アクモス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アクモス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所 スタンダード市場に上場しており、ITソリューション、ITインフラ、ITサービスの3事業を展開しています。直近の業績は売上高64億円で前期比3.1%の増収となりましたが、営業利益は5.8億円で同11.6%の減益となり、増収減益で着地しました。


※本記事は、アクモス株式会社 の有価証券報告書(第34期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アクモスってどんな会社?

ITソリューション、インフラ、サービスを3本柱とする独立系IT企業で、官公庁や大手企業を顧客に持ちます。

(1) 会社概要

1991年に株式会社アイ・エフ・シーとして設立され、1996年に店頭市場(現スタンダード市場)に登録しました。2000年に純粋持株会社化し、M&Aを通じて事業を拡大しています。2022年の市場区分見直しでスタンダード市場へ移行し、直近では2024年にプライムシステムデザインを子会社化しています。

連結従業員数は490名、単体では308名です。筆頭株主は資産管理事業を行うコンセーユ・ティ・アイで、第2位は事業会社の光通信、第3位はアクモスグループ社員持株会です。筆頭株主は同社会長である飯島氏が代表を務める関連会社であり、創業家および関連会社による安定的な保有が見られます。

氏名 持株比率
コンセーユ・ティ・アイ 23.98%
光通信 7.45%
アクモスグループ社員持株会 3.79%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼CEOは飯島秀幸氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
飯島 秀幸 代表取締役会長兼CEO 1980年千代田国際経営事務所(現ASロカス)設立。1991年同社前身設立、社長就任。1996年会長、1999年社長を経て2016年より現職。
清川 明宏 代表取締役社長兼COO 1981年茨城ソフトウェア開発入社。2008年同社執行役員、2014年管理本部長、2016年業務統括執行役員を経て同年より現職。
深作 耕一 取締役副社長兼CTO 1983年茨城ソフトウェア開発入社。2008年同社執行役員、2015年営業本部長、2016年技術本部長等を歴任し、2022年より現職。
金子 登志雄 取締役(監査等委員) 1991年同社設立時取締役。1994年監査役、1996年金子司法書士事務所開設(現所長)。2016年より現職。


社外取締役は、小竹由紀(元ライオンCSR推進部長)、西山達男(元ナノキャリア取締役CFO)、板垣雄士(板垣雄士公認会計士事務所所長)、松尾恭志(元KDDI理事)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ITソリューション事業」、「ITインフラ事業」および「ITサービス事業」を展開しています。

(1) ITソリューション事業

SI・ソフトウェア開発、消防防災ソリューション、GISソリューションなどを提供しています。特定の総合電機メーカーや官公庁、自治体などが主要な顧客です。消防通信指令システムや車検用納税確認支援システムなどの開発を行っています。

収益は、顧客からのシステム開発受託費やソリューション提供の対価として得ています。運営は主にアクモス、ASロカス、プライムシステムデザインが行っています。

(2) ITインフラ事業

IT基盤・ネットワーク構築、クラウド関連サービスの提供を行っています。官公庁や民間企業向けにネットワーク基盤のリプレースやグループウェアの導入支援、標的型攻撃メール対応訓練ソリューションなどを展開しています。

収益は、ネットワーク構築案件の請負代金やクラウドサービスの利用料、製品販売代金などから得ています。運営は主にアクモスが行っています。

(3) ITサービス事業

第三者保守サービス、病院情報システム維持管理、サーベイ・アンケート、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)などを提供しています。レガシーシステムの延命支援や医療機関でのシステム運用支援などを行います。

収益は、保守契約に基づくサービス料、運用支援の業務委託費、BPOサービスの対価などから得ています。運営は主にアクモスメディカルズ、フィールドワン、ジイズスタッフが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では2023年6月期をピークに、直近2期間は減益となっています。これは人財投資の強化による人件費の増加などが影響しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 45億円 46億円 59億円 62億円 64億円
経常利益 5.0億円 4.7億円 6.8億円 6.6億円 5.8億円
利益率(%) 11.1% 10.3% 11.5% 10.6% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.6億円 3.0億円 4.2億円 4.2億円 3.9億円

(2) 損益計算書

売上高は増加しましたが、売上原価および販管費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は35.9%で横ばいを維持していますが、積極的な人財投資やM&A関連の費用増加が営業利益率の低下につながっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 62億円 64億円
売上総利益 22億円 23億円
売上総利益率(%) 35.9% 35.9%
営業利益 6.6億円 5.8億円
営業利益率(%) 10.6% 9.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.8億円(構成比33.7%)を占めています。

(3) セグメント収益

全セグメントで増収となりましたが、利益面では全セグメントで減益となりました。ITソリューション事業は新規子会社の寄与で増収となるも、利益は減少しました。ITインフラ事業、ITサービス事業も増収減益となり、全体としてコスト増の影響を受けています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
ITソリューション事業 39億円 40億円 4.2億円 3.7億円 9.1%
ITインフラ事業 10億円 10億円 1.8億円 1.6億円 15.6%
ITサービス事業 14億円 14億円 1.0億円 1.0億円 7.1%
その他 - - - - -
調整額 △0.2億円 △0.4億円 △0.5億円 △0.5億円 -
連結(合計) 62億円 64億円 6.6億円 5.8億円 9.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金を借入金の返済や投資に充てている健全型と言えます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 3.5億円 2.6億円
投資CF △2.3億円 △0.1億円
財務CF △2.0億円 △3.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、社是「挑戦する心」を掲げ、事業を通じて社会の進歩・発展に貢献することを使命としています。企業理念として、仕事を通して心の豊かさと技術の向上を追求し、顧客に感動してもらえるプロフェッショナルなサービスを提供することで、持続的な成長を実現することを目指しています。

(2) 企業文化

社是と企業理念に従った「アクモスフィロソフィー」を制定し、経営の原則、人間力を磨く、行動の指針を定めています。また、全員参加型のマネジメント体制として部門別採算制度「ウィングシステム」を導入し、理念体系と経営の両軸として事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標

「中期経営計画2028」を策定し、最終年度である2028年6月期にグループ売上高100億円の達成を目指しています。また、資本コストと株価を意識した経営を推進し、ROE15%以上、時価総額100億円を目標としています。
* 売上高: 100億円
* 営業利益: 10億円
* ROE: 15.9%

(4) 成長戦略と重点施策

「Business(事業)×Members(人財)×Value(付加価値)」の3分野での挑戦を拡大します。具体的には、消防防災事業の全国展開やネットワーク事業の拡大等の成長投資、既存事業の高収益化、多様な人財の確保と育成、製品・サービスの拡充、営業力の強化集中を推進します。また、M&Aによる新規子会社の獲得も目指しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「挑戦する心を育む」をテーマに、事業戦略と連動した社員の自律的な成長支援や、物心両面の豊かさ(Well-being)を支える環境整備に取り組んでいます。多様な人財の確保、AIに対応できる社員の育成、新入社員への手厚い教育プログラム、管理職研修などを通じて、組織力の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 36.3歳 11.8年 4,887,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.7%
男女賃金差異(正規) 81.8%
男女賃金差異(非正規) 76.3%


※女性管理職比率については、目標として開示していないため記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の採用比率(11.1%)、正規雇用女性社員の割合(15.2%)、定年後(65歳未満)再雇用の割合(100%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変動

主要事業は、景気動向等の経済環境の変化による顧客企業の情報化投資の変動の影響を受けやすい傾向があります。顧客企業の景況感の変化が、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定顧客への売上依存

ITソリューション事業においては、特定の総合電機メーカー及びそのグループ企業への売上が集中しています。顧客企業の業績変動や契約内容の変更などが生じた場合、同社グループの売上高が変動するリスクがあります。

(3) 人財の確保・育成

事業の成長には優秀なIT技術者の確保が不可欠ですが、人材獲得競争の激化などにより、計画通りの採用や育成が困難となった場合、受注や業務遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) プロジェクト管理

システムの受託開発において、受注時の想定以上に工数が発生した場合や、成果物の瑕疵により追加費用が発生した場合、不採算案件となり業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。