※本記事は、株式会社エーワン精密 の有価証券報告書(2025年6月期、2024年7月1日 ~ 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
エーワン精密は、小型自動旋盤用コレットチャックやガイドブッシュの製造・販売、各種切削工具の再研磨加工受託、特殊切削工具の製造・販売、および自動旋盤用カムの製造・販売を手掛けています。これらの事業を通じて、工作機械に不可欠な精密工具を提供しています。
単体従業員数は109名です。セグメントはコレットチャック部門、切削工具部門、自動旋盤用カム部門の3つです。
エーワン精密は、コレットチャック、切削工具、自動旋盤用カムの製造・販売を本体で一貫して行っています。顧客からの受注生産体制をとり、消耗品である機械工具のリピートオーダーにより継続的な事業展開を図っています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
エーワン精密は、製造業の基盤を支える機械工具の製作・再研磨を手がける企業です。顧客ニーズに応える高品質かつ短納期での製品提供を重視しており、その事業を支える人材の育成と働きやすい環境づくりに力を入れています。社員の成長を後押しする制度や、成果を適切に評価する報酬体系を通じて、持続的な企業価値向上を目指しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
エーワン精密では、平均勤続年数が12.8年と比較的長く、平均年齢も41.54歳であることから、社員が長期的にキャリアを築きやすい環境がうかがえます。幅広い年代の社員が在籍し、相互に補完し合いながら業務効率性を追求する体制が整っているようです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,130,000円 |
| 平均勤続年数 | 12.8年 |
| 平均年齢 | 41.54歳 |
| 単体従業員数 | 109人 |
| 連結従業員数 | - |
エーワン精密は、従業員の退職給付制度として、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両制度を採用しています。この制度は国内の従業員に適用されています。また、退職一時金制度も設けていますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
エーワン精密は、事業活動の持続と企業価値向上において人的資本を最も重要な要素と位置づけています。社員一人ひとりの質的向上を目指し、人材育成と社内環境整備に積極的に取り組んでいます。
人事制度においては、半年ごとに設定される個人の業務目標に対する新たな評価基準を設け、成果を多角的に評価し、賞与や昇給に反映させています。顧客からの要望に応えるための業務目標と個人目標を総合的に評価することで、処遇の改善を図っています。また、社員が自社株式を保有することで株主としての意識を高め、企業価値向上への貢献を促し、給与・賞与に加え株式配当や株価上昇による利益も享受できるような報酬制度を導入しています。
人材育成では、経営理念と行動指針の徹底を通じて社員の意識を統一し、個々の能力に応じたレベルアップを支援しています。中途採用を積極的に行い、性別や国籍を問わず多様な経歴・スキルを持つ人材を採用しています。社内環境整備としては、高精度・高効率化設備の導入を進め、世代間の技術・知識習得を補佐するための役割分担や権限付与、社外講習や技能実地訓練なども実施しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく公表義務の対象項目として選択しておらず、公表されていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性の割合 | 2.9% |
人材育成・社内環境整備の目標
同社が独自に開示している人材育成・社内環境整備に関する目標です。
| 指標 | 2025年 | 2028年目標 |
|---|---|---|
| 社員に占める女性比率 | 31.2% | 35% |
| 中堅・若手リーダーの育成 | 5名 | 6名 |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
エーワン精密は、小型自動旋盤などで使用される精密機械工具の製造、販売、再研磨を主要な事業としています。コレットチャック、切削工具、自動旋盤用カムの3つのセグメントを通じて、多様な産業の生産活動を支えています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社は、主に小型自動旋盤等で使用される精密機械工具の製造・販売・再研磨を手掛けています。コレットチャック、切削工具、自動旋盤用カムの3つの事業セグメントを展開しており、それぞれの分野で専門性の高い製品とサービスを提供しています。同社が扱う機械工具は消耗品であるため、リピートオーダーによる継続的な受注が収益モデルの特徴です。
顧客が必要となった際に注文を受け、それに合わせて製作や再研磨を行う受注生産体制をとっています。営業活動では、事業展開や技術的な優位性を広く知らしめることに主眼を置き、新規取引先の開拓と既存顧客の深掘りに注力しています。当事業年度の輸出販売高は総販売実績の9.6%を占めており、アジア地域を中心に海外展開も行っています。
セグメント別の売上高を見ると、コレットチャック部門が最も大きく、次いで切削工具部門が続きます。自動旋盤用カム部門は比較的小規模な事業となっています。当期はコレットチャック部門と自動旋盤用カム部門で売上高が前期から増加した一方、切削工具部門では減少となりました。
コレットチャック部門
当部門は、主にCNC自動旋盤や専用機で使用されるコレットチャック・ガイドブッシュの製造、販売を行っています。これらの工具は、棒状の材料を掴んで回転させたり、振れを抑えたりするために使用され、繰り返し精度と耐久性が特に求められます。
収益は、加工に適した工具の設計・製作と提供から得ています。当期は自動車関連が比較的好調であったものの、設備部品や工作機械などの受注に変動があり、売上高は前期からわずかに増加しました。
切削工具部門
当部門は、主にマシニングセンターで使用される市販切削工具の再研磨と、顧客仕様の別注切削工具の製作・販売、再研磨を行っています。新品工具メーカーと同等の高精度研削盤を導入し、メーカーでの再研磨と比較して価格を抑え、納期を短縮して顧客に提供しています。
収益は、市販切削工具の再研磨サービスと、顧客企業の加工効率化や工程短縮に寄与する別注切削工具の製作・販売・再研磨から得ています。当期は国内製造業の設備稼働率低下の影響を受け、売上高は前期から減少しました。
自動旋盤用カム部門
当部門は、カム式自動旋盤のカムの製造・販売を行っています。カム式自動旋盤は、カムの形状に合わせて材料や切削工具が制御され、同じ部品を大量生産するのに適した機械的な仕組みを持っています。
収益は、国内のカム式自動旋盤ユーザーへのカムの供給から得ています。当期は量産部品の減少があったものの、値上げが寄与したことにより、売上高は前期から増加しました。
| セグメント | 売上高(2024年6月期) | 売上高(2025年6月期) |
|---|---|---|
| コレットチャック部門 | 11.0億円 | 11.1億円 |
| 切削工具部門 | 4.8億円 | 4.7億円 |
| 自動旋盤用カム部門 | 13百万円 | 14百万円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社の当事業年度の売上高は前期からわずかに減少しました。営業利益と経常利益も前期から減少する結果となっています。
当期純利益については、前期は利益を計上していましたが、当期は損失となりました。これは、切削工具部門における固定資産の減損を特別損失として計上したことが主な要因となっています。これらの業績変動は、世界経済の先行き不透明感や国内製造業の低調な動きが影響していると説明されています。
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社の単体従業員数は109名です。従業員の平均年齢は41.54歳、平均勤続年数は12.80年となっています。平均年間給与は5,130千円です。これらの数値は、同社の従業員構成や報酬水準の一端を示す情報となります。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社は、本業で安定的に資金を生み出し、財務基盤の厚みも維持しています。一方で、事業環境の変化や特定の事業部門における課題も抱えています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社は非常に高い自己資本比率を維持しており、強固な財務基盤を示しています。しかし、当期は当期純損失を計上したことでROEがマイナスに転じており、収益性の改善が課題となっています。手元資金は前期から減少傾向にあります。
| 指標 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 91.5% | 92.9% |
| ROE(自己資本利益率) | 1.5% | △3.0% |
| 現金及び預金等 | 679百万円 | 433百万円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社の営業キャッシュフローはプラスを維持しており、本業で安定的に資金を生み出している状況です。当期は減損損失や減価償却費、株式報酬費用などにより資金が増加した一方で、税引前当期純損失や法人税等の支払額などにより資金が減少しました。
投資キャッシュフローは、定期預金の純増減額により資金が増加したものの、投資有価証券や有形固定資産の取得による支出などがありました。財務キャッシュフローは、配当金の支払額やリース負債の返済による支出により資金が減少しています。フリーキャッシュフローはプラスであり、事業活動を通じて得た資金で投資を賄い、なお余剰資金を生み出している状況を示しています。この資金の流れは、同社が財務的な健全性を保ちながら事業を継続していることを示しています。
| 項目 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 342百万円 | 151百万円 |
| 投資CF | △139百万円 | 105百万円 |
| 財務CF | △500百万円 | △502百万円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 204百万円 | 256百万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社の事業は、製造業の切削加工で使用される消耗工具の製造・販売・研磨が中心であり、顧客企業の機械稼働率や景気動向に受注が左右される傾向があります。特に自動旋盤用カム部門では、使用されるカム式自動旋盤の生産終了に伴い受注が年々減少しており、部門損益は赤字傾向が継続しています。
また、輸出販売高が総販売実績の約1割を占めており、海外経済情勢や地政学リスク、貿易関税問題などが業績に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社は切削工具部門において設備投資を強化してきましたが、営業体制の強化が計画通りに進まなかったことが部門損益のマイナス要因の一つとなっています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
エーワン精密は、ものづくりの世界に不可欠な機械工具の提供を通じて、顧客のニーズに応え、社会に貢献することを目指しています。精密部品加工のニッチ分野に特化し、高い技術力と生産効率で安定した事業基盤を築いている会社です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社の経営方針は、ものづくりに必要な機械工具を適時提供し、適正な利潤を上げ、株主へ還元を続けることです。精密部品加工に用いられる多品種少量生産の工具に特化し、顧客の要求に細かく対応することで受注を確保しています。
同社は、高品質な製品を低コストかつ短納期で提供し、ものづくりに不可欠な工具を安定供給することで製造業に貢献することを目指しています。世の中に必要とされる工具を提供することで適正な利潤を追求し、株主に還元することを経営理念としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社では、顧客からの受注を最優先し、各部門が迅速かつ正確な納品に全力を注ぐことを行動指針としています。必要なことは率先して実行し、非効率なことは排除する姿勢が求められます。
社員一人ひとりが効率性を高めるために考え行動し、周囲に配慮し環境負荷の大きいことはしないという価値観を共有しています。経営理念と行動指針を徹底することで、社員の意識を統一し、個々の能力向上を図ることを重視しています。
人材育成においては、経営理念の認知を徹底し、行動指針を業務活動の判断・行動基準としています。中途採用を通じて多様な経歴やスキルを持つ人材を積極的に採用し、性別や国籍を問わず必要な人材を確保する方針です。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社は、顧客からの工具の仕様・形状・精度に関する要求の高度化に対応することを優先的な事業課題としています。これに対応するため、新規の高精度設備の導入や既存設備のメンテナンス、加工精度向上の探求に取り組んでいます。
また、加工者のスキルアップや人材育成、多岐にわたる顧客ニーズを充足しつつ短納期対応するための生産効率化も重要な課題です。安定した財務基盤を活用し、機動的な設備投資と人材の確保・育成を進める方針です。
人材育成・社内環境整備の目標として、社員に占める女性比率を高め、活躍の場を拡大することを目指しています。さらに、中堅・若手リーダーの育成にも注力し、社内全体のレベルアップを図ることを重点テーマとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
エーワン精密は監査等委員会設置会社であり、監査等委員である取締役が業務執行取締役の意思決定と職務執行の監督を行っています。この体制により、経営の透明性と公正性の確保を目指しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
エーワン精密の筆頭株主は致知であり、同社の旧社名である株式会社エーワン精密(現 致知)に入社した役員の経歴からも、同社との歴史的なつながりが見られます。この資本構成は、同社の経営基盤を支える重要な要素となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 致知 | 25.27% |
| 日本カストディ銀行 (信託口) | 4.05% |
| 肥田 亘 | 1.99% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性6名・女性2名)で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は林哲也氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林 哲也 | 代表取締役社長 | 1989年野村證券株式会社に入社後、2004年に同社へ入社。西日本営業所長を経て、2005年取締役就任、2007年より代表取締役社長を務め現職。 |
| 金丸 信行 | 常務取締役切削工具部門担当 | 1988年株式会社エーワン精密(現 致知)に入社後、1990年に同社へ入社。切削工具部門リーダーを経て、2007年取締役、2011年より常務取締役切削工具部門担当を務め現職。 |
| 中澤 正和 | 取締役 工場長コレットチャック部門担当 | 1990年株式会社エーワン精密(現 致知)に入社後、同年同社へ入社。コレットチャック部門工程リーダー、工場長を経て、2024年より取締役工場長コレットチャック部門担当を務め現職。 |
| 松本 亜紀子 | 取締役管理部門統括 | 2006年同社に入社後、管理グループ部門リーダー、管理部門統括を経て、2024年より取締役管理部門統括を務め現職。 |
社外取締役は、Jason Orlando Bellamy氏(ベラミー代表取締役社長)、小林伸夫氏(サンコウ総合設備代表取締役・監査等委員長)、稲垣奈津子氏(稲垣法律会計事務所を開所・監査等委員)、竹内昭夫氏(竹内昭夫法律事務所を開所・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、監査等委員である取締役が業務執行取締役の職務執行を監査・監督しています。社外取締役は、経営への助言や業務適正性の監督を通じて、ガバナンス強化に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
エーワン精密の役員報酬は、取締役の職務執行の動機付けと企業価値向上を目的として設計されています。報酬は固定報酬、業績連動報酬、非金銭報酬(株式報酬)で構成されており、それぞれの職責と貢献度に応じて決定されています。基本報酬が約60%、業績連動報酬が約10%、非金銭報酬が約30%の割合を目安としています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 5名 | 68百万円 | 13.5百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 13百万円 | 3.2百万円 |
なお、取締役の報酬等の総額には、使用人兼務役員の使用人部分給与は含まれていません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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