコスト構造に表れています。
■(3) セグメント収益
主力のメンテナンス事業は、教育機関等への空調機器入替工事の好調や大手顧客の修理増加により順調に売上を伸ばしました。建設関連製品サービス事業も前年比で2桁の増収となり、両セグメントで成長を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| メンテナンス事業 | 186億円 | 217億円 |
| 建設関連製品サービス事業 | 21億円 | 26億円 |
| 連結(合計) | 206億円 | 243億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で事業への投資を行いながら借入金の返済等も計画的に進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 2億円 |
| 投資CF | -0.3億円 | -1億円 |
| 財務CF | -4億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「空間インフラのもっと快適・ずっと安心を提供すること」をミッションとして掲げています。また、将来の展望(ビジョン)として「国内はじめ東南アジアにおいて、安心・快適な空間のインフラを技術・データ・ITでプロデュースする会社」になることを目指し、社会に対して永続的に価値を発揮する経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は理念を実現するためのバリューとして、「社員一人ひとりがオーナーシップと勇気・挑戦の心と他者への尊敬の念を胸にして、ひたむきに仕事に向き合い、ステークホルダーの幸せに貢献する」という価値観を全社員で共有・実践しています。社会的倫理観とひたむきな姿勢を重視する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026-2028[人の三機]~『ビジョン2030』実現に向けた成長加速~」を推進しており、本中期の3年間を「成長加速期」と位置づけています。人的資本への積極的な投資を通じた人財価値の最大化と事業拡大の両立を図り、株主資本コストを上回る安定的なリターンの確保を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「人が育つことで、サービスが育ち、会社が成長する」という成長原則のもと、人財育成と多能工化の推進を最重要施策としています。また、デジタル技術やAIによるDX推進で収益性を向上させるほか、トータルメンテナンスサービスの品質向上、新たな環境ビジネスの創出、システムを通じた提案営業力の高度化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人の三機」を基本コンセプトとし、人財を最も重要な経営資本と位置付けています。研修センターを活用した多能工人財の育成や資格取得支援により専門性を高めるとともに、公平で戦略的な人事制度の構築、多様な人材の活用、働き方改革と健康経営の推進を通じて、社員の活躍と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 39.5歳 | 7.2年 | 5,767,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.9% |
| 男性育児休業取得率 | 45.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 59.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業績の季節偏重と固定費負担
同社の事業は設備の修繕や機器の入替工事が集中する第2四半期および第4四半期に売上が伸びる傾向が強く、一方で販売費や一般管理費などの固定費は恒常的に発生するため、利益が著しく偏る季節的な変動リスクがあります。
■(2) 大手顧客への売上依存
同社グループは、売上高の約1割をローソンが占めるなど、特定の大手顧客との取引が一定の割合を占めています。現在、取引先の拡大を進めていますが、これらの主要顧客との関係悪化や取引停止、失注が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 専門人材確保とパートナー開拓
自社にメンテナンスエンジニアを抱える体制に加え、特定分野の専門技術を持つパートナー企業に業務委託することで全国規模のサービスを提供しています。技術者の雇用確保や育成が計画通り進まない場合や、優良なパートナーが開拓できない場合、サービス品質が低下し顧客の信頼を失うリスクがあります。
■(4) メンテナンス市場の競争激化
メンテナンス市場には多数の競合他社や施工業者、メーカー系列会社が存在しています。業界再編や他業種からの新規参入、新たなメンテナンス技術の台頭によって競争力が低下した場合や、顧客企業が自社でメンテナンス部門を新設して内製化を進めた場合、取引が縮小するリスクがあります。



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