SANKO MARKETING FOODS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SANKO MARKETING FOODS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の飲食・水産企業。「アカマル屋」「焼肉万里」等の店舗運営に加え、水産物の漁獲から加工・販売までを一貫して行う「水産の6次産業化」を推進しています。直近の業績は、売上高は前期比増収となるも、各段階利益で赤字が継続しています。


※本記事は、株式会社SANKO MARKETING FOODS の有価証券報告書(第49期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SANKO MARKETING FOODSってどんな会社?


飲食事業と水産事業を柱とする企業です。「アカマル屋」等の店舗運営に加え、自社船団による漁獲から加工・販売までを手掛ける「水産の6次産業化」を推進しています。

(1) 会社概要


同社は1977年に有限会社三光フーズとして設立されました。1991年に「酒菜屋 東方見聞録」、2000年に「月の雫」などのブランドを展開し、2003年にジャスダック市場へ店頭登録、翌年には東証二部に上場しました。その後、2009年に「金の蔵Jr.」を開店し低価格居酒屋を展開。2021年に現商号へ変更し、水産事業を本格化させています。

2025年6月末時点の連結従業員数は317名(単体242名)です。筆頭株主は取締役会長の平林隆広氏で、第2位は株式会社TLF、第3位は金融機関の口座です。同社は「産地活性化プラットフォーマー」を目指し、飲食と水産のシナジー強化に取り組んでいます。

氏名 持株比率
平林 隆広 9.90%
TLF 7.10%
BNP PARIBAS LONDON BRANCH FOR PRIME BROKERAGE CLEARANCE ACC FOR THIRD PARTY (常任代理人 香港上海銀行) 5.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は長澤成博氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長 澤 成 博 代表取締役社長 光通信、ジェイフォン東日本(現ソフトバンク)を経て2007年同社入社。常務取締役、WeBase代表取締役等を経て2021年2月より現職。
平 林 隆 広 取締役会長 1998年同社入社。代表取締役専務、アジアンエイト(現同社)代表取締役等を経て、2013年代表取締役社長に就任。2018年9月より現職。
冨川 健太郎 専務取締役 司法書士事務所を経て2008年同社入社。人事総務部長、社長室長、常務取締役執行役員事業開発本部長等を歴任。2024年9月より現職。
土 屋 隆 也 専務取締役 和泉陸運、金虎丸漁業代表取締役等を経て現役の漁師としても活動。2023年同社執行役員水産事業統括等を歴任。2024年9月より現職。
秋田 二郎 取締役 トーメン(現豊田通商)、光通信、カネボウ化粧品、らでぃっしゅぼーや常務取締役等を歴任。2024年9月より現職。


社外取締役は、河野恵美(アイテ・カンパニー代表取締役)、田中研次(有限会社坤ストゥーディオ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」「水産事業」および「その他」事業を展開しています。

アカマル屋


「笑顔と心遣いの大衆酒場」をコンセプトにした居酒屋業態です。「もつ煮込み」「炭火串焼き」「出汁煮込みおでん」などを中心とした肴と酒を提供し、地域密着型の温かい店づくりを行っています。

収益は、来店客からの飲食代金によって得ています。運営は主にSANKO MARKETING FOODSが行っており、水産事業との連携による新業態「アカマル屋鮮魚店」なども展開しています。

焼肉万里


「手切りにこだわった正直な焼肉屋さん」をコンセプトとする焼肉店です。肉問屋が厳選した肉を直送で取り寄せ、新鮮な状態で提供することにこだわっています。

収益は、来店客からの飲食代金によって得ています。運営は主にSANKO MARKETING FOODSが行っています。

金の蔵


幅広い客層のニーズに応える居酒屋業態です。味付けやボリュームにこだわりつつ、沼津・浜松の鮮魚も取り入れたメニューをリーズナブルな価格で提供しています。

収益は、来店客からの飲食代金によって得ています。運営は主にSANKO MARKETING FOODSが行っています。

運営受託


官公庁などを中心とする飲食施設の運営を受託する事業です。長年培った経験を活かし、店舗・商品開発から運営までを一貫して行っています。

収益は、施設運営の受託による売上によって得ています。運営は主にSANKO MARKETING FOODSが行っています。

水産事業


産地から入り込み、飲食事業とのシナジーを追求してサプライチェーンを構築する「水産6次産業化」の事業モデルです。豊洲市場の大卸である綜合食品や、浜松の仲卸であるSANKO海商などが含まれます。

収益は、水産物の卸売・小売販売によって得ています。運営はSANKO MARKETING FOODSおよび子会社の株式会社SANKO海商、綜合食品株式会社などが行っています。

その他業態


「東京チカラめし」や「パスタママ」などの飲食店舗のほか、物販店等の消毒・除菌・清掃などを請け負うサービス業態が含まれます。

収益は、飲食代金やサービス提供料によって得ています。運営はSANKO MARKETING FOODSおよび子会社の株式会社ジーエスサンヘイなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復傾向にあり、直近では97億円に達しました。一方で、利益面では経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失が続いており、赤字からの脱却が課題となっています。

項目 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 24億円 71億円 93億円 97億円
経常利益 -3億円 -7億円 -7億円 -6億円
利益率(%) -12.7% -10.5% -7.3% -6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -5億円 -7億円 -7億円 -8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較において、売上高は増加していますが、依然として営業損失が続いています。売上原価率は微減したものの、販売費及び一般管理費が増加しており、利益圧迫の要因となっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 93億円 97億円
売上総利益 29億円 33億円
売上総利益率(%) 31.2% 34.0%
営業利益 -7億円 -7億円
営業利益率(%) -7.3% -6.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が18億円(構成比46%)、地代家賃が5億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


水産事業が売上の過半を占めており、飲食店舗事業(アカマル屋、運営受託等)も回復基調にあります。水産事業と飲食事業のシナジー効果を追求する構造となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
アカマル屋 17億円 17億円
焼肉万里 3億円 2億円
金の蔵 2億円 2億円
運営受託 5億円 6億円
水産事業 55億円 55億円
その他業態 12億円 14億円
連結(合計) 93億円 97億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は**勝負型**(本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続)です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -9億円 -6億円
投資CF -3億円 -0.5億円
財務CF 7億円 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-255.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.0%で市場平均を大きく下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「価値ある食文化の提案」を企業理念としています。ともに働く仲間の幸福を最大限に追求し、従業員一人ひとりの経済的利益と精神的成長を達成することで、顧客へ最大の満足を提供し、地域社会へ貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「とる うる つくる 全部、SANKO」をスローガンに掲げています。自らが漁船を持つ漁業者として魚を獲り、加工し、販売することで、「産地活性化プラットフォーマー」としての独自のビジネスモデルを展開し、日本の漁業再興に貢献するという価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と安定的な収益性を重視する観点から、水産6次産業化モデルの構築と店舗事業における収益基盤の再構築を進めています。中期的には以下の経営指標を目標として掲げています。

* 売上高営業利益率:5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


水産事業と飲食事業が一体となったグループシナジーの創出に注力しています。具体的には、水産事業の6次産業化モデルの構築と、店舗事業における収益基盤の再構築を重点施策としています。

* 水産事業の6次産業化:自社船団「SANKO船団」による漁獲、独自の加工品開発、グループ内での販売強化。
* 店舗事業の再構築:水産シナジーを活かした「アカマル屋鮮魚店」等の開発、高効率店舗の出店、アジア地域でのライセンス契約獲得。
* コスト削減:業務プロセス及びITシステムの見直しによる省力化。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全従業員の物心両面の幸福の追求」を掲げ、多様な人材の確保と育成に注力しています。職種別評価制度の導入や、事業領域別・階層別の教育制度「SANKOカレッジ」を実施するほか、特定技能外国人材の積極採用と定着支援も行っています。また、リモートワークへの対応や柔軟な雇用形態の促進により、働きがいのある職場環境の創出を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.0歳 5.6年 4,447,590円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.4%
男女賃金差異(正規雇用) 83.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、常用雇用労働者に占める女性比率(24.6%)、毎月の平均残業時間(17.5時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 感染症等によるリスク


新型コロナウイルス感染症などの感染症が新たに発生した場合、消費者の外出自粛や店舗の臨時休業等により事業活動に支障が生じ、財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食材の調達について


BSEや鳥インフルエンザ等の疫病、異常気象、自然災害、国際情勢の変化等により、食材の調達が困難になったり調達価格が高騰したりした場合、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 継続企業の前提に関する重要事象等


同社は営業損失および経常損失を継続的に計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、水産事業の6次産業化や不採算店舗の整理、資金調達による財務基盤の強化などの対策を講じています。

(4) 人材の確保及び教育について


中長期的な事業拡大を見据え、多様な人材の確保や育成に注力していますが、これらが計画通りに進まない場合、事業拡大の遅延等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。