※本記事は、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの有価証券報告書(第45期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスってどんな会社?
「ドン・キホーテ」を中核に、総合スーパー「ユニー」や海外店舗を展開する総合小売グループです。
■(1) 会社概要
1980年に株式会社ジャストとして設立され、1989年に「ドン・キホーテ」1号店を開設しました。1998年に株式を上場し、2013年に持株会社体制へ移行しました。2019年にはユニー株式会社を完全子会社化し、現在の商号へ変更しました。近年は米国やアジアでの海外展開を加速させています。
2025年6月末時点の連結従業員数は17,075名、単体では3,580名です。筆頭株主はオランダのアムステルダムに所在する法人で、第2位、第3位は信託銀行が名を連ねています。創業者であり最高顧問の安田隆夫氏は取締役(非常勤)として経営に関与しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| DQ WINDMOLEN B. V. | 22.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.39% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長CEOは吉田直樹氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉田 直樹 | 代表取締役社長CEO | マッキンゼーなどを経て2007年に入社。海外事業本部長などを歴任し、2019年より現職。ドン・キホーテ代表取締役社長を兼務。 |
| 森屋 秀樹 | 代表取締役 兼 専務執行役員CSO経営戦略本部長 兼経営会議事務局長 | 2000年入社。オペレーションマネジメント本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 鈴木 康介 | 代表取締役 兼 専務執行役員源流推進本部長 兼新規業態開発本部長 | 2000年入社。UDリテール代表取締役社長などを経て、2024年より現職。ドン・キホーテ代表取締役副社長を兼務。 |
| 榊原 健 | 取締役 兼 専務執行役員GMS事業統括責任者 兼国内事業共同CMO | 1997年入社。ドン・キホーテ専務取締役COOなどを経て、2024年より現職。ユニー代表取締役社長を兼務。 |
| 松元 和博 | 取締役 兼 常務執行役員CMO(Global)海外事業統括責任者 兼北米事業責任者 | 1996年入社。海外事業サポート本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 石井 祐司 | 取締役 兼 常務執行役員CAO財務・主計・経理・総務管掌 | 2008年入社。ドン・キホーテシェアードサービス社長などを経て、2024年より現職。 |
| 二宮 仁美 | 取締役 兼 執行役員ダイバーシティ・マネジメント委員会委員長 兼デザイン統括責任者 | 2005年入社。スペースデザイン部部長などを経て、2021年より現職。 |
| 安田 隆夫 | 取締役(非常勤)創業会長 兼 最高顧問 | 1980年創業。代表取締役会長兼CEOなどを歴任し、2019年より現職。 |
| 安田 裕作 | 取締役(非常勤) | 2019年インターンシップ。2024年より現職。公益財団法人安田奨学財団副理事長を兼務。 |
社外取締役は、久保勲(元ファミリーマート取締役専務執行役員)、吉村泰典(慶應義塾大学名誉教授)、西谷順平(立命館大学経営学部教授)、加茂正治(元ローソン専務執行役)、小野貴樹(元三井住友銀行常務執行役員)、岸本尚子(きしもと法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」、「北米事業」、「アジア事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 国内事業
「ドン・キホーテ」、「MEGAドン・キホーテ」等のディスカウントストアや、「アピタ」、「ピアゴ」等の総合スーパーを国内で運営しています。一般消費者に対し、食品、日用雑貨、家電製品、時計・ファッション用品、スポーツ・レジャー用品などを販売しています。
主な収益源は、店舗での商品販売による対価です。また、テナント賃貸業務やクレジットカード事業等による金融収益も含まれます。運営は主に、株式会社ドン・キホーテ、ユニー株式会社、株式会社長崎屋、UDリテール株式会社などが行っています。
■(2) 北米事業
米国ハワイ州およびカリフォルニア州において、ディスカウントストアおよびスーパーマーケットを展開しています。「Don Quijote」、「Tokyo Central」、「Marukai」、「Gelson's」などのブランドで店舗運営を行っています。
主な収益源は、現地消費者への商品販売による対価です。運営は、Don Quijote(USA)Co.,Ltd.、Gelson’s Markets、MARUKAI CORPORATIONなどが担当しています。
■(3) アジア事業
シンガポール、香港、タイ、台湾、マレーシア、マカオにおいて、ジャパンブランド・スペシャリティストアをコンセプトとした店舗「DON DON DONKI」等を展開しています。日本の農畜水産物や加工食品などを中心に販売しています。
主な収益源は、現地消費者への商品販売による対価です。運営は、Pan Pacific Retail Management(Singapore) Pte.Ltd.やPan Pacific Retail Management(Hong Kong)Co.,Ltd.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に売上高は2兆円を突破し、利益面でも毎期増益基調を維持しています。利益率も改善傾向にあり、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 17,086億円 | 18,313億円 | 19,368億円 | 20,951億円 | 22,468億円 |
| 経常利益 | 815億円 | 1,004億円 | 1,110億円 | 1,487億円 | 1,585億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 5.5% | 5.7% | 7.1% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 537億円 | 619億円 | 662億円 | 887億円 | 905億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益および営業利益率も向上しており、収益性が高まっていることがわかります。増収効果に加え、利益率の改善が寄与しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 20,951億円 | 22,468億円 |
| 売上総利益 | 6,629億円 | 7,167億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.6% | 31.9% |
| 営業利益 | 1,402億円 | 1,623億円 |
| 営業利益率(%) | 6.7% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2,030億円(構成比36.6%)、支払手数料が716億円(同12.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は免税売上の伸長やPB商品の貢献により増収増益となりました。北米事業は新規出店等で増収となりましたが、費用増により減益となりました。アジア事業は円安や出店効果で増収となり、業務効率化により増益に転じました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内事業 | 17,631億円 | 18,961億円 | 1,366億円 | 1,581億円 | 8.3% |
| 北米事業 | 2,469億円 | 2,594億円 | 34億円 | 23億円 | 0.9% |
| アジア事業 | 851億円 | 912億円 | 1.5億円 | 19億円 | 2.1% |
| 調整額 | -128億円 | -144億円 | 0億円 | 0億円 | -% |
| 連結(合計) | 20,951億円 | 22,468億円 | 1,402億円 | 1,623億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で、投資(投資CFマイナス)と借入返済(財務CFマイナス)を行っており、健全な財務運営が行われています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,506億円 | 1,320億円 |
| 投資CF | -947億円 | -611億円 |
| 財務CF | -1,299億円 | -759億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「顧客最優先主義」を企業原理に掲げ、「企業価値の拡大」を経営の基本方針としています。事業コンセプト「CV+D+A(コンビニエンス+ディスカウント+アミューズメント)」に基づき、便利で安く、楽しい店舗作りを通じて、顧客満足と豊かな生活文化の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
企業理念集『源流』に基づき、現場への大胆な「権限委譲」と徹底した「実力主義」を重視する文化があります。失敗を恐れず挑戦することを推奨し、変化対応力を養う風土が根付いています。個人の多様性を尊重し、従業員一人ひとりが自律的に考え行動することを求めています。
■(3) 経営計画・目標
長期経営計画「Double Impact 2035」を策定し、中長期的な持続的成長を目指しています。2035年6月期に向けた定量目標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:4兆2,000億円
* 営業利益:3,300億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「Double Impact 2035」に基づき、国内事業を中心に成長を目指します。出店拡大によるシェア獲得、既存店の売上成長、インバウンド需要の取り込み強化を推進します。また、食品強化型新業態の開発やM&Aも戦略の柱と位置づけ、海外事業については基盤構築を進めた上で改めて戦略を開示する方針です。
* 出店戦略:未出店エリアを含む国内シェアの拡大
* インバウンド戦略:観光地型小売りの確立
* 新規業態:「食品強化型ドンキ」の開発
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「源流」に基づく権限委譲と実力主義により、従業員が自律的に成長し挑戦できる環境を整備しています。年齢・性別・国籍に関わらず成果を公正に評価し、多様な人材の活躍を推進しています。特にメイト(パート・アルバイト)の戦力化や女性活躍推進、グローバル人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 42.5歳 | 16.2年 | 6,901,515円 |
※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与が含まれています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 52.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 50.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.9% |
※女性管理職比率について、同社は公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性店長数(46名)、源流一般試験合格率(98.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 店舗拡大と人材確保
積極的な店舗網の拡大や事業領域の拡張を進める中で、必要な人員の確保や育成が計画通りに進まない場合、サービスの質が低下し、業績が低迷する可能性があります。同社は独自の採用活動等で人材確保に努めています。
■(2) 輸入及び物流・配送
商品の輸入割合が増加しており、国際情勢や為替変動、関税政策の影響を受ける可能性があります。また、物流・配送を外部業者に委託しているため、委託先の経営状況等により物流が滞るリスクがあります。これに対し、複数の業者への委託でリスク分散を図っています。
■(3) マーケティング
顧客ニーズや商品需要の変化を迅速かつ適切に把握し、品揃えに反映できるかが業績に大きく影響します。マーケティングを適切に行うスタッフの確保・育成や組織的管理体制が継続できない場合、業績が低迷する可能性があります。従業員研修等で対応しています。



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