※本記事は、第一カッター興業株式会社 の有価証券報告書(2025年6月期、2024年7月1日 ~ 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
第一カッター興業は、工業用ダイヤモンドや水圧を利用した特殊な工法を核に、切断・穿孔工事事業を展開しています。また、集合住宅やオフィスビル向けのビルメンテナンス事業も手掛けています。
単体従業員数は526名、連結従業員数は656名です。報告セグメントは切断・穿孔工事事業、ビルメンテナンス事業の2つです。
主な国内グループ会社は、ウォールカッティング工業(切断・穿孔工事事業)、新伸興業(同)、アシレ(同)、ユニペック(同)などです。
前連結会計年度において、連結子会社であったムーバブルトレードネットワークスの一部株式を譲渡したため、同社は連結の範囲から除外され、持分法適用会社となりました。これに伴い、リユース・リサイクル事業は報告セグメントから除外されています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
第一カッター興業は、社会インフラを支える専門工事会社として、安定した事業基盤を持つ企業です。同社グループでは、従業員が長期的にキャリアを築き、専門性を高めながら安心して働ける環境づくりに注力しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均勤続年数が長く、従業員の定着傾向が見られます。平均年齢も比較的若く、経験豊富なベテラン社員と若手社員がバランス良く在籍していることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,754,490円 |
| 平均勤続年数 | 10.7年 |
| 平均年齢 | 38.8歳 |
| 単体従業員数 | 526人 |
| 連結従業員数 | 656人 |
| 単体のグループ内比率 | 80.2% |
同社は、従業員の退職給付に充てるため、確定給付制度と確定拠出制度を採用しています。これらの制度は国内の従業員に適用されています。退職一時金制度も存在し、勤務期間に基づいて一時金が支給されます。
なお、確定給付制度における退職給付債務は3.3億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、優秀なインフラエンジニアの育成と輩出を目指し、人材採用および育成の強化、ワークライフバランスの推進に取り組んでいます。創業以来、下請専門企業として活動してきましたが、将来的な需要増と職人不足に対応するため、社会インフラを支える重要なプレイヤーとしての魅力を発信し、ブランディング戦略を推進しています。
具体的には、職人の働く姿を「カッコいい」と表現し、採用専用サイトのリニューアルやオウンドメディア「DIC ストーリーズ」の公開を通じて社内外に発信しています。また、現場ごとに異なる施工条件下に対応するため、安全・施工技術・資格取得・周辺知識の習得・人間性の高揚といった多岐にわたる研修を集合形式で実施しています。これは、短期的には生産性低下につながるものの、長期的な視点から高いスキルを備えた職人集団を形成し、持続的な成果向上を目指すものです。
人材育成ロードマップとして「技術力向上→資格取得→技術領域拡張→人間力向上→教育指導人材への成長」に基づいた教育制度を構築し、業界内での差別化と競争優位性の強化を図っています。安心して働ける職場環境の整備にも注力しており、建設業界の労働時間規制強化に先んじて、自社基準での残業時間抑制に取り組んでいます。全社的な「ワークライフバランスプロジェクト」を推進し、原則「月残業時間45時間未満(休日労働含む)」という目標を達成しました。残業時間抑制に加え、有給休暇制度の柔軟化、完全週休二日制の採用、定期的なベースアップの実施、退職金制度の拡充など、全方向からの労働条件改善を進め、魅力ある職場づくりを進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。基準日は2025年6月30日となっています。男性労働者の育児休業取得率は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく公表義務の対象項目として選択しておらず、公表されていません。連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、記載を省略しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 64.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 70.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 31.8% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
第一カッター興業グループは、建設関連の専門工事とビルメンテナンスを主軸に事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
第一カッター興業グループは、工業用ダイヤモンドや高圧水を利用した切断・穿孔工事、および集合住宅やオフィスビル等の給排水設備保守点検・清掃を行うビルメンテナンス事業を展開しています。主な顧客は総合建設業者や道路建設業者などの民間企業であり、公共事業関連工事が大半を占める点が特徴です。収益は、これらの専門工事やメンテナンスサービスから得ています。
切断・穿孔工事事業
道路等の各種舗装やコンクリート構造物の解体・撤去に必要な切断工事、穿孔工事を行っています。工業用ダイヤモンドを使用したダイヤモンド工法と、水圧を利用したウォータージェット工法が中心です。収益は、橋梁工事、建物解体工事、鉄道工事、道路・空港工事、生産設備メンテナンスといった多岐にわたる工事の完成工事高から得ています。運営は、第一カッター興業、ウォールカッティング工業、新伸興業、アシレ、ユニペック、ダイヤモンド機工が行っています。
ビルメンテナンス事業
集合住宅やオフィスビル等において、給排水設備の保守点検、貯水槽清掃、雑排水管清掃業務を提供しています。収益は、排水管清掃、貯水槽清掃、給水設備点検、床清掃などのサービスから得ています。運営は、第一カッター興業が行っています。
前連結会計年度において、リユース・リサイクル事業は連結の範囲から除外され、当連結会計年度より報告セグメントから廃止されています。同社グループの売上高は、切断・穿孔工事事業が大部分を占めており、ビルメンテナンス事業はそれに次ぐ規模となっています。直近の連結会計年度では、切断・穿孔工事事業の完成工事高は減少しましたが、ビルメンテナンス事業の完成工事高は増加しました。海外での売上高や有形固定資産の記載がないため、事業は主に日本国内に集中していると考えられます。
| セグメント | 売上高(2024年6月期) | 売上高(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 切断・穿孔工事事業 | 200億円 | 196億円 |
| ビルメンテナンス事業 | 5.2億円 | 6.1億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
第一カッター興業グループの直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年6月期をピークに減少傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も、直近の連結会計年度では前期から減少しています。これは、主要事業である切断・穿孔工事事業における完成工事高の減少や、連結子会社1社が連結範囲から外れたこと、原価経費の増加などが影響しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 193億円 | 209億円 | 222億円 | 209億円 | 202億円 |
| 経常利益 | 29.4億円 | 27.0億円 | 28.7億円 | 28.3億円 | 17.9億円 |
| 経常利益率 | 15.2% | 12.9% | 12.9% | 13.5% | 8.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 17.4億円 | 15.8億円 | 19.5億円 | 19.7億円 | 13.3億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 153.16 | 138.83 | 171.97 | 174.38 | 117.71 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
第一カッター興業グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から減少しています。従業員1人あたりの営業利益も、前期と比較して減少する結果となりました。これは、連結売上高および営業利益が前期から減少したことによる影響が反映されていると考えられます。
| 指標 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 33.3百万円 | 30.8百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 3.9百万円 | 2.5百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
第一カッター興業グループは、強固な財務基盤を維持しながら、将来に向けた投資を積極的に行っている状況です。本業で得た資金を成長分野に再配分することで、持続的な発展を目指していることがうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
第一カッター興業グループの財務基盤は、高い自己資本比率と潤沢な手元資金によって安定していることが示されています。自己資本比率はプライム市場の平均と比較して非常に高い水準にあり、財務的な安全性が高い状態です。
ROE(自己資本利益率)は前期から減少していますが、依然として自己資本を効率的に活用して利益を生み出している状況です。手元資金も増加しており、不測の事態や新たな事業機会への対応力があると考えられます。
| 指標 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 183億円 | 194億円 |
| 自己資本比率 | 83.1% | 86.4% |
| ROE(自己資本利益率) | 11.3% | 7.1% |
| 現金及び預金 | 94.8億円 | 99.3億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュフローは増加となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益や減価償却費があった一方で、法人税等の支払額があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得や定期預金の預入による支出が増加したため、減少となりました。財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払による支出があり、減少しています。
これらの資金の流れを見ると、同社グループは本業で安定的に資金を生み出しつつ、将来の成長に向けた積極的な投資を行っていることがわかります。この投資姿勢は、中長期的な事業拡大とそれに伴う雇用・給与の安定性につながる可能性があります。
| 項目 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 21.7億円 | 17.0億円 |
| 投資CF | △16.5億円 | △24.4億円 |
| 財務CF | △4.8億円 | △5.2億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 5.2億円 | △7.4億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの切断・穿孔工事事業は、主として公共事業関連工事に依存しています。そのため、公共事業の削減が業績に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。ウォータージェット工法に注力し、建設工事以外の受注確保により依存度を低下させる方針です。
また、同社グループの事業は公共事業関連工事が多いため、第3四半期に売上及び利益が増加し、第4四半期に落ち込む季節変動の傾向があります。ウォータージェット工法を積極的に展開することで、四半期ごとの業績平準化に取り組む方針です。
③ 人材・組織に関するリスク
建設業界では慢性的な人材不足が懸念されており、同社グループの継続的な成長には技術者の確保や教育、技術の伝承が重要な要素となっています。積極的な採用活動と社内研修制度の充実により、人材の確保と育成に努めています。
しかし、計画通りに人材の確保及び育成が進まなかった場合には、同社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
第一カッター興業は、切断・穿孔工事事業やビルメンテナンス事業を展開する企業です。同社グループは、社会インフラを支える重要な役割を担いながら、持続的な成長と社会貢献を目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、切断・穿孔工事事業、ビルメンテナンス事業等を全世界を対象に行い、最良の企業となることを基本方針としています。施工における高いレベルの品質管理、安全管理、工程管理、研究開発により差別化と市場競争力の強化を図り、安定した健全な企業の発展を目指しています。
法令遵守と内部統制を確立し、事業の拡大と経営基盤及び財務体質の強化を通じて、業界ナンバーワン企業としてのゆるぎない地位を堅持し、さらなる成長を推し進める方針です。環境変化に伴うお客様のニーズの多様化に対応することが社会への貢献であり、株主への報いであると考えています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、法令遵守と内部統制を重視し、「コンプライアンスを真ん中に置く企業文化」の創造に取り組んでいます。心理的安全性向上や、ガバナンス・コンプライアンス意識改革のための教育も実施しています。
サステナビリティを重要な経営課題と認識し、環境負荷低減や人的資本を重視したワークライフバランス推進に注力しています。
職人の「カッコいい」姿を発信するブランディング戦略を推進し、労働時間抑制や有給休暇柔軟化、完全週休二日制の採用など、魅力ある職場づくりを進めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、厳しい経営環境に対処するため、グループ全体で人材採用・育成の強化・拡充を基本戦略としています。また、コンプライアンス意識の醸成とガバナンスシステムの構築に注力しています。
具体的には、「コンプライアンスを真ん中に置く企業文化を創る」ための施策や、役員・従業員のガバナンス・コンプライアンスに対する意識改革のための教育を実施しています。さらに、グループ全体のガバナンスシステム構築を進め、内部統制システムの見直しと再構築に取り組んでいます。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
第一カッター興業は、ステークホルダーとの共存共栄を目指し、中長期的な企業価値向上を重視したコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。取締役会は経営の重要な意思決定機関として機能し、経営の透明性・健全性確保のため社外監査役を選任しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
第一カッター興業の株主構成を見ると、筆頭株主は個人株主であり、その後に事業会社や信託銀行、さらには従業員持株会が名を連ねています。多様な属性の株主が同社グループを支えていることが特徴です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 渡邉 隆 | 14.27% |
| ダイヤモンド機工 | 10.58% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.07% |
| 日本カストディ銀行 | 6.86% |
| 旭ダイヤモンド工業 | 5.22% |
なお、ダイヤモンド機工は2025年6月26日付で所有株式数が1,215,200株(10.58%)に異動しています。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性8名・女性2名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は安達昌史氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安 達 昌 史 | 代表取締役社長 | 2001年6月 同社入社、2007年9月 水戸営業所所長、2019年7月 管理本部長、2024年9月 同社代表取締役社長より現職。 |
| 古 木 隆 史 | 取締役事業本部長 | 1993年4月 同社入社、2015年9月 ウォールカッティング工業取締役、2021年12月 工事本部長、2024年9月 同社取締役、2024年10月 事業本部長より現職。 |
| 松 田 雅 一 | 取締役管理本部長 | 1982年4月 東レエンジニアリング入社、2013年6月 東レエンジニアリング取締役・管理部門長、2024年9月 同社取締役管理本部長より現職。 |
社外取締役は、原田英治氏(英治出版代表取締役・指名・報酬諮問委員会委員長)、行方一正氏(元エイチ・アイ・エス代表取締役専務)、白砂晃氏(スパイススピリット代表取締役・指名・報酬諮問委員会委員)、園田恭子氏(TARA PRESENCE代表取締役・指名・報酬諮問委員会委員)です。
社外監査役は、安東敏明氏(元大和投資信託委託常勤監査役)、横山正宏氏(不二美会計社代表)、船本美和子氏(虎ノ門第一法律事務所弁護士)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役4名と社外監査役3名を選任することで、経営の客観性と透明性を高めています。また、取締役会の諮問機関として指名・報酬諮問委員会を設置し、ガバナンス体制の充実を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
第一カッター興業の役員報酬は、取締役については役位や業績、従業員の賞与水準を考慮して決定されています。社外役員に対しては業務執行から独立した立場であるため、固定の基本報酬のみが支給されています。また、企業価値向上へのインセンティブとして譲渡制限付株式報酬制度を導入しており、固定報酬と業績連動報酬で構成される報酬体系となっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 55百万円 | 13.7百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 37百万円 | 4.6百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は存在しません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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