※本記事は、Sansan株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Sansanってどんな会社?
名刺や請求書等のデータ化を通じ、企業の業務効率化を支援するクラウドサービスを展開しています。
■(1) 会社概要
2007年の設立と同時の法人向け名刺管理サービス開始を皮切りに、2012年に個人向け名刺アプリ「Eight」、2020年に経理AXサービス「Bill One」の提供を開始しました。2019年に東証マザーズへ上場し、直近では関連企業の子会社化等を通じて継続的に事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で2,336名、単体で2,077名体制です。筆頭株主は資産管理を行う法人のCNKで、第2位は金融機関のいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド、第3位には創業者の寺田親弘氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| CNK | 26.01% |
| いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド | 10.90% |
| 寺田親弘 | 6.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員/CEO/CPOは寺田親弘氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 寺田親弘 | 代表取締役社長執行役員/CEO/CPO | 1999年三井物産入社。シリコンバレー勤務等を経て、2007年6月に同社代表取締役社長に就任し、現在に至る。 |
| 富岡圭 | 取締役執行役員/COOSansan事業部・Bill One事業部・Contract One事業部管掌役員 | 1999年日本オラクル入社。2007年6月に同社取締役就任。Unipos社外取締役も務める。 |
| 塩見賢治 | 取締役執行役員/CISO/DPO技術本部・Eight事業部管掌役員 | 1994年物産システムインテグレーション入社。ユナイテッドポータル代表取締役等を経て、2007年6月同社取締役就任。 |
| 大間祐太 | 取締役執行役員/CHRO/CAXO人事本部管掌役員 | 2006年ワークポート入社。Blast取締役を経て2010年2月同社入社、2019年8月より取締役就任。 |
| 橋本宗之 | 取締役執行役員/CFOコーポレート本部管掌役員 | 2004年リーマン・ブラザーズ証券入社。外資系証券会社等を経て2017年11月同社入社、2020年8月より取締役就任。 |
社外取締役は、赤浦徹(インキュベイトファンド代表取締役)、古森茂幹(セールスフォース・ジャパン元副社長)、鈴木真紀(佐藤真太郎法律事務所弁護士)、塩月燈子(サイバーエージェント取締役)、代田常浩(Alto設立代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「Sansan/Bill One事業」「Eight事業」および「その他事業」を展開しています。
■(1) Sansan/Bill One事業
法人向けに営業AXサービス「Sansan」や経理AXサービス「Bill One」等を展開しています。「Sansan」は名刺等の接点情報を統合・可視化するデータベースを構築し、「Bill One」は請求書受領等の業務プロセスを効率化して組織全体の生産性向上に寄与します。
導入企業から機能に応じた基本プランの月額ライセンス費用や初期の導入支援費用、データ化枚数に応じた月額費用等を収益源としています。同事業の運営は同社が主体となり、子会社も開発や営業マーケティング等の支援で連携しています。
■(2) Eight事業
名刺アプリ「Eight」を基盤に、個人向けおよび企業向けサービスを提供しています。個人ユーザーは名刺の正確なデータ化とクラウド管理を無料で利用でき、名刺交換した相手の近況情報の取得等も可能です。
個人の名刺管理プレミアム機能の月額利用料のほか、企業向けにはビジネスイベントでの出展料、中小企業向け名刺管理サービス「Eight Team」、採用関連サービス等の料金を収益源としています。同事業は同社およびEightキャリアが運営しています。
■(3) その他事業
上記報告セグメントに含まれない事業として、契約AXサービス「Contract One」や、顧客接点を営業機会に変えるAIインターフェース「Ask One」などのサービス展開や新規事業開発を行っています。
これらのサービスにおけるシステム利用料等を主な収益源としています。運営は同社のほか、グループ会社のナインアウトや言語理解研究所などの子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は右肩上がりで成長を続けており、特に直近では大幅な増収を達成しています。利益面では一時的に落ち込む期があったものの、直近では経常利益率が大きく改善し、収益力が飛躍的に高まっていることが伺えます。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 204億円 | 255億円 | 339億円 | 432億円 | 538億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 1億円 | 12億円 | 27億円 | 82億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 0.5% | 3.6% | 6.3% | 15.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | -1億円 | 10億円 | 4億円 | 68億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益も着実に増加し、高い利益率を維持しています。営業利益も大幅に伸長しており、本業における収益化フェーズに入っていることがわかります。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 432億円 | 538億円 |
| 売上総利益 | 374億円 | 473億円 |
| 売上総利益率(%) | 86.6% | 87.9% |
| 営業利益 | 28億円 | 82億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 15.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が152億円(構成比39%)、広告宣伝費が68億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のSansan/Bill One事業が全社売上の大半を占めており、営業体制の強化等により前期比で順調に売上を伸ばしています。また、Eight事業もビジネスイベントや採用関連サービスが好調に推移し、増収に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| Sansan/Bill One事業 | 378億円 | 468億円 |
| Eight事業 | 50億円 | 67億円 |
| その他 | 4億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 432億円 | 538億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 97億円 | 96億円 |
| 投資CF | -26億円 | -6億円 |
| 財務CF | -7億円 | -34億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は38.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も36.4%と、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げています。人や企業との出会いをビジネスチャンスにつなげ、働き方を変えるAX(アナログ情報のデジタル化等)サービスを展開することで、社会課題の解決に寄与し、企業価値の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
行動準則である「Sansanのカタチ」を社内に浸透させています。定期的に企業理念について全従業員で議論する「カタチ議論」の場を設けるなど、会社の価値観や文化に深く向き合うことを推奨しており、多様な人材が主体的にミッション実現へ向かう組織風土の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2027年5月期から2029年5月期に向けた中期財務方針として、売上高と調整後営業利益の成長の両立を目標に掲げています。各事業の売上高成長に向けた投資を行いながらも高成長を継続させる方針です。
* 対象期間の売上高の年平均成長率(CAGR)16%〜20%
* 2029年5月期における調整後営業利益率25%〜30%
■(4) 成長戦略と重点施策
AIの普及を追い風に、アナログ情報のデータ化精度99.9%を実現する独自の技術を強みとし、既存事業の成長を推し進めます。「Sansan」や「Bill One」等において生成AIを活用した機能拡充や営業体制の強化を図るほか、「Eight」のネットワークを活かしたBtoBサービスの収益化を進めます。また、M&Aも重要な成長戦略に位置づけています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材の採用・育成・活躍推進」を重要課題に掲げ、AIを前提とした組織開発を推進しています。新卒採用やリファラル採用等を通じて多様で優秀な人材を獲得し、ミッショングレード制度や360度評価等を用いた育成・登用を行っています。また、全社員への生成AI活用プログラムの提供など、個人の自律的な成長と生産性向上を支援する環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 32.1歳 | 3.4年 | 8,100,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.2% |
| 男性育児休業取得率 | 80.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 52.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リファラル採用比率(10.0%)、女性従業員比率(36.2%)、外国籍従業員比率(6.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 個人情報等の情報セキュリティリスク
企業固有の重要情報(名刺、請求書、契約書等)を取り扱うため、不正アクセスや人為的ミスによる情報漏洩が発生した場合、同社の信用が著しく低下し、損害賠償等により業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 技術革新と競合サービスの台頭
生成AIをはじめとする急速な技術革新への対応が遅れた場合や、画期的なコンセプトを持つ競合他社サービスが出現した場合、同社サービスの競争力が低下し、顧客離れを招く可能性があります。
■(3) M&Aや先行投資によるリスク
事業拡大に向けた企業買収や資本提携を積極的に行っていますが、買収後の事業計画が想定通りに進まない場合や、対象企業の価値が低下した場合に減損損失等が発生し、業績や財務状況に影響を与えるおそれがあります。



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