三ツ知 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三ツ知 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場し、自動車用カスタムファスナーの製造・販売を主力とします。日本、タイ、米国、中国に拠点を展開し、冷間鍛造技術を強みとしています。直近の業績は、売上高が減少し、営業利益や経常利益も減益となるなど、厳しい状況で推移しています。


※本記事は、株式会社三ツ知 の有価証券報告書(第63期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三ツ知ってどんな会社?


自動車部品のカスタムファスナー製造を主力とし、冷間鍛造技術を核にグローバル展開する企業です。

(1) 会社概要


1963年に三ツ知鋲螺として設立され、1987年にタイ、2001年に米国へ進出しました。2007年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2010年には中国拠点を設立しました。2025年6月にはインドに新会社を設立するなど、グローバルな生産・販売体制を強化しています。

連結従業員数は469名、単体従業員数は182名です。筆頭株主は名古屋中小企業投資育成で、第2位は個人株主の野田正英氏、第3位は同じく個人株主の箕浦義彦氏となっており、安定株主が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
名古屋中小企業投資育成 17.16%
野田 正英 5.90%
箕浦 義彦 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は下元守氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
下元 守 代表取締役社長 1995年入社。三ツ知部品工業社長、生産管理部長、工場長等を経て2024年9月より現職。
村越 康幸 取締役 1985年入社。品質管理課長、三ツ知製作所社長、総務部長等を経て2023年10月より現職。
遠藤 信幸 取締役 1996年阪村機械製作所入社。2023年同社入社後、技術部長、三ツ知製作所社長を経て2025年7月より現職。
國田 真吾 取締役 1994年入社。タイ及び米国現地法人社長、海外営業部長、執行役員を経て2025年9月より現職。
石黒 勝 取締役(監査等委員) 1982年シロキ工業入社。同社常務、専務、三ツ知製作所社長等を歴任し2019年9月より現職。


社外取締役は、澤田由香(さわゆか経営事務所代表)、東野繁幸(東野繁幸税理士事務所所長)、小川洋子(弁護士法人TRUTH&TRUST代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「タイ」「米国」「中国」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、自動車部品向けのカスタムファスナーや精密機械金型の製造・販売を行っています。主な製品にはシート用部品やウィンドウレギュレーター用部品などがあります。

収益は自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営は主に三ツ知、三ツ知製作所、三ツ知部品工業、創世エンジニアリングが行っています。

(2) タイ


タイ国内において、自動車用部品や家電部品等のカスタムファスナーの製造・販売を行っています。東南アジア地域における生産拠点としての役割を担っています。

収益は現地の自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営はThai Mitchi Corporation Ltd.が行っています。

(3) 米国


北米地域において、自動車用部品のカスタムファスナーの製造・販売を行っています。現地自動車産業のニーズに対応した製品供給を行っています。

収益は北米の自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営はMitsuchi Corporation of Americaが行っています。

(4) 中国


中国において、自動車用部品のカスタムファスナーの製造・販売を行っています。急速に変化する中国市場向けに製品を供給しています。

収益は現地の自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営は三之知通用零部件(蘇州)有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績は、売上高が120億円台から130億円台で推移していますが、利益面では変動が見られます。特に当期は経常利益が大きく減少し、利益率も低下傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 138億円 124億円 126億円 131億円 124億円
経常利益 6.2億円 5.4億円 1.4億円 6.4億円 1.7億円
利益率 4.5% 4.3% 1.1% 4.8% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.3億円 3.0億円 1.0億円 2.0億円 0.4億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高は減少し、売上総利益および営業利益も縮小しました。特に営業利益率は大きく低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 131億円 124億円
売上総利益 23億円 20億円
売上総利益率 17.3% 16.2%
営業利益 4.7億円 1.1億円
営業利益率 3.5% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が6.0億円(構成比31%)、運搬費が2.6億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本および米国、中国セグメントでは減収となりましたが、タイセグメントは増収を確保しました。利益面では日本、米国、中国が損失を計上する一方、タイは黒字を維持しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
日本 90億円 84億円 1.1億円 -1.4億円 -1.7%
米国 15億円 14億円 0.1億円 -0.9億円 -5.9%
タイ 23億円 24億円 3.5億円 3.3億円 14.1%
中国 4.1億円 2.6億円 -0.2億円 -0.3億円 -12.6%
連結(合計) 131億円 124億円 4.7億円 1.1億円 0.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

三ツ知の当期における現金及び現金同等物は増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産の減少により資金が増加したものの、法人税等の支払により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や有形固定資産の取得による支出が、定期預金の払戻による収入を上回りました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加があったものの、長期借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払いにより支出となりました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 13.2億円 8.9億円
投資CF -5.1億円 -5.2億円
財務CF -9.9億円 -3.6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「未来を『つなぐ』技術で世界中の人と想いを『つなぐ』」を経営理念として掲げています。創業以来培ってきた冷間鍛造技術と品質保証体制を基盤に、信頼性の高い製品を提供し、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


持続的成長と企業価値向上のため、サステナビリティ経営を重点課題としています。また、顧客第一を掲げ、価格と品質で市場競争力を有する製品を提供し、顧客ニーズに応える姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「ビジョン24」を推進しています。第65期(2027年6月期)および第67期(2029年6月期)に向けた経営目標を掲げています。

* 2027年6月期:連結売上高140億円、営業利益率5%
* 2029年6月期:連結売上高160億円、営業利益率5.5%

(4) 成長戦略と重点施策


海外事業の最適化、新規事業の拡大、既存事業の収益力強化などを重点施策としています。インドでの新会社設立やタイでの大型設備投資、自社開発特殊ファスナーの用途拡大などに取り組んでいます。

* インドセグメント:新会社設立・量産体制確立
* タイセグメント:大型設備投資による新規受注品立ち上げ
* DX推進:新基幹システムの稼働、製造現場のデジタル化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人的資本の形成に向け、従業員個人のスキルアッププランの実施やグローバル人材の計画的育成を進めています。また、社員のエンゲージメント向上を目的とした人事評価制度の見直しにも着手しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 42.8歳 12.8年 5,680,760円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男女別中途採用の実績における女性の割合(21.0%)、有給休暇の取得率(81.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存


自動車部品に係る売上高の割合が高く、販売先は自動車部品一次メーカーが中心です。そのため、国内外の自動車生産台数やモデルチェンジに伴う製品装着率、納入価格等の変動が経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 海外市場展開に潜在するリスク


タイ、米国、中国、インドなどで事業を展開しており、海外売上高比率は33.0%です。各地域の自動車業界動向、為替変動、法律・規制の変更、政治・経済状況の変化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 価格競争への対応


自動車部品業界では完成車メーカーからの価格引下げ要請が強まっています。コスト低減策や高付加価値製品の提供に努めていますが、さらなる価格引下げ要請や競争激化により、経営成績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。