※本記事は、新東株式会社 の有価証券報告書(第62期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新東ってどんな会社?
同社は、日本三大瓦の一つである三州瓦の製造販売を主力とし、大手ハウスメーカー向けの屋根工事も展開する企業です。
■(1) 会社概要
1963年に新東赤瓦として愛知県高浜市で設立され、粘土瓦の製造を開始しました。2001年に日本証券業協会へ店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、工場の新設や関係会社の吸収合併を経て生産体制を再編しています。2024年1月には札幌証券取引所本則市場へ上場を果たしました。
同社(単体)の従業員数は72名です。筆頭株主は新東役員持株会で、第2位以下には個人株主や地元企業などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 新東役員持株会 | 12.81% |
| 三浦 重剛 | 5.66% |
| 有限会社マルイシ | 5.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石川達也氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石川 達也 | 代表取締役社長 | 1995年岡崎信用金庫入庫。1998年同社入社。品質保証課長等を経て、2004年より現職。 |
| 石川 大輔 | 常務取締役生産部長兼 テクノセンター長 | 1997年同社入社。開発課長、テクノセンター長等を経て、2011年より現職。 |
| 新美 昌彦 | 取締役営業部長 | 1991年同社入社。営業本部モデュール課長、営業本部次長等を経て、2010年より現職。 |
| 早川 正 | 取締役管理部長 | 2001年同社入社。管理部システム課長、営業部次長等を経て、2017年より現職。 |
| 藤浦 正 | 取締役(常勤監査等委員) | 2009年岡崎信用金庫日名支店長。同金庫理事、おかしんリース社長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、西垣誠(入谷法律事務所弁護士)、中根祥雄(元岡崎信用金庫執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「瓦製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■瓦製造販売事業
同社は、粘土瓦(三州瓦)の製造販売を行っています。主力製品として平板瓦「CERAMシリーズ」や「SHINTOかわらS」などを展開し、優れた防災機能やデザイン性を強みとしています。顧客は大手ハウスメーカーや工事店、問屋などが中心です。また、屋根工事の施工請負も行っており、製品の販売だけでなく施工までを一貫して提供できる体制を整えています。
主な収益源は、粘土瓦製品の販売代金および屋根工事の施工料です。製品販売においては、ハウスメーカー向け専用瓦の供給も行っており、特定の顧客ニーズに対応した製品開発を進めています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は45億円から54億円の間で推移しており、第62期は46億円となりました。利益面では変動が見られ、第61期は赤字となりましたが、第62期は販売価格の適正化やコスト削減等の効果により黒字転換を果たしています。利益率は低水準ながらも改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 50.1億円 | 54.2億円 | 50.4億円 | 45.5億円 | 46.3億円 |
| 経常利益 | 0.5億円 | 0.2億円 | 0.6億円 | -0.5億円 | 1.0億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 0.4% | 1.1% | -1.2% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.0億円 | -0.0億円 | 0.2億円 | -0.7億円 | 0.7億円 |
■(2) 損益計算書
第62期の売上高は前期比微増となり、売上総利益率は16.3%から19.5%へ改善しました。これに伴い、営業損益は前期の赤字から1.1億円の黒字へと転換しています。コスト管理の徹底と価格転嫁が進んだことが利益率の向上に寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 45.5億円 | 46.3億円 |
| 売上総利益 | 7.4億円 | 9.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.3% | 19.5% |
| 営業利益 | -0.6億円 | 1.1億円 |
| 営業利益率(%) | -1.4% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が2.7億円(構成比34%)、荷造包装費が1.1億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費が3.8億円(売上原価合計に対し10%)、労務費が2.3億円(同6%)、経費が8.8億円(同24%)等の構成となっています。
■(3) セグメント収益
製品別に見ると、主力である瓦販売は減少傾向にある一方、板金販売が前期比で増加し、全体の売上増に寄与しました。屋根工事は横ばいで推移しています。瓦販売の減少はJ形瓦のOEM先廃業などの影響があったものの、板金販売の好調がそれを補いました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 瓦販売 | 25億円 | 25億円 |
| 屋根工事 | 7億円 | 7億円 |
| 板金販売 | 10億円 | 12億円 |
| その他 | 4億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 46億円 | 46億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、収益性向上に向けた取り組みが奏功し、黒字転換を果たしました。投資活動によるキャッシュ・フローは、持続可能な社会の実現に向けた原料開発等に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入等により、資金調達を行っております。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.8億円 | -1.3億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | 1.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は設立以来、「オンリーワン」を基本理念として掲げています。企業活動を通じて快適な住環境を創造し、地球環境に優しい製品の開発および積極的な販売を通じて顧客満足度の向上に努めています。正当な利益確保や株主への還元、従業員の生活向上、内部組織の充実を推進し、顧客に支持される「オンリーワン企業」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、お客様に信頼される企業として成長するため、「新5S」を理念として掲げています。これは「スマイル(成果の確認)」「セーフティー(現場重視)」「スペシャルティー(チェックシートの改善)」「スリム(他部署との連携強化)」「スピード(情報発信のスピード化)」の5つの要素からなり、これらを重点項目として取り組むことで、安全な職場環境の整備や意識向上を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、高品質・高付加価値製品の開発を図り、中期的に資本効率を重視する観点から「自己資本当期純利益率(ROE)」の向上を経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標としています。具体的な数値目標は定められていませんが、第62期においてはROE 2.2%を達成し、黒字化を実現しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、製造現場の安全性と品質向上を両立させつつ効率化を図り、物流の合理化によるコスト削減に取り組んでいます。営業面では、騒音防止や雨だれ防止効果を持つ高付加価値製品「TM袖瓦」の開発・販売や、SNSを活用した商品PR、Web会議ツールを用いた営業活動を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様化する顧客ニーズに応えるため、従業員の意識向上と安全な職場環境の整備を重視しています。eラーニングによる教育実施や、人材の多様性確保を重要課題と捉え、中核人材の育成や多様なバックグラウンドを持つ人材の登用を推進する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 47.6歳 | 17.8年 | 4,703,888円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 0.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 52.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 49.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 67.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新設住宅着工戸数の変動
同社の製品である粘土瓦は、住宅の新設時に多量に使用されるため、業績は新設住宅着工戸数の増減に大きく左右されます。景気動向、地価変動、金利、住宅政策、少子化などの要因により着工戸数が減少した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制への対応
同社は地域住民の生活環境保全のため、公害防止に関する法的規制や行政指導を遵守しています。しかし、大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの法律改正や新たな規制の制定が行われた場合、工場の運営に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定取引先への依存
原材料である粘土や釉薬は特定の仕入先からの供給に依存しており、仕入先の経営悪化等が製造に支障をきたす可能性があります。また、販売面でも大手ハウスメーカー向け専用瓦を展開しており、特定顧客の仕様変更や類似商品の市場投入が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原油価格の変動の影響
製造工程で液化石油ガスや重油を使用しているため、国際情勢や為替レートの変動により原油価格が急騰した場合、製造コストが上昇し、業績を圧迫する可能性があります。同社は仕入先の多様化や情報共有により対策を講じていますが、リスクは内在しています。



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