NKKスイッチズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NKKスイッチズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するNKKスイッチズは、産業用スイッチの製造および販売を主力事業としてグローバルに展開する企業です。直近の業績では、各市場での電子部品の在庫調整が一巡し需要が回復したことなどにより、前年からの増収および営業黒字への転換を達成しており、堅調な推移を見せています。


※本記事は、NKKスイッチズ株式会社の有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NKKスイッチズってどんな会社?


同社グループは、産業用スイッチの製造および販売を主力事業としてグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


同社は1953年に日本開閉器工業として設立され、各種スイッチの開発と販売を開始しました。1988年に東京店頭市場へ株式を登録し、2004年にはジャスダック証券取引所へ上場しています。その後、2014年に現在のNKKスイッチズへ商号を変更し、2022年に東京証券取引所のスタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で262名、単体で136名となっています。同社の筆頭株主はビッグブリッヂで、第2位はTNNアドバイザーズ、第3位には金融機関である三井住友銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
ビッグブリッヂ 16.05%
TNNアドバイザーズ 5.13%
三井住友銀行 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大橋智成氏が務めており、取締役における社外取締役の割合は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大橋智成 取締役社長代表取締役 1996年8月同社入社。1999年6月取締役副社長就任。2003年12月代表取締役社長就任。2015年4月執行役員社長就任。より現職。
大橋宏成 取締役副社長 2000年4月同社入社。2007年6月取締役就任。2019年6月COO専務執行役員就任。2024年6月取締役副社長兼COO就任。2025年4月販売本部長兼管理本部長。より現職。
海老沼博行 取締役 2015年4月同社入社。2022年4月執行役員生産本部長兼管理本部長。2022年6月同社取締役就任。2026年4月生産本部長兼技術本部長。より現職。


社外取締役は、芦澤直太郎(アシザワ代表取締役社長)、津留崎貴子(NTTデータCCS常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「欧米」「アジア」の事業を展開しています。

(1) 日本


日本国内において、各種産業用スイッチの製造および販売を行っています。また、鉄道市場をはじめとする特定市場への販売強化やソリューションビジネスの確立に取り組んでおり、顧客ニーズをタイムリーに具現化する体制を整備しています。

顧客に対する製品の販売代金が主な収益源となっています。事業の運営は同社および製品の組立加工を担うNKKスイッチズパイオニクスが行っています。

(2) 欧米


北米およびEMEA(欧州、中東、アフリカ)において、同社製品である産業用スイッチの販売を展開しています。大手カタログディストリビューターとの協業によるネットセールスの拡大などを進めています。

顧客に対する製品販売の代金が主な収益源です。事業の運営は、北米においてNKK Switches of America, Inc.が、EMEAにおいてはNKK Switches Europe GmbHが行っています。

(3) アジア


香港、中国、フィリピンなどのアジア地域において、産業用スイッチの販売および組立加工事業を展開しています。中国の輸出市場や高成長を続けるインド市場における特定市場の開拓などの施策を進めています。

製品販売や組立加工に伴う対価が主な収益源となっています。事業の運営は、NKK Switches Hong Kong Co., Ltd.、恩楷楷(上海)開関有限公司、NKK Switches Mactan, Inc.、および恩楷楷開関(東莞)有限公司が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、一時期は過剰在庫の調整などにより減収や赤字を記録したものの、直近では需要の回復により売上と利益が改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 89.4億円 103.3億円 94.4億円 75.6億円 83.7億円
経常利益 8.8億円 10.4億円 4.6億円 -3.9億円 4.1億円
利益率(%) 9.8% 10.1% 4.9% -5.2% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.5億円 4.1億円 4.1億円 -4.9億円 -0.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上の増加とともに売上総利益および営業利益が大きく改善しており、営業黒字への転換を果たしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 75.6億円 83.7億円
売上総利益 30.0億円 35.4億円
売上総利益率(%) 39.7% 42.3%
営業利益 -4.5億円 2.8億円
営業利益率(%) -6.0% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が14.1億円(構成比43.4%)、福利厚生費が3.6億円(同10.9%)を占めています。また、売上原価は48.3億円であり、売上高に対する構成比は57.7%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、欧米およびアジア市場において売上と利益が堅調に推移しており、同社グループ全体の業績回復を牽引していることがわかります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 29.6億円 33.4億円 -7.2億円 -3.1億円 -9.2%
欧米 36.9億円 39.5億円 -0.3億円 4.0億円 10.3%
アジア 9.1億円 10.9億円 0.7億円 2.8億円 25.4%
連結(合計) 75.6億円 83.7億円 -4.5億円 2.8億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態であるといえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6.5億円 0.3億円
投資CF -6.4億円 -10.5億円
財務CF -1.5億円 -1.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営理念として「Great Small Company」を掲げています。グループ一体となってこれを追求し、顧客の困りごとを顧客目線で解決する「真のパートナー」となることを目指して事業活動に邁進しています。

(2) 企業文化


行動理念として「信頼し、信頼される良い会社」を掲げています。働く社員自身が笑顔になり、顧客と心が通じ合う関係性を構築することで、ビジネスモデルの主軸を「もの」から「こと」へと移行していく組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から開始した3ヵ年の中期経営計画Ⅱにおいて、「顧客価値の向上」を重点テーマとして推進しています。
* 2027年3月期の売上高:90.0億円
* 2027年3月期の営業利益:2.2億円

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として「特定市場の深耕」と「生販一体の供給基盤構築」に注力しています。放送・音響機器市場や特殊車両市場を特定市場と定め、エンジニアが連動する体制を構築するほか、生産と販売が一体となった最適なPSI(Production, Sales and Inventory)手法の導入を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人事方針として「相互の信頼」「全社員が主人公」「自己実現」「旺盛な挑戦心」「高い専門力」を掲げています。階層別研修やOJTを通じた人材育成に加え、長時間労働の抑制や有給休暇取得の促進など、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.7歳 14.8年 6,301,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.5%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 39.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(25.0%以上)、対象社員の月当たり残業時間(10時間以内)、子供・子育てに関する地域貢献活動数(年間2件以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢および地政学的リスク

グローバルに事業を展開し、海外売上および生産比率が高い同社にとって、米中対立の長期化や保護主義的な通商政策の強化、地政学的リスクの高まりなどが経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動による影響

外国通貨で取引される製品の価格は為替相場の変動による影響を直接受けます。また、海外の現地通貨建て財務諸表は円換算されるため、為替の変動が同社グループの競争力や財政状態に影響を与えるリスクがあります。

(3) 部品調達に関するリスク

生産に必要な部品や材料の多くを外部の仕入先から調達しているため、仕入先の納入遅延や製品の欠陥、環境規制などにより調達が困難になる可能性があります。また、各種コストの高騰が長期化した場合も業績に影響する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。