※本記事は、株式会社三東工業社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年09月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三東工業社ってどんな会社?
同社は滋賀県に本社を置く総合建設会社で、土木事業と建築事業を柱に、独自の環境技術や地盤改良工法を展開しています。
■(1) 会社概要
1954年に滋賀県甲賀郡にて創業し、同年7月に株式会社弥生工務店として法人化しました。1958年に現在の三東工業社へ商号変更しています。その後、独自の地盤改良工法(JST工法)や連続地中壁工法(TRD工法)などの技術力を高め、2004年12月にジャスダック証券取引所へ上場しました。2023年4月には環境開発事業を行う株式会社アンビエンタを設立し、グループ体制を強化しています。
連結従業員数は121名、単体では106名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は有限会社東物産、第2位は三東工業社従業員持株会、第3位は個人株主となっています。筆頭株主の東物産は同社の創業家に関連する資産管理会社と見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社東物産 | 14.15% |
| 三東工業社従業員持株会 | 5.79% |
| 中川 徹 | 5.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長は杉本修啓氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 奥田 克実 | 代表取締役会長 | 1977年同社入社。取締役営業部門長、代表取締役社長などを歴任。滋賀県建設業協会会長も務め、2024年7月より現職。 |
| 杉本 修啓 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。土木事業本部本店工事部長、執行役員管理本部長などを経て、2024年7月より現職。 |
| 山本 明登 | 取締役 執行役員土木事業本部長 | 1991年同社入社。土木事業本部土木工事部次長、部長を経て、2023年7月執行役員土木事業本部長に就任。2025年9月より現職。 |
| 柴田 隆 | 取締役 執行役員建築事業本部長 | 1994年同社入社。建築事業本部建築工事部長を経て、2023年7月執行役員建築事業本部長に就任。2025年9月より現職。 |
| 古澤 一昭 | 取締役 | 1988年ダイキン工業入社。その後、古澤建設を設立し社長に就任(現任)。2019年9月より現職。 |
| 細川 礼昭 | 取締役(監査等委員) | 1985年同社入社。代表取締役専務執行役員などを歴任後、特別顧問を経て2024年9月より現職。 |
社外取締役は、津田穂積(公認会計士・税理士)、西川真美子(弁護士・元滋賀弁護士会会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木事業」「建築事業」「環境開発事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 土木事業
一般土木(治山・治水、上下水道、道路等)、舗装、地下技術(地盤改良、連続地中壁造成等)の工事を行っています。独自の技術開発にも注力しており、公共工事のほか民間からの受注も手掛けます。
収益は、発注者からの工事請負代金によって得ています。運営は主に同社が担当し、子会社の古澤建設や関連会社の草津栗東火葬サービスも事業に携わっています。
■(2) 建築事業
事務所・庁舎、宿泊施設、店舗・工場、学校・病院等の一般建築工事を行っています。滋賀県内を中心に、官公庁および民間発注の多様な建築物を手掛けています。
収益は、発注者からの工事請負代金によって得ています。運営は主に同社が行っており、関連会社の草津栗東火葬サービスも事業に携わっています。
■(3) 環境開発事業
環境に関する企画・調査・設計・運営や、不動産の売買・賃貸・仲介・管理・鑑定などを行っています。
収益は、不動産の売買代金や賃貸料、環境関連の業務委託料などから得ています。運営は同社および子会社のアンビエンタが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績を見ると、売上高は69億円から82億円へと順調に拡大しています。経常利益は3.4億円から2.1億円へ一時減少しましたが、直近では3.4億円まで回復しました。当期純利益も同様の傾向を示し、利益率も回復基調にあります。全体として増収傾向が続いており、利益面でも復調が見られます。
| 項目 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 69億円 | 74億円 | 82億円 |
| 経常利益 | 3.4億円 | 2.1億円 | 3.4億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 2.8% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 1.0億円 | 2.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の74億円から82億円へ増加しました。これに伴い売上総利益も8億円から10億円へ増加し、売上総利益率は10.8%から12.3%へ改善しています。営業利益も2億円から3.3億円へと大幅に伸長し、営業利益率は2.7%から4.0%へ上昇しました。増収効果に加え、利益率の改善が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 74億円 | 82億円 |
| 売上総利益 | 8億円 | 10億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.8% | 11.9% |
| 営業利益 | 2億円 | 3.3億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が2.2億円(構成比32%)、役員報酬が1.2億円(同18%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が売上原価合計のほぼ100%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の土木事業は売上・利益ともに安定しており、高い利益率を維持しています。建築事業は売上が増加し黒字転換を果たしました。環境開発事業は規模は小さいものの、高い利益率を記録し、増収増益となっています。全体として全セグメントで収益性が向上しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 土木事業 | 44億円 | 47億円 | 2.7億円 | 2.7億円 | 5.8% |
| 建築事業 | 30億円 | 34億円 | -0.9億円 | 0.3億円 | 0.8% |
| 環境開発事業 | 0.3億円 | 0.5億円 | 0.1億円 | 0.3億円 | 49.3% |
| 連結(合計) | 74億円 | 82億円 | 2.0億円 | 3.3億円 | 4.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%でスタンダード市場平均(7.2%)とほぼ同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.5%で市場平均(48.5%)を上回っています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5.0億円 | 0.8億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -1.6億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -0.8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「技術を社会に笑顔をあなたに」をモットーに掲げています。常にお客様へ高品質な環境低負荷商品、高付加価値商品・サービスを還元することで、社会のすべてのステークホルダーから信頼され、喜びと感動を与えられる企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「働きがいのある会社づくり」を掲げ、社員を最も信頼できるパートナーと認識しています。人間対人間の「人を敬う」精神を高め、公平性を重視した活力ある社内風土の確立を目指しています。また、現場自らが問題を発見・解決し、現場からの「否定」が当たり前のように上がってくるような、自律的で改善意欲の高い企業風土を醸成しようとしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは利益率の向上を第一に考え、売上高営業利益率の改善に取り組んでいます。具体的な数値目標として、以下の項目を掲げています。
* 経常利益:3億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、環境保全責任として滋賀県が目指す「脱炭素社会の構築および琵琶湖環境の再生」に挑戦する方針です。また、建設従事者の高齢化や資材高騰といった課題に対し、公共事業の確実な受注に加え、民間でも比較的景気の影響を受けにくい業種への提案・展開を図ることで受注獲得を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「働きがいのある会社づくり」を方針とし、社員を信頼できるパートナーと位置づけています。年代別の教育実施により全社員に必要な教育機会を提供するとともに、資格取得支援制度を整備して社員の積極的な挑戦を応援しています。多様性や個性を尊重し、安全で働きやすい職場環境の確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 46.0歳 | 16.3年 | 7,942,482円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.2% |
※男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設業界の人手不足と高齢化
建設従事者の高齢化と減少が進んでおり、将来的な人手不足により受注機会を逸失するリスクや、人件費高騰による収益圧迫のリスクがあります。これに対し、外国人材の採用や新卒・中途採用の継続、協力会との連携による就業者確保に努めています。
■(2) 建設資材の価格変動リスク
昨今の円安等に起因する建設資材の高騰は、正確な積算を困難にし、請負契約後の価格上昇が経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、常時価格調査を行い、必要に応じて購買時期を前倒しするなどの対応を行っています。
■(3) 工事の品質・安全に関するリスク
工事災害や品質不良が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求などにより経営に重大な影響を与える可能性があります。これに対し、安全室を中心としたパトロール等の安全活動の徹底や、全建協連総合補償制度への加入による対策を講じています。



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