かんなん丸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

かんなん丸 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、「庄や」などのフランチャイズ店舗や自社ブランド「じんべえ太郎」等の飲食事業を展開する企業です。直近の業績は、売上高が前期比13.5%増と回復傾向にありますが、各利益段階では損失が続いており、赤字幅は縮小しつつも依然として厳しい経営状況にあります。


※本記事は、株式会社かんなん丸 の有価証券報告書(第48期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. かんなん丸ってどんな会社?


同社は、埼玉県を中心に「庄や」等のフランチャイズ店や自社業態「じんべえ太郎」などの飲食店を運営する企業です。

(1) 会社概要


1982年に有限会社かんなん丸として設立され、同年大庄とフランチャイズ契約を締結し「庄や」浦和店を開店しました。1995年に株式会社かんなん丸(旧株式会社飲食産業研究所)と合併し、実質的な存続会社となります。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2018年には自社オリジナル業態である大衆すし酒場「じんべえ太郎」の1号店を開店し、マルチブランド展開を進めています。

現在の従業員数は単体で108名です。筆頭株主は創業者の佐藤榮治氏で、第2位は有限会社群青、第3位は主要取引先であるサントリーとなっています。

氏名 持株比率
佐藤 榮治 35.65%
有限会社群青 11.98%
サントリー 2.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野々村 孝志氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
野々村 孝志 代表取締役社長 サントリーを経てダイナック専務取締役営業統括本部長などを歴任。サントリーパブリシティサービス代表取締役社長等を経て、2022年より現職。
三留 雅広 常務取締役営業本部長 2002年同社入社。営業部次長、営業部長、取締役営業部長などを経て、2014年より現職。
宮永 一彦 取締役管理部長 2006年同社入社。管理部次長、執行役員管理部長を経て、2024年より現職。
菊田 聡 取締役(監査等委員) 武富士を経て2008年同社入社。管理部長、執行役員管理部長、常勤監査役を経て、2024年より現職。


社外取締役は、保坂 孝徳(元ダイナック取締役管理統括本部長)、山本 浩正(株式会社カーヴ・ド・リラックス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「料理飲食事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 料理飲食事業


埼玉県を中心に、自社業態の大衆すし酒場「じんべえ太郎」、カラオケルーム「kobanちゃん」、フランチャイジーとして大衆割烹「庄や」「日本海庄や」、イタリアン「VANSAN」などを展開しています。地域密着型の「街角の一軒」を方針とし、多様な業態で顧客ニーズに対応しています。

収益は、来店客からの飲食代金やサービス利用料です。運営は主にかんなん丸が行っています。自社ブランドの育成に加え、有力ブランドのフランチャイズ加盟により、和食、イタリアン、カラオケと幅広いポートフォリオを構築しています。

(2) その他


報告セグメントに含まれない事業として、女性専用AIパーソナルジム「FURDI(ファディー)」の運営を行っています。健康志向の高まりに対応した新業態として展開を進めています。

収益は、会員からの会費収入等が主となります。運営はかんなん丸が行っています。飲食事業以外の収益の柱を育成するため、フランチャイズ契約に基づき店舗運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上高は回復傾向にありますが、利益面では苦戦が続いています。経常損失および当期純損失が継続しており、赤字からの脱却が課題となっています。直近の2025年6月期は売上高が増加したものの、減損損失等の計上もあり最終赤字となっています。

項目 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 6.0億円 6.7億円 7.3億円 -
経常利益 -0.6億円 -0.7億円 -6.4億円 -
利益率(%) -9.9% -9.9% -87.3% -
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 -3.0億円 -2.1億円 -2.2億円


※データソースの制約により一部数値が表示されていません。

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加し、売上総利益も増加していますが、営業損失が続いています。売上原価や販売費及び一般管理費の負担が重く、利益を圧迫しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 - -
売上総利益 11億円 13億円
売上総利益率(%) - -
営業利益 -1.8億円 -1.4億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比43%)、地代家賃が2億円(同14%)、水道光熱費が1億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


料理飲食事業が売上の大半を占めており、売上高は増加しセグメント利益も拡大しました。一方、その他事業(FURDI事業)は売上規模は小さいものの増収となりましたが、損失を計上しています。全社費用の調整額が大きく、全体としては営業損失となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
料理飲食事業 16億円 18億円 0.2億円 0.6億円 3.4%
その他 0.1億円 0.4億円 - - -
調整額 - - -1.8億円 -1.8億円 -
連結(合計) 16億円 19億円 -1.8億円 -1.4億円 -7.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -0.9億円 -0.5億円
投資CF -3.2億円 -1.0億円
財務CF 2.6億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-40.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「お客様のわざわざに感激申し上げ、わざわざをもってお応えする」ことを創業以来の使命としています。顧客が足を運んでくれることへの感謝を忘れず、差別化したサービスで応えることを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


「接客・調理の全てにおいてお客様にご恩返しをする」という精神を徹底しています。来店した顧客に対して、誠心誠意、真心を持っておもてなしをすることを重視しており、顧客満足度の向上を最優先に考える文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


持続可能な収益体制の構築を目指し、現状の赤字を早期に解消することを最優先課題としています。中長期的には、安定的な収益体制の確立を通じて、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高営業利益率:5%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「街角の一軒」を店舗展開の方針とし、埼玉県を中心に周辺地域への拡大を図っています。既存店の活性化、業態変更、店舗リニューアルを順次実施し、リピーター獲得と営業力強化に取り組んでいます。また、コスト面では原価率や人件費の適正管理を徹底し、収益性の改善を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


顧客への「ご恩返し」ができる人材を育成するため、研修・教育への投資を充実させています。採用面では、SNSを活用した情報発信により新たな窓口からの採用強化を図るとともに、パートナー(従業員)に対しても習得状況に応じたキャリアアップ制度を導入し、モチベーションとチーム力の向上に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 47.5歳 11.2年 3,740,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大庄との関係について


同社は株式会社大庄とフランチャイズチェーン加盟契約を締結し、「庄や」等の店舗を運営しています。この契約は事業の根幹に関わる重要なものであり、契約の終了、解除、または大きな変更が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 食の安全性及び衛生管理について


飲食事業において安全安心な料理の提供は使命ですが、食材に対する風評被害や、厳正な管理にもかかわらず衛生問題が発生した場合には、社会的信用の失墜や客数減少などにより、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 出店戦略について


埼玉県を中心に近郊へ徐々に拡大する出店戦略をとっていますが、計画通りの出店が困難になった場合や、競合店の出店などにより競争が激化した場合には、当初見込んだ収益が得られず、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等


既存店のテコ入れや業態転換により業績改善は進んでいるものの、黒字転換は果たせておらず、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。事業の収益改善と財務安定化に向けた施策を進め、解消に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。