※本記事は、Cocolive株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Cocoliveってどんな会社?
不動産会社の営業活動における「追客」プロセスを自動化・効率化するクラウドサービス「KASIKA」を開発・提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2017年に設立され、同年5月に不動産業界向けマーケティング・オートメーションツール「KASIKA」の提供を開始しました。その後、2021年にはSMS送信オプションの提供を開始するなど機能を拡充し、2024年2月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
現在、単体で102名の従業員を抱える組織となっています。筆頭株主は創業者の山本考伸氏で、第2位は共同創業者で取締役の富田祐司氏、第3位は旅行事業等を手掛けるエアトリとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本考伸 | 43.84% |
| 富田祐司 | 8.41% |
| 株式会社エアトリ | 7.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名(監査役含む)の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は山本考伸氏が務めています。取締役4名のうち1名が社外取締役であり、経営の透明性確保に努めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 考伸 | 代表取締役 | 楽天トラベル代表取締役などを経て、2017年1月に同社を設立し現職。 |
| 富田 祐司 | 取締役プロダクト部門長 | トリップアドバイザー代表取締役などを経て、2017年1月に同社を設立し現職。 |
| 木場田 貴彦 | 取締役CFO管理部門長 | 有限責任監査法人トーマツを経て、2025年7月に同社入社。同年8月より現職。 |
| 石川 智哉 | 取締役 | 楽天執行役員などを経て、2022年8月より現職。 |
社外取締役は、石川智哉(株式会社アーキテクト代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クラウドサービス事業」および「その他」事業を展開しています。
■クラウドサービス事業(KASIKA)
不動産会社(工務店・ハウスメーカー、不動産売買仲介業者、分譲マンション事業者)を対象に、マーケティング・オートメーションツール「KASIKA(カシカ)」を提供しています。集客後の「追客」を自動化するツールで、顧客の行動履歴分析や自動メール返信機能などを備え、営業担当者の業務効率化と成約率向上を支援します。
収益は主に、導入企業からの初期費用および月額システム利用料(SaaS型)からなります。料金体系は店舗数課金やユーザ数課金に加え、SMS送信やAI査定などのオプション機能に応じた追加料金を設定しています。運営は主にCocoliveが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は3.0億円から13.0億円へと4倍以上に拡大し、経常利益も0.3億円から2.8億円へと順調に伸長しています。利益率も20%台を維持しており、高い収益性を保ちながら事業規模を拡大させる成長フェーズにあることが読み取れます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3.0億円 | 5.6億円 | 8.0億円 | 10.3億円 | 13.0億円 |
| 経常利益 | 0.3億円 | 0.7億円 | 1.4億円 | 2.0億円 | 2.8億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 12.7% | 17.7% | 19.8% | 21.6% |
| 当期純利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | 0.5億円 | 1.0億円 | 1.5億円 | 2.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は50%台後半、営業利益率は20%台前半で安定的に推移しており、SaaSビジネスモデル特有の高い収益性を維持しつつ、事業規模を拡大させています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.3億円 | 13.0億円 |
| 売上総利益 | 6.0億円 | 7.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.5% | 56.8% |
| 営業利益 | 2.2億円 | 2.8億円 |
| 営業利益率(%) | 20.9% | 21.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が0.9億円(構成比20%)、支払手数料が0.8億円(同18%)、役員報酬が0.6億円(同13%)を占めています。売上原価については労務費が4.1億円(売上原価比72%)と大半を占めており、カスタマーサクセス部門の人件費が主な原価要因となっています。
■(3) セグメント収益
同社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な記載は省略されていますが、主力のKASIKA事業が全社の売上成長を牽引しています。有料契約社数の増加や解約率の低位安定(1.1%)が、継続的な増収に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| クラウドサービス事業 | 10.3億円 | 13.0億円 |
| 連結(合計) | 10.3億円 | 13.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得た現金(営業CFプラス)に加え、株式発行等による財務活動でも資金を調達(財務CFプラス)し、手元資金を厚くしている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。ただし、当期は大規模な設備投資等がなかったため投資CFはゼロとなっています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.6億円 | 2.2億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | - |
| 財務CF | 2.5億円 | 0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「テクノロジーとマーケティングの力で、住宅・不動産業界で働く“人”の力が最もうまく活かされる仕組みを創り上げたい」をミッションとして掲げています。このミッション達成のため、マーケティング活動を自動化するツール(KASIKA)を自社開発し、不動産業界の生産性向上と価値向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客からのフィードバックを社内に共有し、迅速にプロダクトの改善・改良に反映させる仕組みを整えています。営業部門、カスタマーサクセス部門、開発部門が連携し、エンジニアやデザイナーも巻き込んで顧客価値を追求する体制を構築しており、継続的なサービス改善を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、KASIKAがサブスクリプションモデルであることから、継続的な収益獲得の指標として以下のKPIを重視して経営を行っています。
* MRR(Monthly Recurring Revenue)
* 有料契約社数
* 単月解約率(年間平均)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、集客後の「追客」を自動化・効率化するポジションの確立を目指しています。具体的には、どんな職種でも使いやすいUI/UXの追求や、SMS送信・AI査定等のオプション機能拡充を進めます。また、高齢化社会で需要が見込まれるサービス付き高齢者住宅や、リフォーム領域などへのサービス提供にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な成長に向け、優秀な人材の確保と育成、および定着率の向上を重要課題としています。多様性に富んだ人材の積極採用に加え、リモートワークの促進や社内教育・研修の実施により、従業員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 34.3歳 | 2.7年 | 5,083,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合サービスの普及と解約
マーケティング・オートメーションツール市場には複数の競合が存在し、新規参入の可能性もあります。競争激化により同社の想定通りに事業が展開できない場合や、他社サービスへの乗り換えが進んだ場合、解約率の上昇等を通じて経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保と育成
事業拡大には優秀な人材の確保と定着が不可欠です。しかし、必要な時期に十分な人材を採用できない場合や、人材流出が進んだ場合には、業務運営や事業拡大に支障が生じ、経営成績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 特定サービスへの依存
同社の売上高は主力サービスである「KASIKA」に依存しています。外部環境の変化等により同サービスの競争力が低下し売上が減少した場合、同社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、サービスの改良や新規サービスの開発による依存度の低減が課題です。
■(4) システム障害と情報セキュリティ
サービス基盤をインターネット通信網や特定のクラウドサービスに依存しているため、大規模災害やサイバー攻撃、システム障害等によりサービス提供が停止するリスクがあります。また、顧客の個人情報を扱っているため、情報漏洩が発生した場合は信用失墜や損害賠償により業績に影響を与える可能性があります。



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