オルバヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オルバヘルスケアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。医療器材事業を中心に、病院内の物品管理を行うSPD事業や介護用品事業を展開する。直近の業績は、売上高1,227億円と増収の一方、営業利益は20億円で減益となりました。設備備品の需要減退や消耗品の利益率低下が響きましたが、当期純利益は11億円と増益を確保しています。


※本記事は、オルバヘルスケアホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

#記事タイトル:「オルバヘルスケアホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

1. オルバヘルスケアホールディングスってどんな会社?

医療機器や関連機器の販売を行う医療器材事業を中核に、病院経営を支援するサービス等を展開する持株会社です。

(1) 会社概要

1967年に川西医科器機として設立され、医療器材の販売を開始しました。2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たします。2004年に持株会社体制へ移行し、カワニシホールディングスへ商号変更しました。2021年には創業100周年を機に現商号であるオルバヘルスケアホールディングスへ変更しています。

2025年6月期末時点の連結従業員数は1,393名、単体では50名です。筆頭株主はマスプで、第2位は前島達也氏、第3位には従業員持株会が名を連ねています。マスプと前島氏は、同社の創業家に関連する株主と見られます。

氏名 持株比率
マスプ 13.91%
前島達也 7.87%
オルバヘルスケア従業員持株会 6.35%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は前島洋平氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
前島洋平 代表取締役社長 岡山大学大学院教授等を経て2014年取締役就任。2015年9月より現職。
磯田恭介 専務取締役経営企画本部長 1997年入社。経営企画室長、常務取締役経営企画本部長を経て2022年9月より現職。
村田宣治 常務取締役管理本部長 1998年入社。管理本部マネージャー、取締役管理本部長を経て2017年9月より現職。
桑村勝之 常務取締役営業本部長 四国メディカルアビリティーズ入社。カワニシ取締役等を経て2022年9月より現職。
川元由喜子 取締役 HSBCアセットマネジメント運用部ダイレクター等を経て2018年9月より現職。
北川敬博 取締役 ジョンブル代表取締役社長、同社顧問を経て2020年9月より現職。
田久保善彦 取締役 グロービス経営大学院大学研究科長教授等を経て2024年9月より現職。


社外取締役は、川元由喜子(元HSBCアセットマネジメント運用部ダイレクター)、北川敬博(元ジョンブル代表取締役社長)、田久保善彦(グロービス経営大学院大学特任副学長教授)です。

2. 事業内容

同社グループは、「医療器材事業」、「SPD事業」、「介護用品事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

医療器材事業

主に医療機関を顧客とし、手術関連、整形外科、循環器領域などの医療機器や消耗品、設備備品を販売しています。消耗品が売上の中心であり、ロボット手術や低侵襲治療に関連する製品の取り扱いも拡大しています。また、タイ王国での海外事業も含まれます。

収益は、医療機関等への製品販売代金として受け取ります。運営は主に、株式会社カワニシ、サンセイ医機株式会社、日光医科器械株式会社、株式会社カワニシバークメド、株式会社オルシード、THAI OLBA Healthcare Co.,Ltd.などの子会社が行っています。

SPD事業

医療機関に対して、物品・情報の管理および購買管理業務(SPD:Supply Processing and Distribution)を提供し、併せて医療機器の販売も行っています。病院内の物流効率化や在庫管理の適正化を支援するサービスです。

収益は、医療機関からの管理料および医療機器の販売代金からなります。この事業の運営は、主に株式会社ホスネット・ジャパンが行っています。

介護用品事業

在宅介護が必要な個人や介護施設等を対象に、介護用ベッドや福祉用具のレンタルおよび販売を行っています。地域密着型のサービス提供を強みとしています。

収益は、利用者からのレンタル料および用品の販売代金です。この事業の運営は、主に株式会社ライフケアが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。これは主力である医療器材事業における消耗品販売の伸長や新規顧客の獲得などが寄与しています。一方、利益面では、経常利益が第75期まで増加していましたが、直近の第76期では減益となりました。物価高騰によるコスト増や設備投資需要の減退などが影響しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 1,021億円 1,080億円 1,105億円 1,186億円 1,227億円
経常利益 15億円 21億円 22億円 22億円 20億円
利益率(%) 1.5% 2.0% 2.0% 1.9% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 10億円 5億円 6億円 11億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は若干低下しています。また、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。人的資本への投資やシステム関連費用の増加が利益を圧迫する要因となっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 1,186億円 1,227億円
売上総利益 136億円 139億円
売上総利益率(%) 11.5% 11.3%
営業利益 22億円 20億円
営業利益率(%) 1.9% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が54億円(構成比46%)、その他経費が48億円(同40%)を占めています。

(3) セグメント収益

医療器材事業は増収となったものの、販管費の増加等により減益となりました。SPD事業は管理料の値上げ交渉等の効果で増収増益を達成しています。介護用品事業はレンタル需要が堅調で増収となりましたが、新規出店コスト等により若干の減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
医療器材事業 1,108億円 1,143億円 20億円 18億円 1.6%
SPD事業 51億円 56億円 1.0億円 1.1億円 2.0%
介護用品事業 26億円 28億円 2.1億円 2.1億円 7.4%
調整額 -15億円 -17億円 -1.2億円 -1.1億円 -
連結(合計) 1,186億円 1,227億円 22億円 20億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスです。本業で得た現金に加え、借入等の資金調達を行いながら、将来の成長に向けた投資を積極的に実施している「積極型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 21億円 16億円
投資CF -7億円 -16億円
財務CF -11億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは「社員憲章」を経営の基本方針として定めています。ビジネスを通じて医学・医療・介護の発展に貢献し、国民の健康長寿に寄与することを使命としています。また、ステークホルダーに対して誠実かつ継続的に価値を提供し、持続可能な経営を追求することを掲げています。

(2) 企業文化

組織のあり方として、人材育成を尊び「マネジメント(人を通じて事を成す)」に重きを置くことや、ダイバーシティを重視し多様な価値観を認め合うことを掲げています。また、メンバーには自発的かつ主体的な成長意志を持ち、過去の成果に安住せず謙虚に学び続ける姿勢を求めています。

(3) 経営計画・目標

2026年6月期を初年度とする中期経営計画を策定し、2028年6月期の経営指標として以下の目標を掲げています。
* 連結売上高:1,420億円
* 連結営業利益:27億円

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画において、「OLBA-DX」「生産性向上」「未来への投資」の3つをポイントとして掲げています。DXによる業務効率化や営業活動の質向上、グループ内連携強化による現業の強化、タイ王国でのビジネス基盤確立や新会社による次世代ごみ処理機の展開など新規事業育成を推進します。

* 国内最高の医療機器商社を目指す
* 営業利益の20%は、海外から獲得する
* 30以上の新製品・サービスを上市する

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「OLBA-DX」推進のため、全従業員のITリテラシー向上を目的としたeラーニングや資格取得支援など、DX人材の育成に注力しています。また、「働き方改革2.0」としてフレックスタイム制や在宅勤務制度などを導入し、多様な働き方ができる環境整備を進めるとともに、健康経営やダイバーシティ推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 43.7歳 13.7年 7,059,514円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.0%
男女賃金差異(正規雇用) 58.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受検率(96.0%)、健康診断受診率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 償還価格制度の影響

診療報酬改定に伴い、特定保険医療材料の償還価格が引き下げられる傾向にあります。これに連動して医療機関への販売単価も下落し、収益性を圧迫する要因となります。同社は仕入先との交渉力強化や付加価値の高い製品の取扱い拡大により収益改善に努めています。

(2) 法的規制と許認可

医薬品医療機器等法をはじめとする関連法規に基づく許可等を得て事業を行っています。法令違反等により許可が取り消された場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、商品回収や販売停止等の事態が発生した場合も業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティ

サイバー攻撃やウィルス感染等のリスクに対し、情報セキュリティ基本方針の策定や従業員教育、24時間モニタリング等の対策を行っていますが、想定外の事態により個人情報流出やシステム障害が発生した場合、損害賠償や信用低下により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害と感染症

大規模な地震や風水害、感染症の拡大などにより物流網に影響が生じたり、医療機関での手術延期等が発生したりした場合、商品の販売機会が失われ、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はBCP(事業継続計画)を策定し対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。