※本記事は、サツドラホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年5月16日 至 2025年5月15日、2025年8月7日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サツドラホールディングスってどんな会社?
北海道を中心にドラッグストアチェーンを展開し、地域マーケティングや決済サービスも手掛ける持株会社です。
■(1) 会社概要
2016年8月、サッポロドラッグストアーの単独株式移転により同社が設立され、東証一部(現スタンダード)および札証へ上場しました。その後、グループ再編を進め、2020年5月には子会社のリージョナルマーケティングがVISIT MARKETINGを吸収合併しました。2024年6月には、中核事業会社のサッポロドラッグストアーがシーラクンスを吸収合併するなど、組織体制の効率化を図っています。
同グループの連結従業員数は1,095名です。単体での従業員数は持株会社のため記載がありません。筆頭株主は同社代表取締役社長CEOの富山浩樹氏が代表を務める資産管理会社のトミーコーポレーションで、第2位も創業家関連と思われる株式会社三原色となっています。経営陣による安定的な持株比率が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トミーコーポレーション | 36.15% |
| 三原色 | 5.15% |
| 廣岡 聖司 | 4.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長CEOは富山浩樹氏です。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 富山 浩樹 | 代表取締役社長CEO | 1999年ダイカ入社。2007年サッポロドラッグストアー入社、2015年同社社長。2016年同社設立とともに社長就任。2020年8月より現職。 |
| 高田 裕 | 取締役CHO | 1986年コクミン入社。1988年サッポロドラッグストアー入社。同社店舗運営部長、営業本部長、副社長COOなどを歴任。2025年8月より現職。 |
| 小西 憲明 | 取締役CFO | 新日本監査法人、AIGジャパン・ホールディングス執行役員、アマゾンジャパン、Bytedanceを経て、2024年3月同社入社。2024年8月より現職。 |
| 中村 真紀 | 取締役 CHRO | 西友執行役員SVP、HAVIサプライチェーン・ソリューションズ・ジャパン執行役社長などを経て、2021年同社社外取締役。2023年8月より現職。 |
社外取締役は、保田隆明(慶應義塾大学総合政策学部教授)、坊垣佳奈(株式会社マクアケ顧問)、山本明彦(山本コンサルティングオフィス代表)、河野宏子(株式会社コーチ・エィシニアエグゼクティブコーチ)、成田眞弘(元中道リース部長)、吉井一浩(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リテール事業」「マーケティング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) リテール事業
北海道内でのドミナント化を目指した「サツドラ」ブランドのドラッグストアおよび調剤薬局の運営を行っています。地域の生活インフラとして、医薬品、化粧品、日用品、食品などを提供するほか、訪日外国人向けのインバウンドフォーマット店舗も展開しています。
主な収益源は、一般消費者への商品販売による売上および調剤報酬です。また、不動産賃貸料収入も含まれます。運営は、中核子会社であるサッポロドラッグストアーが主に行っています。また、台湾においては子会社の台湾札幌薬粧有限公司が卸売業務を行っています。
■(2) マーケティング事業
北海道共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」を活用した地域マーケティング事業や、決済サービス事業を展開しています。EZOCAの会員基盤を活用し、提携店への送客やデータ分析支援などを行っています。
収益源は、加盟店からの手数料収入やマーケティング支援に伴うサービス料などが中心です。運営は、主に子会社のリージョナルマーケティングが行っています。
■(3) その他
上記セグメントに含まれない事業として、POSアプリケーションの開発・販売や、不動産のアセットマネジメント、スタートアップ企業への出資・支援などを行っています。
収益源は、システム開発・販売による対価や不動産管理に係る手数料などです。運営は、POSアプリ開発を行うGRIT WORKS、不動産管理を行うSアセット、投資事業を行うS Venturesなどの子会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。特に直近の2025年5月期は売上高が1,000億円を突破しました。利益面でも、経常利益は一時的な減少があったものの回復・成長基調にあり、当期純利益も増加傾向を示しています。利益率は低水準ながらも改善が見られます。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 832億円 | 829億円 | 875億円 | 955億円 | 1,002億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 8億円 | 3億円 | 13億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 0.7% | 1.0% | 0.4% | 1.4% | 1.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益率は改善傾向にあり、販売費及び一般管理費の増加を売上総利益の増加が上回ったことで、本業の収益性が向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 955億円 | 1,002億円 |
| 売上総利益 | 236億円 | 256億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.7% | 25.5% |
| 営業利益 | 14億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 1.4% | 1.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び諸手当が80億円(構成比34%)、地代家賃が36億円(同15%)を占めています。売上原価については、商品評価損が0.1億円(売上原価の0.0%)計上されています。
■(3) セグメント収益
リテール事業は店舗数の純増やインバウンド需要の取り込みにより増収増益となりました。マーケティング事業もEZOCA会員基盤の拡大により大幅な増収増益を達成しています。その他事業は減収ながらも増益となりました。全体として、主力のドラッグストア事業の堅調さとマーケティング事業の成長が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| リテール事業 | 941億円 | 984億円 | 13億円 | 15億円 | 1.6% |
| マーケティング事業 | 12億円 | 20億円 | 0.3億円 | 0.5億円 | 2.3% |
| その他 | 2.0億円 | 1.9億円 | 0.1億円 | 0.3億円 | 14.3% |
| 調整額 | -4億円 | -4億円 | 0.2億円 | 0.7億円 | -% |
| 連結(合計) | 955億円 | 1,002億円 | 14億円 | 17億円 | 1.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCF状況は、本業で稼いだ資金(営業CF+)を借入返済(財務CF-)や投資(投資CF-)に充てている「健全型」です。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | 26億円 |
| 投資CF | -19億円 | -17億円 |
| 財務CF | -13億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「健康で明るい社会の実現に貢献する」をミッション(社会的な存在意義)として掲げています。また、ビジョン(為すべきこと)として「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」を掲げ、地域のお客さまに寄り添ったサービスの展開を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、これからも大切にしていきたい価値観(バリュー)として、「地域とつながる場所がある」「地域をつなげるコミュニティがある」「未来へつなぐ課題解決力がある」の3つを設定しています。これらに基づき、地域と共創し、持続可能な形で地域社会のインフラとしての役割を担うことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年5月期から2028年5月期までを対象とする3か年の新中期経営計画を策定しています。最終年度となる2028年5月期の数値目標として以下を掲げています。
* 連結売上高:1,060億円
* 連結営業利益:27億円
* 連結営業利益率:2.5%
* ROE:11.7%
* ROIC:7.3%
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画では「地域で稼ぐ体制づくり」をテーマに掲げ、以下の4つの重点施策を推進することで、安定的な収益性の向上を目指します。
1. **荒利率の改善**:プライシング戦略やゴンドラ効率の最適化を実施します。
2. **販管費の抑制**:組織体制の強化、リソースの再配分、IT活用によるDXを推進します。
3. **資本効率の改善**:店舗ネットワークの最適化や事業ポートフォリオの改善に取り組みます。
4. **株主還元の強化**:累進配当方針への転換や配当性向の目標設定を行います。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材戦略として「多様性のある組織づくり」「活躍し続ける人材育成」「健康経営」の3つを掲げています。ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材が能力を発揮できる環境を整備するとともに、階層別・選抜・テーマ別研修などを通じて従業員の成長を支援しています。また、健康経営優良法人(ホワイト500)の認定を取得するなど、従業員の健康維持・増進にも注力しています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.1% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 47.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 85.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休暇取得率(100.0%)、健康診断受診率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 大規模災害、感染症等による影響
地震、津波、水害、雪害等の自然災害や感染症の発生、事故による交通遮断が起きた場合、店舗の休業、個人消費の減少、商品供給の遅延などが発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等について
医薬品等の販売には薬機法等の許可が必要であり、規制緩和による異業種参入や競争激化が収益に影響する可能性があります。また、大規模小売店舗立地法に基づく出店審査の状況により、新規出店や増床計画が変更・遅延するリスクがあります。
■(3) 調剤報酬及び薬価基準の改定
調剤売上は公定価格である薬価基準と調剤報酬点数に基づいています。これらが改定され、薬価や報酬点数が引き下げられた場合、同社グループの業績にマイナスの影響を与える可能性があります。



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