Sansan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Sansan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する企業で、営業DXサービス「Sansan」やインボイス管理サービス「Bill One」等を展開しています。直近の決算では、主力事業の好調な推移に加え、Eight事業の黒字化等により、売上高は前期比27.5%増、経常利益は同124.1%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、Sansan株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Sansanってどんな会社?


「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げ、営業DXサービスや名刺アプリ等を提供する企業です。

(1) 会社概要


2007年に三三として設立され、名刺管理サービスを開始しました。2019年にマザーズへ上場し、翌年に経理DXサービス「Bill One」の提供を開始します。2021年の市場変更を経て、2022年にはプライム市場へ移行しました。同年、契約データベース「Contract One」の提供も開始しています。

連結従業員数は2,235名、単体では1,961名です。筆頭株主は株式会社CNKで、第2位は外国法人等向けの資産管理を行う金融機関、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
CNK 25.96%
JPLLC CLIENT ASSET S-SK J 12.41%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員/CEO/CPOは寺田 親弘氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
寺田 親弘 代表取締役社長執行役員/CEO/CPO 三井物産を経て、米国シリコンバレー勤務や三井物産セキュアディレクションへの出向を経験。2007年6月より現職。
富岡 圭 取締役執行役員/COOSansan事業部・Bill One事業部管掌役員 日本オラクルを経て、2007年6月より現職。
塩見 賢治 取締役執行役員/CISO/DPO技術本部・Eight事業部管掌役員 物産システムインテグレーション(現三井情報)、三井物産出向、ウィズダムネットワークス等を経て、2007年6月より現職。
大間 祐太 取締役執行役員/CHRO人事本部管掌役員 ワークポート、Blast取締役を経て、2010年2月に同社入社。2019年8月より現職。
橋本 宗之 取締役執行役員/CFOコーポレート本部管掌役員 リーマン・ブラザーズ証券、バークレイズ・キャピタル証券、DBJ投資アドバイザリーを経て、2017年11月に同社入社。2020年8月より現職。


社外取締役は、赤浦 徹(インキュベイトファンド代表取締役)、齋藤 太郎(dof代表取締役)、鈴木 真紀(弁護士)、塩月 燈子(サイバーエージェント常勤監査等委員)、代田 常浩(元Evernote副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Sansan/Bill One事業」および「Eight事業」を展開しています。

(1) Sansan/Bill One事業


法人向けに、営業DXサービス「Sansan」や経理DXサービス「Bill One」等を提供しています。「Sansan」は名刺管理を起点に企業の収益最大化を支援し、「Bill One」は請求書受領等の経理業務を効率化します。

収益は主に、契約企業から受け取る月額利用料(ライセンス費用や基本プラン料金等)や、初期導入費用、データ化枚数に応じた従量課金等から構成されています。運営は主にSansanが行っています。

(2) Eight事業


個人ユーザーを主体とする名刺アプリ「Eight」を提供しています。名刺管理やデジタル名刺交換の基本機能を無料で提供するほか、企業向けには名刺管理サービス「Eight Team」やビジネスイベント等の開催を行っています。

収益は、個人ユーザーからの有料プラン「Eightプレミアム」利用料や、企業からの「Eight Team」利用料、ビジネスイベントの出展料等から構成されています。運営はSansanやログミー等の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は継続的な右肩上がりで成長しており、当期は400億円台に到達しています。利益面では、投資による変動があるものの、当期は経常利益率が向上し、大幅な増益となりました。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 162億円 204億円 255億円 339億円 432億円
経常利益 4億円 10億円 1億円 12億円 27億円
利益率(%) 2.3% 4.7% 0.5% 3.6% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 14億円 -5億円 12億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、高い利益率を維持しています。営業利益率も前期と比較して改善が見られます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 339億円 432億円
売上総利益 288億円 374億円
売上総利益率(%) 85.1% 86.6%
営業利益 13億円 28億円
営業利益率(%) 3.9% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が123億円(構成比36%)、広告宣伝費が51億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のSansan/Bill One事業が引き続き好調で、大幅な増収増益を達成しました。Eight事業も売上が伸長し、利益面でも黒字化を果たしています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
Sansan/Bill One事業 299億円 378億円 23億円 36億円 9.5%
Eight事業 35億円 50億円 -5億円 1億円 1.3%
その他 4億円 4億円 -1億円 -1億円 -22.9%
調整額 - - - - -
連結(合計) 339億円 432億円 17億円 36億円 8.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」です。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 55億円 97億円
投資CF -32億円 -26億円
財務CF 14億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%でプライム市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.2%でプライム市場平均(非製造業24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げています。アナログ情報をデータ化する技術等を軸に、人や企業との出会いをビジネスチャンスにつなげ、働き方を変えるDXサービスの提供を通じて社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念の浸透を重視し、全従業員が理念について議論する「カタチ議論」等の機会を設けています。また、新入社員向けの研修プログラムや、称賛事例を可視化する「Unipos」の活用などを通じて、組織文化への理解と共感を深め、ミッションドリブンな企業風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2025年5月期から2027年5月期の中期財務方針として、売上高の堅調な成長と調整後営業利益の成長加速を掲げています。
* 売上高:年平均成長率(CAGR)22%から27%
* 調整後営業利益率:2027年5月期において18%から23%(長期的には30%以上)

(4) 成長戦略と重点施策


主力のSansan/Bill One事業においては、全社利用を前提とした新規顧客獲得や既存顧客の利用拡大、生成AIを活用した機能強化を推進します。「Bill One」では請求書受領以外のサービスも提供し、収益機会を創出します。Eight事業では、BtoBサービスのマネタイズを強化し、収益拡大を目指します。また、M&Aも積極的に検討します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のため、多様な経歴を持つ優秀な人材の採用と育成を重視しています。企業理念への共感を重視し、リファラル採用を推進しています。また、ミッショングレード制度やOKRを用いた評価制度、各種研修プログラム等を通じ、従業員の自律的な成長と能力発揮を支援する環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 31.7歳 3.1年 7,800,000円


※平均年間給与は、同社正社員を対象とし、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 20.2%
男性労働者の育児休業取得率 62.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 51.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 84.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 57.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リファラル採用比率(12.1%)、外国籍従業員比率(7.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 個人情報の取り扱い


名刺や請求書等の重要情報を取り扱うため、情報漏洩等のインシデントが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、PマークやISMS等の認証取得、社員教育の徹底等の対策を講じています。

(2) 設備及びネットワークの安定性


クラウドサービスとして提供しているため、自然災害や人的ミス、サイバー攻撃等によりシステム障害が発生した場合、サービス提供が困難となり、業績に悪影響を与える可能性があります。サーバーの冗長化やデータバックアップ等の対策を実施しています。

(3) サービス等の不具合


アプリケーションやシステムに不具合が発生した場合、顧客へのサービス提供に支障をきたし、信頼性の低下やクレーム対応等により、業績に影響を与える可能性があります。開発体制の整備やインシデントガイドラインの運用により、品質維持に努めています。

(4) インターネットの利用環境


事業展開においてインターネット環境への依存度が高いため、新たな法的規制の導入や通信環境の悪化等が生じた場合、サービスの利用が制約され、事業展開に支障が出る可能性があります。法的規制等の情報収集を行い、課題解決策の実行に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。