鈴木 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鈴木 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。金型、電子部品、自動機器等の製造・販売を行う。2025年6月期は、自動車電装部品や自動機器の需要が堅調に推移し、売上高は333億円(前期比20.2%増)、経常利益は43億円(同14.7%増)の増収増益となった。


※本記事は、株式会社鈴木の有価証券報告書(第56期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鈴木ってどんな会社?


長野県須坂市に本社を置き、精密金型技術を核に電子部品や自動機器を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1933年に鈴木製作所として創業し、鉱石ラジオの部品用金型製作を開始しました。1974年に現在の鈴木へ商号変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2014年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結1,091名、単体495名です。筆頭株主は同社役員が代表を務める株式会社クリンゲルで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
クリンゲル 15.83%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.00%
日本カストディ銀行(信託口) 6.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は鈴木教義氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 教義 取締役社長(代表取締役) 1982年同社入社。企画室長、取締役生産統轄本部長を経て、1991年より現職。
青木 栄二 取締役 1982年同社入社。金型製造部長、執行役員製造本部長などを経て、2021年より取締役常務執行役員製造本部長。
小川 清久 取締役 1993年同社入社。総務部長、執行役員管理本部長などを経て、2023年より取締役執行役員管理本部長兼総務部長。
中島 慶昭 取締役 2001年同社入社。営業部長、執行役員営業本部長を経て、2023年より取締役執行役員営業本部長兼営業部長。
倉島 淳生 取締役 1992年同社入社。営業部長、執行役員部品製造部長などを経て、2024年より取締役執行役員技術開発本部長兼技術開発部長。
本間 浩正 取締役(監査等委員) 1985年同社入社。金型製造部副部長、管理本部経理部長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、日隈久美子(とどろき社会保険労務士法人代表社員)、松本光博(公認会計士・税理士 松本会計事務所代表)、河辺悠介(弁護士法人OAKRYS信州総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金型」「部品」「機械器具」「賃貸」の4つの報告セグメントを展開しています。

**(1) 金型**
精密プレス金型や精密モールド金型を製造し、主に電子機器メーカーや自動車部品メーカー等に提供しています。
金型製品の販売により対価を得ています。運営は主に同社が行い、海外では鈴木東新電子(中山)有限公司が製造・販売を担っています。

**(2) 部品**
コネクタコンタクト、コネクタハウジング、自動車電装部品などを製造し、住友電装等の顧客へ供給しています。
製品の販売代金や加工賃を収益源としています。運営は同社のほか、S&Sコンポーネンツ、鈴木東新電子(中山)有限公司、PT.SUGINDO INTERNATIONALなどが担当しています。

**(3) 機械器具**
車載関連装置、半導体関連装置、専用機、医療器具の製造・販売を行っています。
装置の販売代金や医療器具の組立加工賃などを収益としています。運営は同社に加え、S&Sアドバンストテクノロジーズ、エスメディカルが製造・販売を行っています。

**(4) 賃貸**
同社が保有する不動産の賃貸や、太陽光発電による売電事業を行っています。
不動産賃貸料および電力会社への売電収入を収益源としています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に2025年6月期は333億円まで拡大しました。利益面でも経常利益は30億円台から40億円台へと推移し、利益率は10%以上の高い水準を維持しています。当期純利益も安定して確保しており、堅調な成長が続いています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 327億円 261億円 264億円 277億円 333億円
経常利益 34億円 34億円 32億円 37億円 42億円
利益率(%) 10.3% 12.9% 12.3% 13.2% 12.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 21億円 20億円 23億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しました。売上総利益率は20%台を維持しています。営業利益率も前期の12.2%から当期は12.9%へと上昇しており、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 277億円 333億円
売上総利益 57億円 69億円
売上総利益率(%) 20.4% 20.8%
営業利益 34億円 43億円
営業利益率(%) 12.2% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が8億円(構成比32%)、運搬費が4億円(同15%)、研究開発費が3億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


部品事業はスマートフォン関連や車載向けが好調で大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。機械器具事業も需要が堅調で増収増益でした。一方、金型事業は電子機器向け等の受注が軟調で減収減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
金型 16億円 13億円 6億円 3億円 20.3%
部品 204億円 256億円 32億円 47億円 18.4%
機械器具 57億円 64億円 7億円 7億円 11.5%
賃貸 0.1億円 0.1億円 1億円 1億円 1322.0%
調整額 - - -12億円 -15億円 -
連結(合計) 277億円 333億円 34億円 43億円 12.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業の成長を支えています。一方で、将来の成長に向けた設備投資や事業拡大のために、投資活動では資金を使用しています。また、財務活動では、外部からの資金調達や返済を通じて、事業運営に必要な資金を確保しています。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 54億円 55億円
投資CF -25億円 -31億円
財務CF -13億円 -19億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「不への挑戦」を経営理念に掲げ、長年培った金型技術をベースに徹底的な精度追求と高い技術力による製品提供を行っています。常に最先端の技術構築と独自の技術融合、革新的な価値の注入を通じて、顧客に深い満足を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


「まず実践ありき」「技術を実践する」「品質を実践する」「顧客に行動する」「社会に行動する」「社員に豊かさを」といった行動指針を掲げています。また、顧客第一主義に徹し最高の品質を提供することや、独創的な先進技術の追求、活力ある企業文化の創造を経営方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、サステナビリティに関する指標として、2025年6月期に向けた以下の目標を掲げて推進しました。

* 温室効果ガスの原単位:2019年6月期比で50%削減
* EV/HV関連製品の売上高:2021年6月期比で230%増加(実績は275%増)

(4) 成長戦略と重点施策


「独自の技術融合」と「革新的な生産合理化の提案」により成長するR&D企業を目指し、最先端技術の追求や新製品の事業化に注力しています。また、具体的な事業成長戦略として、以下の3点を重点的に推進しています。

* 自動車部品事業の拡大(電池関連部品、安全・快適機能関連部品等)
* 医療組立事業の拡大(自動化促進による収益拡大)
* 自動機器事業の拡大(自動車関連、医療関連等)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人材の活躍」「多様な働き方」「人材育成」「安全で働きやすい環境」を戦略とし、DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)を推進しています。性別や国籍等を問わない適材適所の配置や、女性管理職への登用推進、次世代人材の育成、匠の技術の継承に力を注いでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.1歳 18.2年 6,023,854円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 70.6%
男女賃金差異(正規雇用) 70.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員採用に占める女性比率(23.8%)、男性育児休暇取得率(国内グループ合算)(93.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の販売先への依存について

売上高の多くを電子部品業界に依存しており、特に住友電装への売上高依存度が高い状況にあります。同社の購買方針変更や部品構成の変更などにより部品供給が大きく減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格および調達について

部品事業の主な原材料である伸銅製品の価格は国際市況に連動するため、価格上昇により利益率が低下するリスクがあります。また、市場環境や需給状況による調達不足が発生した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。

(3) 電子部品業界について

電子部品業界は市況変動の影響を受けやすく、好不況の波が大きい傾向にあります。経済活動を急激に悪化させる事象や想定外の市場変動が発生した場合、同社グループの業績および事業展開に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。