ヤマシタヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマシタヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマシタヘルスケアホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、医療機器販売を主力とする持株会社です。医療機関向けに機器や消耗品、関連システムを提供しています。直近の業績は、消耗品販売が堅調に推移したものの、大型設備の投資需要の一服や人件費等の増加により減収減益となっています。


※本記事は、ヤマシタヘルスケアホールディングスの有価証券報告書(第9期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマシタヘルスケアホールディングスってどんな会社?


同社は医療機器や医療消耗品の専門商社として、地域の医療機関を幅広くサポートする企業です。

(1) 会社概要


1926年に長崎県佐世保市で山下医療器械店として創業し、1950年に山下医科器械を設立しました。2017年に単独株式移転により持株会社である同社を設立し、東京証券取引所に上場しました。近年はイーピーメディックやアシスト・メディコ、クロスウェブなどの設立・子会社化を通じて事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で617名、単体で31名です。筆頭株主は創業者であり代表者の山下尚登氏で、第2位は同社の社員持株会となっています。第3位には証券会社が名を連ねており、安定した株主構成のもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
山下尚登 24.44%
ヤマシタヘルスケアホールディングス社員持株会 10.33%
SBI証券 8.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役執行役員 社長は山下尚登氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
山下尚登 代表取締役執行役員 社長 1977年アロカ入社、1978年山下医科器械入社。同社社長等を経て、2017年より現職。
嘉村厚 取締役 1985年山下医科器械入社。同社取締役営業本部長等を経て、2017年より現職。
吉田弘幸 取締役執行役員 1986年親和銀行(現十八親和銀行)入行。同行常務執行役員等を経て、2023年より現職。
尾田誠博 取締役執行役員 1997年山下医科器械入社。同社福岡支社長等を経て、2021年同社経営企画室室長、2025年より現職。
為永和博 取締役(常勤監査等委員) 1984年福岡銀行入行。同行取締役常務執行役員等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、古閑慎一郎(古閑桂介税務会計事務所出身)、山下俊夫(山下俊夫法律事務所代表)、斧田みどり(斧田みどり公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療機器販売業」、「医療機器製造・販売業」、「医療モール事業」などを展開しています。

医療機器販売業


画像診断装置等の一般機器、手術関連等の一般消耗品、内視鏡等の低侵襲治療機器、整形外科等の専門機器、電子カルテ等の情報・サービスを提供し、医療機関を顧客としています。幅広い商材を取り揃え、病院の様々な部門に総合的な販売活動を行っています。

医療機器メーカーから仕入れた商品を販売する際のマージンが主な収益源です。また、保守サービスやシステム提案の提供対価も収益となります。運営は中核子会社の山下医科器械を中心に、トムスやエムディーエックスなどが担っています。

医療機器製造・販売業


整形外科用インプラント(体内埋没型骨材料)や超音波画像診断装置などの自社開発製品を製造し、全国の販売代理店を通じて医療機関等へ販売しています。製品の品質マネジメントシステムを整備し、専門性の高い機器を提供しています。

開発した医療機器本体や関連部品の販売代金が収益源となります。主に子会社のイーピーメディックやマイクロソニックが製造・販売事業を運営し、グループ全体のメーカー機能として付加価値の創出に取り組んでいます。

医療モール事業


広島県福山市において、クリニック、調剤薬局、デイサービス施設、フィットネスクラブなどが集積する複合型医療・健康関連施設の管理・運営を行っています。地域の医療インフラとして総合的なサービス空間を提供しています。

入居する医療機関や健康関連施設等からの賃料が主な収益源となります。同事業の運営は、主に子会社の山下医科器械が主体となって展開しており、安定した不動産収益基盤として機能しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に拡大傾向にありましたが、直近は微減となっています。経常利益と利益率もやや低下傾向にあり、投資負担やコスト増が利益を圧迫している状況が伺えます。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 551億円 582億円 616億円 645億円 641億円
経常利益 10億円 12億円 10億円 9億円 9億円
利益率(%) 1.8% 2.1% 1.7% 1.4% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -0.1億円 8億円 7億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益をみると、売上高がわずかに減少した一方で、売上総利益率は概ね横ばいを維持しています。しかし、各種投資やコストの増加により営業利益率は微減となっています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 645億円 641億円
売上総利益 88億円 88億円
売上総利益率(%) 13.6% 13.7%
営業利益 8億円 7億円
営業利益率(%) 1.2% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が40億円(構成比49.3%)、福利厚生費が8億円(同9.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の医療機器販売業は、消耗品販売が堅調でしたが、大型設備投資の需要減少により微減収減益となりました。製造・販売業は赤字が続いていますが、損失幅はやや縮小しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
医療機器販売業 642億円 639億円 22億円 21億円 3.3%
医療機器製造・販売業 2.2億円 2.1億円 -2.2億円 -1.9億円 -89.3%
医療モール事業 0.7億円 0.7億円 0.1億円 0.1億円 10.0%
調整額 -3億円 -3億円 -11億円 -12億円 -
連結(合計) 645億円 641億円 8億円 7億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 6億円 1億円
投資CF 0億円 -13億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均とほぼ同等である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「地域のヘルスケアに貢献する」という経営理念を掲げています。地域医療の充実と安定、医療の品質向上に資するさまざまな商品およびサービスの開拓と提供を通じて、この理念の実現を図っています。また、持続可能な社会への貢献と企業価値向上の実現に向け、サステナブル経営を実践しています。

(2) 企業文化


持株会社体制を活かし、グループ力を向上させる活動を通じてステークホルダーの満足度を高め、地域や社会へ貢献する組織風土を持っています。法令を遵守し、高い倫理性が求められる医療に関わる企業として、提供するサービスの品質と安全性を真摯に追求する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「マルティプライビジョン2030」という長期ビジョンのもと、2025年5月期からの3ヵ年の中期経営計画を推進しています。最終年度である2027年5月期の目標として、以下の数値を掲げています。

* 連結売上高 730億円
* 連結営業利益 9.5億円
* 連結営業利益率 1.3%以上
* 連結経常利益 10億円
* ROE 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」を基本方針とし、物流機能の強化や医療DXへの対応を進めています。M&Aやパートナーシップ構築による収益性の向上、システム提案等を組み合わせたソリューション営業の強化により、持続的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」こそが最も重要な資本であると位置づけ、採用活動の強化や人材育成、定着率向上に取り組んでいます。グループ横断的な人材活用や適材適所の配置を推進するとともに、人事制度の高度化により従業員のワークエンゲージメントと組織活性化を高めることで、競争力の強化に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 46.0歳 12.1年 6,408,182円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 42.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 55.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者数における女性の割合(36.0%)、全管理職に占める女性の割合(3.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療行政・診療報酬の動向

公的医療保険制度における診療報酬改定により、特定の医療材料の公定価格(償還価格)が引き下げられた場合、同社の販売価格の低下に直結し、収益性が著しく低下する可能性があります。これに対応するため、最新の医療行政の動向を把握し、医業経営に寄与する提案営業を強化しています。

(2) 製品・サービスに関する訴訟リスク

取扱商品に品質上の不備や設置・調整の欠陥があった場合、医療事故に繋がるリスクがあります。また、納入後のアフターサービス等で取引先と見解の相違が生じ、訴訟に発展する可能性もあります。同社は品質管理システムの認証取得などを通じ、安定した品質とサービスの提供に努めています。

(3) 特定の物流拠点への集中リスク

中核子会社の物流拠点が佐賀県、長崎県、福岡県の3箇所に集中しており、仕入業務の大部分を集約しています。大規模な自然災害等によりこれらの拠点が機能停止した場合、商品供給体制に支障をきたす恐れがあります。これに対し、3拠点が相互補完できる体制を整え、リスクの分散と軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。