※本記事は、レーザーテック株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. レーザーテックってどんな会社?
光応用技術を用いた最先端の半導体検査・測定装置を開発し、世界的な高シェアと高収益を誇る研究開発型企業です。
■(1) 会社概要
同社は1960年に前身となる有限会社東京ITV研究所として設立され、X線テレビジョンカメラの開発を開始しました。1976年にはLSIフォトマスク欠陥検査装置を世界で初めて開発し、半導体検査分野へ本格参入しました。その後、2013年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2017年には世界初となるEUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置を開発しました。2019年にも世界初のEUVマスク欠陥検査装置を開発するなど、最先端技術で業界をリードしています。
現在の従業員数は連結で1,163名、単体で516名です。大株主の構成は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっており、第3位には個人株主の内山洋氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 18.30% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 7.21% |
| 内山 洋 | 3.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役・社長執行役員は仙洞田哲也氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 仙洞田 哲也 | 代表取締役・社長執行役員営業本部長 | 2008年同社入社。技術本部技術二部長などを経て、営業本部長としてソリューションセールスを統括。2024年7月より現職。 |
| 岡林 理 | 取締役・会長執行役員 | 2001年同社入社。営業本部長、米国・韓国子会社代表などを歴任し、2009年代表取締役社長に就任。2024年7月より現職。 |
| 楠瀬 治彦 | 取締役・副会長執行役員 | 1995年同社入社。技術本部長、マーケティング部長、先端開発室長などを歴任。2021年取締役会長を経て2024年7月より現職。 |
| 田島 敦 | 取締役・常務執行役員技術本部長 | 2004年同社入社。技術本部副本部長などを経て、2024年1月取締役・執行役員兼技術本部長に就任。2024年7月より現職。 |
社外取締役は、三原康司(早稲田大学理工学術院教授)、岩田宜子(ジェイ・ユーラス・アイアール取締役会長)、石黒美幸(長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士)、由利孝(TY Insight代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体関連装置」「その他」「サービス」の事業を展開しています。
■(1) 半導体関連装置・その他
最先端の半導体製造プロセスに不可欠なマスク欠陥検査装置やマスクブランクス検査装置、レーザー顕微鏡などを開発・提供しています。主な顧客は世界の半導体メーカーやマスクブランクスメーカーであり、特にEUV(極端紫外線)を用いた検査装置など、技術的難易度の高い分野で高いシェアを有しています。
収益は、顧客への製品販売に伴う代金として計上されます。ファブライト戦略を採っており、設計・開発は同社(親会社)が行い、製造の多くは協力会社へ委託していますが、最終的な製品の品質保証や販売は同社および米国・アジア等の各販売子会社が担っています。
■(2) サービス
納入した検査・計測システムの安定稼働を支援するための保守・メンテナンス、修理、技術サポートなどを提供しています。世界中に納入された装置のアフターサービスを通じて、顧客の生産性向上や歩留まり改善に貢献しています。
収益は、製品納入後の保守契約料やスポットでの修理・サービス料として顧客から受け取ります。運営は、国内およびアジア地域では同社が、北米・欧州・その他アジア地域では各国の連結子会社(Lasertec U.S.A., Inc.など)が担当し、グローバルなサポート体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに急激な右肩上がりで成長しています。特に売上高は702億円から2,515億円へと約3.6倍に拡大し、経常利益も264億円から1,194億円へと約4.5倍に増加しました。利益率も30%台後半から40%台へと高水準で推移しており、極めて高い収益性を維持しながら規模を拡大しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 702億円 | 904億円 | 1,528億円 | 2,135億円 | 2,515億円 |
| 経常利益 | 264億円 | 336億円 | 637億円 | 820億円 | 1,194億円 |
| 利益率(%) | 37.6% | 37.2% | 41.7% | 38.4% | 47.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 185億円 | 221億円 | 453億円 | 567億円 | 837億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は50%を超え、営業利益率も約49%に達するなど、製造業としては驚異的な高収益体質を実現しています。前期と比較しても増収効果により各利益段階で大幅なプラス成長を記録しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,135億円 | 2,515億円 |
| 売上総利益 | 1,075億円 | 1,483億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.3% | 59.0% |
| 営業利益 | 814億円 | 1,228億円 |
| 営業利益率(%) | 38.1% | 48.8% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が117億円(構成比46.0%)と最大に、次いで給料及び賞与が40億円(同15.9%)を占めています。積極的な研究開発投資と人材への還元を行っていることがわかります。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、他の企業のように事業ごとの利益(セグメント利益)は開示されていません。
製品・サービスごとの売上高を見ると、主力の半導体関連装置が前期比で増加し、全体を牽引しています。また、納入台数の増加に伴いサービス売上も大きく成長しており、ストックビジネスとしての基盤も拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 半導体関連装置 | 1,818億円 | 2,030億円 |
| その他製品 | 28億円 | 56億円 |
| サービス | 290億円 | 430億円 |
| 連結(合計) | 2,135億円 | 2,515億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で稼いだ現金を、設備投資や株主還元(配当支払)に充当しており、財務的に非常に安定した状態です。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 333億円 | 779億円 |
| 投資CF | -36億円 | -24億円 |
| 財務CF | -231億円 | -246億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は46.9%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.7%で市場平均(製造業)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来、「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」を経営理念として掲げています。光応用技術を用いた検査・計測システムを提供し、この理念を堅持し続けることで、世界中の顧客から真っ先に声をかけてもらえる会社を目指しています。
■(2) 企業文化
「世界中のお客さまから何か困ったことがあれば、真っ先に声をかけて頂ける」会社を目指すというビジョンのもと、光技術と先進技術を複合させたソリューションを素早く提供することをミッションとしています。ニッチトップのポジションを獲得した後も、継続的な最先端技術の投入と新たな付加価値の提供に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2025年6月期から2030年6月期までの中期経営計画を策定しています。「圧倒的な開発スピード、高い技術力、顧客との強固な信頼関係の構築により売上最大化とさらなる成長を目指す」を方針としています。
* 営業利益率20%以上の堅持
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的な成長機会を捉えるため、「売上最大化へ向けたブラッシュアップ」と「さらなる成長へ向けた研究開発の推進と体制づくり」を推進しています。具体的には、リードタイム短縮やサービスビジネスの拡大、人材採用の強化、新たなソリューションによる事業領域の拡大などに取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材採用の強化と職場環境の整備」を掲げ、多様な人材の確保と育成に注力しています。研究開発型企業として有能な人材の確保は不可欠であり、業績連動型の競争力ある給与体系や評価制度を整備しています。また、グローバル人材の登用や女性社員の採用・登用、シニア人材の活用なども積極的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 40.1歳 | 8.3年 | 16,808,225円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 45.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 74.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 37.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用者に占める女性の割合(14.0%)、管理職に占める女性社員の割合の目標(5.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場変動による影響
主要顧客である半導体業界は技術革新が速く、短期的には需給バランスの変化で市場規模が大きく変動することがあります。予期せぬ需要縮小による顧客の投資凍結や、急激な需要増への対応遅れによる機会損失が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 研究開発による影響
最先端技術の研究開発を継続し、新製品を早期投入することで高シェアと高利益率を目指していますが、顧客の要求水準や開発スケジュールに応えられない場合、または競合他社が先行した場合には、競争力を失い収益性が低下する可能性があります。
■(3) 重要な人材の確保に関する影響
研究開発型企業として、技術開発部門の有能な人材の確保と育成が成長に不可欠です。必要な人材を採用・育成できない場合や、重要な人材が流出した場合には、製品開発力やサポートの質が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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