きちりホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きちりホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場し、「KICHIRI」等の飲食事業とDXコンサルティング事業を展開しています。直近の業績は、売上高151億円(前期比9.5%増)、経常利益6億円(同24.1%増)と増収増益を達成しており、外食需要の回復やDX事業の成長により業績は堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社きちりホールディングス の有価証券報告書(第27期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. きちりホールディングスってどんな会社?


飲食店の経営およびDXによる外食産業向けプラットフォーム提供を主軸とする企業グループです。

(1) 会社概要


1998年に有限会社吉利として設立され、2000年に株式会社へ改組しました。2002年に主力業態「Casual Dining KICHIRI」1号店を開店し、2007年にヘラクレス市場(現・東証グロース)へ上場しました。その後、2019年に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。

同グループの連結従業員数は558名、単体では27名です。大株主に関しては、筆頭株主は資産管理会社のエムティアンドアソシエイツであり、第2位は同社常務取締役CFOの葛原昭氏、第3位は個人株主の平川勝基氏となっています。

氏名 持株比率
エムティアンドアソシエイツ 34.70%
葛原昭 3.00%
平川勝基 2.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名、女性比率0.0%です。
代表取締役社長CEO兼COOは平川昌紀氏が務めています。
社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
平川昌紀 代表取締役社長CEO兼COO 1993年ダイヤモンドリゾート入社。1998年有限会社吉利(現同社)設立、代表取締役。2019年より現職。
葛原昭 常務取締役CFO 1998年橋爪総合会計事務所入所。2003年同社入社。2006年管理本部長、2010年常務取締役を経て2019年より現職。
平田哲士 取締役営業統括本部長 2000年大和実業入社。2001年同社入社。2006年営業統括部長を経て2011年より現職。
松藤慎治 取締役商品統括本部長 1998年大阪電技入社。2006年同社入社。2013年執行役員商品統括本部長を経て2015年より現職。


社外取締役は、木村敏晴(元ワタミ取締役上席執行役員CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」および「DXコンサルティング事業」を展開しています。

(1) 飲食事業

「Casual Dining KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」、「VEGEGO」などの飲食店経営を行っています。低価格競争には参入せず、高品質な料理と徹底したおもてなしによる付加価値提供を重視しており、一般消費者に向けて多様な業態を展開しています。

主な収益は、来店客からの飲食代金やフランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入等です。運営は主に連結子会社のKICHIRIが行っています。

(2) DXコンサルティング事業

外食企業運営基盤「プラットフォーム」を活用し、他社とのコラボレーション店舗のプロデュースや、中小外食事業者とのプラットフォーム共有事業を展開しています。また、地方創生としてふるさと納税関連業務や、採用DXサービス「ApplyNow」の提供も行っています。

収益は、プロデュース報酬、コンサルティング料、業務受託料、システム利用料等です。運営は同社、およびKICHIRI、ApplyNow等の連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は56億円から151億円へと大幅に拡大しており、回復基調が鮮明です。利益面でも、経常損益は一時赤字となりましたが、直近2期は黒字化し、利益率は3%台で推移しています。当期純利益も直近2期は連続して黒字を確保しており、収益性が改善しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 56億円 69億円 109億円 137億円 151億円
経常利益 -5.6億円 3.6億円 -2.7億円 4.5億円 5.5億円
利益率(%) -10.0% 5.1% -2.5% 3.2% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.4億円 1.5億円 -2.5億円 2.6億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の137億円から151億円へ増加し、売上総利益も99億円から107億円へ伸長しています。営業利益は前期の7.8億円から5.8億円へ減少しました。売上総利益率は約71%と高い水準を維持していますが、営業利益率は5.7%から3.9%へ低下しており、コスト増加の影響が見られます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 137億円 151億円
売上総利益 99億円 107億円
売上総利益率(%) 71.9% 71.2%
営業利益 7.8億円 5.8億円
営業利益率(%) 5.7% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が41億円(構成比40%)、地代家賃が21億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


飲食事業は売上高が増加したものの、利益は減少しました。DXコンサルティング事業は売上高が増加しましたが、利益は減少となりました。両事業ともに増収を達成していますが、利益面では前年を下回る結果となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
飲食事業 133億円 146億円 7億円 5億円 3.2%
DXコンサルティング事業 4億円 5億円 1億円 1億円 24.2%
連結(合計) 137億円 151億円 8億円 6億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資と借入返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 9.4億円 7.4億円
投資CF -7.1億円 -7.8億円
財務CF 3.0億円 -8.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「大好きがいっぱい」を企業理念として掲げています。「きちりを大好きで一杯にしたい」という思いのもと、周囲の人々を愛し、愛される人間になることを目指しています。また、外食産業における新たなスタンダードの創造を目指し、サービス・商品・空間すべてにこだわる店舗運営を行っています。

(2) 企業文化


「大好きがいっぱい」という企業精神のもと、顔を見たら「ニコッ」とされるような愛すべき人間になること、そして多くの人から微笑みかけられる存在になることを重視しています。また、ピラミッド型ではなくフラットな組織体系を採用することで風通しを良くし、従業員一人ひとりの働く意欲を高める文化を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、高い収益性と財務健全性を維持しながら株主への利益還元を行うことを目指し、以下の客観的な経営指標を目標として掲げています。

* 売上高営業利益率:4.0%以上
* ROE:10.0%以上
* 配当性向:30.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


外食産業の新たなスタンダード創造に向け、自社ブランドでの店舗展開に加え、独自のノウハウを提供するDXコンサルティング事業の拡大に注力しています。また、競合との差別化を図るため、トレンドを捉えた業態開発力の強化や、独自の「おもてなし」の提供を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ホスピタリティに溢れた優秀な人材の継続的確保を重要課題とし、新卒・中途採用を積極的に行っています。また、フラットな組織体系により情報伝達を早め、従業員の意欲を高めています。全従業員向けに「KICHIRI MBA」という社内教育制度を設け、キャリアステップを支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 43.9歳 10.5年 6,890,554円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 16.7%
男性労働者の育児休業取得率 -%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 82.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 82.2%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) -%


※主要な連結子会社である株式会社KICHIRIにおける女性管理職比率は25.0%、男性育児休業取得率は80.0%です。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外食業界の競合状況

外食業界は参入障壁が低く、新規参入や価格競争により競合が激化しています。同社は付加価値の追求で差別化を図っていますが、競合他社の出店等により競争が一層激化した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 店舗展開と出店条件

直営による店舗展開を行っており、出店先の立地条件や賃貸借条件、採算性などを慎重に判断しています。希望する条件に見合う物件が見つからない場合、計画通りの新規出店ができず、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制と食品安全

食品衛生法や食品リサイクル法等の規制を受けており、違反時には営業許可の取消し等の処分を受けるリスクがあります。また、食中毒等の食品安全性に関する問題が発生した場合、企業イメージの失墜により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 出退店費用と損失リスク

新規出店時には一時的な費用が発生し、利益を圧迫する要因となります。また、経営成績悪化による店舗閉鎖が生じた場合、固定資産除却損や違約金等が発生する可能性があります。新規出店の時期や不採算店舗の撤退状況によっては、業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。