※本記事は、株式会社アクセルスペースホールディングス の有価証券報告書(第6期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アクセルスペースホールディングスってどんな会社?
世界初の民間商用超小型衛星の開発実績を持ち、小型衛星のワンストップサービスと地球観測データ販売を展開する宇宙ベンチャーです。
■(1) 会社概要
2008年に株式会社アクセルスペースとして設立され、2013年に世界初の民間商用超小型衛星「WNISAT-1」を打ち上げました。2019年に地球観測プラットフォームAxelGlobe事業を開始し、2020年に持株会社体制へ移行しました。2022年には衛星開発サービスをAxelLiner事業として定義し、2025年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
連結従業員数は182名、単体では32名です。筆頭株主はベンチャーキャピタルの31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースⅠ合同会社で、第3位に創業者で代表取締役の中村友哉氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースⅠ合同会社 | 13.68% |
| SMBC-GBグロース1号投資事業有限責任組合 | 11.55% |
| 中村 友哉 | 6.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役は中村 友哉氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 友哉 | 代表取締役 | 東京大学大学院工学系研究科特任研究員を経て、2008年8月にアクセルスペースを設立し代表取締役に就任。2020年3月より現職。 |
| 折原 大吾 | 取締役 | 三和銀行、日本ルーセント・テクノロジー、UBS証券、経営共創基盤を経て、イノフィス代表取締役社長等を歴任。2023年8月より現職。 |
| 濵田 牧子 | 取締役 | ベネッセコーポレーション、サイバーエージェント、ビジネス・ブレークスルー、UNCOVER TRUTH等を経て、2023年8月より現職。 |
社外取締役は、鎌田 富久(元ACCESS代表取締役社長兼CEO)、向井 千秋(元宇宙航空研究開発機構宇宙飛行士)、杉山 全功(元ザッパラス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AxelLiner事業」および「AxelGlobe事業」を展開しています。
■(1) AxelLiner事業
顧客のミッション機器を搭載する小型衛星の開発・製造・打上げ・運用をワンストップで提供するサービスです。政府系機関や民間企業を顧客とし、衛星プロジェクトの立ち上げから軌道上運用までを支援します。汎用バスシステムの確立や、開発プロセスを管理するソフトウェアの提供による効率化を推進しています。
収益は、顧客からの衛星開発・運用等に対する対価として受領します。また、政府系機関からの委託試験研究等による収入も含まれます。運営は主に株式会社アクセルスペースが行っています。
■(2) AxelGlobe事業
同社グループが保有・運用する光学地球観測衛星コンステレーション「GRUS」が取得した画像データを提供します。農業、インフラ監視、環境モニタリング、防災、報道など幅広い分野の顧客に対し、高頻度かつ安価な衛星データや、AI解析等を用いたソリューションを提供しています。
収益は、画像データの販売料や、データ解析・コンサルテーションサービスの対価として顧客から受領します。運営は主に株式会社アクセルスペースが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありましたが、直近では減収となりました。利益面では、宇宙関連技術の研究開発への先行投資を継続しているため、経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失の計上が続いています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4.1億円 | 13.1億円 | 21.1億円 | 15.9億円 |
| 経常利益 | -10.9億円 | -13.3億円 | -25.1億円 | -18.2億円 |
| 利益率(%) | -266.0% | -101.3% | -118.9% | -115.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -16.8億円 | -13.4億円 | -31.7億円 | -19.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益は黒字転換しました。一方で、販売費及び一般管理費の負担が大きく、営業損失が継続しています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 21.1億円 | 15.9億円 |
| 売上総利益 | -2.7億円 | 1.1億円 |
| 売上総利益率(%) | -12.8% | 6.8% |
| 営業利益 | -25.4億円 | -25.0億円 |
| 営業利益率(%) | -120.2% | -157.2% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が13億円(構成比51%)、給与手当が5億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに減収となりました。AxelLiner事業は政府系機関からの委託試験研究の進捗度低下等が影響し、AxelGlobe事業は一部既存顧客の納品時期ずれ込み等が影響しました。利益面では両事業とも赤字ですが、AxelLiner事業は損失幅が縮小しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AxelLiner事業 | 17.2億円 | 13.3億円 | -12.3億円 | -2.1億円 | -15.7% |
| AxelGlobe事業 | 3.9億円 | 2.6億円 | -6.1億円 | -7.0億円 | -269.1% |
| 調整額 | - | - | -6.6億円 | -9.1億円 | - |
| 連結(合計) | 21.1億円 | 15.9億円 | -25.1億円 | -18.2億円 | -115.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -25.8億円 | -43.3億円 |
| 投資CF | -9.8億円 | -1.9億円 |
| 財務CF | 64.3億円 | 43.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」をビジョンに掲げています。小型衛星技術のパイオニアとして宇宙ビジネスを牽引し、従来の宇宙利用の常識を打破することで、地球上のあらゆる人々が当たり前のように宇宙を利用できる社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、共有すべきルールや考え方を表した「アクセルスペースコアバリュー」を通じて、企業倫理の確立および法令遵守の徹底を図っています。ビジョン・ミッションに共感し高い意欲を持った人材を重視し、多様な働き方の整備や透明性のある評価制度の構築を通じて、従業員が高いモチベーションを持って働ける環境づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中期的には売上高と補助金収入を合算した「総収入」を重要な指標として管理しています。事業別の具体的な数値目標としては、以下の達成を目指しています。
* AxelLiner事業:2025年5月期から2028年5月期までの間に累積6機の人工衛星打上げ
* AxelGlobe事業:2028年5月期末までに14機の衛星運用
■(4) 成長戦略と重点施策
AxelLiner事業では、多様なミッションに対応可能な汎用バスシステムの確立と、衛星開発プロジェクトを効率化するソフトウェア「AxelLiner Terminal」の完成により、収益化とユーザー体験の革新を目指します。AxelGlobe事業では、衛星機数の増加による撮影能力の増強や高分解能衛星の投入、特定産業向けソリューションの強化を通じて成長を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ビジョン・ミッションに共感する優秀な人材の確保と育成を重要課題と位置づけています。外国籍社員の採用や女性管理職の登用など多様性を重視しつつ、バーチャルオフィス制度などの柔軟な働き方の整備、福利厚生の充実、透明性のある評価制度の構築により、従業員のエンゲージメント向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 42.4歳 | 2.5年 | 7,127,839円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 衛星画像市場の成長鈍化
同社が事業を展開する衛星画像およびサービス市場は拡大が見込まれていますが、景気減速や技術革新、規制動向、需要減退等により想定通りに成長しない可能性があります。また、政府系機関の予算縮小や国際情勢の変化、競合との価格競争等により、期待する需要を喚起できない場合、同社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) AxelLiner事業の受注遅延
AxelLiner事業の収益化には、汎用バスシステムの確立とソフトウェア「AxelLiner Terminal」の提供が不可欠です。しかし、技術的課題による開発遅延や、実証衛星の不具合等により計画通りに進まない可能性があります。また、顧客側の事情によるプロジェクト遅延や中止、開発費用の増加等が起きた場合、同社グループの収益化や競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 政府系機関への依存
現在の売上高の大部分は政府系機関が占めており、当面はこの傾向が続く見込みです。国家予算や政策変更、国際情勢の影響を受けやすく、発注の縮小や中止のリスクがあります。また、厳格な規制や要件への対応が必要であり、違反時のペナルティや、機密保持による情報開示の制約等が生じる可能性があります。民間需要の開拓による収益分散が遅れた場合、業績への影響が懸念されます。
■(4) 衛星打上げに関するリスク
衛星の打上げは外部事業者に委託しており、打上げ失敗や遅延のリスクがあります。打上げ失敗による実証機会や販売機会の喪失、代替衛星の製造費用等は業績に悪影響を及ぼします。保険でカバーできない損害や、顧客からの信頼低下による契約解除等のリスクも存在し、サービス提供の大幅な遅れや断念に繋がる可能性があります。



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