※本記事は、株式会社アクセルスペースホールディングスの有価証券報告書(第7期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アクセルスペースホールディングスってどんな会社?
同社は小型衛星の開発や地球観測衛星による画像データ提供事業などを展開する宇宙ベンチャー企業です。
■(1) 会社概要
2008年にアクセルスペースとして設立され、同年にウェザーニューズと超小型衛星の製作契約を締結しました。2013年の初打上げを経て、2018年に地球観測プラットフォーム事業向け衛星を打上げました。2020年に持株会社体制へ移行して同社が設立され、2025年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
現在、連結で218名、単体で39名の従業員を擁しています。大株主については、筆頭株主が金融機関の楽天証券共有口となっており、第2位に創業者であり代表取締役の中村友哉氏、第3位に同じく創業者の永島隆氏が名を連ねる構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天証券共有口 | 4.96% |
| 中村 友哉 | 4.35% |
| 永島 隆 | 3.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役は中村友哉氏が務めており、取締役5名のうち3名が社外取締役で、社外取締役比率は60.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 友哉 | 代表取締役 | 2007年東京大学大学院工学系研究科特任研究員。2008年アクセルスペースを設立し代表取締役に就任。2020年に同社代表取締役に就任し、現在に至る。 |
| 折原 大吾 | 取締役 | 1996年三和銀行入社。UBS証券等を経て、イノフィス代表取締役社長を経験。2023年に同社へ入社し、現在は同社取締役経営企画本部長を務める。 |
社外取締役は、鎌田富久(元ACCESS代表取締役社長)、向井千秋(元JAXA搭乗科学技術者)、杉山全功(元ザッパラス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、AxelLiner事業およびAxelGlobe事業の2つの報告セグメントを展開しています。
■AxelLiner事業
顧客向けに小型衛星の開発・製造から打上げ手配、軌道上運用までをワンストップで提供するサービスを展開しています。主な顧客は政府系機関等の公的セクターであり、宇宙関連企業や政府系機関が調達したミッション機器を搭載する専用人工衛星の開発・運用を担っています。
顧客である政府系機関や民間企業から、人工衛星等の開発・製造・試験、運用等の対価や委託試験研究サービス料を受け取ります。本事業の運営は、子会社であるアクセルスペースが行っています。
■AxelGlobe事業
同社グループが自社で保有・運用する光学地球観測衛星コンステレーションから取得した画像データを販売するほか、画像解析に基づくソリューションサービスを提供しています。農業、インフラ、環境、安全保障など幅広い産業の民間企業および官公庁を顧客としています。
顧客から画像撮影サービスの利用料や委託試験研究サービス料を受け取ります。販売チャネルとして直販のほか、国内外の販売代理店を経由してデータやソリューションを提供しています。運営は子会社であるアクセルスペースおよびアクセルスペースディフェンス&インテリジェンスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
5期分の売上高は増加傾向にあり、直近では大きく伸長しています。一方で、小型衛星の量産化や新型衛星の開発に向けた研究開発投資などの先行投資を継続して行っているため、経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失が毎期発生しており、利益面ではマイナス幅が拡大する傾向が続いています。
| 項目 | 第3期 | 第4期 | 第5期 | 第6期 | 第7期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4.1億円 | 13億円 | 21億円 | 16億円 | 25億円 |
| 経常利益 | -11億円 | -13億円 | -25億円 | -18億円 | -37億円 |
| 利益率(%) | -266.0% | -101.3% | -118.9% | -115.0% | -148.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -30億円 | -13億円 | -32億円 | -20億円 | -41億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大して売上総利益率が大きく改善しています。しかし、事業拡大に向けた研究開発費の増加等により販売費及び一般管理費が大きく膨らんでおり、営業損失のマイナス幅は前年度よりも拡大する結果となっています。
| 項目 | 第6期 | 第7期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 16億円 | 25億円 |
| 売上総利益 | 1.1億円 | 8億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.8% | 31.8% |
| 営業利益 | -25億円 | -38億円 |
| 営業利益率(%) | -157.2% | -152.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が27億円(構成比57.9%)、給与手当が7億円(同15.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに前期から増収を達成しています。AxelLiner事業は政府系機関からの委託試験研究の進捗等により売上を伸ばし、AxelGlobe事業も新規案件の獲得や国内のサービス利用拡大が寄与し、大幅に売上を増加させています。
| 区分 | 売上(第6期) | 売上(第7期) |
|---|---|---|
| AxelLiner事業 | 13億円 | 15億円 |
| AxelGlobe事業 | 3億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 16億円 | 25億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は先行投資により赤字ですが、将来の成長のために資金調達を行いながら積極的な投資を継続する勝負型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 第6期 | 第7期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -43億円 | -51億円 |
| 投資CF | -2億円 | -21億円 |
| 財務CF | 44億円 | 78億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.7%となっています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Space within Your Reach」というビジョンを掲げ、従来は人々にとって遠い存在であった宇宙が、日常的にかつ当たり前のように利活用されている社会の実現を目指しています。小型衛星技術のパイオニアとして宇宙ビジネスの先頭に立ち続けることで、従来の宇宙利用の常識を打ち破り、地球上のあらゆる人々が当たり前のように宇宙を使う社会を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、グループ全体で共有すべきルールや考え方を「アクセルスペースコアバリュー」として定めています。このコアバリューを通じて企業倫理を確立し、法令や定款、社内規程の遵守を徹底するとともに、その重要性を繰り返し情報発信することで、透明性が高く健全な組織運営を重視する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、両事業のさらなる強化とシナジー発揮のために、2031年5月期末までに目指す4つの目標を掲げています。
・AxelGlobe事業において地球観測衛星コンステレーションを30機体制へ拡大
・AxelLiner事業において2030年5月期までに軌道上実証サービスを年4回の定期運航体制化
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、アップストリーム側のAxelLiner事業とダウンストリーム側のAxelGlobe事業の両輪で成長を目指しています。AxelLiner事業では汎用バスシステムの確立や開発プロジェクトを短縮・省力化するソフトウェアの完成に取り組みます。AxelGlobe事業では衛星機数の増加による撮影能力の増強や高分解能衛星の投入、特定産業向けソリューションの強化を推進し、事業基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、専門性と高いモチベーションを有する優秀な人材の確保と育成を重要な人材戦略と位置付けています。多様な知見や価値観が新たな価値創出につながると考え、国籍や性別、年齢を問わず多様性を重視した採用を行っています。また、業務を通じた経験の提供や適切な等級・評価制度の運用により、従業員の継続的な成長やリーダー育成を促進し、持続的な組織能力の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第7期 | 44.8歳 | 1.7年 | 8,119,927円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 衛星の打上げにまつわるリスク
自社で開発・製造した小型衛星の打上げや軌道投入は外部の打上げ事業者に依存しています。世界的な打上げ需要の増加やロケットの開発遅延、打上げ事故、天候不良などにより、希望する時期や条件で打上げ機会を確保できない可能性があります。打上げが失敗または遅延した場合、画像データの取得機会を喪失し、同社の事業や業績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
■(2) サプライチェーンのリスク
衛星に搭載するミッション機器や汎用バスシステムの研究開発において、必要な原材料や部品の調達が遅れる可能性があります。特に特殊な機器は製造メーカーが限られており、仕入先の財務悪化や災害によるサプライチェーンの混乱が生じた場合、衛星の製造や研究開発スケジュールが遅延し、顧客へのサービス提供に支障をきたすリスクがあります。
■(3) 黒字化を達成及び維持できないリスク
宇宙技術の研究開発には多額の初期投資が必要であり、投資回収までに長期間を要する特徴があります。そのため、同社は継続的に営業損失を計上しています。今後も研究開発に伴う投資の増加が見込まれる中、顧客の獲得遅延や衛星製造の延期などが発生した場合、想定通りの収益を確保できず、黒字化の達成が遅延したり維持できなくなったりする可能性があります。



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