※本記事は、アトムリビンテック株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アトムリビンテックってどんな会社?
建築・家具金物の企画・開発・販売を行うファブレスメーカーです。「ATOM」ブランドで内装金物全般を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1903年に創業し、1954年に設立されました。2004年にJASDAQ市場(現:東証スタンダード)へ上場を果たしています。創業以来、家具金物と建具金物を融合させた「内装金物」という分野を開拓し、2024年にはブランド誕生70周年を迎えました。独自の商品開発力を強みに、取扱商品の80%以上を自社ブランドが占める独自の業態を確立しています。
現在の従業員数は単体で120名です。大株主の構成は、筆頭株主が創業家の資産管理会社で、第2位は社長本人となっており、創業家が安定的に株式を保有するオーナー系企業の特徴を持っています。第3位には従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 高橋不動産 | 22.19% |
| 髙橋 快一郎 | 19.80% |
| アトムリビンテック従業員持株会 | 5.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は髙橋快一郎氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋 快一郎 | 代表取締役社長 | 高橋不動産代表取締役を経て2004年に入社。上海やベトナムの現地法人代表などを歴任し、2020年9月より現職。 |
| 山口 俊 | 常務取締役営業本部長 | 1995年に入社。特販事業部長などを経て、2020年に取締役営業本部長に就任。2024年9月より現職。 |
| 池井 正彦 | 取締役商品本部長兼商品部長 | 1986年に入社。卸売事業部長や商品部長を歴任し、2020年に取締役商品本部長に就任。2024年10月より現職。 |
| 関内 和貴 | 取締役営業本部副本部長 | 1996年に入社。卸売事業部長などを経て、2024年9月に取締役に就任。2025年7月より現職。 |
社外取締役は、山下剛(双葉税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住宅用内装金物事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■住宅用内装金物事業
同社は「ATOM」ブランドの下、建築金物や家具金物を主体とした内装金物全般を企画・開発しています。主な商品は、折戸・引戸金物、開戸金物、引出・収納金物などで、これらは国内のハウスメーカー、住宅設備機器メーカー、建材メーカー、建築金物店などに提供されています。工場を持たないファブレスメーカーとして、企画開発に特化しています。
収益は、開発した金物製品をメーカーや販売店へ販売することで得られる代金です。運営は主にアトムリビンテックが行っており、中国およびベトナムの子会社が海外協力工場の開拓や現地販売、日本国内への商品供給をサポートする体制をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で安定的に推移しています。第70期には一時的に利益率が低下しましたが、第71期には回復し、経常利益は5.6億円、当期純利益は3.9億円となりました。独自のファブレスモデルにより、比較的安定した収益基盤を維持していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 100億円 | 104億円 | 102億円 | 103億円 |
| 経常利益 | 6.6億円 | 6.1億円 | 4.2億円 | 3.7億円 | 5.6億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 4.1% | 3.3% | 2.5% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.4億円 | 4.1億円 | 3.5億円 | 2.5億円 | 3.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増ですが、売上総利益率が改善し、営業利益率も向上しています。原材料コストの高騰などの環境下においても、価格転嫁や高付加価値商品の販売が奏功し、収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 102億円 | 103億円 |
| 売上総利益 | 25億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.9% | 26.5% |
| 営業利益 | 3.3億円 | 5.2億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.3億円(構成比28%)、荷造運搬費が2.8億円(同12%)を占めています。売上原価は76億円で、売上高に対する構成比は73%となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、品目別の売上動向を見ると、主力の「折戸・引戸金物」が好調で増収を牽引しました。「開戸金物」や「取手・引手」も増加しましたが、「引出・収納金物」は減少しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 折戸・引戸金物 | 74億円 | 77億円 |
| 開戸金物 | 8億円 | 8億円 |
| 引出・収納金物 | 5億円 | 5億円 |
| 取手・引手 | 6億円 | 5億円 |
| 附帯金物 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 102億円 | 103億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.9%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.4億円 | -11.5億円 |
| 投資CF | -2.9億円 | -18.9億円 |
| 財務CF | -1.4億円 | -1.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業者の「独り歩きのできる商品を提供すべき」との教えに基づき、「より良い金物を自ら考え、自ら普及させて行く」という企業理念を掲げています。ファブレスメーカーとして、住まいの金物の進化と発展に寄与し、住生活を通して広く社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「創意・誠実・進取」の精神を社是としています。江戸指物金具の職人であった創業者の精神を受け継ぎ、「繊細なものづくりの精神」を大切にしています。伝統的な家具金物と建具金物を融合させた「内装金物」という分野を創造するなど、常に新しい時代に即した事業展開を積極的に進める風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は「第12次中期経営計画(第71期~第73期)」において、「伝統を活かし、変革に挑む」をテーマに掲げています。売上高、営業利益、経常利益を成長指標とし、財務基盤強化の観点から自己資本比率を重視しています。具体的な数値目標は開示されていませんが、安定成長と収益力の強化を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、事業環境に左右されない経営基盤の確立を目指し、以下の3つの戦略を重点施策としています。
1. 商品戦略:オリジナル商品の再構成や集約化、リフォーム・リノベーション市場への対応、バリアフリーや安全性に配慮した商品開発の推進。
2. 市場戦略:ショールームやSNSを活用した情報発信、ベトナム拠点を活用した海外展開、提案型営業の強化。
3. 情報システム戦略:基幹システムのクラウド化やDX推進による業務効率向上、動画コンテンツ等の拡充による顧客利便性の向上。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員が最大限の能力を発揮できるよう、活力ある職場環境や企業風土の醸成に努めています。意欲と発想豊かな人材を育成し、適性のある人材を管理職として登用していく方針です。また、性別や国籍、採用区分に関わらず、能力や適性を総合的に勘案して登用を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 43.2歳 | 16.6年 | 6,674,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅投資動向による影響
同社は住宅用内装金物を主力商品としており、その需要は新設住宅着工戸数に大きく依存しています。一般景気、金利動向、雇用情勢、地価、税制などの外部要因により住宅着工数が減少した場合、同社の業績に影響が及ぶ可能性があります。特に、消費性向や所得環境の改善が進まない場合、市場回復が遅れるリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。