ファーストコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファーストコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファーストコーポレーションはスタンダード市場に上場し、主に東京圏および九州エリアで分譲マンション建設と不動産事業を展開しています。直近の業績は、不動産事業における販売時期のスライド等により減収となったものの、主力である建設工事の順調な進捗により営業増益・経常増益を達成し、収益性の改善が進んでいます。


※本記事は、ファーストコーポレーション株式会社の有価証券報告書(第15期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファーストコーポレーションってどんな会社?


分譲マンションの建設施工と、デベロッパーに対する事業用地の企画・提案を行う不動産事業を主力とする企業です。

(1) 会社概要


同社は2011年6月に建設工事設計施工等を目的とした総合建設業として設立され、同年8月に特定建設業許可を取得しました。2015年3月にマザーズ市場へ上場を果たし、その後順調に事業を拡大して2018年4月には九州支店を開設しました。2021年9月には新たな分譲マンションプロジェクトとして「ウェルビーイングシティ構想」を始動させるなど、良質な住環境の供給に向けた取り組みを推進しています。

同社グループの従業員数は連結で199名、単体で179名となっています。筆頭株主は創業者の代表取締役社長である中村利秋氏で、第2位は飯田一樹氏、第3位は資産管理会社とみられる中村となっています。

氏名 持株比率
中村利秋 16.27%
飯田一樹 10.51%
中村 8.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員 開発事業本部長を中村利秋氏が務めており、社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
中村利秋 代表取締役社長執行役員 開発事業本部長 1982年ナカワ工業設立。1990年ランドワークス代表取締役社長。2011年同社設立・代表取締役社長。2026年より現職。
佐井賀豊 専務取締役執行役員建築事業本部長兼再開発事業担当 1979年東海興業入社、建設事業本部長等を経て、2016年同社入社。2018年取締役、2026年より現職。
大戸領 取締役執行役員建築事業本部工事部長 1992年ユーディーケー入社、2012年同社入社。2018年建築事業本部工事部長、2024年取締役、2026年より現職。


社外取締役は、藤本聡(元みずほ銀行常務執行役員)、柴山久雄(元東京建物専務執行役員)、小野貴樹(元三井住友銀行常務執行役員)、諸橋隆章(ライジング法律事務所代表パートナー)、植野和宏(ESネクスト有限責任監査法人パートナー)、足立学(東京富士法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産事業」および「その他事業」を展開しています。

建設事業


主に分譲マンション建設工事の施工を行っており、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)と九州およびその周辺エリアを主要な事業エリアとしています。経験豊富な技術者による安定した施工体制と厳格な品質管理を強みとしています。

収益源としては、マンションデベロッパーからの引合いによる入札方式での受注や、自ら用地を確保して企画提案を行う「造注方式」を通じて建設工事を受注し、工事代金を受け取っています。運営は同社が行っています。

不動産事業


マンションデベロッパーに対する事業化提案を行っています。建設事業との相乗効果を最大限に活かし、用地情報の収集から企画立案、建設工事の受注までをワンストップで展開する「造注方式」を重点戦略として推進しています。

収益源としては、確保したマンション用地をデベロッパーに売却する際の不動産取引代金や仲介手数料のほか、共同事業体に参画してマンション販売に携わることによる収益を受け取っています。運営は同社およびファーストエボリューションが行っています。

その他事業


報告セグメントに含まれない周辺事業を展開しています。建設事業や不動産事業を補完する位置づけとして機能しています。

収益源としては、一級建築士事務所としての設計業務受託による報酬や、不動産賃貸業による賃料収入、マンション管理運営業による管理手数料等を受け取っています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去4期間の業績推移を見ると、売上高は大型案件の有無等により変動しつつも250億円から430億円規模で推移しています。直近の期は減収となったものの、採算を重視した受注や事業推進により経常利益と当期利益は増益を達成しており、利益率の改善が進んでいることが確認できます。

項目 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 255億円 285億円 432億円 364億円
経常利益 20億円 14億円 25億円 27億円
利益率(%) 7.7% 5.0% 5.7% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 10億円 15億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高は前年同期比で減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しており、各利益率も大きく向上しています。これは、建設事業における進行中工事の順調な推移や、見積精度の向上を通じた原価管理の徹底が奏功したことによるものです。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 432億円 364億円
売上総利益 42億円 47億円
売上総利益率(%) 9.7% 12.9%
営業利益 26億円 29億円
営業利益率(%) 6.0% 8.0%


販売費及び一般管理費(18億円)のうち、従業員給与手当が6億円(構成比32%)、支払手数料が2億円(同13%)を占めています。売上原価は317億円で、完成工事原価(同76%)や不動産売上原価(同22%)が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は進行中の工事が順調に推移したことで増収増益となりました。一方で不動産事業は、前期に計上された大型案件の反動減に加え、計画利益額の確保を優先して一部案件を翌期へスライドさせた影響で減収減益となっています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
建設事業 226億円 272億円 17億円 30億円 11.2%
不動産事業 203億円 88億円 22億円 11億円 12.5%
その他 3億円 4億円 -2億円 -0.2億円 -6.2%
調整額 -億円 -億円 -11億円 -12億円 -%
連結(合計) 432億円 364億円 26億円 29億円 8.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 21億円 -99億円
投資CF -0.5億円 -0.3億円
財務CF -8億円 72億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「より良質な住宅を供給し、豊かな住環境に貢献する」という社是を掲げています。人々の安心・安全への追求を社会的使命と位置づけ、豊かな発想による創造が新たな価値の創造につながり、社員一人ひとりの成長が会社の成長につながることを信念として経営を行っています。

(2) 企業文化


「当たり前のことを当たり前に、安心・安全と品質は全てのものに優先する」をモットーとしています。あらゆるステークホルダーからの信頼を獲得し、社会へ貢献することを目指しており、建物の品質を確保するための厳格な管理体制や、安全衛生教育を徹底する企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


創業20周年に向けた中長期ビジョン『First VISION 2031』を策定し、フェーズ1(2026年〜2028年)における具体的な数値目標を掲げて事業を推進しています。

* 2028年5月期:売上高50,000百万円
* 2028年5月期:営業利益4,100百万円
* 2028年5月期:経常利益3,400百万円
* 2028年5月期:当期純利益2,340百万円

(4) 成長戦略と重点施策


当面の目標である売上高500億円、将来的な1,000億円に向けた基盤構築のため、資本収益性の向上に注力しています。事業推進として「造注方式」や共同事業の推進、建築種別の拡大、安全品質管理の強化を図るとともに、積極的な人的資本投資やM&Aを通じた成長投資を実行しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


あらゆる業務に対して真摯に取り組む人材を求め、能力や適性を基準とした公平公正な採用を実施しています。入社後のミスマッチを防ぐ取り組みに加え、ハラスメントの禁止や外部相談窓口の設置、積立有給休暇制度や団体長期障害所得補償保険の導入など、安心安全で働きやすい活力ある職場環境作りに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 42.0歳 6.2年 8,809,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規雇用) 67.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 8.1%


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率について有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性在籍率(18.1%)、離職率(10.8%)、資格取得率(1級建築士・1級建築施工管理技士)(51.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 分譲マンション市場への依存

同社グループは建設事業を主力としており、デベロッパーの物件開発動向に影響を受けます。マンション用地の不足や不動産価格、消費者需要の低迷等により分譲マンションの着工戸数が減少した場合、請負工事受注高や不動産取引高が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 東京圏エリアへの事業集中

主要事業エリアを東京圏(一都三県)としており、当該エリアにおける有望な事業用地の不足、地価高騰、建築費の上昇、人材や協力会社の調達難、他社の新規参入による競争激化等が生じた場合、受注件数の減少を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 建設コストの変動リスク

工事期間が長期にわたるため、一部の建築資材価格や労務費の変動影響を受ける可能性があります。請負契約締結後に想定を超えて建設資材価格の高騰や労務費の上昇が発生した場合には、利益の減少を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。