D&Mカンパニー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

D&Mカンパニー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

D&Mカンパニーは東京証券取引所グロース市場に上場し、医療機関や介護施設等に対する資金支援、経営コンサルティング、人材支援を複合的に提供する経営サポート事業を展開しています。業績トレンドとしては、コンサルティングや人材支援の堅調な推移により、直近の決算では増収増益を達成し安定的に成長しています。


※本記事は、株式会社D&Mカンパニーの有価証券報告書(第11期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. D&Mカンパニーってどんな会社?


同社は医療・介護・福祉事業者に対し、資金支援から経営改善、人材紹介までをワンストップで提供する企業です。

(1) 会社概要


2015年11月に診療・介護報酬債権等買取事業を目的として設立されました。2017年8月に貸金業を開始し、その後、2019年には人材事業を目的とした子会社を設立して有料職業紹介事業や労働者派遣事業を開始しました。2024年6月には東京証券取引所グロース市場へ上場し、事業を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で68名、単体で53名です。筆頭株主は親族の資産管理会社であるYSYで、第2位は創業者の松井信博氏、第3位は代表取締役社長の松下明義氏です。同社は関連子会社とともに、医療関連事業への経営サポートを複合的に展開する体制を築いています。

氏名 持株比率
YSY 34.53%
松井 信博 5.23%
松下 明義 4.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は松下明義氏が務めています。社外取締役は1名です。

氏名 役職 主な経歴
松下 明義 代表取締役社長 三井住友銀行、シティバンクNA等を経てパソナ関連会社の代表取締役を歴任。UBS銀行を経て2015年より現職。
藤井 幹正 専務取締役 三井住友銀行の支店長等を歴任後、複数企業の代表取締役を経験。2015年に同社顧問となり、2020年より現職。
南浦 佳孝 取締役 近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)を経て2023年に同社入社。管理部担当部長を経て2023年より現職。
衣川 雄明 取締役 大和銀行(現りそな銀行)、りそなビジネスサービス等を経て2023年に同社入社。営業本部審査部長を経て2025年より現職。


社外取締役は、松吉三郎氏(元積和不動産関西社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療機関等に対する経営サポート事業」の単一セグメントのもと、複合的なサービスを展開しています。

(1) F&Iサービス


同社は、医療機関や介護施設等に対して診療・介護報酬債権等譲渡に基づく資金支援サービスや、各種動産のリースサービスを提供しています。確定債権だけでなく、事業継続で将来発生する将来債権も積極的に買取ることで、事業者の継続的な資金需要に柔軟に対応し、経営の基盤を支える役割を担っています。

運営は主に同社およびD&Mパートナーズが行っています。医療機関等の債権を買取り、保険者からの入金と相殺する形で手数料を受け取っています。また、医療用機器等のリースにおいてはリース料を受領し、さらに不動産活用型支援では賃貸等による収益を得ています。

(2) C&Brサービス


同社は、主に資金支援を行っている医療・介護事業者に対し、経営診断やコスト削減提案などのコンサルティングサービスを提供しています。経営状況が厳しい事業者には、理事会への参加や価格交渉の支援など、同じ目線に立ったハンズオン型の経営サポートを行い、早期の業績改善と事業再生を目指しています。

運営は主に同社およびD&Mパートナーズが行っています。コンサルティングは、成果報酬型や月額等のランニング契約による経営改善サポート型で構成され、サービス提供や期間に応じて収益を認識しています。また、顧客のニーズに応じた医療機器などの商品販売による収益も得ています。

(3) HR&OSサービス


医療・介護事業者に対して、主に経営層や管理者・事務系人材の紹介、人材派遣、およびアウトソーシングの受託サービスを提供しています。慢性的な人手不足という課題に対し、外国人就労支援事業も展開し、登録支援機関として外国人人材の生活支援業務も受託して医療・介護業界の人材確保を総合的に支援しています。

運営は主にD&Mキャリアが行っています。人材紹介では入社決定時の紹介手数料を、人材派遣では派遣期間における稼働時間に応じた収益を得ています。また、経理や労務管理、調剤薬局の業務オペレーション等のアウトソーシング受託では、契約期間に応じた収益を認識しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業拡大がうかがえます。経常利益も毎年着実に成長を続けており、利益率は約19%から25%の間で高く安定して推移しています。当期利益も高水準を維持しており、強固な収益基盤を確立しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 9億円 11億円 12億円 15億円 16億円
経常利益 2億円 3億円 3億円 3億円 3億円
利益率(%) 25.2% 22.5% 23.1% 20.0% 19.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 1億円 2億円 2億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から拡大し、売上総利益も順調に増加しています。一方で、成長基盤の構築に向けた人材関連費用や業務委託費の増加により、営業利益率はわずかに低下しています。それでもなお高い収益性を維持しており、今後のさらなる事業拡大に向けた積極的な投資が行われていることが分かります。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 15億円 16億円
売上総利益 8億円 9億円
売上総利益率(%) 56.3% 53.8%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 19.9% 16.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が2億円(構成比29%)、役員報酬が1億円(同17%)を占めています。売上原価に関しては、経費が2億円(構成比41%)、当期商品仕入高が2億円(同39%)、労務費が1億円(同21%)となっています。

(3) セグメント収益


単一セグメントであるため、サービス区分別の売上高を比較しています。コンサルティングを中心とするC&Brサービスが大きく伸びており、人材支援のHR&OSサービスも堅調に推移しています。主力のF&Iサービスは前期比で横ばいとなっています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
F&Iサービス 8億円 7億円
C&Brサービス 4億円 5億円
HR&OSサービス 4億円 4億円
連結(合計) 15億円 16億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


勝負型:本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF -0.7億円 -8億円
投資CF -0.7億円 -1億円
財務CF 3億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会課題を解決し、人の願いを叶える」を経営理念に掲げています。事業を通じて、安心できる医療、穏やかな老後を暮らせる福祉、そして子供から老人まで全ての世代が夢を持って生きられる仕組みを創り、より素晴らしい社会や世界の実現に貢献することを自らの使命としています。

(2) 企業文化


同社は「お客様、投資家、私たち、そして社会」にとって何が「四方良し」かを考え抜き、行動することを事業運営の基本方針としています。既存および潜在的取引先の持続的成長に貢献しながら、医療・介護・福祉のより良い未来に向けた取り組みを推進し、ステークホルダー全体と共存共栄を図る価値観を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は事業拡大と変事抵抗力の向上を目指し、客観的な指標を用いた目標管理を行っています。事業拡大のための成長性指標として、「売上高の対前年増加率」「経常利益の対前年増加率」「取引社数(全取引社数・債権買取社数)の対前年増加率」「投資資産残高の対前年増加率」の4項目を重視し、収益性指標と安全性指標のバランスも重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、診療・介護報酬債権等買取をプラットフォームとし、経営再生やM&A支援への対応力を強化する独自のビジネスモデル構築を進めています。金融機関に依存しない資金調達手段の開拓やコンサルティング人材の増強により、支援の幅を広げます。また、人材不足が深刻な介護業界等に対しては、外国人就労支援事業やアウトソーシングサービスの積極的な拡大を図り、収益力の強化と安定成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「医療・介護業界の経営課題を解決する専門人材集団」の形成を人材戦略の基本方針としています。金融、M&A、事業再生、人材ソリューション等に精通する専門人材や次世代のマネジメント人材を確保し、組織成長を牽引する体制を構築します。また、経営陣の実践的な知見をOJT等を通じて移転する組織的なナレッジマネジメントを重視しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 47.5歳 1.9年 5,553,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員(1名)、女性管理監督者(4名)、外国国籍者(4名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 厚生行政や法制度の変化


同社の主要取引先である医療・介護事業者は、社会保障費抑制を目的とした診療・介護報酬の改定などにより業績に影響を受ける可能性があります。また、同社の債権買取業務に対して新たな法的規制が導入された場合、業務プロセスの見直しによるコストの発生や事業環境の変化が生じるリスクがあります。

(2) 金融マーケットの逼迫と金利上昇


同社は事業運営において金融機関からの借入による資金調達を行っており、有利子負債の比率が高い構造にあります。金融マーケットが急激に縮小したり、金利水準が大幅に上昇したりした場合、資金調達の難化やコストの増加につながり、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 貸倒引当金と債権の回収不能


同社が買取る将来債権は、事業者が医療・介護サービスの提供を完了した時点で発生します。取引先の経営状態が悪化し、事業の縮小や継続困難な事態が生じた場合、保険者から債権を回収できなくなるリスクがあります。未回収額の増加に伴い貸倒引当金を積み増す必要が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 優秀な人材の確保と育成


同社は各分野の専門的な役職員によって事業を運営しています。事業の拡大やサービスの多様化に伴い、経験豊富な人材の確保と多役化が不可欠です。しかし、人材市場の状況により適切な人員が確保・育成できない場合、サービス品質の維持や事業展開など同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。