ホーブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ホーブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の、いちごを中心とした研究開発型農業企業です。品種開発から苗の生産販売、業務用いちご果実の卸売までを一貫して手掛けます。直近決算は、猛暑の影響等により取扱数量が減少し減収となりましたが、利益率の改善やコストコントロールにより各利益段階で増益を確保しました。


※本記事は、株式会社ホーブ の有価証券報告書(第39期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ホーブってどんな会社?


いちごの新品種開発から苗の生産、果実の販売までを一貫して行うビジネスモデルが特徴です。特に夏秋期の業務用いちごに強みを持ちます。

(1) 会社概要


1987年に北海道で設立され、組織培養技術を用いた研究受託を開始しました。1993年には四季成性いちご「セリーヌ」を品種登録し、2005年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2017年に主力品種となる「コア」「夏瑞/なつみずき」を品種登録し、事業基盤を強化しています。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結44名、単体26名と少数精鋭の体制です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の髙橋巖氏で、第2位、第3位は個人株主です。

氏名 持株比率
髙橋 巖 40.04%
大辻 英弘 3.69%
髙橋 ゆかり 2.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は政場秀氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋 巖 代表取締役会長 金印わさび入社を経て同社を設立し代表取締役社長に就任。西村社長・会長などを歴任し、2013年9月より現職。
政場 秀 代表取締役社長 学校法人国際科学技術学園勤務を経て同社入社。経営企画部長、取締役副社長などを歴任し、2013年9月より現職。
馬場 文秀 取締役経営管理部長 北海道拓殖銀行、北洋銀行を経て同社入社。管理部次長、エス・ロジスティックス取締役などを経て、2020年9月より現職。


社外取締役は、柿本輝明(柿本法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「いちご果実・青果事業」「種苗事業」「馬鈴薯事業」「運送事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) いちご果実・青果事業


業務用いちご果実、その他の青果物、農業用資材の販売を行っています。特に夏秋期においては、自社開発品種である「夏瑞/なつみずき」や「コア」を中心に供給し、端境期における国産いちごの安定供給を実現しています。主な顧客は洋菓子メーカーや菓子専門店です。

洋菓子メーカー等への果実販売代金や、生産者への資材販売代金が主な収益源です。運営は主に同社が行っています。

(2) 種苗事業


自社開発したいちご品種の苗を生産し、契約農家等へ販売しています。組織培養技術(バイオテクノロジー)を用いて、ウイルスフリーの均一な苗を量産できる点が強みです。また、食用ユリなどの種苗生産受託も行っています。

生産農家への苗の販売代金が収益源となります。運営は同社が行っています。

(3) 馬鈴薯事業


種馬鈴薯の生産販売および仕入販売、青果馬鈴薯の仕入販売を行っています。国内一般品種である「男爵」「メークイン」に加え、海外品種の国内販売権を有し、独自品種の取り扱いも行っています。

生産農家や青果市場等への販売代金が収益源です。運営は同社が行っています。

(4) 運送事業


関東圏を中心に、同社の商品配送を中核とした運送業務を行っています。また、一般荷主からの配送受託も手掛けています。

グループ会社および外部顧客からの配送料収入が収益源です。運営は連結子会社のエス・ロジスティックスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は24億円から30億円の範囲で推移しています。2021年6月期以降、売上高は減少傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の2025年6月期は減収となったものの、利益率の改善等により経常利益、当期純利益ともに前期比で増加し、黒字を維持しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 30億円 26億円 25億円 25億円 24億円
経常利益 1.1億円 1.5億円 1.4億円 0.4億円 0.4億円
利益率(%) 3.6% 5.7% 5.6% 1.5% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 1.4億円 1.1億円 0.2億円 0.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は約1億円減少しましたが、売上総利益はほぼ横ばいを維持しており、売上総利益率は若干改善しました。販売費及び一般管理費の抑制もあり、営業利益は前期比で増加しています。原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、利益確保に努めている様子がうかがえます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 25億円 24億円
売上総利益 6億円 6億円
売上総利益率(%) 21.9% 22.8%
営業利益 0.3億円 0.4億円
営業利益率(%) 1.3% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が1.6億円(構成比30%)、給料及び手当が0.9億円(同18%)を占めています。売上原価においては、商品仕入高等の変動費が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力のいちご果実・青果事業は、夏秋期の自社品種販売が好調でしたが、猛暑による入荷量減少等で減収となりましたが、利益率の高い取引への注力で増益となりました。種苗事業は共同開発業務終了に伴い減収減益、馬鈴薯事業は種馬鈴薯不足で減収となりました。運送事業は受託業務の見直しで減収増益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
いちご果実・青果 22億円 22億円 1.5億円 1.6億円 7.3%
種苗 0.6億円 0.5億円 0.3億円 0.2億円 29.7%
馬鈴薯 0.8億円 0.7億円 0.0億円 0.0億円 5.6%
運送 1.5億円 1.3億円 0.2億円 0.2億円 16.3%
連結(合計) 25億円 24億円 0.3億円 0.4億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -1.6億円 0.2億円
投資CF -0.2億円 -0.2億円
財務CF -0.4億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「バイオテクノロジーをラボラトリーからフィールドへ」を原点とし、研究室の技術を実際の農業現場で活かすことを目指しています。農業生産者と消費者をつなぐ架け橋となり、独自の種苗、技術、情報を提供することで、北海道および日本の農業活性化に寄与することを経営の根幹としています。

(2) 企業文化


農業を基盤としながらも、単なる農業生産にとどまらず、バイオテクノロジー技術を核とした事業展開を重視しています。消費者とともに日本の農業を考え、農業活性化の一助を担うという心積もりを大切にし、研究開発から販売までを一貫して行うことで、生産者と消費者の双方に貢献する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としての経営計画は有価証券報告書に記載されていませんが、いちご果実・青果事業の収益拡大、種苗事業の収益拡大、馬鈴薯事業の収益維持、運送事業の収益向上を優先的に対処すべき課題として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


夏秋いちごの自社品種「夏瑞」「コア」の販売強化と、耐暑性のある新品種開発を推進しています。特に猛暑対策として栽培管理の工夫や新品種育成に注力し、収益の安定化を図ります。また、運送事業では配送効率化と自社配送比率の向上により収益性を高める方針です。人材育成においては、実地経験を通じた技術の継承を重視しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社の事業は農業と密接に関わっており、気象変動等への対処など短期間では習得できない専門性が求められます。そのため、机上の学習だけでなく、直営農場等での経験を通じて学ぶことを重視しています。蓄積された栽培・育種技術やノウハウを社内で共有・継承するため、優秀な人材の確保と育成に努める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 42.9歳 13.4年 4,539,528円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律および育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 天候の影響による業績変動


同社の主要事業であるいちごや馬鈴薯の生産は、気温や日照などの天候に大きく左右されます。産地の分散や栽培技術の向上により影響の軽減を図っていますが、猛暑や日照不足、台風などの気象条件の変化により収穫量が減少し、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 全量買取契約に伴う在庫リスク


同社は生産農家と栽培契約を結び、規格に合った果実を全量買い取っています。これにより安定的な供給量を確保できる一方、天候等により収穫時期や規格に偏りが生じた場合、販売しきれずに在庫を抱え、廃棄損が発生することで業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 自社品種苗の見込み生産リスク


自社品種苗の生産は組織培養から約3年を要するため、販売計画に基づいた見込み生産を行っています。計画の修正タイミングによっては生産調整が間に合わず、過剰となった苗の廃棄が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 特定人物への依存


創業者であり代表取締役会長である髙橋巖氏は、事業推進において重要な役割を果たしており、同氏への依存度は高い状況です。経営体制の強化を進めていますが、同氏の業務遂行が困難となった場合、事業展開や業績に影響を与える可能性があります。同氏は筆頭株主でもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。