※本記事は、ファーストコーポレーション株式会社 の有価証券報告書(第14期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファーストコーポレーションってどんな会社?
分譲マンション建設に特化したゼネコンです。用地取得から企画提案を行う「造注方式」による特命受注が特徴です。
■(1) 会社概要
2011年6月に東京都西東京市で設立され、同年10月に第1号施工物件を着工しました。2015年3月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2016年12月には市場第一部へ変更しました。その後、2022年4月の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しましたが、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は180名、単体では161名です。筆頭株主は創業者の社長である中村利秋氏で、第2位は飯田一樹氏、第3位は資産管理会社と見られる株式会社中村です。経営陣やその関連会社が主要株主となっており、オーナーシップの強い資本構成と言えます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村利秋 | 16.86% |
| 飯田一樹 | 10.51% |
| 株式会社中村 | 8.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中村利秋氏です。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 利秋 | 代表取締役社長開発事業本部長 | 1979年中村美装取締役。1982年ナカワ工業(現ファーストカルデア)設立社長。2011年同社設立社長。2021年4月より現職。ファーストエボリューション社長も兼任。 |
| 佐井賀 豊 | 専務取締役建築事業本部長兼再開発事業担当兼管理本部管掌 | 1979年東海興業入社。同社執行役員建設事業本部長等を経て2016年同社入社。建築事業本部長、常務取締役を経て2024年6月より現職。 |
| 大戸 領 | 取締役建築事業本部工事部長 | 1992年ユーディーケー入社。2007年ファーストカルデア入社。2012年同社入社。建築事業本部工事部長、執行役員を経て2024年8月より現職。 |
社外取締役は、藤本聡(元みずほ銀行常務執行役員)、柴山久雄(元東京建物代表取締役専務執行役員)、小野貴樹(元三井住友銀行常務執行役員)、諸橋隆章(ライジング法律事務所代表パートナー)、植野和宏(植野和宏公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」および「不動産事業」のほか、「その他」事業を展開しています。
■建設事業
主に分譲マンション建設工事の施工を行っています。デベロッパーからの発注を受け、品質確保を最優先に業務に取り組んでいます。特に鉄筋コンクリート(RC)工法を主として採用しており、施工品質の均一化や効率化を図っています。主要エリアは東京圏と九州及び周辺エリアです。
収益は、マンション・デベロッパーからの請負工事代金等が主な源泉です。受注方式には、相見積りによる「入札方式」と、土地情報の収集・企画提案を行い特命で受注する「造注方式」の2つがあります。運営は主にファーストコーポレーションが行っています。
■不動産事業
マンション・デベロッパーへの事業化提案を行います。「造注方式」の過程で生じるマンション用地の紹介、仲介、地位譲渡、売買などを行い、建設工事の受注に繋げます。また、一部受注案件ではデベロッパーと共同事業を行い、販売事業主として参画することもあります。
収益は、事業用地の売却収入や仲介手数料、共同事業における分譲マンションの販売収入等が主な源泉です。運営はファーストコーポレーションおよび連結子会社のファーストエボリューションが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、一級建築士事務所としての設計業務や不動産賃貸業、マンション管理運営業などを行っています。
収益は、設計監理料や賃料収入、管理手数料などが主な源泉です。運営はファーストコーポレーションおよび連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に2025年5月期は前期比で大幅な増収となりました。経常利益に関しても、2024年5月期はいったん減少しましたが、2025年5月期には大きく回復し、増益を達成しています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 255億円 | 285億円 | 432億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 14億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 7.7% | 5.0% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 10億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益も大きく伸長しています。売上総利益率は若干低下しましたが、営業利益率は改善しました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 285億円 | 432億円 |
| 売上総利益 | 29億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.1% | 9.7% |
| 営業利益 | 15億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が5億円(構成比32.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設事業は微増収ながら、資材高騰等の影響か利益は減少しました。一方、不動産事業は売上が3倍以上に急増し、利益も倍増しています。これは共同事業による販売収入や用地販売が好調だったためです。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 220億円 | 226億円 | 19億円 | 17億円 | 7.7% |
| 不動産事業 | 63億円 | 203億円 | 10億円 | 22億円 | 10.8% |
| その他 | 2億円 | 3億円 | -5億円 | -2億円 | -84.2% |
| 調整額 | - | - | -10億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 285億円 | 432億円 | 15億円 | 26億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ファーストコーポレーションは、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、事業活動から潤沢な資金を生み出しています。投資活動では、主に設備投資に資金を使用しました。財務活動では、借入による収入と返済、配当金の支払いなどが行われました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -16億円 | 21億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | 7億円 | -8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「より良質な住宅を供給し、豊かな住環境に貢献する」という社是のもと、安心・安全なマンションを供給し、あらゆるステークホルダーからの信頼獲得と社会への貢献を目指すことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「安全・安心・堅実」をモットーに、「良質で安価な住宅を供給する」ことを使命としています。施工するマンションの品質確保を最優先とし、特に躯体部分については法令に加え独自のダブルチェックや第三者機関検査の導入を行うなど、厳格な品質管理を徹底する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
3ヶ年の中期経営計画「Innovation2024」を策定しています。初年度の達成を受け、2年目以降も継続達成を目指しています。最終年度となる2027年5月期については、成長性を維持する目標を掲げています。
* 2026年5月期目標:売上高400億円、経常利益25億3,000万円
* 2027年5月期目標:売上高400億円、経常利益28億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「造注方式」を事業戦略の中核に据え、土地開発や土地持込による特命受注の拡大を目指しています。また、再開発事業の推進や、施工体制における生産能力の拡大と品質向上にも注力します。具体的には、新規顧客開拓、人材確保(M&A含む)、現場業務の効率化などを重点施策としています。
* 2026年5月期連結業績目標:売上高400億円、経常利益25億3,000万円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
スペシャリスト人材や探求心を持つ人材の育成を目指しています。採用においては公平公正を期し、ミスマッチ防止に努めています。社内環境については、ハラスメント防止や積立有給休暇制度、人間ドック補助などを導入し、安心安全で働きやすい職場づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 43.0歳 | 6.2年 | 7,847,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、資格取得率(1級建築士・1級建築施工監理技士)(57.6%)、離職率(11.8%)、女性在籍率(16.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 分譲マンション建設市場の動向
景気、金利、地価等の変動によりマンション需要が減退した場合、請負工事受注高や不動産取引高が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主要事業エリア(東京圏)への集中
主要事業エリアである東京圏において、競合激化や用地不足、建築費高騰、災害等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 建設コストの変動
工事期間が長期にわたるため、請負契約締結後に想定を超えて資材価格や労務費が高騰した場合、利益が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 在庫に係るリスク
「造注方式」において事業用地を取得する場合、引渡し完了まで在庫となります。売却不成立や在庫の長期化、市況悪化による評価減が必要となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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