※本記事は、一正蒲鉾株式会社 の有価証券報告書(第61期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 一正蒲鉾ってどんな会社?
同社は「オホーツク」等の水産練製品・惣菜や、まいたけ等のきのこ事業を展開する食品メーカーです。
■(1) 会社概要
1965年に新潟蒲鉾として設立され、蒲鉾の製造販売を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2014年には東京証券取引所市場第一部へ銘柄指定されました。2015年にインドネシアに合弁会社を設立して海外市場へ参入し、2024年12月には同社の株式を追加取得して連結子会社化するなど、グローバル展開を進めています。
同社グループは連結928名、単体883名の従業員を擁する組織です。筆頭株主は創業家資産管理会社と思われる有限会社ノザキで、第2位は中小企業の育成を目的とする投資会社である東京中小企業投資育成です。第3位には社長の野崎正博氏が名を連ねており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社ノザキ | 31.04% |
| 東京中小企業投資育成 | 5.88% |
| 野崎正博 | 2.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長執行役員は野崎正博氏が務めています。取締役9名のうち、社外取締役は4名(44.4%)を選任しています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野 崎 正 博 | 代表取締役社長執行役員 | 1981年4月同社入社。営業部長、営業本部長等を経て1999年9月代表取締役社長に就任。2021年9月より現職。イチマサ冷蔵代表取締役会長を兼任。 |
| 後 藤 昌 幸 | 取締役常務執行役員バイオ事業統括本部長 | 1985年11月同社入社。生産統括部長、商品開発部長、生産本部長等を歴任。2025年7月より現職。 |
| 髙 島 正 樹 | 取締役常務執行役員コーポレート事業統括本部長 | 2016年7月同社入社。経営企画部長、経営管理本部長等を歴任。2025年7月より現職。 |
| 小 柳 啓 一 | 取締役(非常勤) | 1983年4月同社入社。東京支店長、営業本部長等を歴任。2025年7月よりイチマサ冷蔵代表取締役社長。 |
| 高山佳代子 | 取締役(監査等委員) | 1984年4月同社入社。購買課長、CSR推進室次長、経営企画部次長、ESG推進部副部長を経て2021年9月より現職。 |
社外取締役は、中山正子(キタック代表取締役社長)、吉田至夫(新潟クボタ代表取締役会長)、阿部和人(公認会計士)、三部正歳(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水産練製品・惣菜事業」、「きのこ事業」、「運送・倉庫事業」を展開しています。
■(1) 水産練製品・惣菜事業
「オホーツク」などのカニ風味かまぼこをはじめとする水産練製品や惣菜の製造販売を行っています。健康志向の高まりを受け、魚肉たんぱく製品のおいしさや健康機能を追求した商品を国内外の消費者に提供しています。
収益は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの流通業者等への製品販売から得ています。運営は、国内では同社が、海外(インドネシア)では連結子会社のPT.KML ICHIMASA FOODSが行っています。
■(2) きのこ事業
まいたけを中心としたきのこの生産および販売を行っています。おいしさや栄養機能等の研究を進め、付加価値の向上とブランドの確立に取り組んでいます。
収益は、青果市場や流通業者等への製品販売から得ています。運営は、同社が行っています。
■(3) 運送・倉庫事業
貨物運送業および倉庫業を展開しており、主に同社グループの製品および材料の運送・保管を行っています。当連結会計年度より量的重要性が増したため、報告セグメントとして独立しました。
収益は、荷主からの運賃および保管料から得ています。運営は、連結子会社のイチマサ冷蔵が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台前半から半ばで推移しています。第59期(2023年6月期)には原材料価格高騰などの影響で経常損失を計上しましたが、第60期には価格改定等の効果によりV字回復を果たしました。第61期は増収ながらもコスト増により減益となりましたが、黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 347億円 | 316億円 | 328億円 | 345億円 | 346億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 6億円 | -1億円 | 12億円 | 9億円 |
| 利益率 | 5.2% | 2.0% | -0.4% | 3.6% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 6億円 | 1億円 | 10億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。また、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は前期比で減少しています。コスト上昇圧力が利益を圧迫する構造となっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 345億円 | 346億円 |
| 売上総利益 | 71億円 | 70億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.7% | 20.2% |
| 営業利益 | 13億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃・保管料が21億円(構成比33.6%)、給与手当が10億円(同16.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の水産練製品・惣菜事業は、価格改定や新商品投入により売上高は増加しましたが、コスト増により減益となりました。きのこ事業は、猛暑による生育不調等が響き減収減益(損失拡大)となりました。運送・倉庫事業は、取扱量の減少等により減収となりましたが、庫内管理の最適化等により増益を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水産練製品・惣菜事業 | 303億円 | 305億円 | 13億円 | 10億円 | 3.3% |
| きのこ事業 | 38億円 | 38億円 | -2億円 | -3億円 | -6.7% |
| 運送・倉庫事業 | 4億円 | 3億円 | 1億円 | 1億円 | 36.8% |
| 連結(合計) | 345億円 | 346億円 | 13億円 | 9億円 | 2.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
一正蒲鉾のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動では、利益の計上や減価償却費の計上等により資金を獲得しましたが、棚卸資産の増加や未払消費税等の減少により、前連結会計年度と比較して獲得額は減少しました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、前連結会計年度よりも支出額が増加しました。財務活動では、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払いにより、支出となりました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 52億円 | 16億円 |
| 投資CF | -17億円 | -26億円 |
| 財務CF | -16億円 | -11億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「安全・安心を基本として、ユーザーに信頼され、愛され、感動される商品・サービスを提供することで、社会になくてはならない企業として貢献します。」という経営理念を掲げています。また、社是として「人生はやまびこである」を定め、創業者野崎正平の信念である「正しきことは正しく報われる」を受け継いでいます。
■(2) 企業文化
全従業員が「誠実」「謙虚」「感謝」の心で行動することを重視しています。また、「ESG経営宣言」を掲げ、環境・社会の課題解決に取り組み、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値向上の両立を目指す文化があります。「すべてのステークホルダーの皆さまとの協働を重視した経営」や「透明性の高い健全経営」を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2021年7月から2026年6月までの5か年を第二次中期経営計画「成長軌道への5年」と位置づけています。厳しい経営環境を踏まえ、最終年度の数値目標を下方修正しました。
* 売上高:362億円
* 営業利益:11億円
* 自己資本利益率(ROE):5%
* 投下資本利益率(ROIC):4%
* 自己資本比率:50%台
■(4) 成長戦略と重点施策
「変革」と「創造」、「選択」と「集中」を戦略キーワードに掲げています。水産練製品事業ではマーケティング強化やDXによる工場合理化を進め、きのこ事業では技術研究強化やスマートファクトリー化を目指します。また、海外事業の拡大を重要課題とし、インドネシア合弁会社の子会社化などを通じてグローバル展開を加速させています。
* IWS(いちまさワークスタイル)の確立
* DXによる顧客価値創出と生産性向上
* 「ネクストシーフード」等のサステナブルな商品開発
* 海外市場での生産・販売体制強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」を最大の経営資本と位置づけ、人財への積極投資を行っています。新しい働き方「IWS(いちまさワークスタイル)」を推進し、働きやすく働きがいのある職場環境を整備しています。多様な人財の採用や育成、自律的なキャリア形成支援を通じて、従業員エンゲージメントの向上と組織の成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 40.2歳 | 12.8年 | 4,293,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 85.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性比率(52.0%)、採用における中途採用者比率(52.8%)、有給休暇取得率(85.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 社会リスク(国内人口減少等)
国内の少子高齢化による市場縮小や競合激化が、シェア減少や業績への悪影響をもたらす可能性があります。これに対し、消費者ニーズに対応した新商品開発やリニューアル、SNSを活用した若年層へのアプローチ、海外市場の開拓などを進めています。また、気候変動規制への対応コスト増加や、物流業界の人手不足による供給力低下のリスクも認識し、対策を講じています。
■(2) 経営リスク(原材料価格高騰等)
主原料であるすり身の価格上昇や供給不安、副材料の不作、エネルギーコストの高騰などが業績に影響を与える可能性があります。これに対し、調達先や魚種の分散化、代替材料の検討、生産プロセスの効率化によるエネルギー使用量削減などに取り組んでいます。また、価格競争の激化に対しては、高付加価値商品の開発で差別化を図っています。
■(3) オペレーショナルリスク(人材確保等)
少子高齢化による労働力不足が深刻化し、人材確保や育成が困難になることで事業運営に支障が出る可能性があります。これに対し、働き方改革や健康経営の推進、多様な人材の活用、研修制度の充実に取り組むとともに、工場の自動化(FA)やDXを推進して省人化を図っています。また、食の安全性確保や情報セキュリティ対策も重要課題として管理しています。



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