Cocolive 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Cocolive 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Cocoliveは東京証券取引所グロース市場に上場し、日本の不動産業界に特化したマーケティング・オートメーションツール「KASIKA」を開発・提供する企業です。直近の業績では積極的な営業活動などにより売上高が増加した一方で、体制強化に伴う人件費の増加等により経常利益および当期純利益は減少しました。


※本記事は、Cocolive株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Cocoliveってどんな会社?


同社は、不動産業界向けのマーケティング活動を自動化するクラウドサービス事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2017年の設立とともに、不動産業界向けマーケティング・オートメーションツール「KASIKA」の提供を開始しました。その後、2020年にユーザ数課金方式を導入し、2021年にはISMS認証を取得して管理体制を強化しています。着実に事業を拡大し、2024年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

現在の従業員数は単体で131名です。大株主については、筆頭株主が同社創業者の山本考伸氏であり、第2位も同社取締役の富田祐司氏となっています。また、第3位には旅行事業などを展開する事業会社のエアトリが名を連ねており、安定した株主構成を維持しながら事業の成長を推進しています。

氏名 持株比率
山本考伸 43.22%
富田祐司 8.29%
エアトリ 7.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は山本考伸氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山本考伸 代表取締役 NTTドコモ、エクスペディアホールディングス、トリップアドバイザー代表取締役等を経て、2017年に同社を設立し代表取締役に就任。
富田祐司 取締役新規プロダクト部門長 日本生命保険などを経て、トリップアドバイザー代表取締役等を歴任。2017年に同社設立に参画し取締役に就任。
木場田貴彦 取締役CFO管理部門長 監査法人トーマツに入社後、公認会計士として活動。2025年に同社へ入社し執行役員管理部長を務め、同年より現職。


社外取締役は、石川智哉氏(元アーキテクト代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウドサービス事業」を展開しています。

クラウドサービス事業


同社は、不動産業界における集客後の「追客」を自動化・効率化するマーケティング・オートメーションツール「KASIKA」を提供しています。不動産の購入検討から契約までの長い期間において、ポータルサイトからの問い合わせ等に対する自動メール返信や、属性に応じた一斉送信などを通じて営業活動を支援しています。

KASIKAの料金体系は、定期定額契約(サブスクリプション)による店舗数課金やユーザ数課金を基本としています。これに加えてSMS送信やAI査定等のオプション機能も提供し、それぞれの基本料金を収益源としています。当該サービスの開発・提供および顧客サポートなどの運営は、すべて同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、不動産会社への積極的な営業活動やサービスの機能拡充が功を奏し、売上高は毎期継続して成長を遂げています。利益面においても着実に拡大を続けてきましたが、直近の事業年度では顧客へのサポート体制強化を目的とした人員採用を積極的に行ったため、一時的な減益を計上しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 5.6億円 8.0億円 10.3億円 13.0億円 14.5億円
経常利益 0.7億円 1.4億円 2.0億円 2.8億円 2.0億円
利益率(%) 12.7% 17.7% 19.8% 21.6% 14.0%
当期純利益 0.5億円 1.0億円 1.5億円 2.1億円 1.5億円

(2) 損益計算書


既存サービスの継続的な利用と新規顧客の獲得により売上高は着実に増加しました。一方で、事業拡大を見据えた人員の積極的な採用や業務委託費の増加などに伴い、売上総利益率および営業利益率は前事業年度を下回る結果となり、今後の収益性改善が課題となっています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 13.0億円 14.5億円
売上総利益 7.4億円 7.6億円
売上総利益率(%) 56.8% 52.9%
営業利益 2.8億円 2.0億円
営業利益率(%) 21.5% 13.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が1.4億円(構成比23.8%)、支払手数料が0.9億円(同15.6%)を占めています。また、売上原価においては労務費が4.9億円(構成比72.1%)、経費が1.9億円(同27.9%)となっており、カスタマーサクセス部門等の人件費が主な費用要因となっています。

(3) セグメント収益


同社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、事業区分別の記載はありません。工務店・ハウスメーカー、不動産売買仲介業者、分譲マンション事業者への積極的な営業展開や顧客サポートを継続的に実施したことが奏功し、有料契約社数と月次経常収益が順調に積み上がり増収を達成しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
クラウドサービス事業 13.0億円 14.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 2.2億円 1.2億円
投資CF 0.0億円 -0.3億円
財務CF 0.2億円 -0.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.3%となっており、いずれもグロース市場の平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「テクノロジーとマーケティングの力で、住宅・不動産業界で働く“人”の力が最もうまく活かされる仕組みを創り上げたい」というミッションを掲げています。ITツールを通じて業務を効率化し、不動産会社の営業担当者が人にしかできない接客などに注力できる環境を提供することで、業界全体の価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


どんな職種の方でも親しみやすいユーザーインターフェースや、高度なITスキルをもたない方でもシンプルで使いやすい操作性の追求を重視しています。また、顧客からのフィードバックを営業やカスタマーサクセス部門から開発陣へ共有し、継続的な改善・改良に反映させるという、顧客の声を素早く形にする開発体制を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社はサブスクリプションモデルによる継続的な収益獲得をビジネスの基盤としており、中長期的な成長に向けて以下の指標を客観的な目標として重視しています。
* MRR(月次経常収益)
* 有料契約社数
* 単月解約率(年間平均)

(4) 成長戦略と重点施策


生成AI技術などを積極的にプロダクトへ組み込み、業務効率化を超えた付加価値の創出による顧客の生産性向上(AIトランスフォーメーション)を推進します。また、サービス付き高齢者住宅やリフォームといった不動産購入後の新領域への展開、代理店との連携強化を通じた販路拡大などによって、継続的な事業成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社が中長期的に成長し、サービスの付加価値向上や解約率の低減を実現するためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠であると位置付けています。従業員が能力を最大限発揮できる体制の構築に努めるほか、生成AIの社内導入などテクノロジーを活用した業務効率化を推進し、事業成長に見合った持続可能な組織運営を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 34.9歳 3.0年 5,162,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合システムの普及に伴う解約リスク


マーケティング・オートメーションツール市場には複数の競合企業が存在し、クラウド市場の拡大に伴う新規参入も想定されます。競争の激化により同社が想定する事業展開が図れず、解約率が上昇した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の他社事業サービスへの依存


同社のサービスは、外部のクラウドコンピューティングサービスを基盤として運営されています。当該インフラに大規模な障害が生じた場合や、提供元による経営戦略の変更・価格改定が行われた場合には、サービスの安定提供や収益性に重大な影響が生じるリスクがあります。

(3) 情報漏えいにより信用を失墜するリスク


同社は業務上、顧客が保有する個人情報や自社の機密情報を多数取り扱っています。ISMS認証の取得など情報管理体制の強化に努めていますが、万一、情報の外部流出や改ざん等が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償の請求につながり、事業運営に支障を来す可能性があります。

(4) 優秀な人材の採用及び定着のリスク


事業拡大を継続するためには、優秀な人材の確保と定着が不可欠です。労働市場の競争激化などにより、必要な時期に十分な人材を確保・育成できなかった場合や、既存人材の流出が進んだ場合には、サービス品質の低下や業務運営に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。