NKKスイッチズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NKKスイッチズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NKKスイッチズは東証スタンダード市場に上場し、産業用スイッチの製造販売を行う企業です。第72期は、世界的な電子部品市場の在庫調整局面が継続した影響を受け、売上高は前期比約20%減の76億円となり、営業損益および最終損益ともに赤字に転落しました。


※本記事は、NKKスイッチズ株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NKKスイッチズってどんな会社?


産業用スイッチの専業メーカーとして、日本、欧米、アジアに製造・販売拠点を展開するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1953年に日本開閉器工業として設立され、各種スイッチの開発を開始しました。1981年に北米へ進出し、1988年には株式を店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2014年に現社名へ変更し、フィリピンや中国に生産拠点を設立するなどグローバル展開を加速させています。

連結従業員数は273名、単体では135名です。筆頭株主は有限会社ビッグブリッヂで、第2位は株式会社TNNアドバイザーズ、第3位は銀行です。上位株主は資産管理会社や金融機関が中心となっています。

氏名 持株比率
有限会社ビッグブリッヂ 16.04%
TNNアドバイザーズ 5.13%
三井住友銀行 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大橋智成氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大橋智成 取締役社長代表取締役 1996年入社。1999年取締役副社長を経て、2003年より代表取締役社長。
大橋宏成 取締役副社長 2000年入社。海外販売・マーケティング部長などを経て、2024年より現職。
海老沼博行 取締役 2015年入社。経営企画部長、執行役員生産本部長などを経て、2022年より現職。


社外取締役は、芦澤直太郎(アシザワ・ファインテック会長)、津留崎貴子(NTTデータCCS取締役執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「欧米」「アジア」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


産業用スイッチの製造および販売を行っています。国内市場向けに加え、海外拠点への供給機能も担っています。
収益は主に顧客への製品販売による対価です。運営は主にNKKスイッチズが行い、製造工程の一部をNKKスイッチズパイオニクスが担当しています。

(2) 欧米


北米および欧州市場において、産業用スイッチの販売を行っています。現地の需要に合わせたマーケティング活動を展開しています。
収益は現地顧客への製品販売による対価です。運営は北米ではNKK Switches of America, Inc.、欧州ではNKK Switches Europe GmbHが行っています。

(3) アジア


アジア地域における産業用スイッチの製造および販売を行っています。中国やフィリピンに生産拠点を持ち、グローバルな供給体制の一翼を担っています。
収益はアジア地域の顧客への製品販売による対価です。運営はNKK Switches Hong Kong Co., Ltd.などが販売を、NKK Switches Mactan, Inc.などが製造を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は第70期をピークに減少傾向にあり、第72期は前期比で大幅な減収となりました。利益面では、第70期には高い利益率を確保していましたが、第71期で利益が半減し、第72期には営業損失および当期純損失を計上する厳しい状況となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 68.3億円 89.4億円 103.3億円 94.4億円 75.6億円
経常利益 0.7億円 8.8億円 10.4億円 4.6億円 -3.9億円
利益率(%) 1.0% 9.8% 10.1% 4.9% -5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 3.5億円 4.1億円 4.1億円 -4.9億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益が縮小しました。一方で販売費及び一般管理費は横ばい圏で推移したため、営業損益が赤字に転落しています。売上原価率は上昇傾向にあり、収益性の低下が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 94.4億円 75.6億円
売上総利益 38.3億円 30.0億円
売上総利益率(%) 40.6% 39.7%
営業利益 3.7億円 -4.5億円
営業利益率(%) 3.9% -6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が15億円(構成比42%)、福利厚生費が4億円(同10%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注加工費などが主な構成要素です。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで減収となり、特に日本と欧米での売上減少が目立ちます。利益面では、日本セグメントが大幅な赤字となり、欧米も赤字に転落しました。アジアセグメントのみ黒字を維持していますが、利益額は縮小しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 37.2億円 29.6億円 -0.0億円 -7.2億円 -24.4%
欧米 47.4億円 36.9億円 2.5億円 -0.3億円 -0.9%
アジア 9.8億円 9.1億円 2.3億円 0.7億円 7.2%
連結(合計) 94.4億円 75.6億円 3.7億円 -4.5億円 -6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

NKKスイッチズの事業運営上、必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動により得られたキャッシュ・フローは短期資金の確保に、設備投資や長期運転資金は自己資金を基本としています。借入金残高はなく、現金及び現金同等物は潤沢に確保されています。研究開発への積極的な投資も行われており、顧客ニーズに応える高付加価値製品の開発を推進しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.3億円 6.5億円
投資CF -10.6億円 -6.4億円
財務CF -1.4億円 -1.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Great Small Company」を経営理念として掲げ、グループ一体となって追求しています。顧客の視点に立ち、困りごとを解決する「真のパートナー」となることを目指して邁進する方針です。

(2) 企業文化


2030年のありたい姿として、「私たちが笑顔となり、お客様の困りごとを顧客目線で解決する真のパートナーとなります。」というグループビジョンを制定しています。社員自身が主役となって笑顔で働き、顧客と心が通じ合う関係を築くことを重視しています。また、ビジネスモデルの主軸を「もの」から「こと」へ移行させようとしています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から始まる3ヵ年の中期経営計画Ⅱにおいて、「顧客価値の向上」を目指しています。「特定市場の深耕」と「生販一体の供給基盤構築」を重点テーマとし、信頼と納期に対する取り組みも継続します。

* 2026年3月期 売上高:83億円
* 2026年3月期 営業利益:黒字確保

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、「特定市場の深耕」として、放送・音響機器市場や特車市場などの成長分野を開拓し、顧客ニーズをタイムリーに具現化する体制を構築します。また、「生販一体の供給基盤構築」により、最適なPSI手法を導入し、商品をタイムリーに供給することを目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「信頼し、信頼される良い会社」を目指し、人的資本においては「女性社員の比率向上」「男性の育児休業取得」「障がい者雇用」「従業員エンゲージメント」などを方針として掲げています。採用においては女性比率の向上を図り、活力ある職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.9歳 15.2年 6,560,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.0%
男女賃金差異(正規雇用) 85.2%
男女賃金差異(非正規) 43.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の比率向上(新卒採用4名中、女性2名採用)、男性の育児休業取得(取得率 0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢および地政学的リスク


同社グループは海外売上比率および海外生産比率がともに6割を超えているため、各国の通商政策や地域紛争等の地政学的問題が発生した場合、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動による影響


製品価格が外国通貨で取引されているため、為替変動の影響を受けやすく、円安・円高の振れ幅によっては経営成績や競争力に影響が出る可能性があります。また、連結財務諸表作成時の円換算においても影響を受けます。

(3) 部品調達について


生産に必要な部品・材料の多くを外部から調達しているため、仕入先の納入遅延や経営悪化、環境規制などにより調達が困難になる可能性があります。また、原材料費等の高騰が長期化した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。