プレシジョン・システム・サイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

プレシジョン・システム・サイエンス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、遺伝子検査装置や試薬などの開発・製造・販売を主力としています。業界大手のグローバル企業へのODM供給を中心に展開しています。直近の決算では、装置販売の好調により売上高は前期比で増収となり、営業損失および経常損失は縮小し、赤字幅が改善しました。


※本記事は、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. プレシジョン・システム・サイエンスってどんな会社?


同社は、バイオ関連業界において、ラボ(研究室)の自動化装置や臨床検査用の各種装置、試薬・消耗品を開発・製造する企業です。

(1) 会社概要


1985年に理化学機器の保守メンテナンスを目的として設立されました。1995年に磁性体粒子法を利用した独自の特許技術「マグトレーション・テクノロジー」を開発し、核酸自動抽出装置等の製品化に成功しました。2001年には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン(現グロース市場)へ株式を上場。その後、欧米に子会社を設立し、グローバル展開を推進しています。2014年には秋田県大館市に試薬製造拠点を新設し、2025年には連結子会社エヌピーエスから試薬製造事業等を承継するなど、生産体制の再編を進めています。

2025年6月30日時点で、従業員数は連結151名、単体89名です。筆頭株主は同社役員の田島秀二氏で、第2位は資産管理業務を行う野村證券、第3位は有限会社ユニテックとなっています。

氏名 持株比率
田島 秀二 16.94%
野村證券 5.86%
有限会社ユニテック 4.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は杉山悠氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
杉山 悠 代表取締役社長 2015年同社入社。営業部事業戦略室長、営業統括部長を経て、2023年執行役員。2024年9月より現職。
狩長 亮二 取締役 2005年同社入社。研究開発部門を経て、栄研化学、藤森工業での勤務を経験。2024年9月より現職。
木村 進 取締役 1996年同社入社。生産管理、技術開発部門を経て、技術統括部長を歴任。2024年9月より現職。


社外取締役は、荻原大輔(公認会計士・税理士)、田村尚之(元ローランド顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「装置」「試薬・消耗品」「メンテナンス関連」「受託製造・受託検査」の各区分で事業を展開しています。

装置

核酸自動抽出装置を中心としたラボ(研究室)向けの各種自動化装置や、遺伝子解析を利用した臨床診断分野向けの装置を販売しています。
これらの製品は、業界大手のグローバル企業との提携によるODM(Original Design Manufacturing)販売を中心に展開されており、相手先ブランドでの販売が主軸です。運営は主に同社が行っています。

試薬・消耗品

同社の装置で使用される核酸抽出やPCR検査等に用いる試薬、および反応容器などの専用プラスチック消耗品を販売しています。
装置の販売拡大に伴い、継続的に消費される試薬や消耗品の需要が発生するビジネスモデルです。運営は同社および連結子会社が行っています。

メンテナンス関連

販売した装置のメンテナンスサービスや、スペアパーツ(交換部品)の販売を行っています。
主要なODM先に対しては、ODM先自身がメンテナンス対応を行うケースが多いものの、スペアパーツについては同社から購入する契約となっており、安定的な収益源の一つとなっています。運営は主に同社が行っています。

受託製造・受託検査

製造工場である連結子会社エヌピーエス株式会社が、外部からの受託製造や受託検査を行っています。
同社グループ以外の顧客からの製造受託や検査業務を通じて、製造設備の稼働率向上と収益確保を図っています。運営はエヌピーエス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は変動しつつも当期は回復傾向にあります。利益面では、前期に大きく落ち込んだものの、当期は赤字幅が縮小しました。特に当期は装置販売の好調により増収となりましたが、依然として損失計上が続いています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 93億円 74億円 53億円 40億円 47億円
経常利益 7.7億円 1.8億円 -11.4億円 -10.1億円 -1.4億円
利益率(%) 8.3% 2.4% -21.6% -25.4% -3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 0.5億円 -13.2億円 -11.2億円 -2.5億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善していますが、営業段階での損失が続いています。販管費は減少傾向にあり、コストコントロールが進んでいます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 40億円 47億円
売上総利益 10億円 14億円
売上総利益率(%) 23.9% 29.4%
営業利益 -10億円 -1.2億円
営業利益率(%) -24.0% -2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.7億円(構成比25%)、支払手数料が1.6億円(同11%)を占めています。売上原価については、材料費などの製造コストが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


装置販売の増加に伴い、装置区分およびメンテナンス関連区分が大きく伸長しました。試薬・消耗品も堅調に推移しています。一方、受託製造・受託検査は減少しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
装置 19億円 22億円
試薬・消耗品 14億円 15億円
メンテナンス関連 5億円 7億円
受託製造・受託検査 2億円 2億円
連結(合計) 40億円 47億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主にODM契約に基づく製品供給により生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、研究開発費の支出等で変動します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や調達によって影響を受けます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -1.1億円 1.0億円
投資CF 21億円 -0.1億円
財務CF -25億円 -9.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「独自の基盤技術を継続的に創出し、誰にでも使いやすく高精度な検査システムを提供することで、病気の早期発見と予防に貢献し、すべての人々が健康で自分らしく生きられる社会の実現を目指すこと」を企業理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は「顧客の信頼に応える高品質製品の安定供給」と「高付加価値製品の迅速な市場投入」を重点方針としています。市場環境の変化に対応しながら品質向上と保証を徹底し、顧客ニーズを的確に把握して開発目標に資源を最適配分することで、確実な事業成果へ結びつける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な目標として、2025年6月期から2027年6月期までの3年間について、1年度ごとに2.5億円から6億円程度の売上増加を目指しています。また、2027年6月期末時点での数値目標として以下を掲げています。

* 連結営業利益:約4億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は事業運営体制を抜本的に見直し、2027年6月期を目途に財務基盤の安定化と持続的な企業価値向上を目指しています。具体的には、独自プラットフォームおよび関連試薬・消耗品の売上増加、大館試薬センターの稼働率向上による粗利率改善、社員一人当たりの付加価値向上による生産性向上、そして黒字化による復配の実行を課題として掲げています。

* 売上増加:2024年6月期基準でCAGR8%以上の成長
* 粗利率改善:売上総利益率35%
* 生産性向上:営業利益率5%以上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材の確保、育成、登用が企業価値向上につながると考え、人材マネジメントポリシーを定めています。採用では理念への共感や自律的な成長意欲を重視し、育成では専門性向上とリーダーシップ発揮を支援します。また、役割・責任に応じた処遇や、成果だけでなくスキル向上への努力を評価する報酬・評価制度を運用しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 46.5歳 9.3年 6,011,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 100.0%


※同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ODM事業への依存について

同社グループの売上高の約76%(2025年6月期)は、ELITechGroup等の特定のODM販売先に依存しています。そのため、これらの販売先の売上状況が同社の業績に大きく影響する可能性があります。同社はELITechGroupと中長期的な供給契約を締結し、安定的な受注確保に努めています。

(2) 自社ブランド製品事業について

自社ブランド製品の売上依存度は24%弱となっており、国内外の代理店を通じて販売されています。現地の代理店の経営状況や販売戦略の変更が同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。同社は有力な代理店との提携強化や販売見込みの精度向上により、売上の安定化を図っています。

(3) 人材確保について

ヘルスケア企業として専門的な知識・技能を持つ人材の確保が必須ですが、人材確保が困難な場合や流出した場合、事業戦略や業績に影響が出る可能性があります。同社は人材マネジメントポリシーの実践を通じて、優秀な人材の確保と定着に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。