シー・エス・ランバー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シー・エス・ランバー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シー・エス・ランバーは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、木材のプレカット加工や建築請負、不動産賃貸事業を展開する企業です。直近の業績は、新設住宅着工戸数の伸び悩みや競争激化に伴う販売価格の低下等の影響により、微減収と大幅な減益となっていますが、材工一体の提案などで収益力の強化に努めています。


※本記事は、株式会社シー・エス・ランバーの有価証券報告書(第44期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シー・エス・ランバーってどんな会社?


同社は首都圏を地盤とし、木材加工から建築、不動産賃貸まで住環境に関わる幅広い事業を展開しています。

(1) 会社概要


1983年に材木販売業として設立され、1997年に自社でプレカット加工を開始しました。その後、2005年に子会社を通じて本格的な木造戸建住宅の建設請負事業へ参入し、同年には不動産賃貸部門も分社化しました。2017年にジャスダック(現スタンダード市場)へ上場し、事業領域を拡大しています。

同社グループは、連結で320名、単体で209名の従業員を擁しています。筆頭株主は社長の資産管理会社である千代で、第2位は証券・投資関連のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位は日本証券金融です。グループ全体で木材加工から建築、不動産まで一貫した価値提供を行っています。

氏名 持株比率
千代 35.68%
INTERACTIVE BROKERS LLC 8.17%
日本証券金融 4.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は中井千代助氏が務めており、社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
中井千代助 代表取締役社長 元中井材木店千葉支店支店長。1983年に千葉中井材木店(現シー・エス・ランバー)を設立し社長に就任。シー・エス・物流などグループ複数社の役員を経て現職。
中井俊輔 専務取締役 元ユアサクオビス。2016年同社入社。シー・エス・マテリアル等のグループ各社で代表取締役などの役員を歴任。製造部長や購買部長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、石塚英一(元千葉県社会福祉協議会理事)、熊切直美(元大東建託社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プレカット事業」「建築請負事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) プレカット事業


在来(木造軸組)工法およびツーバイフォー工法における木材のプレカット加工、パネル製造と製品販売、ならびに建て方工事の請負を行っています。機械加工による安定した品質と工期短縮、コストダウンを顧客である建設会社や工務店に提供しています。

収益源はプレカット製品の販売代金や建て方工事の請負代金です。プレカット加工および販売は同社とシー・エス・マテリアルが、建て方工事はシー・エス・ビルドが、製品の配送はシー・エス・物流が担当しています。

(2) 建築請負事業


木造戸建住宅および木造一般建築物の建築請負、建設工事の請負を行っています。大手取引先を中心に、一般住宅だけでなくアパートや保育所などの大型木造施設にも対応し、高品質な施工サービスを提供しています。

収益源は顧客から受け取る建築および建設工事の請負代金です。同社に加え、なのはなハウジング、シー・エス・ホーム、サンヨー建設がそれぞれ請負や施工管理を担い、グループ全体で連携して事業を展開しています。

(3) 不動産賃貸事業


事業用および居住用の不動産の賃貸ならびに管理を行っています。待機児童対策に貢献する保育所施設をはじめ、駅近の共同住宅や医療モールなどを取得し、安定的な経営基盤を構築しています。

収益源は、保育所事業者や介護施設事業者、一般入居者などから毎月受け取る不動産の賃貸料です。同社のほか、シー・エス・不動産リースなどの子会社5社がそれぞれの保有物件を活用して事業を運営しています。

(4) その他事業


不動産販売事業として、戸建住宅の開発と分譲販売を行っています。販売仲介企業との連携を図りながら、不動産賃貸事業の収益物件用地を分譲用地へ活用するなど、中長期的な視点で用地の取得と販売を進めています。

収益源は、開発した土地や戸建住宅、建売住宅などの販売代金です。この事業は主にシー・エス・リアルエステートが運営しており、グループ内の他事業と連携して不動産の価値最大化に努めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は200億円台で推移していますが、直近2期は微減傾向にあります。利益面では、住宅需要の低下や競合との価格競争激化が影響し、経常利益および当期利益ともに毎期減少が続いており、利益率も徐々に低下する厳しい状況となっています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 251.3億円 245.5億円 211.3億円 206.7億円 203.8億円
経常利益 40.3億円 31.8億円 20.8億円 16.8億円 10.0億円
利益率(%) 16.0% 13.0% 9.9% 8.1% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 26.2億円 19.7億円 11.7億円 9.2億円 6.2億円

(2) 損益計算書


前期と当期の損益構成を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の上昇に伴い売上総利益が減少しました。また、販管費が増加したことで、営業利益は前期の17.7億円から11.3億円へ大きく減少し、収益性の低下が見られます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 206.7億円 203.8億円
売上総利益 43.3億円 38.1億円
売上総利益率(%) 21.0% 18.7%
営業利益 17.7億円 11.3億円
営業利益率(%) 8.6% 5.5%


販売費及び一般管理費(26.8億円)のうち、運賃が7.3億円(構成比27%)、給料及び手当が6.9億円(同26%)を占めています。また、売上原価は165.7億円で、売上高に対する構成比は81%となっています。

(3) セグメント収益


主力のプレカット事業は、住宅着工数の低迷による受注競争で利益が大幅に減少しました。建築請負事業は大型案件により増収となったものの、費用増で減益でした。一方、不動産賃貸事業は新規物件の取得が寄与し増収増益となっています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
プレカット事業 140.6億円 132.4億円 7.5億円 0.6億円 0.4%
建築請負事業 51.4億円 55.9億円 3.7億円 3.4億円 6.0%
不動産賃貸事業 11.2億円 13.4億円 5.8億円 6.8億円 50.4%
その他事業 3.6億円 2.1億円 -0.0億円 0.1億円 3.3%
連結(合計) 206.7億円 203.8億円 17.7億円 11.3億円 5.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を元手に、借入等も活用しながら積極的な投資(不動産取得等)を継続する「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 21.6億円 18.4億円
投資CF -55.5億円 -46.1億円
財務CF 15.9億円 19.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「我社は、木造住宅資材の販売流通を通して社会に貢献する」「我社は、顧客満足と会社の繁栄、社員の幸福を一致させる」「我社は、数値に基づく行動と現場主義の徹底を行動原理とする」という3つの理念を経営の基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「Customer Satisfaction through Lumber(木材を通じて顧客に満足いただける取引に徹する)」を社是としており、社名の「シー・エス・ランバー(C.S. LUMBER)」もこの言葉に由来しています。適正な価格による高品質商品の供給と真心のこもったサービスの提供を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2028」では、全社員が目標に向かって進み、工夫と改善を繰り返すことを習慣化し、永続的に成長を続ける強い企業集団を目指しています。中長期的には、安定的な利益確保を進め、以下の目標を掲げています。

- 経常利益率 12.0%の確保
- 自己資本利益率 10.0%以上の維持

(4) 成長戦略と重点施策


プレカット事業の枠にとらわれず、創意工夫で多様な収益源を創出する「シー・エス・ランバーVISION 2032」を掲げています。構造材と建て方工事を組み合わせた「材工一体」での提案やサイディングの事業化を進めるほか、アパート等の大型木造施設の受注、および駅近の収益物件の取得による賃貸収入の安定化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は従業員を重要な経営資源である「人財」と位置づけ、次世代経営幹部の育成や若手の積極的登用、社員の知識向上・多能工の育成を推進しています。また、国籍や性別に関係なく能力に基づく評価と管理職登用を行い、多様な人材が活躍できる社内環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 40.8歳 8.0年 4,932,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 86.0%
男女賃金差異(正規雇用) 80.1%
男女賃金差異(パート・有期) 84.8%


※同社は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、有報には男性育児休業取得率の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅市況の変動リスク


プレカット事業および建築請負事業は、木造戸建住宅や木造アパートなどの新設住宅着工戸数の動向に大きく影響を受けます。景気、金利、少子化などによる住宅需要の低下が起きた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 各種法規制および許認可によるリスク


同社グループの事業は建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、都市計画法などの公的規制を受けています。法令の強化や新設が行われた場合、コンプライアンス対応コストの増加等により、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料価格の変動リスク


同社グループが扱う木材の多くは海外からの輸入に依存しているため、為替の変動や輸出国の情勢が原材料の調達コストに直結します。木材価格の高騰などに対し、販売価格への転嫁がタイムリーに行われない場合、収益を圧迫するリスクがあります。

(4) 事業エリアの集中リスク


事業展開の対象エリアを首都圏に限定し、特に千葉県および隣接する1都4県を中心としています。そのため、全国的な人口減少の影響は受けにくいものの、首都圏内の景気動向や経済環境、地価動向などが悪化した場合、業績に局地的な影響が及ぶリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。