※本記事は、東洋ドライルーブ株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋ドライルーブってどんな会社?
固体被膜潤滑剤「ドライルーブ」のパイオニアとして、製品開発からコーティング加工までを一貫して手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
同社は1962年、米国Drilube社製品の輸入販売を目的に設立されました。1975年にドライルーブ製品の自社製造を開始し、1982年にはコーティング加工事業へ進出しました。2008年にジャスダック証券取引所へ上場し、2019年以降は長野ドライルーブや大分ドライルーブなどを子会社化して体制を強化しています。
連結従業員数は514名、単体では119名です。筆頭株主は代表取締役社長の飯野光彦氏で、第2位は専務取締役の飯野光俊氏と、創業家出身の役員が上位を占めています。また、資産管理会社や親族が大株主として名を連ねており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 飯野 光彦 | 23.10% |
| 飯野 光俊 | 8.43% |
| 飯野 玲子 | 7.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は飯野光彦氏が務めています。社外取締役比率は約22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯野 光彦 | 代表取締役社長 | 1978年入社。専務、社長を経て2018年会長兼社長。2019年より現職。広州徳来路博科技有限公司董事長等を兼任。 |
| 飯野 光俊 | 専務取締役 | 2009年入社。タイ現地法人マネージャー、事業推進室長、常務等を経て2022年より現職。 |
| 梶田 哲二 | 常務取締役 | 1996年入社。愛知事業部長、ベトナム現地法人社長等を経て2019年より現職。 |
| 小林 昭仁 | 取締役 | 1996年入社。群馬事業部長等を経て2016年より現職。ドライルーブ・タイランド社長を兼任。 |
| 武藤 和彦 | 取締役群馬事業部長 | 1995年入社。技術開発センター長等を経て2020年より現職。 |
| 鈴木 茂生 | 取締役管理部長 | 2019年入社。管理部長として現職。各子会社の監査役を兼任。 |
| 柳 任 | 取締役(監査等委員) | 1985年入社。愛知事業部長、常務ドライルーブ事業統括本部長等を経て2021年より現職。 |
社外取締役は、山口秀巳(元国税庁東京国税局調査第二部長)、池本優子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ドライルーブ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■ドライルーブ事業
同社グループは、二硫化モリブデンやフッ素樹脂等を主成分とする固体潤滑剤「ドライルーブ」製品の研究開発・製造・販売を行っています。これらの製品は、自動車機器や光学機器メーカー等に対し、機能性被膜を形成するための塗料として提供されます。
また、自社製造したドライルーブ製品を使用し、顧客から預かった部品へのコーティング加工も行っています。収益は主にコーティング加工料や製品販売代金から得ており、運営は東洋ドライルーブのほか、国内子会社の長野ドライルーブ、大分ドライルーブ、真永、および中国・タイ・ベトナムの海外拠点が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、2022年6月期に収益認識会計基準の適用等により売上高が減少しましたが、その後は回復傾向にあります。特に直近では自動車関連や光学機器向けの受注増により、売上高は50億円台に到達し、経常利益も増加基調で推移しており、高い利益率を維持しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 64億円 | 37億円 | 39億円 | 47億円 | 52億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 7億円 | 4億円 | 8億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 20.2% | 10.9% | 17.2% | 18.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 5億円 | 1億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は37%台と高い水準を維持しています。営業利益率は15.0%と高収益体質であり、販管費のコントロールと生産効率の向上が利益拡大に寄与しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 47億円 | 52億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.8% | 37.5% |
| 営業利益 | 7億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 13.9% | 15.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が2.4億円(構成比21%)、役員報酬が1.6億円(同14%)、研究開発費が1.1億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループはドライルーブ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はありません。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東洋ドライルーブは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、既存製品の改良や新製品開発への投資を通じて、安定的な収益基盤の維持に貢献しています。設備投資に関するキャッシュ・フローは、自動車機器、電気・電子機器、精密機器業界の技術革新に対応するための研究開発活動に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入などを通じて、事業運営に必要な資金を調達しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 9億円 |
| 投資CF | -11億円 | -20億円 |
| 財務CF | -1億円 | -1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、特殊な機能を有する被膜「ドライルーブ」を開発し、「省エネルギー」「環境保全」に貢献することにより、「人々の安全で豊かな生活を支える」ことを会社経営の基本方針としています。摩擦摩耗の低減やエネルギー制御を通じて、産業界の機能拡充に向けた技術提供に努めています。
■(2) 企業文化
技術革新への挑戦を重視し、配合設計技術と分散技術というコア技術を駆使して市場ニーズに応える製品開発を行う文化があります。また、生産性の向上にも注力しており、AIやロボット、センサー機器の導入による自動化・省人化を推進し、品質向上と効率化を両立させる姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
事業収益の安定的確保と持続的成長のため、売上総利益率・営業利益率・経常利益率等を常に意識した経営を行っています。また、研究開発と生産体制強化のための先行投資を行うべく、営業キャッシュ・フローの増強を図り、健全な財務体質を堅持することを目標としています。
* 2030年度目標:2021年度比売上高あたりのGHG排出単位30%削減
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期の戦略として、事業構造の見直しと「省エネルギー」「環境保全」関連事業の強化を掲げています。具体的には、自動車の電動化(HV・EV等)に対応した新機能製品の開発や、アジア・グローバル戦略の展開による海外市場深耕を進めます。また、国内子会社との連携強化や、生産工程の自動化による生産性向上にも取り組んでいきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材を確保するため、新卒・中途採用に加え外国人社員等も積極的に採用し、能力に応じて登用しています。育成面では、部門ごとのスキルマトリクスで保有スキルを明確化し、OJTや外部研修、通信教育を通じて成長を後押ししています。また、時間外労働の削減や有給休暇取得を推進し、ワークライフバランスのとれた職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 42.1歳 | 15.0年 | 5,939,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定業界への依存
グループ売上高の約55.2%が自動車関連業界向けとなっており、同業界への依存度が高くなっています。そのため、世界的な自動車生産の停滞や、国内メーカーの生産減少、車種1台あたりの採用点数・金額の減少などが発生した場合、グループの財政状態や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 販売価格の低下
主要顧客である自動車関連や電気・電子部品業界は価格競争が激しく、製品の販売価格が低下する可能性があります。生産ラインの合理化や自動化による原価低減、新規顧客開拓などの対策を行っていますが、原価低減を上回る価格低下や新製品投入の遅れが生じた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 製品および加工の品質
製品やコーティング加工の品質管理には万全を期しており、ISO9001認証に基づく管理を行っていますが、欠陥や不良が全く生じない保証はありません。万が一、製品に欠陥が認められ、顧客の生産活動に著しい支障をきたした場合は、社会的信用の失墜や損害賠償責任により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 顧客ニーズへの対応
主要顧客の業界では技術革新が著しく、新製品開発の依頼が日常的にあります。これに対応するため研究開発能力の強化を図っていますが、顧客の要望や市場ニーズに応えられず開発依頼に対応できない状態が続くと、他社製品への代替が進み、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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