キングジム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キングジム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(プライム市場)に上場しており、ファイルや「テプラ」等の文具事務用品およびインテリア雑貨等のライフスタイル用品事業を展開しています。2025年6月期の業績は、売上高が微増し、経常利益は大幅な増益となりました。最終損益も黒字転換を果たしています。


※本記事は、株式会社キングジム の有価証券報告書(第77期、自 2024年6月21日 至 2025年6月20日、2025年9月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キングジムってどんな会社?


文具事務用品とライフスタイル用品の企画・製造販売を手掛け、「テプラ」や「キングファイル」等の独創的な商品で知られる企業です。

(1) 会社概要


1927年に名鑑堂として創業し、1948年に株式会社へ改組、1961年に現社名へ変更しました。2001年に株式上場を果たし、主力商品であるファイルやラベルライター「テプラ」等の開発・販売を行っています。近年では2021年にライフオンプロダクツを子会社化するなど、ライフスタイル分野への事業拡大を進めています。

連結従業員数は1,738名(単体366名)です。大株主は、中小企業の育成支援を行う東京中小企業投資育成が筆頭株主であり、次いで資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、金融機関の三井住友銀行と続きます。

氏名 持株比率
東京中小企業投資育成 7.61%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.38%
三井住友銀行 4.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性6名、計13名で構成され、女性役員比率は46.2%です。代表取締役社長 社長執行役員 兼 CEO 兼 開発本部担当は木村美代子氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
木村 美代子 代表取締役社長 社長執行役員 兼 CEO 兼 開発本部担当 プラス入社後、アスクル取締役CMO等を経て、2022年同社取締役。2024年より現職。
宮本 彰 取締役会長 1977年同社入社。常務、専務を経て1992年代表取締役社長。2024年より現職。
萩田 直道 取締役専務執行役員構造改革担当兼 営業推進本部担当兼 営業戦略本部担当 1983年同社入社。経営企画室長、取締役、常務、専務等を経て2025年より現職。
原田 伸一 取締役専務執行役員管理本部長兼 CFO兼 海外事業本部長兼 海外販売系子会社担当 東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。ドイツ総支配人等を経て2014年同社入社。2023年より現職。
亀田 登信 取締役常務執行役員広報・IR部担当兼 EC事業部担当 兼 品質管理部担当 1985年同社入社。電子文具開発部長、取締役、常務等を経て2024年より現職。


社外取締役は、垣内惠子(弁護士)、廣川克也(ファンドマネージャー)、鈴木貴子(エステー会長)、平木いくみ(大学教授)、岩城みずほ(FP・協会理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「文具事務用品事業」および「ライフスタイル用品事業」を展開しています。

文具事務用品事業


電子製品(「テプラ」、デジタル文具等)、生活環境用品(防災用品、衛生用品等)、ステーショナリー(ファイル、ノート等)の企画・製造販売を行っています。顧客は法人・個人を問わず幅広く、オフィスや家庭での利用を想定しています。

製品の販売による収益が主な収益源です。運営は主にキングジムが行い、製造はPT.KING JIM INDONESIAやKING JIM (VIETNAM) Co.,Ltd.などの海外子会社が担っています。また、錦宮(上海)貿易有限公司などが海外での販売を行っています。

ライフスタイル用品事業


家具、キッチン雑貨、フォトフレーム、アロマ関連商品、時計、アーティフィシャルフラワー、生活家電、雑貨、ルームフレグランス、作業手袋等の企画・販売を行っています。インターネット通販や小売店を通じて一般消費者に製品を提供しています。

製品の販売による収益が主な収益源です。運営は、家具販売を行う株式会社ぼん家具、雑貨等の企画販売を行う株式会社ラドンナ、アーティフィシャルフラワー等を扱う株式会社アスカ商会、生活家電等を扱うライフオンプロダクツ株式会社、作業手袋等を扱うウインセス株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は360億円台から390億円台へと緩やかな増加傾向にあります。利益面では、2024年6月期に一度赤字となりましたが、直近の2025年6月期には経常利益が増加し、当期純利益も黒字回復しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 363億円 366億円 394億円 396億円 396億円
経常利益 28億円 13億円 6億円 1億円 8億円
利益率(%) 7.6% 3.7% 1.6% 0.3% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 5億円 3億円 -4億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいですが、売上総利益率が改善したことで営業利益が黒字化しています。販管費は抑制傾向にあり、利益率の改善に寄与しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 396億円 396億円
売上総利益 143億円 149億円
売上総利益率(%) 36.2% 37.5%
営業利益 -2億円 5億円
営業利益率(%) -0.6% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が40億円(構成比28%)、運賃が20億円(同14%)、販売促進費が15億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


文具事務用品事業は売上が微減しましたが、利益は大幅に改善し黒字化しました。一方、ライフスタイル用品事業は増収となったものの、円安や原材料高騰の影響等により減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
文具事務用品事業 253億円 252億円 -5億円 4億円 1.5%
ライフスタイル用品事業 142億円 145億円 2億円 1億円 0.9%
調整額 -3億円 -4億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 396億円 396億円 -2億円 5億円 1.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

キングジムのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の増加や減価償却費の計上などにより、前連結会計年度に比べて増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却収入があった一方で、無形固定資産の取得による支出があったため、使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払いがあったものの、短期借入金の増加により、前連結会計年度の使用から獲得へと転じました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 10億円 15億円
投資CF -4億円 -8億円
財務CF -11億円 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」を経営理念として掲げています。創業以来、時代の変化を捉えて世の中にないものを作り続けることで、新しい価値の提供を目指して事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社はコーポレートメッセージとして「おどろき、快適、仕事と暮らし」を制定しています。仕事と暮らしを快適にするだけでなく、「あたらしさ」にこだわり続ける姿勢を重視しており、独創的な開発や社会への貢献を通じて企業価値を高める文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2027年6月期を最終年度とする第11次中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:520億円
* 経常利益:28億円
* 経常利益率:5.4%
* 自己資本当期純利益率(ROE):8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「社会の変化の波をチャンスと捉え新たな成長へ」をテーマに、「サービス事業への展開」「ライフスタイル分野の拡大」「海外事業の強化」の3つの方針を遂行します。既存ビジネスでは、働く現場と暮らしに寄り添う開発と販売チャネルの最適化を進め、デザイン力の向上やDXによる新サービス展開を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を最も大切な資産と捉え、新たな価値創造に挑戦するイノベーション人材の育成を目指しています。公正な採用、チャレンジ精神の奨励、学習機会の提供、適正な評価を通じて、多様な人材が能力を最大限発揮できる職場環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.3歳 17.2年 6,240,290円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.8%
男性育児休業取得率 120.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.0%
男女賃金差異(正規) 71.6%
男女賃金差異(非正規) 68.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、環境配慮商品売上高比率(72%)、有給休暇取得日数(12.6日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発投資


デジタル化やペーパーレス化により主力であるファイル市場が縮小傾向にあります。これに対応するため新商品開発へ積極的に投資していますが、全ての開発が市場に受け入れられるとは限らず、その結果次第では業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、新たな市場創出や環境配慮商品の開発に注力しています。

(2) 知的財産の保護


第三者の知的財産権侵害の回避や自社商品の模倣防止体制を整備していますが、訴訟提起や模倣品出現の可能性は完全には排除できません。これらは業績に悪影響を与える可能性があります。商品化時の調査や専門家との連携、権利侵害品への警告などを通じてリスク対応を行っています。

(3) 製造物責任


品質管理基準に基づく体制を運用していますが、予期せぬ欠陥による顧客への損害発生や信頼喪失のリスクがあります。製造物責任保険でカバーできない賠償が生じる可能性もあり、業績への影響が懸念されます。品質管理基準の更新や体制整備の徹底により、リスク低減を図っています。

(4) 原材料等の価格変動


合成樹脂や紙などの主要原材料は原油価格や需給バランスの影響を受けやすく、価格高騰により安定調達が困難になる可能性があります。これは業績に影響を与える要因となります。複数社購買や代替品対応、原価低減などの施策によりリスクの低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。