第一カッター興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第一カッター興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、道路やコンクリート構造物の切断・穿孔工事およびビルメンテナンス事業を展開しています。直近の業績は、主力事業における完成工事高の減少や連結子会社の除外などの影響により、前期比で減収減益となりました。


※本記事は、第一カッター興業株式会社 の有価証券報告書(第58期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 第一カッター興業ってどんな会社?


ダイヤモンド工法やウォータージェット工法を用いた工事を主力とし、社会インフラの維持補修を支えています。

(1) 会社概要


1967年にダイヤモンド工法による工事を目的に設立され、2004年にJASDAQへ上場しました。その後、ウォールカッティング工業や新伸興業などの子会社化を通じて事業を拡大し、2017年には東証一部へ指定替えされました。2023年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

同グループの連結従業員数は656名、単体では526名です。筆頭株主は個人株主の渡邉隆氏で、第2位は同社の関連会社であり工事の請負関係もあるダイヤモンド機工、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
渡邉隆 14.27%
ダイヤモンド機工 10.58%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は安達昌史氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安達昌史 代表取締役社長 2001年同社入社。水戸営業所長、ビルメンテナンス事業部長、管理本部長を経て、2024年9月より現職。
古木隆史 取締役事業本部長 1993年同社入社。営業所長や工事本部長、営業本部長を歴任し、2024年10月より現職。
松田雅一 取締役管理本部長 1982年東レエンジニアリング入社。同社常務取締役、専務理事などを経て、2024年9月より現職。


社外取締役は、原田英治(英治出版共同創業者)、行方一正(元エイチ・アイ・エス代表取締役専務)、白砂晃(元キタムラ取締役)、園田恭子(TARA PRESENCE代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「切断・穿孔工事事業」および「ビルメンテナンス事業」を展開しています。

(1) 切断・穿孔工事事業


道路やコンクリート構造物の解体・撤去等に必要な切断・穿孔工事を行っています。工業用ダイヤモンドを使用したダイヤモンド工法や、水圧を利用したウォータージェット工法を中心に展開し、主要な得意先は総合建設業者や道路建設業者等の民間企業です。施工対象は土木、建築、都市土木、道路・空港など多岐にわたります。

収益は、主に専門工事業者として請け負う工事代金によって得ています。運営は、東日本を中心に第一カッター興業が担うほか、東海地方を株式会社ウォールカッティング工業、沖縄県を株式会社新伸興業、関東地方を株式会社アシレ、近畿地方を株式会社ユニペック、九州地方をダイヤモンド機工株式会社が担当するなど、グループ各社が地域ごとに展開しています。

(2) ビルメンテナンス事業


集合住宅やオフィスビル等における給排水設備の保守点検、貯水槽清掃、雑排水管清掃業務を行っています。具体的には、排水管清掃や給水設備点検、床清掃などを通じて、建物の円滑な運営に貢献しています。

収益は、ビルのオーナーや管理会社等から受領する清掃費や点検・保守費用などから構成されています。この事業の運営は、主に第一カッター興業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円前後で推移していますが、直近2期は減少傾向にあります。利益面では、経常利益率が10%を超える高い水準を維持していましたが、当期は減益となり利益率も一桁台に低下しました。当期純利益も前期の過去最高益から減益となっています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 193億円 209億円 222億円 209億円 202億円
経常利益 29億円 27億円 29億円 28億円 18億円
利益率(%) 15.2% 12.9% 12.9% 13.5% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 11億円 14億円 23億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益および営業利益が減少しています。特に営業利益率は11.7%から8.1%へと低下しており、原価や販管費の負担感が増していることが読み取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 209億円 202億円
売上総利益 65億円 58億円
売上総利益率(%) 31.3% 28.8%
営業利益 25億円 16億円
営業利益率(%) 11.7% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が18億円(構成比43%)を占め、最大の費用項目となっています。売上原価においては、注記情報はありませんが、一般的に建設業では労務費や外注費が大きな割合を占めます。

(3) セグメント収益


切断・穿孔工事事業は高速道路リニューアル工事の受注減少などにより減収減益となり、利益率は14.1%に低下しました。一方、ビルメンテナンス事業は首都圏での新規開拓が進み増収増益となり、利益率も9.2%へ向上しています。なお、前期まで存在したリユース・リサイクル事業は連結除外によりなくなっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
切断・穿孔工事事業 200億円 196億円 37億円 28億円 14.1%
ビルメンテナンス事業 5億円 6億円 0.3億円 0.6億円 9.2%
リユース・リサイクル事業 4億円 - -0.3億円 - -
調整額 - - -12億円 -12億円 -
連結(合計) 209億円 202億円 25億円 16億円 8.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.4%で市場平均を上回っています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 22億円 17億円
投資CF -17億円 -24億円
財務CF -5億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、切断・穿孔工事事業やビルメンテナンス事業等を全世界で行い、最良の企業となることを基本方針としています。高品質な施工、安全管理、研究開発による差別化で市場競争力を強化し、安定した健全な発展を目指しています。顧客ニーズへの対応を通じて社会貢献し、株主に報いることを重視しています。

(2) 企業文化


法令順守と内部統制の確立を基盤とし、業界ナンバーワン企業としての地位を堅持することを目指しています。また、社会問題化する騒音や粉塵等に対応した環境に優しい工法を推進し、「安全」と「コンプライアンス」の強化をグループ全体で推進する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


建設市場の変化に対応し、競争優位性の強化と新領域への挑戦に向けた事業戦略および組織戦略を策定しています。具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、既存事業の優位性強化、市場拡大への提案強化、新規事業の開拓などを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の戦略として、人材採用・育成の強化、営業展開の強化、協力会社ネットワークの強化、研究開発の強化を基本としています。切断・穿孔工事事業では、インフラの老朽化対策や長寿命化計画をターゲットとした営業展開を図り、ビルメンテナンス事業ではエリア拡大と作業員の増員による体制強化を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術・経験の伝承、人材育成、研究開発やDXを通じて長期的に活躍できる人材基盤を整備する方針です。特に、職人の働く姿の魅力を発信するブランディング戦略や、独自の研修制度による技術者育成に注力しています。また、残業時間抑制や有給休暇制度の柔軟化など、ワークライフバランスの推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 38.8歳 10.7年 6,754,490円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 37.5%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規雇用) 70.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 31.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業界への依存


同社グループの主要な得意先は総合建設業者や道路建設業者等の民間企業であり、工事の大半が公共事業関連です。そのため、公共事業の削減や建設業界における倒産件数の増加などが、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、建設工事以外のメンテナンス需要の確保等で依存度の低下を図っています。

(2) 経営成績の季節変動


同社グループの事業は公共事業関連工事が多いため、第3四半期(1月~3月)に売上・利益が増加し、第4四半期(4月~6月)に落ち込む傾向があります。固定費の負担により第4四半期の利益率が悪化する可能性があるため、この時期に施工が多い民間工場のメンテナンス等を積極的に展開し、業績の平準化に取り組んでいます。

(3) 特定取引先への仕入依存


原材料の半数近くを旭ダイヤモンド工業株式会社から仕入れており、依存度は46.4%となっています。同社との関係は良好ですが、何らかの事情で取引が継続できなくなった場合、代替調達は可能であるものの、一時的な混乱が生じ、事業運営に悪影響を与える可能性があります。

(4) 建設業法等の法的規制


主力事業である切断・穿孔工事は建設業法に基づく許可が必要であり、許可の更新ができなかった場合や取り消しとなった場合、一定金額以上の工事が受注できなくなります。法令順守を徹底していますが、万が一許可要件を欠く事態が生じた場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。