アルペン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルペン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(プライム市場)、名古屋証券取引所(プレミア市場)に上場し、スポーツ用品の販売および製造を主たる事業としています。直近の業績は、暖冬や猛暑の影響を受けつつも、競技・一般スポーツ用品の好調や店舗改装効果により、増収増益(売上高6.2%増、営業利益155.7%増)を達成しています。


※本記事は、株式会社アルペン の有価証券報告書(第53期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルペンってどんな会社?


同社グループは、スポーツ用品の小売販売を中心に、スキー場やゴルフ場の運営なども展開する企業です。

(1) 会社概要


1972年、15坪のスキーショップ「アルペン」として創業しました。1983年に「ゴルフ5」、1997年に大型店舗「スポーツデポ」を開設し、事業を拡大。2006年には東証一部および名証一部へ上場を果たしました。2018年には体験型アウトドアショップ「アルペンアウトドアーズ」を展開し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しています。

2025年6月末現在の連結従業員数は3,257人、単体では2,896人です。筆頭株主は創業家資産管理会社と見られるミズノ・ホールディングス、第2位は創業者の水野泰三氏、第3位は代表取締役社長の水野敦之氏となっており、創業家が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
ミズノ・ホールディングス 35.24%
水野泰三 17.55%
水野敦之 8.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は水野敦之氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
水野 敦之 代表取締役社長 2000年同社入社。ミフト事業部長、取締役デジタル推進本部長、専務取締役などを経て2016年より現職。
水野 泰三 代表取締役会長 1972年同社設立とともに代表取締役社長就任。2016年代表取締役会長、2021年取締役名誉会長を経て2022年より現職。
村瀬 一夫 取締役副社長 1976年同社入社。商品本部長、常務取締役、専務取締役などを歴任し、2018年より現職。
二十軒 翔 専務取締役COO戦略企画本部長商品本部長 ベイン・アンド・カンパニーを経て2014年同社入社。執行役員戦略企画室長などを経て2024年より現職。
水巻 泰彦 取締役(監査等委員) 1982年同社入社。経理部長、財務部長、取締役管理本部長などを経て2024年より現職。


社外取締役は、松本絢子(西村あさひ法律事務所パートナー)、包原智幸(包原智幸税理士事務所所長)、鬼頭潤子(鬼頭潤子公認会計士事務所所長)、青柳良則(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 小売事業


ゴルフ用品、スポーツライフスタイル用品、競技・一般スポーツ用品、アウトドア用品、ウインター用品などの販売および製造を行っています。主な顧客は一般消費者であり、「スポーツデポ」「ゴルフ5」「アルペンアウトドアーズ」などの店舗やECサイトを通じて商品を提供しています。

収益は、顧客への商品販売による代金が主な源泉です。また、プライベートブランド商品の開発・製造も行っています。運営は主に同社が行っていますが、海外での製造拠点としてJAPANA (CAMBODIA) CO.,LTD.などの連結子会社も機能しています。

(2) その他


スキー場、ゴルフ場、フィットネスクラブの運営などを行っています。顧客は施設を利用する一般利用者や会員です。

収益は、施設の利用料や会員費などが主な源泉です。運営は、同社のほか、株式会社アルペンリゾート(ゴルフ場経営)、株式会社エム・アイ・ゴルフ(ゴルフ場経営)などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は堅調な増加傾向にあります。特に直近では、外出需要の回復やインバウンド需要の増加、ランニングやバスケットボールなどの特定カテゴリの好調により売上を伸ばしています。利益面では、在庫管理の適正化や値引き販売の抑制により、直近で利益率が改善傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 2,332億円 2,323億円 2,445億円 2,529億円 2,687億円
経常利益 168億円 90億円 69億円 53億円 105億円
利益率(%) 7.2% 3.9% 2.8% 2.1% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 108億円 53億円 55億円 17億円 56億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加え、売上総利益率が改善しています。これは在庫状況の改善や堅調な販売状況により値引き販売が抑制されたことなどが要因です。営業利益率は大きく向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 2,529億円 2,687億円
売上総利益 981億円 1,076億円
売上総利益率(%) 38.8% 40.0%
営業利益 33億円 85億円
営業利益率(%) 1.3% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当等は289億円(構成比29.2%)、賃借料は243億円(同24.5%)を占めています。売上原価は売上高に対して約60.0%を占めています。

(3) セグメント収益


小売事業が売上の大半を占めています。直近では、ゴルフ用品が物価高や気候の影響で伸び悩んだ一方、競技・一般スポーツ用品やアウトドアアパレルが好調に推移し、全体を牽引しました。その他事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
小売事業 2,488億円 2,643億円
その他 43億円 44億円
調整額 -1億円 -1億円
連結(合計) 2,529億円 2,687億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)で借入金の返済(財務CFマイナス)を行いつつ、投資も実施(投資CFマイナス)する**健全型**のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 57億円 91億円
投資CF -105億円 -86億円
財務CF 54億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「スポーツをもっと身近に」をパーパス(存在意義)として掲げ、誰もがスポーツを楽しみ、健康で充実した日常を送れる世界の実現を目指しています。また、経営方針として「スポーツ業界のイノベーターになる」ことを掲げ、常に革新的な取り組みに挑戦し、スポーツ市場を変革するリーディングカンパニーであり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「お客様志向」「挑戦のスピリット」「最高の人材育成」「チームワーク」「スポーツへの愛情」という5つの行動指針を定めています。これらを踏まえて、従業員、お客様、取引先、株主など多くのステークホルダーと適切な協働を行い、経営の効率性・透明性・健全性の向上を図ることをコーポレート・ガバナンスの基本としています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは「中期経営計画2027」に基づき、社会的課題を解消する新しい価値創造に取り組んでいます。長期的には以下の数値目標の実現を目指しています。

* 売上高営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、中期経営計画に基づき、既存店のリニューアルや新規出店によるシェア拡大を進めています。また、EC事業の刷新やOMO施策の推進、独自性の高い商品ラインナップの拡充に注力しています。

* 店舗・業態の刷新:魅力的な品揃えや体験型売場の徹底、ホスピタリティの強化
* 商品改革:主要ナショナルブランドとの連携強化、PB商品の開発強化、在庫管理精度の向上
* 人材育成の強化:多様な人材の確保、教育・研修体系の整備
* サステナビリティ経営:環境配慮活動の推進
* デジタル活用・データ経営の推進:業務プロセスの変革、データに基づいた判断の実行

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「最高の人材育成」を行動指針に掲げ、スポーツの専門家としての知識・経験を得る機会や、リーダーシップ研修などを拡充しています。多様性の尊重と女性活躍推進を成長に不可欠な要素と位置づけ、性別や年齢に関係なくキャリアアップできる環境整備や、互いを認め合うチームワークの文化醸成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.6歳 16.0年 5,587,538円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.2%
男性育児休業取得率 79.6%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用) 80.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 91.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、店長職への女性登用人数の割合(12.2%)、中途採用者の管理職への登用の割合(34.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内スポーツ小売業界の市場動向について


人口減少による市場規模縮小や、異業種からの参入、メーカー直販(D2C)の拡大などにより競争が激化しています。同社は専門性の強化やPB開発などで競争力向上を図っていますが、想定以上の市場縮小や競争激化が進んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 季節的変動および自然災害の発生について


同社の取扱商品は季節性が高く、暖冬や雪不足、猛暑や残暑の長期化といった天候不順が販売不振や在庫リスクにつながることがあります。また、集中豪雨や台風などの大規模自然災害が発生した場合も、店舗運営や物流に支障をきたし、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 店舗の出退店について


新規出店や改装には多額の投資が必要であり、計画通りの売上が確保できない場合は収益性が低下するリスクがあります。また、不採算店舗の退店時には解約損や固定資産除却損が発生する可能性があります。大規模小売店舗立地法の規制により出店計画が変更・延期される可能性もあります。

(4) システム・情報セキュリティリスクについて


店舗POSやECサイト、発注・在庫管理など多岐にわたるシステムを活用しており、障害発生時には業務に支障が出る可能性があります。また、多数の顧客情報を保有しているため、個人情報漏洩が発生した場合は社会的信用の失墜や損害賠償などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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