フルヤ金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フルヤ金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の工業用貴金属メーカー。プラチナグループメタル(PGM)を中心とした製品製造・販売・リサイクルを行う。直近決算では、データセンター投資等を背景に売上高は過去最高を更新して増収となるも、貴金属価格の下落や戦略投資の影響等により減益となった。(139文字)


※本記事は、株式会社フルヤ金属 の有価証券報告書(第57期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フルヤ金属ってどんな会社?


工業用貴金属製品の製造販売およびリサイクル事業を展開する東証プライム上場企業です。特に希少性の高いプラチナグループメタル(PGM)の加工技術に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1951年に創業し、1968年に設立されました。1975年に工業用貴金属分野へ参入し、イリジウムルツボの製造等で技術力を蓄積。2006年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2011年に田中貴金属工業と資本業務提携を締結。2023年には東証プライム市場へ区分変更しています。

2025年6月末時点の従業員数は連結418名、単体414名です。筆頭株主は同業大手で資本業務提携先の田中貴金属工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は代表取締役社長の古屋堯民氏です。事業上の重要なパートナーシップと創業家が主要株主となっています。

氏名 持株比率
田中貴金属工業 17.29%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.45%
古屋 堯民 6.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は古屋堯民氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
古屋堯民 代表取締役社長兼)営業本部長 1972年に入社し、営業部長等を経て1987年より社長を務める。営業本部長を兼務し、長きにわたり経営を牽引。
丸子智弘 取締役製造・研究開発本部長兼)つくば工場長兼)生産技術開発統制部長 1991年入社。研究開発や製造部門を歴任し、つくば工場長や製造・研究開発本部長として技術・生産部門を統括。
桑原秀樹 取締役PGMファインケミカル・リサイクル本部長兼)貴金属部長 商社や外資系貴金属企業の社長を経て2013年に入社。営業や化成品・回収事業を推進し、現在はリサイクル事業等を統括。
西村勉 取締役管理本部長兼)総務・CSR部長兼)法務・管理グループ長兼)システム管理室長 銀行出身。2019年に入社し、総務部長等を歴任。現在は管理本部長として総務・法務・システム等を管掌。
島﨑一夫 取締役常勤監査等委員 1980年入社。つくば工場長や内部監査室長などを歴任し、現在は常勤監査等委員を務める。


社外取締役は、落合一徳(元田中貴金属工業執行役員)、若林秀樹(東京理科大学大学院教授)、松林恵子(税理士)、中陳道夫(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子」「薄膜」「サーマル」「ファインケミカル・リサイクル」「サプライチェーン支援」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電子


スマートフォンや通信機器、LED等の製造プロセスで使用される酸化物単結晶の育成用ルツボや、光学ガラス溶解・成形用の貴金属製品等を製造販売しています。顧客は電子部品メーカーやガラスメーカー等が中心です。

収益は、これらの工業用貴金属製品の販売対価として顧客から得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) 薄膜


ハードディスク等の磁気記録媒体や次世代半導体に使用される貴金属スパッタリングターゲット(薄膜形成材料)の製造販売を行っています。また、研究開発センターの装置を用いた薄膜製造プロセスの受託も行っています。

収益は、製品の販売および受託加工の対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) サーマル


半導体やファインセラミックス製造等の高温工程における温度測定・制御に使用される熱電対(測温計)や、関連製品を製造販売しています。

収益は、これらの温度管理関連製品の販売対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

(4) ファインケミカル・リサイクル


各種触媒や有機EL等の材料となる貴金属化合物の製造販売、および工業用貴金属のリサイクル・精製受託を行っています。

収益は、化合物の販売やリサイクル・精製加工の対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

(5) サプライチェーン支援


同社製品の受注に直接紐付かない主要な貴金属原材料の販売を行っています。

収益は、貴金属原材料の販売対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

(6) その他


報告セグメントに含まれない事業として、主に仕入製品等の販売を行っています。

収益は、商品の販売対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近期では大幅な増収を達成しています。利益面では、第54期にピークをつけた後、利益率は低下傾向にありますが、依然として10%を超える高い水準を維持しています。当期は増収ながらも減益となりました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 338億円 453億円 481億円 475億円 574億円
経常利益 106億円 133億円 124億円 107億円 94億円
利益率(%) 31.2% 29.3% 25.7% 22.5% 16.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 70億円 91億円 95億円 75億円 63億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回ったため、売上総利益は減少しました。売上総利益率も低下しています。営業利益も若干の減少となりましたが、依然として高い利益率を確保しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 475億円 574億円
売上総利益 147億円 142億円
売上総利益率(%) 30.9% 24.7%
営業利益 98億円 95億円
営業利益率(%) 20.6% 16.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が15億円(構成比31%)、給与手当が7億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


「ファインケミカル・リサイクル」セグメントが売上・利益ともに最大で、全社業績を牽引しています。「薄膜」や「サプライチェーン支援」も大幅な増収となりましたが、「サーマル」や「電子」は減収減益となり、セグメント間で明暗が分かれました。特に「薄膜」と「リサイクル」分野の成長が顕著です。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
電子 63億円 59億円 23億円 17億円 29.3%
薄膜 93億円 113億円 35億円 43億円 38.2%
サーマル 55億円 49億円 21億円 15億円 31.9%
ファインケミカル・リサイクル 202億円 263億円 63億円 65億円 24.5%
サプライチェーン支援 57億円 77億円 4億円 0億円 0.5%
その他 4億円 14億円 1億円 1億円 7.7%
連結(合計) 475億円 574億円 147億円 142億円 24.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 32億円 9億円
投資CF -22億円 -49億円
財務CF 81億円 48億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「科学技術の発展に寄与し、社会の繁栄に貢献する」という企業理念を掲げています。貴金属、特にプラチナグループメタル(PGM)という希少な素材の可能性を追求し、エレクトロニクスや環境・エネルギー等の先端分野を支えることを使命としています。

(2) 企業文化


「無限の可能性に、先見力と想像力で対応」を行動指針とし、「人=社員」を最重要経営資源と位置付けています。社員を大切にする経営を目指すとともに、コンプライアンスを重視し、高いモラルとビジョンを持つ社員の育成に努めています。また、PGMへの経営資源集中や品質意識の徹底を基幹方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年6月期から2030年6月期を対象とする中期経営計画「KFKビジョン2030」を策定しています。「デジタル社会のさらなる進展」と「グリーン社会の実現」への貢献を目指し、以下の財務指標を目標として掲げています。

* 売上高:1,500億円
* 経常利益:200億円
* ROE(自己資本利益率):10%以上
* ROIC(投下資本利益率):8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「稼ぐ力の強化」「新たな柱の創出」「持続可能な成長基盤づくり」を基本戦略としています。既存の5本柱(電子・薄膜・サーマル・ケミカル・回収)を強化しつつ、デジタルおよびグリーン分野での成長を目指します。具体的には、高付加価値製品の開発、原価低減、貴金属回収能力増強への設備投資、およびサプライチェーンの強靭化等に取り組んでいく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「先見力と創造力」に優れ、グローバル課題に挑む人材の育成を目指しています。採用・環境・育成を三位一体で推進し、女性採用の拡大やリファーラル採用の推進、社員エンゲージメント向上、基盤教育プログラムの実行等に取り組んでいます。また、多様性と機会均等を基本とし、個性を生かし尊重し合う環境の醸成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.4歳 8.8年 7,482,528円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 90.9%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規雇用) 80.5%
男女賃金差異(非正規) 48.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(10%以上)、女性社員の積極的活用による人材基盤整備(20%以上)、男性社員育児休業取得比率(100%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 貴金属価格の変動


製品の原材料である貴金属(特にイリジウム・ルテニウム等)の価格変動は、売上高や利益に直接的な影響を与えます。価格変動リスクを完全に回避することは困難であり、製造・在庫期間中の相場変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 貴金属の調達リスク


産出地や生産量が限定される希少金属を原材料としているため、産出国の政治・経済情勢の変化や需給逼迫により調達が困難になる可能性があります。原材料在庫の確保等を行っていますが、流通量の減少は業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定取引先との関係


大株主でもある田中貴金属工業とは資本業務提携を結んでおり、原材料の仕入や製品販売において重要な取引関係にあります。同社グループとの関係に変化が生じた場合、業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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