澁谷工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

澁谷工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

澁谷工業は東証プライム・名証プレミアに上場する産業機械メーカーです。ボトリングシステムを中心とするパッケージングプラント事業、半導体製造装置などのメカトロシステム事業、農業用設備事業を展開しています。直近の業績は売上高・利益ともに過去最高を更新し、増収増益で推移しています。


※本記事は、澁谷工業株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 澁谷工業ってどんな会社?


ボトリングシステムで国内トップシェアを誇る産業機械メーカーです。半導体製造装置や医療機器も展開しています。

(1) 会社概要


1949年に設立され、1986年に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)に指定されました。2005年に米国Hoppmann Corporation(現Shibuya Hoppmann Corporation)を取得し、2012年には株式会社カイジョーを子会社化しています。2021年には子会社のシブヤマシナリー株式会社を吸収合併し、事業体制の効率化を進めました。

同社グループの従業員数は連結で3,340名、単体で2,087名です。大株主は、信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主であり、次いで公益財団法人澁谷学術文化スポーツ振興財団、明治安田生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.42%
公益財団法人澁谷学術文化スポーツ振興財団 8.40%
明治安田生命保険相互会社 6.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員グループ経営企画統轄本部長は澁谷英利氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
澁谷 英利 代表取締役社長社長執行役員グループ経営企画統轄本部長 1989年丸紅入社。1992年同社入社。常務執行役員、常務取締役、Shibuya Hoppmann Corporation CEO等を経て2021年10月より現職。
毛利 克己 取締役副社長副社長執行役員グループ経営企画統轄副本部長、メカトロ統轄本部長兼生産本部長兼医療機本部長 1979年大林組入社。2004年シブヤマシナリー入社。同社常務執行役員、専務取締役メカトロ事業部長等を経て2023年9月より現職。
本多 宗隆 取締役副社長副社長執行役員グループ経営企画統轄副本部長、総務本部長、情報・知的財産本部長 1973年同社入社。企画・特許部長、執行役員、常務執行役員、常務取締役情報・知的財産本部長、専務取締役等を経て2023年9月より現職。
河村 孝志 取締役副社長副社長執行役員グループ経営企画統轄副本部長、財経本部長、内部統制・監査室長 1978年日本ミネチュアベアリング(現ミネベアミツミ)入社。1980年同社入社。執行役員財経本部財務部長、常務取締役、専務取締役等を経て2023年9月より現職。
玉井 政利 取締役 1981年税理士開業。2011年同社監査役を経て2018年9月より現職。
近藤 徳之 取締役 1983年三井物産入社。三井物産プラスチックトレード常務執行役員、Plalloy MTD B.V.社長等を経て2022年9月より現職。
大砂 雅子 取締役 1979年日本貿易振興会入会。ジェトロ・ソウル事務所長、金沢工業大学教授等を経て2024年9月より現職。


社外取締役は、玉井政利(税理士)、近藤徳之(元三井物産プラスチックトレード常務)、大砂雅子(金沢工業大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パッケージングプラント事業」「メカトロシステム事業」「農業用設備事業」を展開しています。

(1) パッケージングプラント事業


ボトリングシステム(充填・キャッピング・ラベリング等)、製函・包装システム、製薬設備システム(アイソレータ等)、再生医療システムなどを、飲料・食品・医薬品メーカー等に提供しています。特に飲料無菌充填システムは高い国内シェアを有しています。

収益は、顧客である飲料・食品・医薬品メーカー等からのプラント設備販売代金およびメンテナンス等のサービス料から得ています。運営は主に同社が担い、シブヤパッケージングシステム、Shibuya Hoppmann Corporationなどが製造・販売を行っています。

(2) メカトロシステム事業


半導体製造システム(ハンダボールマウンタ等)、医療機器(人工透析装置、レーザ手術装置等)、切断加工システム(レーザ加工機等)、超音波発生装置などを製造販売しています。人工透析装置は主にOEM供給を行っています。

収益は、半導体メーカーや医療機器販売会社等からの装置販売代金およびOEM供給による売上から得ています。運営は同社および株式会社カイジョー、海外現地法人などが担っています。

(3) 農業用設備事業


農業協同組合(農協)などを主な顧客とし、柑橘類、落葉果樹類、蔬菜類などの選果・選別プラントシステムを提供しています。スマート農業の推進や高付加価値化に対応したシステムの開発も行っています。

収益は、農協等からの選果・選別プラントの販売代金およびメンテナンス料から得ています。運営は、主に子会社のシブヤ精機株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が1,000億円前後で推移した後、直近2期で大きく伸長し1,300億円規模に達しています。経常利益も一時的な落ち込みは見られたものの、直近では138億円と高水準を回復・維持しています。利益率も10%超を安定して確保しており、好調な事業環境がうかがえます。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 1,040億円 962億円 978億円 1,154億円 1,290億円
経常利益 130億円 137億円 82億円 136億円 138億円
利益率(%) 12.5% 14.2% 8.4% 11.7% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 65億円 95億円 41億円 75億円 88億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約136億円増加し、増収基調が継続しています。売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は増益を確保していますが、営業利益率はやや低下しており、売上規模の拡大に伴い原価や販管費も増加している様子が見て取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 1,154億円 1,290億円
売上総利益 241億円 252億円
売上総利益率(%) 20.9% 19.5%
営業利益 134億円 137億円
営業利益率(%) 11.6% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料が34億円(構成比30.1%)、荷造運搬費が14億円(同12.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


パッケージングプラント事業は、国内・海外向けの飲料用無菌充填ラインや医薬・化粧品用プラントが好調で大幅な増収となりました。メカトロシステム事業は、半導体向けが抑制傾向でしたが医療機器の海外向けが好調で微増収でした。農業用設備事業は蔬菜類向けが減少し減収となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
パッケージングプラント事業 660億円 801億円
メカトロシステム事業 370億円 378億円
農業用設備事業 124億円 112億円
連結(合計) 1,154億円 1,290億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.7%で市場平均を上回っています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 104億円 91億円
投資CF -34億円 -66億円
財務CF -30億円 -38億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来「喜んで働く」を経営理念とし、「カスタマー・ファースト」を貫いています。「SHIBUYA未来ビジョン宣言」として、Mission「ダントツ製品でお客様の繁栄をサポート」、Vision「生活に不可欠な業界の製造を支えるリーディングカンパニー」、Value「グローバル市場で持続的に成長」を掲げています。

(2) 企業文化


承継すべきものに新しい時代の変化を取り入れる「不易流行」の理念を全社で共有しています。また、営業、技術、生産、管理の各部門においてグループ一丸となる「One Shibuya」の体制でグローバル展開を進めることを重視しています。従業員が共に成長し、個々の能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2025年6月期から2027年6月期までの3ヵ年中期経営計画を策定しています。最終年度である2027年6月期の数値目標として以下を掲げています。長期的には2030年6月期に売上高2,000億円の達成を目指しています。

* 売上高:1,500億円
* 営業利益:160億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「不易流行」の理念のもと、サステナビリティ経営の推進、「ダントツ製品」づくりの強化、グローバル戦略の推進に取り組んでいます。また、3カイ(改善・改革・開発)の推進や予実管理の徹底による収益力向上、DX化推進による新事業創出と人財育成、M&Aの戦略的活用にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「喜んで働く」を実践し、「不易流行」の理念を共有して新たなステージへ挑戦できる人財の育成を目指しています。高齢者が健康に働ける環境や若手が挑戦できる機会、多様な人材が「自分らしく」働ける環境整備を進めています。また、DX化を推進し、社員のWell-being実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.2歳 18.1年 6,640,574円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.1%
男性育児休業取得率 48.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規) 66.4%
男女賃金差異(非正規) 60.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢、市場環境等


顧客の設備投資動向に影響を受けます。清涼飲料業界向けのパッケージングプラント事業は連結売上の20~30%を占め、消費者の嗜好や天候の影響を受けます。また、メカトロシステム事業の医療機器は大部分がOEM供給であり、供給先の業績や方針の影響を受けます。農業用設備事業は国の農業政策の影響を受ける可能性があります。

(2) 製造物責任(PL)


製品の品質・性能には万全を期していますが、予期せぬ欠陥等によりPL事故が発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はPL委員会を設置し、事故の未然防止や迅速な対応に努めていますが、リスクを完全に排除することは困難です。

(3) 知的財産権


開発した製品・技術の特許権保護や他社権利の侵害防止に努めていますが、第三者による特許侵害や、逆に同社製品が第三者の知的財産権を侵害したとの主張を受けるリスクがあります。これにより訴訟費用や損害賠償が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害、感染症


大規模な地震、風水害などの自然災害や、新たな感染症の拡大が発生した場合、生産活動や営業活動の縮小・停止を余儀なくされる可能性があります。これにより、製品供給の遅延や受注機会の喪失などが生じ、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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